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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第1章 「箱庭の日常」
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第4話






〔焼肉食べたいやつおるー?〕



〔今一番欲してたわぁ〕


おその

〔勿体ぶってないで早く持ってこいやどうぞ〕


セリー

〔すでに全員参加期待してる呼びかけで草〕


〔は?むしろ食べたくないやつこの中にいたら体調心配しちゃう〕


おその

〔素直に焼肉みんなで食べよーでええやんけ〕


〔焼肉みんなで食べよー〕


セリー

〔素直でよろしい〕


〔てか何で急に焼肉?美味い肉でも手に入ったんか〕


〔実は萌が今日、いとことキャンプに行ってるらしいという情報を得た〕


セリー

〔あぁ、うん そうね〕

〔たまには何も考えずゆっくりする時間も必要だよって、今朝早くから兄夫婦が連れ出してくれた〕



おその

〔出た 芹のアクティブ兄貴〕


〔そんなあだ名つけられちゃうほどアクティブなん?芹の兄ちゃん〕


セリー

〔まぁ、結婚するまではじいちゃんから貰った山でガチの冬籠りしてた人だからね〕


〔マ?〕


おその

〔その山でキャンプすんの?〕


セリー

〔そうそう。頻繁に自分の子達連れてキャンプしてるらしいんだけど、今回萌ももう幼稚園生だしどうかって誘ってくれてさ〕


〔めっちゃいいじゃん…〕


セリー

〔自分で山の中色々いじってるからもう、何でも有りよ。子供達用のアスレチックとかコテージとか色々あって〕


おその

〔マジで生存能力高すぎるんよなぁ〕


セリー

〔今でこそ立派に設計士やってるけど、実際は山の中いじり回したいが為だけに建築科履修した人だからね〕


おその

〔狩猟免許とか罠のスキルとかもフル装備してるんやろなぁ〕


セリー

〔とっくにカンストよ〕



〔と、いうわけで 萌は今日アクティブ兄貴特製のうめぇ肉や飯を食うわけですね〕


セリー

〔お嫁さんもめちゃくちゃ料理上手な方だから、多分それ以外にもめっちゃ美味いもん食べて帰ってくるだろうね〕


〔ということは、芹もうめぇ肉食いたいですよね?〕


セリー

〔いや…まぁ、うん 特に何も考えてなかったけど。焼肉って聞いてからは完全に焼肉の気分ですね〕


〔妊娠出産してから今まで酒飲んでこなかったセリーはつまり、今日は朝まで呑んでもいいってことですよねぇ?〕


セリー

〔あ、なに そういう感じのやつ?〕


〔えぇ?!パーティー始まるってことでおけ?〕


かのあるふぁ

〔ちょっと待ってその酒池肉林パーティー何時から?!配信今日19時までやろうと思ってたんだけど!〕


〔16時から朝5時まで酒呑みながら焼く 尚、炭と薪は大量に購入済み〕


おその

〔終わってんな 最高〕


かのあるふぁ

〔配信終わったら行く!!〕


セリー

〔大酒豪の周先生はくんの?〕


あまねん

〔焼肉いいね!参加しまーす! お酒は私が持って行くよ〜!セリーの好きそうなお酒も用意しとく!〕


〔はいはーい〕


セリー

〔普通に嬉しいんだけど んじゃ畑の野菜とか色々持ってくわ〕


〔おけ んじゃ16時に庭集合でよろー〕






ーー昼下がり。


パーティの為に庭で火の用意をしていた潮は、聞こえてきたがちゃがちゃという金属音に思わず手を止める。


振り返ると、そこにはキャンプ用具を両手に抱えた蛍の姿があった。



「……そんな大きな荷物抱えてどこ行くの」


