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バオバブの吐息

作者: R.nova


「行ってらっしゃい」

そう言って俺は、家族3人を見送ったーーー



ある四連休のことだ。俺以外の家族3人はある歌手をこよなく愛していた。俺は未だにその歌手の魅力が分からない。

たまに、家族3人がその話題で盛り上がっていると、俺は家族からハブられた気分になる。でも、やはり好みは人それぞれなんだ。そう言い聞かせて自分の気を紛らわせている。


…しかし、この四連休は流石に参ってしまう。家族は、ライブ3泊4日旅行へ行ってくる。それで高2の俺は申し訳程度の自立性からお留守番を任されることとなった。

せっせこ旅行の準備をしながら母は言った。

「ごめんねー奇跡的に抽選で旅行当たっちゃったもんだからさ、まあでも、勉強頑張ってね〜」

無責任な。こちとらやる事は勉強ぐらいしかないのに。

うちの家族はその歌手のファンクラブ会員になっていて、会員のレベルを見るたびに、相当な額をつぎ込んでいることがわかる。今回の旅行の抽選も、きっと会員補正で当たる確率が高かったのだろう。

そう思いながら勉強部屋に戻った。

部屋に戻ると、俺は肩が重くなるような気だるさを感じた。

あぁ、どうせ連休が始まっても、旅行中の家族を羨ましく思いながら、勉強にも集中できずに、1日SNSみながらゴロゴロして、窓から沈む夕日を見て、虚しく感じながら、せっかくの四連休も、すぐに終わるんだろうなぁ。


…そんな連休もだるいなぁ。



あー、なんだか面白いことないだろうか。



背伸びをしようと机から上がったら、その反動で閉じていなかった地理のプリントが、ファイルからするりと落ちてきた。世界の諸地域気候に着いての説明が書かれている。



…熱帯気候…ねぇ…




地理の先生、バオバブの木は40mあるとか言ってたな…




木のてっぺんとか、どんな景色なんだろう。


バオバブの木はマダガスカルならでは…

個性的なマダガスカルの動物たち…








マダガスカルに行きたい。



いや、この休みを使って、マダガスカルに一人旅行にいくぞ!!



そういうわけで、俺はマダガスカル旅行を企てた。


まず、自費で旅行は無理に等しい。

ちらっと、ネットで見てみるも、10万を優に越す金額をみて、目が回りそうになった。

自分のお年玉すべて合わせてもキツいなぁ…


あ、そうだ。一か八か、アレにかけてみよう。

テレビで見たある会社のペットボトル飲料のシールでパリ旅行(パリ往復分チケット)が当たるというキャンペーンがあったのを思い出した。

地方に住んでいても、地方の空港から羽田までのチケットもくれるらしい。

これは絶対当てたいと思った。

家族皆が寝静まった後に家を出た。

りんりんと鳴るコオロギの音を聴き、静けさゆえの緊張感を感じながら、夜の中ゴミ捨て場に向かった。

うちの近くのゴミ捨て場は、田舎であるため頻度は少ないが、ゴミがある時はゴミ袋の数が異常に多く、それゆえに掘り出し物も多いはず。

プラスチックゴミ袋を見つけては、漁ってそのペットボトルを探し、見つけ出したらシールの銀を剥がす。そこにかいてある番号を、専用サイトに打ち込みまくる。

こういう作業を、ゴミ捨て場のプラスチックゴミ袋がなくなるまで繰り返そうとした。

やっていることは、まるで不審者だ。いや、でも、これはゴミなんだ。今更第三者が手を加えたって、どうせ捨てられる運命。ならば、最大限の利益を人にもたらすことが大事ではないか、という勝手な屁理屈を自分に言い聞かせて袋を漁った。


気が遠くなるほどの、途方も無い作業だった。




…しかし、5袋目のゴミ箱を漁っていたとき、ついにその時は来た。



「おめでとう!パリ旅行チケットを獲得しました。細かなチケットに着いての手続きは以下の文章をご参照下さい。」

うおっしゃあぁぁあぁあああ!!!

