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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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33/99

シーン6:フランソワの介入(裏補給の示唆)

夜。

ディアナの私室は、学園の喧騒から切り離された静けさに包まれていた。


天蓋付きのベッド脇、低い卓の上に装備ケースが開かれている。

中身は、昼に点検を受けたばかりの魔導銃と制御リング、防護服。


ディアナは椅子に腰掛け、黙ってそれを見ていた。


背後で、微かな金属音がする。

フランソワが、白手袋を外し、器用な指先で内部調整を行っていた。


「……完了いたしました」


静かな声だった。


「魔導反応を、わずかに鈍らせております」


ディアナは振り返らない。


「それは……大丈夫なの?」


問いは、警戒というより確認だった。


フランソワは即答する。


「公式の範囲内でございます」


ケースの内側に視線を落としたまま、淡々と。


「出力制限を一段、強化しました。

 規格上、許容されている調整です」


ディアナは理解する。

装備は、完全な固定値ではない。

管理が許している“幅”が存在する。


「反応速度も?」


「遅延を、ほんの僅かに」


フランソワは言葉を選ばない。


「優秀すぎる装備は、目立ちますので」


その言い方が、すべてを示していた。


ディアナは小さく息を吐き、頷く。


「……ありがとう」


それだけで十分だった。


フランソワは一礼し、ケースを閉じる。


「お嬢様が“普通”であるように見える程度に留めております」


普通。

その言葉が、ここでは戦術用語だ。


学園の管理外で、だが規則違反ではない。

合法的に、弱く見せる。

合法的に、力を縛る。


それが可能だという事実が、静かに示される。


フランソワは部屋を辞する前、控えめに付け加えた。


「必要があれば、いつでも調整いたします」


ディアナは装備ケースに手を置き、答える。


「……今は、これでいい」


扉が閉まり、再び静寂が戻る。


ディアナは天井を見上げる。


無双をやめる。

目立たない。


その戦術は、意思だけでは成立しない。

支える基盤が必要だ。


この部屋にある装備と、

そして――フランソワの存在が、その裏側を担っている。


ディアナは、確信する。


自分は一人で消えているのではない。

消え続けるための準備は、既に整っている。

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