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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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19/99

シーン8:決断

ディアナは、視線を伏せる。

中庭の喧騒が、遠くに感じられた。


胸の奥にあるものを、

一つずつ確認する。


――未練。


英雄になれなかったこと。

最強として称賛される未来。

誰かを守り、物語の中心に立つ可能性。


それらに対して、

心はまったく反応しなかった。


欲しくない。

最初から、必要としていない。


――恐怖。


それは、確かにある。


銃声。

血。

ゲーム画面の向こうで見た、

強制終了の文字。


死ぬと分かっている未来を、

正面から受け入れられるほど、

彼女は狂っていない。


だからこそ、

選択は明確だった。


無双をやめる。


力は隠す。

結果だけでなく、過程も抑える。


判断は、他人に委ねる。

作戦立案もしない。

指示も出さない。


介入はしない。

誰かが失敗しても、

手を伸ばさない。


助けられる場面があっても、

最初から立たない。


それは冷酷さではない。

この世界の仕様を理解した者の、

合理的判断だ。


ディアナは、

自分自身に向けて、

静かに宣言する。


(勝たない)


(正しくならない)


(目立たない)


それが、

彼女の行動原理。


これ以降、

彼女は“最強”ではなくなる。


少なくとも、

他人の目に映る限りでは。


中庭に吹く風が、

彼女の長い髪を揺らした。


誰も気づかない。

誰も止めない。


第一章は、

その静かな決断をもって、

終わる。


――最強であることの危険を、

誰よりも正確に理解した者として。

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