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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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21/99

シーン2:開戦

開始合図が、乾いた音で鳴り響いた。


同時に、生徒たちが動く。

訓練された反射。

誰に指示されるでもなく、

それぞれが散開し、遮蔽物へと走る。


第三演習区画は、

これまで幾度も使われてきた場所だ。

地形も、射線も、

多くの生徒が頭に入れている。


そして――

全員が無意識に意識している存在があった。


ディアナ。


通常なら、

彼女は最短距離を選ぶ。


敵陣に向かって、

迷いなく踏み込み、

数分で戦局を終わらせる。


それが、この学園における「常識」だった。


だが、今回。


ディアナは、

一歩、後ろに下がった。


前線には出ない。

遮蔽物の影に身を置き、

視界だけを確保する。


銃は構える。

狙いもつける。


だが、引き金は軽く引かない。


撃つ。

しかし、倒さない。


牽制。

制圧。

それ以上の行動に踏み込まない。


戦場の空気が、

わずかに歪む。


誰かが、

胸の奥で小さく首を傾げる。


(あれ?)


(前に出ない?)


声にはならない。

誰も止まらない。

模擬戦は、そのまま進行する。


だが、

確実に何かが違っていた。


ディアナが、

“最強”の動きをしていない。


その事実が、

まだ言語化されないまま、

戦場の底に沈んでいく。


違和感は、

種のように撒かれただけだ。


――この時点では、

まだ誰も、

それが芽吹くことを知らない。

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