「ちょっとそこまで」


「どこから持ってきたのそんなん」


「昼に弟から掻っ攫ってきた」


「ガチキャンパーの道具やんそれ。蛍テント立てられるの?」


「私を舐めてもらっちゃ困るよ潮。これでもミーハーよ?大丈夫、ソロキャンの動画毎日見てるから安心して」


「不安を煽っていくねぇ」



言うなり、道具一式を置いて早速説明書と睨めっこを始めた蛍。

すると、その後ろから大きなクーラーボックスをごろごろと転がす周が合流した。



「あ…周さん?そんなでかいクーラーボックス持って一体どこへ…船釣りでも行くつもりですか?」


「今日実家に寄ってたんだけどね、はなやぎで夕方から焼肉パーティするんだって言ったらパパが用意してくれたの」


「ま、まさかその中には…!」


「キンキンに冷えたビールと缶チューハイと、芹の好きそうなちょっとお洒落なお酒が入ってます〜!地酒とかもあるよ、フルーツ系のビールとかも用意してみた」


「贅沢の極みやん…最っ高…」



クーラーボックスをちらりと開けて、宝石箱を開けた子供のように目を輝かせた潮。

手伝おうと作業を止めた潮に、周はにこにこと首を振った。



「大丈夫大丈夫、このカートすごいから。重さを感じないやつ、パパに貸してもらっちゃった」


「嘘だぁ。だって氷とかお酒とかめっちゃ入ってるんでしょ?転がしてても前から引っ張って歩いてたらちょっとくらい重たいのでは」


「やってみる?」


「好奇心には勝てんわなぁ」



立ち上がってカートを引いた潮は、数歩も歩かない内に「買います」と一言。

そのまま蛍の立てているテントの横へ移動させ、再び作業へ戻ろうとすると。


マシュマロやチョコなどのお菓子を抱えたそのと、ピクニックバッグを持った芹がやってきた。



「やる気でいいね」


「朝までゆっくりって言ってたからおにぎりはいらないかなと思ってたんだけど、そのが焼きおにぎり食べたいっていうから握ったよ。好きに食べて」


「めっっっちゃ食べたい」


「セリーのおにぎりで焼きおにぎりとかもう旨い確定じゃない?潮が焼肉の話した時から食べたくてさ」


「グッジョブすぎ」


「あとはスモアと、チョコバナナがやってみたい。あとクラッカーにマシュマロ挟んだやつ」


「あ、野菜これね。椎茸とかは貰ってきたやつだけど。玉ねぎとかこれ多分美味しいよ」


「最高なん?」



煌びやかな野菜や茸がごろごろ入った籠をログテーブルに置き、その他の食材の入った保冷バッグは木の簡易棚へ。


着々と進んでいくパーティの準備に胸が高鳴る中、蛍によってテントが完成、潮によって薪と炭の火もつけられた。



「やるやん」


「潮もやるやん、実はキャンパーなん?」


「いや…実は私も動画見て初めてやった」


「草」


「多分だけど薪と炭は買いすぎた」


「どう見てもそうだから次に活かそう」


「次は屋台グルメパーティしよ。焼きそばとか焼き鳥とかしよ」


「最高やん参加します」


「蛍じいちゃんが姫りんご送ってくれる時期にしよ。りんご飴作りもしよ」


「あ。セリーの知り合いにとうもろこし作ってる人いなかったっけ?」


「焼きもろこし!!焼きもろこし!!」



盛り上がる二人は、他の面々が集まってくるのを待ってから早速焼き網に肉を乗せた。

香ばしい匂いが辺りを包み、上質な脂が肉から染み出してくる。



「ちょっと、この視覚と嗅覚の暴力やばすぎる。お腹ぎゅるぎゅる鳴ってんだけど」


「もう匂いだけで白飯いきたい。セリー、おにぎり貰ってもいい?」


「どうぞどうぞ。焼きおにぎりするなら醤油も味噌もあるからお好きに」


「もー最高すぎる!あのでかい椎茸も焼こ」


「てか野菜火通るの時間かかるから色々並べちゃおう」


