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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第2章 「箱庭の夢語」

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第24話(2)




潮

〔楽しかったクリスマスパーティも終わり〕

〔もうすぐ年の瀬ですね 今年は皆さんどんな風にお過ごしですか〕



かのあるふぁ

〔カウントダウン配信した後、今年はあもなと那由多と一緒に酒盛りしまーーーす!!〕


セリー

〔いいね〕

〔私は今年も実家で年越しでーす〕


おその

〔今年はじいちゃんたちと年越しー〕


蛍

〔奇遇やな〕

〔私もじいちゃんちで年越しっすわ〕


潮

〔ふぁ〕

〔まさか今年のはなやぎ組は1人っすか…〕


あまねん

〔大丈夫!今年は私がいるよ〕

〔2人って珍しいね 楽しい年越しにしよ~!〕


潮

〔おお 1人で初日の出とか見に行っちゃうところだったわ〕

〔といいつつ 何やかんや聞いてみてるだけだから、そんな無理してはなやぎで年越し過ごすことないんやで〕


あまねん

〔ううん!気遣ってるとかじゃなくて、本当に今年は予定なし!ママとパパ、年末は2人で海外の暖かいところで過ごすんだって〕

〔お姉ちゃんもお仕事の人と過ごすって言ってたし、日本のおばあちゃんは年末年始の神事で家を空けてるし、カナダのおばあちゃんのところまで行くのは大変だし…〕

〔ということだから、はなやぎで過ごさせて~〕


蛍

〔ええやん〕

〔ほな初日の出一緒に見に行ったらどない?〕


あまねん

〔え!いいね、初日の出見に行く?〕

〔せっかくだから色々してみない?年越しそば食べに行って、初日の出見に行って、お雑煮とおせち食べよ~〕


潮

〔うん まぁそれならメニュー決まってるから行けそうやな〕


セリー

〔なんか、その組み合わせで出かけるのって本当に稀じゃない?見たことない気がするんだけど〕

〔写真とか送ってね めちゃくちゃ楽しみにしてる〕


潮

〔おう 何で見たことないか知ってるかい〕

〔私とあまねんはなぁ、実は2人きりだと根本的に性格が合わないんだぜ〕


蛍

〔ええ?そうなん…?〕

〔あまねんと合わない人間とかいるんだ…〕


あまねん

〔うーん、そうなんだよね~!全員でいる時は良いんだけど、2人きりになると真逆な感じが顕著に出る気がする!今はどうなんだろう…〕


潮

〔まぁ言うて私もだいぶ成長しましたからね、大丈夫ですよ周ちゃん〕

〔もう食べ物で揉めることもないでしょう〕


蛍

〔わかんないんだけどさぁ〕

〔何したらあまねんと揉めるようなことがあんの?〕

〔揉めたことがないから潮が何かしたとしか思えんのだが〕


潮

〔んー〕

〔映画見に行こう!→映画が決まらない〕

〔何か食べに行こう!→食べに行くものが決まらない〕

〔ゲームしよう!→やるゲームが決まらない〕


あまねん

〔あのね、蛍とかセリーだったら、提案してくれたものって大体私も見たいものだったり食べたいものだったりするんだけど…〕

〔潮が提案してくれるものって、こう…絶妙に「見たいかも!」「食べたいかも!」ってその時に思えないやつなんだよね…〕


蛍

〔お前あまねんにこんだけ言わせるって、普段からどんだけ奇抜なもん選んでんの?逆張りの民?〕


潮

〔違うんだよ 違くないけど〕

〔例えばあまねんが洋食食べたいっていうじゃん?でも私はその時ラーメンが食べたいのよ〕

