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13話 定期メンテナンス

 前哨基地を出た俺とホリーは、サリンダー国へと繋がるとされているA10地点へ来ていた。しかしそれ以上南西へ行こうとするも、見えない壁に遮られて先へ進むことが出来ない。


『これ以上進むのは無理そうね……。新国家の実装待ちかしら』


「そうだな。一旦EVACポイント経由で地下都市に帰ろうぜ。さっきからミリアからメッセージが飛んできてるっぽい。中身見てないけど」


『私の方にも来てるわね。えーっと、「デートしてるんですか?」だって』


「ませてるなあ。放っておくのも可哀そうだしメッセージを返してやるか」


 『デートどころかさっきふられたぞ』とからかい交じりにミリアにメッセージを送っておく。するとその返信はホリーの方に届いたらしく、俺はホリーにあまりからかうんじゃないと怒られた。確かに今のは俺が悪い、反省せねば。


 EVACポイントまで戻りながらミリアとメッセージのやり取りをし、シミュレーター施設で合流しようと伝えておいた。昇降機に二人して乗ったところで昇降機が起動し、地下都市へと向かう。

 機体が格納庫まで運ばれたところで俺らは降機し、早速シミュレーター施設へと向かうのだった。



 * * *



「ユウさんの説明はよくわかりません。ですから分かりやすく教えてくれるホリーさんに教わります」


 ミリアにまた飛び方教えようか? と問いかけたところ、俺は戦力外通告を受けた。酷い。

 俺は飛行練習を開始したホリーとミリアに断りを入れてから、隣のシートに座ってインカムをセットした。


『System All Green』


 シミュレーターで選択可能な機体はEランクからAランクまでのようで、Sランク機体は除外されている。

 高ランク機体に乗るという選択肢もあるが、それで操作感が狂って愛機の操作に支障が出たら元も子もないので止めておいた。事実、前回ミリアに射撃の仕方を教えた際にフライトユニットを外したことを後悔したほどだし。

 機体はEランクのPTトレーナー改修機にし、武装はシールドに加えてEランクのアサルトライフルとフォトンブレードにする。オプションとしてCランクのフライトユニットを取り付けた。いつもの装備である。

 Eランクのライフルは正直豆鉄砲もいいところだが、フォトンブレードは違う。俺が撃破されたあの時、Aランク機体の武器を破壊するだけの火力を有しているのを確認した。


 画面上には対戦者待機中の文字。数秒置いてから対戦相手が入ってくる。

 今回のマップは市街地跡。5、4、3――というカウントが始まり、0になったところで機体を操作可能となった。


 アクティブレーダーを駆使して敵機を探す。居た、11時方向に1機。

 有視界戦闘に入る前に敵はオプションのUAVドローンを射出したらしい。遠くでふよふよと浮く子機が見える。そのUAV経由で俺は誘導ミサイルのレーダー照射を受けた。その一連の流れで敵が対人戦慣れしていることが分かる。射程外からの攻撃はノーリスクだからな。

 アラートが鳴り、警告灯がコックピット内で点滅する。誘導ミサイルが山なりに3発飛んできたので、それを視線感知ロックを使用してアサルトライフルで迎撃する。そして最大出力でスラスターを稼働し、俺の機体は宙を駆る。フライトユニットの翼から飛行機雲が伸びていた。


 障害物を盾にして慎重に前進していた敵機は驚いたことだろう。遮蔽物越しに撃ち合いする予定だったのに、俺のPTトレーナー改修機が急に飛んできたわけだし。


『パーソナルトルーパーが飛んでる!? そんな曲芸、ただのまやかしでしかない!』


 敵のサブマシンガンが乾いた音を立てながら多数の弾丸を発射するが、俺は片足のフットペダルを踏み続けて横へ飛び、回避する。結果機体は空中で横向きに倒れる形となった。


『ははっ、墜落確定ー!』


 だが俺はそれでもフットペダルを踏み続ける。機体はそのまま空中でくるりと回り、バレルロールをしながら敵機に接近した。アサルトライフルを腰部ラックに取り付け、フォトンブレードを引き抜いてすれ違いざまに敵機を撫で斬る。そのフォトンブレードの刃はそこまで抵抗を受けることなく、すんなりと敵機を切り裂いた。

 ジェネレーターが悲鳴を上げながら爆発したのを見届けてからリザルト画面が表示される。


『チ、チートだ! NPC以外が空を飛べるわけがないだろ!』


 まさかのチーター扱い。


「チートじゃないぞ。人力で操作して飛んでる。BtHOは強固なアンチチートシステムを組んでいることを、あんたも知らんわけじゃないだろうに」


『くそっ、覚えてろよ』


 教科書通りの捨て台詞を吐いて、お相手さんは対戦ルームから退出した。


 その後も様々な対戦相手とマッチングし、俺はミリアが空を飛べるようになるまで対人戦を楽しんでいた。

 楽しんでいたのだが……。


―――――――――――――――――――――

シングルマッチング 連勝記録(シミュレーター)


 ジキル  124勝

 ユウ   103勝

 ばう丸   91勝

 よもぎ   82勝

…………

……

―――――――――――――――――――――


 勝ち過ぎて戦績がそろそろまずいことになってきた。1位になることだけは阻止せねば……!

 システムをシャットダウンし、インカムを外してからミリアの様子を見る。するとミリアのダリルLは空を飛んでいた。


「やった、やりましたよ! 空を飛べました!」


「ミリア、飛べるようになったのは貴方が頑張ったからよ」


「ホリーさんのお陰ですよ」


 ミリアはホリーの両手を握って、手を上下させていた。仲がいいな。

 なお先ほど戦力外通告を受けた俺はその飛行技術の習得に何も関与していない。たぶんホリーの教え方が上手いのだろう。


「そういえば、明日の定期メンテナンスの時間、なんか長くないですか? 7時から19時までってなってましたよ」


「……長くね? 夜勤組遊べないじゃん」


「ユウ、それってあれじゃないの?」


 あれとは一体。ホリーと俺は互いに顔を合わせ、そして同時に言葉を発した。


「「大型アップデート!」」


 ついに来るのか、新国家が。

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