興奮のあまり気分が高ぶって、月に向かって咆哮したくなったが、深夜なので寸止めした。

このサイトの文章の口調が、絶妙に詐欺サイトのそれであるので疑わしい。まぁ、URL間違ってはいないし、これも一か八かで信じた。


しかし、これよりとんでもないことを俺は見つけてしまった。


なんと、パリからマダガスカルまでのチケットが往復分、捨てられていたのをゴミ袋から見つけたのである。年季が入っていて、有効期限は残り一週間であった。


もう、一生分の運を使い果たした気がした。


たぶん、マダガスカル旅行のチケットを当てた人が、パリまでいくお金なしと思ってすて

たのだろう。


それでもさすがにラッキーすぎる。

自分の腕に立った鳥肌が、治りそうにないくらいだ。

もう、こうなると、後には引き返せないな。




寝ている家族にバレないように、徹夜で荷造りをした。

虫刺され用スプレーとか、星座表とか、これいるのかな?と思いながらバックパックにつめる。


日の出が見えてくる。新しい朝の始まりが来て、少しだけ眠気が和らいだ。

「あら、もう起きてたの?早起きね、」ノックもせずに親が入ってきたのでびっくりした。ちょうど荷物を詰め終わってキャリーケースを移動していたところだ。「あら、久々にキャリーケース移動して、どうしたの?」

ギクリとおもったが、ここで自然な真似をしないとボロが出るだけだ。

「ま、まあ、連休のはじめに部屋を片付けて気持ち入れ替えようと思って…」

「あぁ〜、それいいわね」

よし、なんとか巻いた。



そして出発の時間がやってきた。


「それじゃあ行ってきます」


くまのせいか痛んでいる目の筋肉を、俺は引きつらせて微笑んだ。







眠い目を擦って、最寄り駅までチャリを走らせた。



プルルルルルル「まもなく、列車が参ります…」


いつも通学時に行きつけの電車に乗った。しかも、今日はなんと逆方向。


ガタンゴトンと揺れる中、いつも電車の中でぼんやりと見ている風景とは違う。

新鮮さをしみじみと感じた。

朝の光が当たって、今からの旅に希望を照らしてくれる。まだ緊張の残る中、俺はもうこの時点で、想像を超える非日常の体験に、胸が踊ってたまらなかった。


空港近くの駅へ着いた。

朝日が照らされて暖かくなっているアスファルト。それをしっかとふんで、俺は空港へ向かった。

おみやげコーナーからの喧騒が聞こえたり、流行に則ったファッションの人々が縦横無尽に交差していく。

そして俺は、カウンターへ足を運んだ。

羽田空港へまずは搭乗。自分の住んでいる地域が国際線を通っていない。

機内音声が流れ始める。毎回なんだけど、飛行機乗るとき、少し弱気になってしまうが、これはある意味自分を変えるんだと思い、俺は胸を貼ってシートベルトを締めた。

離陸時、一気に自分の膝と胸に重力がはたらいた。まるで席に押し付けられているかのようだ。

ただ、俺には、これから長い旅がはじまるから、しっかりつかまっとけよと飛行機から言われているかのようであった。

まと遠ざかって行き、やがて豆粒になっていく空港を、俺は微笑んで達観していた。

「まもなく、着陸態勢に入ります。」

ぐわんと体が揺れ、やがて飛行機がガタン、ガタガタガタと陸地についた。


羽田空港に付き、国際線に乗り換えようとした。

乗り換えに行くときに動く歩道に乗った。見える風景が、まるで倍速がかかったかのようだ。

そして、国際線のカウンターにチェックインした。

カウンターでは、にこやかなCAさんが俺を出迎えてくれた。

震える手で手続きをしていると、

「あ、パスポートはお持ちでしょうか??」と聞かれた。

一瞬俺は狼狽した。

「あ…まだ、ないです。」

「わかりました♪今からパスポート作りの手続きに移行しますね♪」

笑顔で応対してくれるCAさんは本当に天使のようであった。

手の動きがおぼつかない中、パスポート制作を着々と進めていった。

荷物検査の後、俺はようやくパリ行きの飛行機の機内へ足を踏み込んだ。

こ、これが国際線の景色かぁ、、、

嬉しいことに、当たったチケットがファーストクラスのものだったため、とにかく機内が驚くほど豪華であった。

紫に白が少し入った光があたりを立ち込め、俺の席にはフカフカの椅子が用意されていた。

雲の下の景色を見ると、

大陸、海、大陸、、、交互に繰り返す壮大な風景。

その景色を見ていると、昨日の夜からの緊張が収まり、急激に瞼が重くなった。







気がつくと、見える景色はヨーロッパになっていた。

そろそろ着陸する。

一気に背中から下に重力を感じて、俺の体はまるで飛行機に持っていかれるかのようだった。


スマホの機械翻訳を片手に。(オフラインで)

