メイドと火事
絶対零度王子ことレイ・テレスに付き人を頼まれたヒナリ。
「君に興味がある。僕の付き人になってほしい。」
「わ、わた、私でいいんでしょうか?!」
「ああ、君のことをもっと知りたい。何故そこまで強いのか。」
「強さの理由、ですか?いや、偶然ですよ。」
レイはそう言ってはぐらかすヒナリの手を握る。
「頼む。」
「……はい!私で良ければ!是非!」
こうしてレイの付き人とヒナリはなった。付き人初日、
「あ、あの!これからよろしくお願いします!」
緊張しながら元気に挨拶するヒナリだったが、絶対零度王子は少し冷たかった。
「これからよろしく頼む。では、さっそく剣術の相手を頼む。」
ヒナリの仕事は王子の剣術の稽古相手になることだった。
「私、精一杯頑張ります!」
両者木刀を構える。ヒナリは相変わらず一瞬で勝とうとする。王子も譲らない。ヒナリが一勝すれば王子も一勝してくる。2人は時間の許す限り木刀を振り続けた。窓辺でメイド達がヒナリと王子の剣戟をみていた。
「何よあの子!」
「ちょっと剣術が出来るからって王子と馴れ馴れしくしちゃって!」
そのうちヒナリはメイド達から嫌がらせを受けるようになっていった。足を引っ掛けられたりバケツの水をかけられたりした。だが、ヒナリは全然気にしていなかった。
「気のせいよね!」
そう言って全く動じない。メイド達の怒りはつのっていった。ある日の事、いつものように中庭で王子との手合わせをするとこになったヒナリ。そんなヒナリの頭にバケツの水が降ってくる。
「雨かな?」
なんて笑っていた。でも、少しだけ気にはなっていた。どうしてこんなことをされるのか。
「大丈夫か?」
王子はヒナリにそう問うと、ヒナリは笑顔で大丈夫です!と、答えるのだった。
「どうして君は平気そうなんだ。」
「え?だって別に大した事じゃないですし」
「……僕がどうにかしておく。」
「いえ、大丈夫です!」
メイド達は顔を青くしたがヒナリはメイド達を庇った。
「その優しさが強さの元なのか?」
「へ?」
「君は僕の付き人であるからなにかあったら僕に言うように。」
そう言われた。その日の夜。城でボヤが起こる。そして、例のメイド達は逃げおくれていた。
「助けて!ごほごほ!」
「いやぁ!助けて!ごほ!」
その悲鳴を聞いたヒナリは水を被って突進してゆく。ヒナリはにメイド2人を救出しようと城に入る。2人の元へと辿りつくヒナリ。
「2人とも!こっち!」
ヒナリが自分が来た方へと2人を連れて行こうとする。だが、そこに柱が降ってきた。
「もう無理よー!ごほっ!」
メイドの1人が涙ながらにへたり込む。
「立って!」
ヒナリはそう言って彼女へと手を差し伸べる。
「大丈夫!任せて!」
ヒナリはそのメイドを立たせると木刀を構える。
柱に木刀で切り込み柱を破壊した。
「皆!こっち!」
何とか城から脱出した2人とヒナリ。
「2人とも無事?!」
「どうして……」
「私達あなたのこと………なんでよ」
「?困ってる人がいたら助けるのが普通でしょ?」
「「…ありがとう!今までごめんなさい!!」」
2人はヒナリに涙ながらお礼を言うのだった。
「……ヒナリ・ソレイユ。」
王子はその様子を見ていた。そしてヒナリの元へとくると一言こう言い放った。
「ヒナリ・ソレイユ、君に決闘を申し込みたい!」
「はい?」