シーン2:世界観・政治構造の説明(会議内資料)
円卓の中央に、新たな資料が投影される。
魔導監視ログではない。構造図だ。
「念のため、背景を共有しておきます」
主任教官の声は、確認事項を読み上げる調子だった。
投影されたのは、王国の統治構造。
最上段に王冠の紋章。
その下に、複数の家紋が横並びで配置されている。
「ご存じの通り、王権は象徴です」
誰も反応しない。前提として共有されている。
「実権は、貴族評議会が保持しています。
法、軍、予算――いずれも合議制」
視線が、構造図の一角に移る。
評議会の直下に配置された箱。
《ヴァルツァーク学園》
「本学園は、評議会直轄機関です。
教育機関であると同時に、管理機関でもある」
言い換えは、されない。
次に表示されたのは、別の図表。
魔力保有者の分類を示すものだ。
「魔力は、軍事資源です」
その一言で、議論は終わる。
「重要なのは、量や才能ではありません。
管理可能かどうかです」
図表の中で、いくつかの区分が強調される。
安定。
不安定。
「安定した資質は、戦力として運用できます。
不安定な資質は――扱いを誤ると、政治問題になる」
そこで、二つの矢印が示された。
一つは上向き。
《英雄化》
もう一つは下向き。
《事故処理》
誰も、その言葉を否定しない。
英雄は、物語として消費できる。
事故は、責任を分散できる。
どちらも、政治的に処理可能だ。
主任教官は、淡々と締めくくる。
「したがって、本学園の役割は明確です」
少しだけ間を置いて、言う。
「事故を防ぐことではない。
事故を、政治問題にしないことです」
学園は緩衝地帯だ。
危険を排除する場所ではない。
危険が表に出ないよう、
内側で吸収する装置。
円卓に沈黙が落ちる。
誰も異論を挟まない。
それが、制度の現実だった。