俺の目の前には、微笑みを浮かべたブロンドヘアのCAさんが立っていた。

俺の内心はドキドキがまだ止まっていなかった。

「So,I’ll check your Ticket.」

「...イ、イエス!アイ・ウィル・ショー!!!」

確かに高校でも英語は勉強しているが、英会話となると結局話せる技術は中学英語止まりなのである。

今思えば、「ショー」の目的語である「ユー(you)を言い忘れたと少し後悔している。

俺のぎこちない挙動を前に、CAさんは変わらず微笑んでいた。

本当はフランスの街へ出て景色を見たいところではあるが、時間は限られているため、マダガスカルの便へ乗り換えるのを急いだ。

チケットを見せて、パリからマダガスカルへ行く。

機内に入ると、国際線ほど華美ではなかったが、少し違う感じがした。アナウンスで流れてくるのは全部英語で、俺は単語の端くれをやっと追えるぐらいであった。

俺がまだ窓を見つめていると、CAさんが俺のところに食事を持って来た。

「Beef or chicken?」

これこれ。海外旅行といえばこれだ。

「ビ、ビーフ。」

震えを誤魔化して優雅そうに言ったら、特大の牛肉が俺の皿にのっていた。

多分、「Big beef(デカい牛肉) 」と間違えられたに違いない。

俺は食いついた。

ん〜、おいしい!芳醇な香りに追加される、噛めば噛むほどにじみ出る肉の旨味!!大満足であった。

どんどん飛行機は進む、すると、長い海の後に大陸、いや、島なのか。島らしきものが見えてきた。

ついに来た。マダガスカルだ。もう着くのが夕方なので、大地が夕焼けの光を反射していてとても美しかった。

意外と着いた後は早かった。空港もパリほど派手でもなく、手続きもサクッと済み、後は自然をめいいっぱい楽しめ、と俺を暗示するかのようであった。

色々と自然の中を旅しているうちに、もう夜が更けてしまった。泊まる宿もそこらにないので、俺は人生初めての野宿をした。

初めてというのもあって、寝る体勢はこういう風でいいのかな?

など、色々と気負い込んでしまう。

そうこうしているうちに、はしゃぎすぎたせいか、すぐに寝てしまった。



2日目の朝、俺はバオバブの木の下で目が覚めた。そのとき、ふと俺は木に親しみを覚え、一回その木に登ってみようとした。

中々登りづらい…が、木の表面に横しまのような溝があるので、そこに手足を引っ掛けて登る、という行動に至った。どんどん木の上に登っていく。自分の身長の十倍は高く、高層ビル並に高く思えたが、俺は降りることは取り敢えず考えていなかった。


やっと、まるい幹のゾーンを超えて枝の部分に達した。

俺の額の表面は汗を含ませている。ふぅと一息ついて、枝にまたがり、大草原を眺めた。

なんて美しいのだろうか。荘厳な大地の上で黄金の色をした草原が当たり全体に立ち込めている。色々な動物たちがその上をのっそのっそと歩いていて、どこか哀愁を感じ、自然のエネルギー、そして純粋な美しさを堪能した。日本にいた事を一瞬忘れてしまうくらいのものであった。


風景に見とれていて、つい、もっと前で見ようとした。

すると、ぐらりと体制を崩した。

一瞬「えっ」となり、その瞬間冷たい血が私の体内をさーっと駆け巡った。


落ちてしまう。やばい、どうしよう。

俺の人生、こんなところで終わってしまうのか?

耳で風圧を感じながら、俺は苦悩した。

いや、まだ生きたい!死にたくない!


