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王子と悪役令嬢の交際は順調……? あと決闘部設立しました!

「やあ、よく来たねリリッサ」


 学内パーティから数日後の昼休み、あたしは生徒会室に呼び出されていた。


 呼び出し人は勿論王子アレックス。あれ以来、所謂『彼女の友人』ポジションとして、それなりに仲良く友達をしていたのだが……。


 ちょっとした話なら教室ですればいい筈、わざわざこうして二人きりになれる場所に呼び出したということは、何か大事な要件があるということなのだろうが……。


「どうも、アレックス様。ご用件は何ですか?」

「相変わらず固いな……君と僕の仲なんだ、様付けは要らないって言ってるだろう?」

「身に余る光栄ですが……アレックス様とあんまし距離を詰めすぎるとヴィーネが勘違いから嫉妬してしまうかもしれないので……」


 そう言うと、アレックスは納得してくれたのかこれ以上敬称についての話題を続けるということはしないでくれた。

 あるいは、さっさと本題に入りたかったのかもしれないが。


「それで、そのヴィーネについて一つ相談があるんだが……」

「何かあったんですか? 最近のお二人はそれはもう順調な交際をしていると思っていたのですが……」

「いやぁ、その……実はこんなことがあって……」


 曰く、以下のようなことがあったらしい。

 ある日突然、ヴィーネが言った。


「妾やハーレムについて興味はありますか?」っと。


 当然アレックスはこう答えた。


「あるわけないじゃないか。僕は今、君一人に夢中だよ」っと。

 そしたら――ヴィーネは露骨に不機嫌になって溜息を吐いたらしい。


「……いや、何でですか?」

「こっちが聞きたいよ……リリッサはヴィーネと仲良いし、同性だから乙女心も分かるだろ? 何か知らない?」

「いえ、特に何も……それと、乙女心って乙女もよく分かってないですよ」


 まあでも多分……いつものツンデレなんじゃないのかなぁ。

 そんなに心配するようなことではないと思うけど。


「うーむ、いつもの照れ隠しとは若干様子が変だった気もするんだけど……」

「それじゃあ今度会ったらそれとなく聞いておきますよ」

「頼むよ」


 クラスが違うのと、あたしは寮でヴィーネは実家だから下校ルートも被らないから最近はあまり接点が無かったんだけど、今度会いに行ってみるか。


「ああそれと、もう一つ知らせがある」


 王子が今思い出したかのように、言う。


「先日君が提出した部活動創設申請だが、無事通ったよ。後は部員を集めれば正式に部として認められる」

「ホントですか!? やったー!」


 数日前から、計画していたことがある。

 それは部活動――『決闘部』の創設だ。前世の小学校の頃からの憧れである部活でカードゲームをやるというカードゲームアニメにありそうなことを、この世界でなら実現できるのでは? と思って申請しておいたのだ。


「部員は何人集めればいいんですか?」

「とりあえず二人居れば部として承認は出来るよ。ただ、部室や部費が欲しいなら、五人集めないと駄目だね」


 それってつまり四人以下だと同好会扱いってことなのでは?


 うーむ、とりあえずヴィーネは誘うとして、あと三人どうしようか……。


 王子は生徒会で忙しいだろうし……でも攻略対象キャラは『狙い目』なんだよな。

 確か攻略対象キャラは押並べて決闘の実力が高い設定の筈だ。強くなるための最短ルートは強い人と数多く決闘をこなすこと。メンバーは強ければ強いほど良い。


(残りの攻略対象キャラに声をかけてみるか……)


