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王子vs悪役令嬢! ぶつかり合う本気と本気!

ヴィーネ視点です。

 ついに、決闘の日はやってきた。


 場所はわたくし――ヴィーネ=ルネがリリッサに挑み、敗北したあの図書室の一角。


 アルゴニア魔法学園には、決闘を行うための決闘場もあるにはあるのだが、あそこは人目に付きやすいため、リリッサの計らいによってこの場所となったのだ。


 曰く、わたくしがアレックスから嫌われているという事案が広まれば、わたくしの立場が危うくなってしまうことを危惧したとのこと。


 よって図書室に居るのはわたくしと、アレックスと、リリッサ。それと何故かお兄様が同席しています。


 机を挟んで、アレックスと向かい合う。五歳の時に出会ってから約十年、長く婚約者として隣を歩いて来た筈なのに、アレックスと決闘を、いや、ウィザードカードをするのはこれが初めてだ。


『戦いの中でしか、伝えられないものってあるよ』


 リリッサはああ言ってたけど、正直半信半疑だ。でも、確かにわたくしたちは本気でぶつかり合ったことが無いのも事実。


「御託は要らない、始めようか」


 アレックスがデッキを取り出して、言う。

 彼はわたくしを敵対者として正面から見据えていた――あれ? 待って。


 こんな風に、正面から目と目を合わせて見つめ合ったのはいつ以来だろう? 彼はここ数年、わたくしのことを見たくもないとばかりに目を合わせてくれなかったのに……。


「……っ」


 もしかして、だけど。

 敵対したことで、ようやくわたくしは彼の視界に入れたのだろうか。


「「デッキをカット&シャッフル」」


 お互いのデッキを混ぜ、返す。

 初期手札である五枚のカードを引いて、わたくしたちは宣言する。


「『審判の神に問う』」

「『正しいのは汝か我か?』」

「『決闘の神は告げる』」

「『勝者こそが正義だと』」


 瞬間、魔力の渦が机の中央から流れ、わたくしたちを包み込む膜を作り出した。

 リリッサとお兄様の姿が見えなくなって、わたくしとアレックス、まるで二人だけの世界が作り出される。


(尤も、外から中の様子は見えているでしょうが……)


 決闘は外野からのアドバイスやハンドサインなどを許さないが、観戦は許されている。

 二人はこちらからは見えないが、きっとこの戦いの行方を見守ってくれているだろう。


 特にリリッサは、息を呑んでわたくしのことを応援しているのだろう。沢山……本当に沢山練習に付き合ってくれた。


 最初は信じてなかったが、今なら信じられる。彼女はわたくしの味方だ。


「わたくしのターン、ドロー」


 そして決闘は始まる。

 落ち着け、わたくし。アレックスと決闘するのは初めてだけど、ロイヤルナイツのデッキとの対戦経験は嫌という程積んだ。


 最終的な勝率は六割強。落ち着いて、プレイミスをしなければ順当に勝てる相手だ。

 昨日のリリッサの言葉を思い出しながら、わたくしはカードを出す。


『成程ね……【ロイヤルナイツ】、回してみて大体理解したわ』

『要するに、コストパフォーマンスがぶっ壊れのカード集団。コストの割にカードパワーが高いカードを集めたらそりゃ強いわなってデッキね』

『低コスト帯で正面からぶつかったら勝ち目が無い。でも、ターンが進んでオーブが溜まればドラゴンデッキであるヴィーネに天秤が傾くよ』


(だから兎に角序盤は、耐える、受け流す、誤魔化す!)

「竜人の守護兵を召喚!」


 四ターンが経過して、戦況は若干不利。

 アレックスの場には明らかにコストに見合っていないステータスを誇るナイツが二体、つまりは上出来だ。


 リリッサとの練習の時、最初は四ターンでライフの殆どを削り取られていたが、わたくしのライフは未だ最大値の七で健在。


 加えて今出した守護兵はDEFが高く、一ターンに一回破壊されない防御型のカード。流石のロイヤルナイツでも、突破にはそれなりのリソースを吐く必要がある。


 五ターン目……五ターン目さえ来てくれれば……!


「僕のターン、ドロー。……僕は『美しき手ガレス』を召喚」

「させません! 『ブービートラップ』を発動します!」


 ガレスは召喚時に好きなロイヤルナイツをデッキからサーチするカード。これだけは妨害するべきだとリリッサから口を酸っぱくして言われていたカードだ。


『ガレスだけは絶対止めた方がいい。状況に合ったナイツを持ってこれるだけで相当強いのに、ステータスも水準以上あって、極めつけは攻撃後に手札に戻って再利用できるとかぶっ壊れもぶっ壊れ。実際対戦中にこいつが自由に出し入れできる展開になると楽に勝てちゃう』


 と、リリッサが言ってたし、実際ガレスが暴れた試合で勝てた試しが無かった。

 ブービートラップは、召喚時に発動する効果を持ったモンスターの効果を無効にして破壊する汎用カード。


 元々は入れてなかったけど、ガレスを封じるためだけにガン積みさせてもらったわ……!


「……『騎士の誓い』発動。場の『キングダムナイツ』二体のATKを上昇させて攻撃」

「どちらも竜人の守護兵でブロック!」


 竜人の守護兵が破壊されてしまったが、問題ない。

 オーブを使い切ったアレックスはこのターンもう動けないし、次のターンわたくしの動きを妨害することも出来ない。


 いける……!


