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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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31/99

シーン4:リリアの装備(危うさの兆候)

装備点検は流れ作業のように続いていく。

ディアナの次に呼ばれたのは、リリアだった。


彼女は少し緊張した面持ちでブースに立つ。

背筋は伸びているが、指先に力が入っているのが分かる。


整備士が端末を起動し、魔力ログを表示する。


「平均的だな」


最初の評価は、それで終わった。

魔力量は標準域。制御精度も基準値内。突出した数値はない。


だが、ログの波形は完全に平坦ではなかった。


微細な揺れ。

呼吸に合わせるように、あるいは思考に引きずられるように、わずかに上下している。


装備側の補正ランプが、消えない。

常に、何かを調整している。


整備士は気に留めた様子もなく、設定を確認する。


「補正は常時入ってるが……許容範囲だ」


教官が一瞥し、短く結論を出す。


「問題なし。よくある誤差だ」


その言葉で、処理は終わった。

誰も深掘りしない。


リリアはほっとしたように息をつき、軽く頭を下げる。

安心が、そのまま魔力に反映されたのか、波形が一瞬だけ安定した。


その変化を、ディアナは見逃さなかった。


――今の揺れは、技術的なものじゃない。


恐怖で縮む。

信頼で緩む。

期待で膨らむ。


感情に引きずられる魔力。

意志ではなく、心情に同期する性質。


ディアナは理解する。

この魔力は、制御されているのではない。


装備に、抑え込まれているだけだ。


補正がある限り、表面上は安定して見える。

だが、補正が追いつかなくなった瞬間――


(この子は、危ない)


理由は、まだ言葉にならない。

ただ、確信だけが胸に残る。


正しい子だ。

信じる子だ。

だからこそ、揺れる。


装備点検は滞りなく終わり、次の生徒が呼ばれる。

リリアは微笑んでブースを出ていった。


その背中を見送りながら、ディアナは静かに思う。


――事故は、突然起きるものじゃない。

――準備が整ったときに、起きるだけだ。

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