「かのあ来る前に第一陣終わりそうで草」


「そうね。19時にはみんなもうべろべろだろうなぁ」



言いながら周の持ってきたクーラーボックスを開けると、様々な種類のお酒が出迎えた。

全員の目がきらきらと輝き、各々気になるものを手に取る。



「しゃれおつすぎるだろ…」


「いやー、フルーツ系面白そう、酔っ払う前に味わっとくかー」


「これ美味しそう」


「あっ、セリーは絶対それ好きだと思って選んだの。なんか嬉しい」



用意していたキンキンに冷えたグラスに、それぞれが選んだお酒が注がれていった。

そして、潮の号令でついにパーティがスタートする。



「それじゃ、かのあは後で合流ですが酒が欲しいと体が叫ぶのでお先に…

かんぱーい!!」


「かんぱーい!」







それから日が暮れ、第二陣の肉が焼き網に乗ろうかと言う頃。

ばたばたと急いで中庭へ駆けてくる足音が一つ。


はぁはぁと息を切らして洋館から出てきたかのあは、お酒も回ってより一層盛り上がっている面々に向かって大声で声をかけた。



「ちょっとーー!酒池肉林パーティ出来上がりすぎでしょーー!!!」


「お、かのあ来た」


「はいはい、かのあちゃん。一通り用意してあげるから座って待ってなさい」


「やったーー!!」



椅子に腰掛けて息を整えるかのあの前に、あれよあれよと言う間に食事が並べられていく。


たった今焼かれたばかりの様々な部位の肉、焼きおにぎり、椎茸、そしてビール…



「遅くなりました!!大変盛り上がった配信になりました感謝!!かんぱーい!」


「お疲れーかんぱーい」


「おつーかんぱーい」


「ぴゃーー!お酒が染みるー!!てか何このお酒!めっちゃ好きな味なんだけど!」


「あ、やっぱり?かのあはこう言う系が好きかなと思って選んでみたの」


「めっちゃ好き!箱で買おーっと」


「泥酔配信期待しとくわ」



並べられた食事を美味しそうに食べ進めていくかのあを見ながら、潮はしみじみと言ったように話した。



「今日のかのあの配信のアーカイブ見るの、めっちゃ楽しみなんだよねぇ」


「今経営ゲームやってんだっけ?」


「そうそう。前回麻雀でばちぼこに負かした男がめちゃくちゃやり手の実業家で、地域活性化の為の施設を作る為に人肌脱ごうって話しで終わっててさ」


「どんなゲームやってんの…?」


「施設の駐車場を無断常駐車撲滅の為にどんな風なシステム使うか考えてたとこまで見てたんだけど寝落ちした」


「前回のアーカイブの最後のとこから見直さなきゃいけないやつね」


「今日はねぇ、結構進んだよ!進みすぎたからもう一回麻雀勝負しかけて5連勝した」


「そいつが弱すぎるのか、かのあが強すぎるのか…」


「それってもう麻雀ゲームなんじゃないの?」


「勝つと高級鮨屋で奢ってもらえるから、幸運のステータスと人脈のステータスが爆上がりするんだもーん」


「ほんとにどういうゲームなのそれ…?」





ーー話している内にどんどんと時間は過ぎていき、あっという間に深夜を迎えた。

その頃には全員完全に酔いが回っており、各々好きなように食べたり飲んだり。



「朝5時までとか言ったけど、もう後1時間もしたらここで爆睡しそうなんだけど」


「ハンモックあるよそこに」


「テントもあるよそこに」


「あのテント何人用?」


「3人用」


「あー、じゃぁ1人ハンモック2人野晒し3人テントかー。じゃんけんね」


「野晒しマ?洋館帰って寝させろよ」


「いやいや、ずるいでしょそれは。テントより快適なのはずるいでしょ」


「ちなみに寝袋は私が買った安いやつ2つだけだから、実質野晒し3人だわ」


「背中が痛くないマットとかあるんでしょうな」


