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シーン6:生徒側の反応
模擬戦の結果は、
その日のうちに学園全体へ広がった。
公式発表があったわけではない。
だが、
ディアナが負けたという事実は、
噂として十分すぎる力を持っていた。
廊下。
食堂。
演習区画の外縁。
小声が、
あちこちで交わされる。
「調子、悪かったらしいぞ」
「さすがに疲れたんじゃないか?」
「……人間だったんだな」
言葉は軽い。
慰めにも、理解にも聞こえる。
だが、
そこに敬意はない。
かつてあったのは、
畏怖だった。
近づけば壊される、
という種類の恐れ。
それが、
少しだけ薄れる。
生徒たちは、
ディアナの近くを通る際、
以前ほど距離を取らなくなる。
だが、
声をかけることもない。
親しみが生まれたわけではない。
ただ、
「触れても大丈夫な危険物」
になっただけだ。
ディアナは、
その変化を正確に認識していた。
(評価が下がったわけじゃない)
(危険度が下がった)
それは、
望んでいた結果だ。
期待も、
恐怖も、
どちらも注目だ。
注目が減ることこそが、
生存に直結する。
周囲の視線が、
少しだけ素通りするようになる。
それを感じ取りながら、
ディアナは何事もない顔で歩き続けた。
この位置。
この距離。
――今のところ、
ちょうどいい。