〔で、妥協してラーメンにしてくれるじゃん?〕

〔でもラーメンと言ってもこってり豚骨ラーメンが食べたかったりするから、豚骨ラーメンしか出してないお店とかになるわけ〕


セリー

〔なるわけ〕

〔なるわけ…?〕


蛍

〔なるわけないよね?譲歩って知ってる?〕


おその

〔お前が妥協しろ定期〕


あまねん

〔丁度前日に油もの食べてたりする日で、さすがに今日は…みたいな感じになっちゃうんだよね…〕

〔そもそも普通の豚骨ラーメンだったら良いんだけど…うーん…〕


潮

〔で、まぁ一緒にご飯食べに行くの厳しくね?ってなるじゃん?〕


セリー

〔なるじゃん〕

〔なるじゃん…?〕


蛍

〔厳しいのはお前だよ〕


潮

〔そんで、以下略な感じで全てのことが当てはまるんだよねぇ〕

〔うんうん〕


セリー

〔あれ、潮ってそんな感じだっけ…?〕

〔私と出かける時は大体何も言わずについてきてくれるような気がするんだけど〕


潮

〔いやね、芹さんはあれじゃん 大体理由ありきで誘ってくれるじゃん〕

〔そこに対して別に行かない理由がないのよ ついてきてくれって言われたら嬉しいし〕

〔何か食べに行こうよ、どっか行こうよ。とかじゃなくて、〇〇だから一緒に行ってくれない?が多いから〕


セリー

〔たし…かに…?〕


蛍

〔わいとは出かけたことあっても、出かけた先で別行動が多いか〕

〔逆に出かける理由の中に「一緒に」がない感じ〕

〔最初と最後だけ一緒みたいなパターン〕


潮

〔そうそう〕


おその

〔私とはそこそこ出かけるよね?〕

〔喧嘩したことない気がするけど?〕


潮

〔お前は別に私が何提案しようが「いいよー」で終わりですやん〕


おその

〔確かに…言われてみればそうかも…〕

〔私はあまねんと逆で、その時に意外と潮の提案が刺さる場面が多いのかも〕


かのあるふぁ

〔待って!!かのあとは実は2回も旅行行ってるよね?!そのへんはどうなの?!〕


潮

〔かのあは私にとっておそのパターンやね〕

〔かのあの提案がその時の自分に意外と刺さる場面が多い〕

〔「え…?それ…?まぁちょっと興味有るかも」みたいな〕


かのあるふぁ

〔ほえーーーー!!!引き当ててるぅ!!〕

〔一番合わなさそうなのに!!〕


おその

〔分かる〕

〔一番合わなさそうな2人が意外と旅行行ってて〕

〔意外と合いそうな2人が全然どこにも出かけてなかった〕


あまねん

〔でも大丈夫!今回は、年越しそば!初日の出!お雑煮!おせち!全部決まってますから〕

〔意見が分かれる要素ゼロ…だよね潮…?〕


潮

〔う、うん…〕


セリー

〔自信なさげで草〕


潮

〔待って 何かやばそうだから今全部決めとこうよ〕

〔年越しそば食べるのはさ、いいじゃん。でもそこから初日の出見に行くまでは時間あるじゃん?〕

〔何する?〕


あまねん

〔えっと〕

〔えーっと…?〕


セリー

〔良かったね、今話し合おうと思っておいて〕


あまねん

〔待って、本当に何も思いつかない…!〕

〔ちなみにセリーだったらどうするの?!〕


セリー

〔私?私なら…〕

〔年越しそば食べに行ったついでに軽く食料調達しといて、帰宅したら軽く仮眠して、起きたら早めに場所取りして、調達した食料食べながら初日の出まで雑談するかな〕


あまねん

〔わ~!完璧だね!そうしよう!〕

〔さすがセリー!〕


蛍

〔うーん 聞いてる分には楽しそうなんだけど、果たして本当にその2人で楽しくなるのかい?〕

〔2人仲良いと思ってたからオラ心配になってきたぞ〕


潮

〔おい、勝手に不仲認定するな〕