と思っていたら、ふっとドサッとなにかに当たった。柔らかいポールのようなものだ。

反射的に俺はそのポールを掴んだ。


フーッなんとか生き残った…

そう思った瞬間、

「モーッ」

とポールが鳴いた。

へぇえっ!?

俺が下を見ると、底にいたのは…キリンだった。

俺は、とっさにキリンの頭につかまったのである。

「と、とりあえずここではいけない…!」


俺はつぶやき、キリンの首を掴み、落下の重力にたよってグライダーのようにキリンの首を滑り降りた。

風を切ってスルスル滑りながら、降りてゆく。

ポンと体がキリンの胴体に当たった時、俺はキリンの胴体に足をつけ、その足を軸にしてぐるりんと体を回転し、キリンの背中に乗った。

ふぅっ、とりま万事休すっ、、

そのとき、ふと手の感触に、何かわからぬ奇妙なものを覚えた。

あ、あったかい…キリンの背中ってこんなにも温かいのか。

俺は放心状態のまま、キリンの背中にしばらく乗り続けていた。


夕方、あることに気づいた。

飯がねえ。思い返してみれば、マダガスカル行き飛行機の機内販売さんの特大ビーフを食ったっきり、何も食べてない。

こんなマダガスカルのど真ん中に、出前なんて取れるはずがない。

すると、近くに川があるのを発見。

俺はこの辺りに誰もいないことを確認して、服を脱ぎ捨て、川の中に飛び込んだ。

直で魚を捕まえるぜ。

以前、川に釣りに行ったのだが、取れたもんじゃなかった。

そんなこともお構いなしに、魚を両手で鷲掴み。目を開いて確かに魚をキャッチした。ぼやけるし、目めっちゃしみるけど、ぴちぴちする魚を前に、狩猟本能が出てきて嬉しくなった。

飲み水も切らしてしまったので、その湖の水をすくって飲んだ。

…川くさい味がする。でも、なんだろう、スッキリした気分だ。


そこらへんの木の枝を持ってきて魚を刺し、枝をこすり合わせて火を起こそうとした。

ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ、ゴスッ、…

なかなか火が立たない。手がどんどん荒れてきて、だんだん諦めそうになる、

もうそろそろやめようかなと思ったその時、煙がほんの少しだけスッと出始めた。

よしッ、今だ今だッッ!!

こすりに拍車をかけて、最後の詰めを行うと、

ボッと発火した。

その光は、俺の希望の光のように思えた。

俺はそこらへんの草をちぎってくべ、炎を加速させた。

そこのまわりに俺は先程の魚を並べた。

パチパチとうなる火を見ながら、俺はもの寂しさを感じた。凛々とコオロギが鳴いている。でも、この寂しさをこの炎が紛らわしてくれると思うと、俺は炎に包まれているような安堵を覚えた。

物思いに耽っていると、魚が少し焦げてきた。もう食べごろだろう。俺は、串と化した枝を横にして、思いっきり魚をがぶりついた。

外の衣はサクッとしていて、中身はジューシー。肉が弾力性があって、噛めば噛むほど味が滲み出てくる。美味いッッ!!

俺は感じるままにがぶりついた後に、残った肉汁をチューっと吸い上げて、お腹いっぱい胸いっぱいとなった。

一通り食べ終わったあと、火に水をかけて消した。

そして、夜の満天の星の空のもと、俺は大の字に手足を広げ、眠りについた。


朝起きたら、ライオンがすぐ隣で寝ていた。

声を出しそうになったが口に手を押さえ、血の気が引いて後ずさり。すると、要らない時にワシがやってきて、ガーガーと鳴き始めた。

ライオンが目を覚ました時、僕はバオバブの木の後ろでゼーハーゼーハーしていた。

こっちに来たら殺される。

こっちに来たら殺されるっ…!!

間一髪でライオンはどっかに行った。


…あーっ、危なかった…。

そう思いながら木の陰に隠れてライオンを除き、ホッとしていると、


ライオンと目があってしまった。


進む方向を変えたライオンを目の前に、俺の脳内には3文字の言葉しかなかった。



にげろ。



本気で生命の危機を感じ、火事場の馬鹿力で、バオバブの木へ、上へ上へと登った。ちょうどライオンがバオバブの木についたときには、俺は既に木のてっぺんにいた。


すると、ライオンが前足を木にあて、すごい勢いで揺らしてきたのだ。

神様仏様ライオン様ッッ…!!

