笑顔の王子
王子レイは本物の王子では無い。本物の王子の影武者であり、偽物である。
己の弱さと向き合う必要があるレイは考えていた。
(僕の弱さとはなんなのだろう。それを知った時、きっと、強くなれる。そんな気がする。)
王子レイは今日もヒナリと決着をつけようと木刀をもつ。
「レイ様!いきます!」
「ああ!」
2人は木刀をふるいあう。
(弱さとは何か……)
「はぁ!」
ヒナリが踏み込んでくる。王子はそれを受け流す。そしてそのまま切り込もうとした。その時、無意識に木刀が届かない右側よりになっている事にきずく。
(そうか、僕の弱さとは……)
切り込むのをやめて相手の木刀へと向ける。
「っ!」
ヒナリは隙をつかれて木刀を落とした。
「3回勝負!次も勝たせてもらう。」
「私もまけません!!」
再び木刀をとって撃ち合う。今度はヒナリが勝った。
「次だ!」
「はい!」
2人はラスト勝負にかける。己の勝利を。
「「はぁ!」」
2人の戦いは長時間続いた。どちらも引かない。撃ち合い、鍔迫り合い、そして切り伏せる。それを見た誰もが激戦であることと語るほどだった。勝利の瞬間は一瞬だった。その一瞬できまった。ヒナリの一撃をかわさずになぎ払い、そしてレイはヒナリに勝利した。
「はあはあ、レイ様!すごい!」
「はあ、はあ、そちらこそ。」
「レイ様、ありがとうございました!」
「こちらこそありがとう。」
勝負は決まった。レイはヒナリから初の勝利を奪った。
「強さとは、弱さであり、優しさでもあるのだな。君に教えられたよ。」
「いえ、私も久しぶりに本気で打ち合えて嬉しいです!」
レイはふっと笑ってそのまま去っていった。
「わらっ、た、絶対零度王子が、笑っ……」
その笑顔にヒナリは喜ぶのだった。