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1話 キャラクリとチュートリアル

戦闘に入ると地の文が多めになります。

日常会話などはさくさく進むようにしてあります。

たぶん糖分多めです。

よろしくお願いします。

『【Beyond the Horizon Online】へようこそ』


 現在俺は新作VRMMOFPS【Beyond the Horizon Online】のキャラクタークリエイトを行っている。本来であればVR機器というのはそれなりの値段がするので、自分のような高校生の身分では中々手が出せない代物だ。しかし海外で仕事をしている父が『飽きたからお前にやるわ』と一言メモ書きを添えて、海外配送サービスを利用してそのVR機器を俺に押し付けてきた。


 なお、【Beyond the Horizon Online】通称BtHOを起動するのはこれが初めてではない。VR機器が届いた直後、既にインストール済みだったBtHOを起動したのだが……目の前に現れた文字は全部英語、音声も英語。つまり使用言語とリージョン設定が日本ではなく、父が赴任しているシンガポールのままだった。


 そういう訳で、慣れないVR機器の操作に四苦八苦しながらそれらの設定を変更し、無事に日本語対応出来たところでBtHOを再起動。今になってようやくキャラクリに入れた段階と言っていい。


 早速俺は容姿の設定を行う。やはりここは王道のイケメン作成だろうか? そう思い顔の各パーツを設定できるスライドバーを片っ端から操作する。しかしここで問題が発生する。

 なんだこれ……滅茶苦茶難しいんだが。完成予想図はイケメンと決まり切っているのに、出来上がった顔はどれも不気味の谷を越えない。ぶっちゃけ怖い。

 色々試してみたけど、顎が尖りすぎたり目が大きくなりすぎたりする。どうやら俺には造形の才能が無かったらしい。


 仕方がないので容姿はヘッドギアの精密スキャンで自分の顔を取り込むことに決めた。スキャン自体はすぐに終了し、第三者視点で映し出されているそのキャラクターは俺そのものだった。ご丁寧に身長や体重、血圧や脈拍まで表示されている。

 血圧と脈拍は要らなくないか? とも思ったが、VR機器自体元を辿れば医療機器なのでそういう物だと自分を納得させた。

 しかし身長がな……せめて1センチくらい盛れないものだろうか。少しでも背伸びしたいお年頃なのだ。

 だが身長や体型をいじるとVR内での運動能力に悪影響があるという。そういう訳で身長と体重の設定はそのままにしておくことにした。

 でも自分の容姿そのままというのもなぁ、ということで髪の毛の色を若干薄くすることにした。仮想現実なら髪を染めるっていう冒険をしても許されるよね?


 とりあえず容姿は決まったことだし、次へ進もう。


 『次の行程へ進みますか?』というダイアログボックスが出てきたので、迷うことなく『はい』を選ぶ。


『プレイヤーネームを入力してください』


 合成音声でそう告げられる。これは他のゲームで使用している名前であるユウでいいだろう。自分の苗字である有村ありむらがプレイヤーネームの由来だ。

 入力を済ませたところで完了ボタンをタップする。


『それではチュートリアルを開始します』


 まばゆい光が発せられ、それは次第に収まっていく。瞼越しに感じる強い光が弱くなったことを確認したところで俺は目を開いた。

 すると目の前には灰色の壁で覆われた空間が広がり、俺の近くには3機のロボットが膝をついて待機していた。


『左から順に軽量級、中量級、重量級の機体になります。お好きな機体に搭乗してください。なお、搭乗後機体操作チュートリアルに移行します。チュートリアル中の使用機体に関しては、システムを停止し降機されれば他の機体に切り替えることが可能となります。また、チュートリアル中は機体の修理費、弾薬費はかかりません』


 それなら一通り乗って試すことが出来るな。とりあえず軽量級の機体から乗ってみるか。やはり機動力で敵を蹂躙するのは漢のロマン。

 一番左にある機体の正面へ行き、垂れ下げられているワイヤーを掴むとコックピットに向かって巻き取られていったので、その勢いのままにコックピットに乗り込む。

 シートに座るとハッチが閉まり、『System All Green』の文字が眼前に映し出され、外の様子が映し出される。


『左手側にスロットルレバー、右手側に操縦桿があります。フットペダルを踏むことで背部と脚部スラスターが点火され、飛行することが可能となります。より詳しい情報をお求めの場合は、正面のタッチパネルを操作してマニュアルを表示してください』


