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この世で一番綺麗な色
ぽっ、と水面に液体が零れ、バスタブ一面に広がってゆく。
──ああ。綺麗。
私はうっとりしながらバスタブに足を入れ、その色水の中に体を沈めてゆく。
私の体によって、色水はかき回される。
けれども色は、水全体に広がって薄くなるどころか、更に濃くなり、バスタブ内を一面に染めた。
私の手首から流れ落ちた、鮮やかな赤色に。
「ふふ……」
笑いが堪え切れない。
だって、こんなに綺麗なんだもの。
私は手首を水から出し、切ったばかりのそこを優しく撫でる。
手首には他に何本ものリスカ痕が残り、盛り上がっていた。
……また増えちゃった。でも、しょうがない。
「だって、ね」
私はすっかり真っ赤に染まったバスタブを見下ろし、くすりと笑う。
だってこんな、この世で一番綺麗な色を見たら。
やめられるわけなんて、ないんだもの。