揺らされながらも枝にしっかりと掴んで、乗り切ろうとした。

今度はライオンが突進してきた。

ドスン、ドスンという重々しい音と共に、バオバブの木は逆振り子のように揺れる。


ひぃいいいいい!!!

これは夢なのか!?夢なら覚めてくれええ!!いや、手が痛い!夢じゃないぃいい!!


流石に観念したのか、ライオンは諦めて遠ざかっていった。

あ、危なかったぁ…

ライオンが十分遠いところまで行くのを確認し、目の涙がまだ乾いていないまま、バオバブの木をツツーっと降り始めた。最後らへん、手足が耐え切れずに滑り、ドテッと地面に落ちた。

いてて…と思うのも束の間、ライオンは来ていないかと確認した。

大丈夫そうだ。

ゼーハーゼーハー言いながら遠ざかるライオンを見ていると、そのライオンの背中は、動物園で見るのとは打って変わって、とても勇ましく見えた。

これは、本能的に何かの記録に残したい、自分の思い出にとっておきたいと思った。

すぐさま、結局使っていなかったスマホを取り出し、その姿を写真に残した。


そこから、色々なマダガスカルの動物の写真を撮る。そして、マダガスカルの雄大な景色。


時間は流れるようにすぎていき、夕方に近づき、もう帰らねばならない時になった。


過ぎ去っていくマダガスカルの姿、何故だか知らないが、鼻がつんと痛くなってきて、目が熱くなり、涙が出てきた。


ははっ、なに、泣いてんだ、俺ッ…!!


擦っても擦っても、中々涙は止まらなかった。

涙がやっと止まったくらいの時に、ヨーロッパがやっと見えてきた。2日しか行っていないのに、飛行機から見えてくるヨーロッパの光景が懐かしく感じた。


受付の場を離れる時、笑顔で受付の職員さんに「See you!(また会おう!)」といった。職員さんは、少し困惑していたが、すぐに微笑みを返して「See you.」と言って、手を振ってくれた。


帰ってきたぜ〜!我らが日本!!

羽田空港に着いて思わずそう言った。


羽田空港で、広島の駅弁「かきめし」を購入。海の心地がする、牡蠣をご飯にのせて口いっぱいにほうばった。

おいし〜!!

 


…あぁ、最高だったなぁ…

ネオンの光る夜景をみながら、しみじみと今回の旅を回想した。


地元の空港に着くと、変わらず輝く満天の星空の下で、最寄り駅へ向かった。


列車の中は、少し空いてはいるものの相変わらず人がいて、いつもの風景を思い出した。

忙しない…


…でも、悪くない。


足を弾ませてチャリに乗り出し、流れるように家へ着いた。

ポストには3日分の新聞が刺さっていた。無造作にそれを取り出すと、三面にデカデカと「サーカス集団のマダガスカルにて脱走したアフリカゾウ、キリン、ライオン発見 自然の姿に戻ったか」という見出しが掲げてあった。

なるほど、マダガスカルは離島だからデカい動物は普通生息していないはずなのだ。今までの体験を思い返して、自分はなんと驚くべき局面に立ち会ったことかと身震いしたが、これも何かの縁だろうと肩の荷を下ろした。

鍵をズッとドアに入れて、思い切ってドアを開けた。

「ただいま!!」

家の中を見渡すと、まだ家族は帰ってきていないらしく、少しほっとした。

この暖かい雰囲気、やっぱ家って落ち着くなあ。

その後、帰ってくる家族にバレないよう、せっせと旅行の荷物を片付けた。


「ただいま〜」


家族の声がした。

ものすごい体験だったけれど、家族にとても心配されるのも対応に困るし、

今回の旅行のことは、家族のみんなには、秘密のままにしておこう。


俺がまたくる日を、首を…じゃなかった幹を長くして待っとけよ、バオバブ。






「おかえり」






Fin.


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