シーン2:過去の戦績の再確認
中庭の掲示板には、
いつもより人が集まっていた。
戦績更新の日だ。
羊皮紙風の表示板に、
魔力で刻まれた文字が浮かび上がっている。
個人戦、団体戦、総合評価。
順位の横には、簡潔な戦闘記録が添えられていた。
その最上段にある名前を、
ディアナはわざわざ確認するまでもない。
――ディアナ・ヴァルツァーク。
変わっていない。
落ちることも、並ばれることもなく、
ただ一人、突出したまま。
「また単独行動だってさ」
誰かの小声が、背後から聞こえる。
「団体戦なのに?」
「そう。開始直後に前に出て、
敵部隊、全滅」
記録には、淡々とした文字が並ぶ。
【作戦開始三分二十秒/敵戦力壊滅】
「三分で終わらせるとか……」
「戦術も何もないよな」
別の場所では、
教官たちが低い声で話していた。
「配置を変えても意味がない」
「彼女が動いた時点で、戦場が終わる」
「今回は介入を見送った。
指導にならない」
それは、評価であり、
同時に諦めの言葉だった。
生徒たちの噂も、
自然と同じ方向に収束する。
「化け物だよ」
「味方にいても怖い」
「ディアナがいると、
戦場の意味がなくなる」
誰も声を荒げてはいない。
誰も悪意を向けてはいない。
ただ、事実を述べているだけだ。
ディアナは、掲示板の前を通り過ぎる。
足は止めない。
視線も、必要以上に向けない。
(全部、知ってる)
ゲームの中で、
何度も見たログ。
何度も再生した結果。
これらは、
強さの証明であると同時に、
死亡フラグの積み重ねだ。
強すぎる。
早すぎる。
他者の選択肢を奪いすぎる。
称賛は、
この世界では免罪符にならない。
むしろ逆だ。
突出した力は、
「排除しても物語が崩れない存在」
として、処理対象になる。
ディアナは理解していた。
この学園で、
この評価を受け続ける限り、
自分は必ず、
“事故”の中心に立つ。
最強であることは、
守られている証ではない。
排除する理由が、すでに揃っているということだった。