「買い忘れたわー」


「だとしたらもう実質野晒し5人でしょ普通に」


「最早ハンモックが当たりなのかどうかも怪しいんだが」


「こんだけ酔ってたら朝にはひっくり返ってそうだよね」


「野晒し6人てことでオッケー?」


「じゃんけん放棄して洋館で寝まーす」


「いやいや、何言ってんの?強制参加だから」



焼きおにぎりを頬張りながらおそのが言って、スモアを口に含んだ潮が眉根を寄せる。

そして、芹が気合の一杯を飲み干した時ーーー、戦いの火蓋が切られた。



「じゃぁ、行くよ?最初はグー!!じゃんけん……」







*  *  *  epilogue






(いやマジで寝袋めちゃくちゃ薄いんだけど…キレそう)


(私酔っ払ってるから多分普通に寝れるわこれで)


(あー、セリーがハンモック一人勝ちなの予測できてたわ何か)


(当たり前だろ!芹が地べたで寝るわけないんだから!!)


(セリーガチ勢いるって)


(何の自信なのそれ?)


(ねー!かのあも寝袋欲しいー!外の椅子じゃ背中痛いよー!セリーのハンモックって二人いけないのあれ。毛布の振りして上に覆いかぶさったらいけないかな?酔ってるし騙せそう!)


(は?絶対に許さん。てかそれなら私が毛布の代わりになってくるわ。寝袋あげるよ、かのあ)


(おい変態おるって)


(芹が風邪引いたら大変だからね。いや純然たる善意よこれは)


(本当に寝袋いいの潮?)


(いいよ。私は今から芹の毛布だから)


(キッツー…)


(てかあまねん一人だけど大丈夫そ?外の椅子痛そうだけど)


(あまねんはね、自分の上着下に敷いて普通にもう寝ちゃったの。だから暇だったのかのあ)


(それでこっちに来たのね。酒豪のあまねんが一番先に寝るとは…)


(あまねん結構飲んでたもんね。皆んなの3倍くらい飲んでた)


(てか寝袋結構いいじゃん!ちゃんと横になれるってサイコー!)


(いいなー。私も寝袋欲しい。何で3人用のテントで2つしか寝袋ないのよおかしいでしょ)


(いや、普通に洋館からマットとか持ってくる予定だったんだけどさぁ。まさかこんなにベロベロになるとは思ってなかったから)


(あぁ…小石が体に刺さる…野晒し組より快適じゃないの何でなん?)



(おい、かのあ。寝袋を返してもらおうか)


(あれ、毛布が帰ってきた。今日からセリーの毛布なんじゃなかったの?)


(ちょっと下心が出過ぎてたみたいで全力で拒否された…もう人間に戻った)


(ありゃーセリーったら恥ずかしがり屋なんだね。残念だったね。でもこれもう、かのあの体にジャストフィットしちゃってるから脱げないや。じゃ、おやすみ潮)


(脱げないなら脱がしてやるよ!返せ!)


(ぎゃーーー!!!セリー!セリー!!セリーの毛布が暴れてる!!回収して!!頼むー!!)



(ちょっと、ぎゃーぎゃーうるさいよ。あまねん寝てるんだから静かに)


(セリー!!だって潮がー!!)


(はいはい。おその、ほら、ハンモック行きなよ。私がテントで寝るから)


(マジ!?天使かよ…断りもせずソッコーで行かせてもらうわさいなら)


(えぇ!?セリーはどうするの?)


(洋館から毛布持ってきてあげるから、3人でごろ寝しよ)


(一気に快適になってて草。それなら私ももう一枚持ってきてごろ寝したい)


(は?何言ってんの?お前らにはその立派な寝袋があるでしょ。毛布でごろ寝するのは私と芹だけだよ)


(早口だなぁ)


(あーはいはい、何でもいいから寝るよもう)









第四話 了




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