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サバゲー令嬢ディアナ ――勝たない悪役令嬢の生存戦争  作者: 南蛇井


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10/99

Ⅹ.目標設定

洋子は、動かなかった。


パニックにはならない。

泣かない。

叫ばない。


それらはすべて、

この世界では危険行動だと、

直感が告げていた。


一度、目を閉じる。

ゆっくりと、鼻から息を吸い、

口から吐く。


深呼吸。

現実で何度も使ってきた、

自分を落ち着かせるための動作。


心拍が、少しずつ落ち着く。


恐怖は消えない。

だが、支配はさせない。


洋子は考える。


ゲームの中で、

ディアナが死ななかったルートはない。

それでも、

**「即死しなかった状況」**は、確かに存在した。


目立たないとき。

前に出ないとき。

誰かを庇わなかったとき。


英雄にならなかった周回。


頭の中で、

プレイログを一つずつ辿る。


そして、

一つの結論に辿り着く。


「……目立たなきゃいい」


声は、低く、静かだった。


「勝たなきゃいい」


それは敗北宣言ではない。

生存戦略だ。


「正しくならなきゃいい」


正論は、

この世界では弾丸と同義だ。


誰かを導く言葉も、

誰かを救う行動も、

フラグになる。


洋子は、理解していた。


ここで確定したのは、

一時的な方針ではない。


物語全体を貫く、

ただ一つの目標。


――死なない。


そのために、

最強であることを捨てる。

悪役であることを、

徹底的に引き受ける。


ディアナは、

世界を変えない。

誰も救わない。

ただ、生き残る。


その覚悟が定まった瞬間、

物語はようやく、

静かに動き出した。

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