 生徒会室を出て、教室に戻るべく廊下を歩く。

 すると前方に、ヴィーネとその取り巻き二人の姿があった。


 恐らく中庭にお昼ご飯でも食べに行っていたのだろう、弁当箱が入った袋を持っている。


「あ、ヴィーネ」

「! リリッサ!」


 声をかけると、こちらの存在に気付いたヴィーネが寄ってくる。


「庶民の分際で……」

「でもダンスパーティで王子様とヴィーネ様とダンスを……」

「何故あのような輩が……」


 っと、ひそひそ話がヴィーネの取り巻きから聞こえて来た。

 無視安定である。取り巻きは陰口こそ言えど、ヴィーネがあたしの味方である以上表立って事を荒げることは出来ないだろうし。


「ちょっと話があるからさ、放課後時間取れない?」

「放課後? うん、別にいいけど、何の話? 他の人に訊かれたくない話かしら?」

「まあ……そうだね」


 頷くと、ヴィーネは取り巻きに「先に行ってて」と伝えた。

 二人の取り巻きは困惑しながらも、ヴィーネの言葉に従って会釈をした後去っていった。


「で、何かしら? 放課後まで待てないから今話して頂戴」


 廊下の端の方に寄って、壁に背を預ける。

 一応誰か聞いてる人が居ないか確認してから、あたしは話を切り出した。


「……その、最近のアレックス様との仲はどう?」

「? パーティ以降は割と仲良くやってると思うわよ?」

「それは何よりなんだけど……」


 何て訊けばいいんだろう? アレックスに浮気して欲しいの? いやいや、流石に直球すぎるしそんなわけない……。


「アレックス様に……不満とかあったりする?」

「あ、あー……な、何でそんなこと訊くの?」

「いや、その、ね? 二人の仲を取りなしたわけだし、上手く行ってるかな~とかは気になるのよ」


 それとなく聞いておきますとは言ったものの、これ結構難しいな。

 こちとら基本陰キャのカードゲーマーだというのに。


「それより今の反応からして、何か不満があるんじゃないの?」

「え、んんー……不満っていうか……何と言うか……」


 言葉を言い淀むヴィーネ。

 やっぱ何かしら理由があってアレックスに変な質問をしていたのだろう。


「ちょっと、センシティブな話題だから……言いたくない、かな」

「せんしてぃぶ……」


 って何だっけ、確かえっちな単語だっけ?

 ……! ま、まさか……アレックス……。


(夜の生活……いや性活が……下手なのか……!?)


 ヴィーネを満足させられていないということなのだろうか。

 まだ学生のうちからそんな……破廉恥な! 何かあったら責任とれるのか……!?


 ……いや、取れるか、王子様だもんな。お金持ちだし、責任取るとか余裕だよな。


「成程……話は大体把握したわ」

「え? そ、そうなの……!?」

「ちょっとこれは、あたしじゃあ力になれそうにないわね……」

「ガーン!」


 何せ前世から数えて処女歴四十年の大魔法使いだし。

 性的なこととは無縁の人生を歩んできたのだ。そういう話題で力になれるとは思えない。


「くっ、やっぱお兄様とくっつけて姉妹になる方向性で考えた方がいいか……?」


 ヴィーネが何やらブツブツと呟いているが、あたしの耳には届かない。もうちょいハッキリと喋ってくれ。


「えっと、それで、話はもう一個あるんだけど」

「な、何かしら?」

「決闘部……決闘の研究やプレイをひたすらしまくるっていう部活を作ったんだけど、部員募集中なの、ヴィーネも入らない?」

「入る!」


 さっきまでの歯切れの悪い口調は何処かに行ったのか、とても明快で溌剌とした発音でヴィーネは答えた。


「ワァ、とっても良い返事……じゃあヴィータは部員第一号ね」

「第一号ってことは……現状部員は貴女とわたくしだけかしら?」

「そうだね、あと三人は増やしたいなぁ」


 五人揃えば部室も部員も貰えるんだってーっと話すと、ヴィーネは露骨に眉間に皴を寄せた。

 え? 何で?


「二人でも部として認められるでしょう? 二人でよくないかしら?」

「良くないよー、ずっと同じ二人で回してると思想偏るし、集合知の観点からしても人数は欲しい」

「えぇー……あっ」


 何故か人数を増やすことに難色を示したヴィーネだったが、何か思いついたのかいきなり笑顔になってとある提案をしてきた。


「じゃあわたくしのお兄様を勧誘してみるのはどうでしょう? ああ見えてお兄様はかなり強いですわよ」

「グレン、様か……」


 悪くない、彼は攻略対象キャラの一人で実力もあるし、ヴィーネとの繋がりから勧誘もしやすい。


「いいね、放課後に勧誘しようと思うから、ヴィーネからアポ取れる?」

「お任せですわ。何なら今日うちに来る?」

「いやそれはちょっと……明日学校あるし、寮長の許可下りないって」


 っと、話している内に昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ってしまった。


 二人で教室のある棟に向けて、歩く。何はともあれ部員を一人ゲットだぜ。


 アレックスから頼まれていた件については……うん……どうしよ、夜の生活に不満があるかもしれないとか正面切って伝えたら不敬罪で殺されたりしないかなぁ……。


 ……いや、待てよ? 逆か? よく考えると夜のアレに不満があるからといって夫の浮気を望むものか?

 違う――そんな筈がない。すなわち、ここから導き出される結論は、一つ。


(王子の性欲が強すぎて、ヴィーネ一人では対処しきれていない――!?)


 だから、妾やハーレムを望んだというのか。

 間違いなくそれだな、謎が解けた。


 しかし王子にそのことをどう伝えればいいかは、何一つ解決してないのでは?

 どうしよ……。


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