 タッチパネルをタップし、マニュアルを確認する。すると様々な情報が表示された。ふむふむ、なるほど。機体によって推力や出力が全然違うんだな。エネルギー兵器や良いスラスターを使う場合は性能が良いジェネレーターを積む必要があるが、発電量の高いジェネレーターは基本的に重いから機体重量が増して機動力が落ちる、と。


 とりあえず操作をしてみよう。スロットルレバーを思いっきり押し込む。すると心地よいGを体に感じながら機体は一気にトップスピードに達した。

 俺はその広い空間内を蛇行しつつフットペダルを踏み、飛行も試す。しかしこの飛行が難しい。両足の下にあるペダルの踏み加減を誤ると右にすっ飛んだり左にすっ飛んだりする。

 機動力の確認はこの辺でいいだろう。機体の操作は正直楽しかった。これだけでBtHOをプレイして良かったと思えるほどだ。


「ガイドさん。そろそろ次に進んでくれないか?」


『了承しました。戦闘チュートリアルを開始します』


 奥のゲートが開き、1機のロボットがそこから出てきた。あれはチュートリアル機体の選択肢の一つである中量級と同型だろうか。

 そして合図も無しに相手はスラスターを吹かし、高機動戦に移行した。俺もそのAI制御の敵機体に倣ってスロットルレバーを押し込む。

 先ほどマニュアルを見て確認したが、こちらの武装はサブマシンガンにフォトンブレード、右肩部に単発式誘導ミサイルとなっている。敵機の武装はHUDに表示されている情報を見る限り、ライフルにフォトンブレード、シールド、単発式誘導ミサイルといったところか。

 装甲の厚さに差があるからどれだけ被弾せずに相手に弾丸をぶち込むことが出来るか、それが勝負の分かれ目となるだろう。


 俺のサブマシンガンが火を噴き、大量の銃弾が敵機に襲い掛かる。しかしその銃弾は敵機のシールドにより防がれてしまった。

 お返しと言わんばかりに敵もライフルを連射してくる。だがそれらの弾丸は俺の機体の機動力についてこれず、機体の横を通り抜けていく。

 そんな射撃戦が30秒ほど繰り広げられたが、膠着状態となり決め手に欠ける。そこで俺は円機動を取りやめ、敵機に向かって真っすぐ突貫した。その隙を敵も見逃すはずがない。的確にライフル弾を放ってくるが、その的確さが仇となる。

 俺は敵の発砲の予兆を感じ取り、すぐさまフットペダルをリズミカルに交互に踏む。機体は軽く上昇し、左右に揺れて敵の弾を回避した。

 自機のサブマシンガンがパパパンッ! と散発的に弾をばら撒く。敵機は胴体への着弾を恐れてシールドを構える。そのシールドののぞき穴越しにこちらを確認し射撃してくるが、変則的に機動する俺の機体にはどの弾も当たらない。


 突如としてアラートと警告灯の点滅。敵機が誘導ミサイルを発射してきた。俺は視線感知ロックでミサイルに照準を合わせ、サブマシンガンでそれを迎撃する。爆風を盾にしながらタッチパネルを操作し、肩部ミサイルをパージする。少しでも重量を軽くして速度を稼ぐためだ。

 スラスターを限界まで吹かし、左手に持ったフォトンブレードを起動。そして敵機に向かって振りかぶる。

 敵はライフルを投げ捨て、フォトンブレードを引き抜こうとするが時すでに遅し。俺のフォトンブレードにより盾ごと両断されてしまった。

 ジェネレーターには直撃しなかったようで、大規模な爆発には至らなかった。

 その動かぬ鉄屑と化した敵機を見つめながら、俺は操縦桿から手を放してコックピット内で()()をする。


『戦闘チュートリアルによりプレイヤーの技量を確認。貴方の技量はマスターランク相当と推定されます。……戦闘を続行します』


 続きがあるなんて聞いてないんだが。マスターランクとやらがどの辺のランクか知らないが、無傷で敵を倒せたのだからそれなりの評価は貰えた気がする。

 再び奥にあるゲートが開く。するとそこには――チュートリアル用の軽量級、中量級、重量級の3機体がぞろぞろと出てきた。

 おい、3機相手とか聞いてないぞ。ってか無理。先ほどミサイルをパージしたし、サブマシンガンの弾薬も尽きかけてる。さっきは結果的に勝てたが射撃戦では五分五分だったんだ。それなのに3機も相手にしたらどうなると思う?


 ええ、それはもうぼっこぼこにされましたよ。酷くない? チュートリアルで初心者にトラウマを埋め込むんじゃないよ。

 だけど一矢報いた。片腕と片脚を損傷した状態で特攻してフォトンブレードで軽量級をぶった切ってやったぜ。

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