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第4話 信じる心(カケラ)と闇の中の悪魔(ゼパル) TAKE3

 まぁさて、結局ああだのこうだの言いわしたものの、何から取り組めばいいのか分からずに、何時までも私は悶々としていた。悪魔ゼパルは『君の好きなようにすれば良い』とは言っていたけど・・・・

 てゆーか、私の目的って何だったっけ?・・・・・・ああ、思い出した。私は、ヨルを手に入れるんだ。あの時に叶わなかった、願いを果たすんだ。でも、だったら尚の事、混乱する。ただヨルを手に入れたんじゃ味気ないし、そんなんじゃ、私は埋まらないし・・・・・・・


                      あ! 良い事思い付いたッ!!


 うんうん、これならいける。ああ、私って天才かもぉ~。この方法なら悪魔ゼパルもヨルも、きっと気に入ってくれるわ!

 そのためには、色々準備しないと♪ そうねぇ、景品なんか突けるのも面白いかも!『囚われた姫を助ける騎士』。うんうん、下手な設定だけど、しっくり来るわぁ~。これでいきましょう。うふふふふ。

 待ってなさい。私は必ず――――――――――――――


                      貴方をワタシ色で染めて上げる!!



          ★      ◎        ▲        ■      ☆





「・・・・・フゥ、ただいま、俺。今日も一日お疲れさーん」


 卯月に会ってから数日後、仕事から帰って来た俺は今、玄関の前に立っていつも恒例の『自分に対しての労い』を難なく済ませ、ポケットから鍵を取り出し、ドアを開けようとしていた。

 まぁ、この『自分に対しての労い』というのは、普通一般的市民が家に帰って意味もなく『あぁ、疲れた』とか言うのと似たようなものだと考えてくれれば差し支えないと思う。


 で、ここからが本題だ。ぶっちゃけた話、俺にはある特異体質がある。それは『記憶の風化』だ。俺は昔から、記憶力が人一倍良かった。他の同級生が、必死扱いてテスト範囲の内容をを覚えている脇で、俺はそのテスト範囲を数回目を通しただけで、覚えたい事は覚える事ができた。でも、それはとある代償を伴うようで、記憶したものを使わなければ直ぐに忘れてしまうんだ。それが俺の特異体質『記憶の風化』だ。これは体質というよりは、病気に近いのかもしれない。


     ――――――“悪魔と契約でもしない限り本当に記憶が消えることはないんだよ?”――――――――


 元の言葉が頭を過ぎる。あの時は曖昧にして誤魔化したけど、実際は俺がきっちり治していかなきゃいけない事だ。でも、もし、あいつの言うとおりなのだとしたら、どうして悪魔は俺の記憶を消そうとする?

 卯月の事も、俺は本来、覚えていて然るべきことだ。でも、俺は卯月の事をまだ断片的にしか思い出しては居ない。いつもならそれでいいのだろう。


 だが、俺はそれで終わって・・・・・・・はいけない気がした・・・・・・・・・


 理由は分からない。けど、これだけは決して忘れてはならないと、忘れても忘れられないと、そう記憶自体が訴えているような気がした。


「・・・・・・もしかして、それが俺に欠けているものなのかもしれないな・・・・・」


 どうでも良さそうに呟いた。そして、ドアに施錠を解き、我が家に入ろうとした瞬間、開いたドアの隙間にあったのであろうそれに気が付いた。


「・・・手紙?・・・・」


 手にとって見てみる。差出人の名前もなく、切手も貼っていない。ただ、表に『神崎 音夜様へ』と宛名らしきものが書かれていた。


「・・・・このデジタルの時代にアナログとはな」


 取り敢えず、俺宛なわけだし、封を切って読んでも構わないだろう。そんな軽いノリで、部屋に入る事をせず、読んだ。




   “神崎君、お久しぶりですね。元気でいらっしゃいますか?


    私は、相も変わらず至って普通です。

  

    懐かしいですね。顔を見たわけでもないのに、そんな感じがします。


    まぁ、そんなことはさておいて。

 

    いきなりこんな手紙を出して、ごめんなさい。


    実は私、神崎君に伝えたい事があるんです。


    それでですね、その・・・・会って貰えませんか?  

                              『・・・・来ちゃ駄目!!』


 あれ、今なんか聞こえたぞ。声? いや違う。手紙を読んでいるんだ、そんな筈はない。だったら、今のは・・・・・


「――――――――っ、ぐ・・・・・!」


 それは本当に突然の事だった。左眼が痛む・・・・・。どんな原理かは知らない。ただ、手紙を読んでいるだけなのに、異常に左眼が疼く。

 

 ああ、そういうことか。


 おそらく原因は、この手紙・・なのだ。手紙に込められた情念が、俺に左眼に侵入しているんだ。まるで、小さい穴に無理やり大きな異物を押し込まれるような感覚。

 そして、この声と痛みはおそらく本能からの警鐘、だと思う。


「・・・・なにが、どうな、ってんだ・・・!」


 左眼を押さえ、地面に膝をつけ、縮こまる。だが、右目は手紙の文章を捕らえたまま、俺の意思とは無関係に読み進める。



   “会って、いろんなことを話しましょう。    

                                 『・・・お願い、来ないで!』

   “町外れの古びた廃墟があるでしょう? そこで待ってます。

                               『・・・来ないで! 来ないで!』

   “あ、そうそう。刻限は気にしませんから。 でも――――

                               『もうやめて、悪魔ゼパル!』

   “神崎君の大事な人・・・・も呼んだから、あまり遅くならないでくださいね。

                             『来たら殺される! だから来ないで』

   “では、待ってますね。  か・ん・ざ・き君♪”




 ここまでで、手紙の内容は終わり。相変わらず、左眼は疼いたまま。


 でも、そんなものは、今はどうでもいい。さっきの得体の知れない声の言う事が真実なのなら、全ては、あっさりと、そして何の矛盾もなく、理解する事ができる。つまり―――――。



「・・・コイツ、人質を取りやがった・・・・!」


 そう、事はとても単純だった。要は、


                    『人質を殺されたくなかったら、一人で来い』


 こういうことなのだろう。そして、その人質はおそらく、元に違いない。思えば、あれほど手間のかからないものはない。だって両足がなく、ベットに居座ってるだけのか弱い女の子なのだから。

 そう考えると、すぅと、頭から血の気が引いてくる。おそらく恐怖からではなく、憤怒。

 人は、怒りが限界に達すると、反って冷静になると聞いた事がある。今が、まさにそれだ。


 そして、俺は思いっきり立ち上がり、施錠をする事もなく、廃墟に向かって駆け出した。

 


                         

         

    

いかがでしたか?

これからが卯月編クライマックスとなります。

次回もお楽しみに

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