シーン3:ディアナの装備調整(異質の露呈)
装備点検室は、装備庫よりさらに静かだった。
白い光に満ちた個別ブースで、ディアナは立ったまま腕を差し出す。
整備士が端末を操作し、魔力反応を読み取る。
「……数値、問題なし」
淡々とした報告だった。
魔力量、制御精度、出力変動率。いずれも規定範囲内。むしろ優秀と言っていい。
魔導銃が手渡される。
ディアナが握った瞬間、銃身の魔導回路が微かに鳴った。
反応が早い。早すぎる。
整備士が眉をわずかに動かす。
「同調、完了……いや、速いな」
通常なら、装備側が使用者の魔力を読み取り、補正をかけるまでに一拍の遅れがある。
だが、ディアナの場合、それがない。
魔導銃は、ほぼ即座に馴染んでいた。
「制御補助、最小値で十分だな」
整備士は端末を調整しながら言う。
「余計な補正をかけると、逆に邪魔になる」
防護服も同様だった。
魔力拡散機構はほとんど動作していない。
魔力制御リングは、装着しているだけで役割を終えている。
「優秀だな」
褒め言葉のつもりで、整備士は続ける。
「無駄がない。装備が仕事をしなくていいタイプだ」
ディアナは小さく頷いただけだった。
内心では、別の評価が下されている。
――違う。
これは「優秀」ではない。
装備が介入する余地がないだけだ。
自分の魔力は、荒れない。
揺れない。
突出もしない。
均一すぎる。
安定しすぎている。
装備は、魔力の暴発を抑えるためにある。
想定外の尖りを削るためにある。
だが――削るべき尖りが存在しない場合、
制限は、ただの装飾になる。
ディアナは魔導銃を見下ろす。
安全装置は正常に働いている。数値上は。
それでも、確信があった。
(制限が、制限になっていない)
この装備は、自分を縛れない。
縛る前提の世界に、自分は含まれていない。
それが意味するものを、ディアナはまだ口にしない。
ただ、静かに理解した。
――この学園で起きる「事故」は、
――装備の外側から来るのではない。
内側からだ。




