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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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37/99

シーン3:王子ルッツの改革思想(議題としての存在)

円卓の空気が、わずかに変わる。

新たに投影された資料の表題に、全員が一瞬だけ目を留めた。


《学園運用改善提案

提出者:ルッツ・ライヤード》


誰かが咳払いをする。

名前そのものが、議題になる存在だった。


「王子殿下からの提案です」


主任教官は、感情を排した声で説明を始める。


「主な内容は三点。

 実弾使用の制限。

 生徒の安全を最優先とする運用方針。

 そして、教官裁量の明文化」


投影資料には、丁寧な文言が並んでいる。

理念は一貫している。否定しづらい。


「現場の負担軽減にも繋がると」


表向きの反応は、穏やかだった。


「理解できます」


「理想としては、正しい」


「安全意識の向上は必要でしょう」


言葉は、すべて肯定形だ。

だが、誰も前向きな決定を口にしない。


沈黙の裏で、別の評価が共有されている。


――現場を知らない。

――事故処理が難しくなる。

――前例が崩れる。


実弾を制限すれば、再現性が落ちる。

安全を優先すれば、判断が遅れる。

裁量を明文化すれば、責任が可視化される。


それは、制度にとって致命的だ。


主任教官が、まとめるように言う。


「検討は継続します。

 ただし、即時導入は困難です」


誰も異議を唱えない。

反対も、賛成も、しない。


排除はできない。

王子だからだ。


同時に、危険でもある。


権力がある。

発言力がある。

そして――正しい。


制度の中で、正しく振る舞おうとする人間は、

必ず前に出る。


前に出る者は、目立つ。

目立つ者は、処理対象になる。


王子は制度を壊そうとしているわけではない。

むしろ、制度を信じている。


だからこそ、その中心に立ってしまう。


円卓の光が、再び落ち着く。

改革案は、議題として保留された。


だが、危険性だけは、

確かに共有された。

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