シーン7:結論への思考
ディアナは、立ち止まったまま思考を整理する。
感情を挟まない。
恐怖も、嫌悪も、後回しだ。
まず、事実。
自分は最強である。
それは否定できない。
努力や才能ではなく、設定としてそうなっている。
次に、因果。
最強は目立つ。
目立つ者は、注目される。
注目される存在は、管理対象になる。
この学園における管理とは、
賞賛でも指導でもない。
――事故処理だ。
バランスを崩す存在。
戦場を単純化する存在。
物語を予定調和に押し戻すための、
排除対象。
ディアナは、
自分がそこに分類されていることを、
原作知識として正確に理解している。
次に、周囲。
王子ルッツ。
理想を語り、前に出る存在。
ヒロイン、リリア。
正しさを疑わず、人を信じる存在。
二人とも、すでに目立っている。
種類は違えど、
どちらも「物語の核」だ。
そして――
核同士は、引き合う。
(関われば、加速する)
ディアナは静かに結論を積み上げる。
最強である自分。
すでに目立っている二人。
この三者が近づけば、
注目度は指数関数的に跳ね上がる。
結果は一つ。
大会。
実弾。
事故。
死亡。
だから、結論は感情ではなく、
戦術として導かれる。
勝利条件から降りる。
勝たなければ、
最強は意味を失う。
意味を失えば、
中心に立つ理由がなくなる。
中心に立たなければ、
物語は進行しない。
物語が進まなければ、
イベントは起動しない。
ディアナは、
その思考に一切の迷いを残さなかった。
英雄にならない。
悪役を全うしない。
導かない。
守らない。
物語の推進力にならない。
それが、
この世界における
唯一の生存戦略。
ディアナは、
誰にも見られないように、
ほんの半歩だけ後ろへ下がる。
戦場の外縁。
視線の届かない位置。
そこが、
彼女が選んだ立ち位置だった。