「わたくしのターン! オーブを全て払って、召喚! ディアブロドラゴン!」


 ドラゴンデッキの切り札を投入する。

 確かにロイヤルナイツデッキはコストパフォーマンスに優れたデッキだが、それでも単純にコストが高いカードよりもカードパワーが高いということはない。


 大型ドラゴンであるディアブロドラゴンに単体で勝てるナイツは、居ない……!


「ディアブロドラゴンの効果! DEFが四以下の相手モンスターを全破壊! 加えて相手のオーブを二つ使用不可にする!」

「……!」


 よし……! よし……! いける! ディアブロドラゴンが居ることで次にアレックスが使えるオーブは四つ、ロイヤルナイツのデッキに入っているカードで、この盤面を返せるカードは存在しない!


「的確なプレイング、カード選択……ヴィーネ、どれだけ僕のデッキを研究してきたんだい?」

「少なくとも休日は全部潰れましたわ。リリッサにもかなり協力してもらいましたし……貴方に勝つためには、それだけのことをしなくてはならなかったもの」

「そうかい……そんなに……そんなにも――王妃の座が欲しいのかい?」


 え――?

 アレックスが、害虫でも見るような眼でわたくしを睨みつけた。


「それってどういう――」

「僕のターン、ドロー。……まさかこのカードを使うことになるとは思っていなかったよ……」


 アレックスのオーブが、四つ砕ける。

 そして、見た子も無いカードが盤面に叩きつけられた。


「『ナイツ・オブ・ラウンド』発動」


「なっ……!? なんですのそのカード!? カードリストには載っていなかった……!」

「王家秘蔵の、虎の子さ。切り札の存在を他者に知られるようなリストに載せるわけないだろう?」


 アレックスのデッキトップが三枚捲られ、それがふわりと浮いてアレックスの眼前に並ぶ。


「『ナイツ・オブ・ラウンド』の効果、デッキトップ三枚を捲り……その中のロイヤルナイツカードを全て場に出す」

「な、なぁあ!?」


 何そのインチキ効果!? ただでさえ単体で強いロイヤルナイツカードが、三体も!?


「僕は『金色の騎士ガヴェイン』、『裏切りの騎士モードレッド』、『湖の騎士ランスロット』を召喚」


 捲りも完璧だ。リリッサとの練習で、『強すぎる』、『要警戒』と評価した三騎士。

 ガヴェイン、モードレッド、ランスロット。三枚とも捲るだなんて……!


「ガヴェインの効果、奇数ターンにバトルゾーンに出た場合、ATKとDEFを倍にする。ランスロットの効果、敵一体のDEFをゼロにする。そして速攻持ちのモードレッドで攻撃」


 ディアブロドラゴンのDEFがゼロにされ、赤色の騎士モードレッドが剣を手に飛び掛かってくる。

 マズイ、このパターンは……!


「ランスロットの効果、相手はブロック可能なら必ずブロックしなければいけない」

「……っ! ディアブロドラゴンでブロック!」


 ブロック時に参照するのはDEFだ。ゼロにさせられてしまったディアブロドラゴンではただ破壊されるだけである。

 だからここはライフで受けたいのに……! このランスロットとモードレッドのコンボ、練習の時何回も喰らったやつ!


「モードレッドの効果、このカードが戦闘に勝った時、もう一度攻撃が可能となる。プレイヤーに攻撃!」

「ぐっ……!」


 ライフが七から一気に三まで減る。

 何でこんな効果を持ちながら、ATKが四もあるのよ……!


 このカードゲームにおいて、ATK三と四の差は激しい、プレイヤーのライフが七なので、勝ちまでの攻撃回数が変わってくるからだ。


 しかもコストも低めだし! ロイヤルナイツカード、練習の時からずっと思ってたけどズルくない!?


「終わりだ。ディアブロドラゴンをもう一体出してもこの盤面はひっくり返らない。ターンエンド」


 手札に逆転のカードは無い……負けた……?

 負けたら……どうなる? 婚約破棄? もう、アレックスと結ばれる未来は無くなる?


 走馬灯のように、アレックスとの出会いが想起される。

 ――一目惚れだった。雷に当たったかのような衝撃が全身を駆け巡り、自分は恋に落ちたのだと自覚した。


 でも、どうしても素直になれなくて、気持ちを素直に伝えることが出来なくて、きつくあたってしまい、嫌われてしまった。


 多分、決め手はあの事件だろう。あの事件で、既にもうわたくしの恋は終わってしまっていたのだ――。


『ヴィーネさ、ちょっと見切りが早すぎるかな』


 不意に、昨日の練習中にリリッサが言っていたことを思い出した。


『負けを認めるのが早すぎる。そのせいで逆転できるルートを見逃しちゃうことがあるみたいだね』

『勝負はライフがゼロになるまで終わらないんだぜ。一枚のドローが、窮地をひっくり返すこともある。良い? ヴィーネ』


 ドローっていうのは、ただカードを引くだけじゃない。

 可能性を手繰り寄せることなんだ。


「諦めるな、か」


 デッキに手を伸ばす。

 わたくしが今、この嫌われている今から、アレックスと結婚出来る可能性は残っているのかな?


 分からない。けど、多分。

 このカードを引かない限り可能性はゼロなのだろう。


「わたくしのターン、ドロー!」


 引いたカードは――っ!? この、カードは……!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 希少性とお金の力の要素の導入万歳(笑)。 本当に大事だ、こういう決闘では情報管理が重要で、公文書に残らないこの切り札が王家の神器であるというのは、まさにゲームの世界に見たかった重みであり重…
[一言] ガンガレ ヴィーネ
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