〔私たちは普段はなやぎでは、もしかして夫婦なんじゃないか?と勘違いするほど仲良いんだぞ〕

〔一歩外に出たら歯車が狂うだけで〕


あまねん

〔そうなんだよね~…何でなんだろう?はなやぎ館の中だと本当に夫婦みたいだよね〕

〔前に美味しいって言ってたデザート買って来たから冷蔵庫入れてるよ~って言いに来てくれたり、パソコンの不調とかもすぐに見てくれるし〕

〔私も潮にご飯とかお菓子作るし、美味しいって食べてくれるし、普通に中央ホールで雑談も頻繁にするし〕


おその

〔じゃぁ、夫婦以上友達未満ってこと?〕


セリー

〔…ん?どういうこと?〕


蛍

〔意味分からん関係性やなぁ〕


潮

〔じゃぁもう、いっそ揉め要素なしで全部はなやぎで済ませるか〕

〔年越しそばテイクアウトしてー、はなやぎで食べてー、ちょっと寝てー、冷蔵庫のもの何か食べてー、話しながら初日の出何となくどっかの窓から覗いてー〕


あまねん

〔わ、私はいいけど…〕


蛍

〔いや!!このあまねんの「私はいいけど」は良くないけど良いって言っとこうって時の「私はいいけど」だ!〕

〔潮そういうとこやぞ!〕


潮

〔おい、私を女心まるで分からないダメ男みたいな扱いするんじゃない〕

〔じゃぁいっそこうしよう〕

〔もうあれだわ 海辺の高級旅館予約取るわ〕

〔最高の年明けを周にプレゼントするわ私が〕


セリー

〔あのさぁ…〕


おその

〔お前0か100しかないんか〕


蛍

〔そもそもこんな年末に予約取れるもんなん?〕


潮

〔何とでもなるのだよ 何とでも言いたまえ〕

〔というわけで高級旅館行って年越しそば食って、軽く仮眠するやろ?〕

〔で、起きたら調達した食料持って窓の傍で雑談して、初日の出見ながら乾杯する〕

〔これやろ〕


あまねん

〔ごめん、すごく嬉しいんだけど…〕

〔今進路の関係でお金貯めてて…〕

〔キャンプ道具有るから、海辺に場所取りして缶チューハイとか飲みながらでどうかな?〕


潮

〔何を心配しているのか知らないが、私は君から一銭たりとも貰うつもりはない〕

〔いいか、今重要なのは私がいかにプランであまねんを満足させられるか それだけだ〕




ー招待状を送信しましたー


対象者:あまねん

プラン作成者:潮


プラン名

〜君と2人でハッピーニューイヤーがしたいんや〜


*1日目


[旅館『有明』別館 2名ご予約]

ー温泉入り放題チケット有りー

ー館内全サービス利用チケット有りー

19:00~ 旅館にて年末特別メニュー「年越しそば」(天ぷら、お刺身付き)


*2日目


8:00〜 旅館にて「新年お祝い朝食御膳」(お正月縁起物の提供有り)

10:00~ 旅館中庭にて「お正月御祈祷」(お神酒、甘酒の提供有り)


☆お正月御祈祷後お受け取り

[地元特産品福袋お持ち帰り券]

[地元工芸品福袋お持ち帰り券]


イベントカフェ『絵本の世界』

13:00~ ランチ・スイーツご予約

★予約席番号【2F:D席、F席】


絵本の世界期間限定スイーツ

☆「ねずみのネオくん チョコレートベイクドチーズケーキ」

☆「ふしぎなはなちゃん ふわふわパンケーキ」




潮

〔はい〕

〔早速こんな感じで予約できましたんで〕

〔じゃぁ あまねん、行くぞ〕


あまねん

〔えっ…ええぇぇぇ…?!〕

〔あ、ありがとう…!まさかこんな展開になるとは…!〕


かのあるふぁ

〔ファーーーーーおいおいめっちゃ楽しそうやんけーーーーーーー!!!!〕

〔旅館とかカフェって年末年始もそんながっつりやってるもんなの?!すごー!!〕

〔写真いっぱい送ってね!!もう何かと送ってね!!絶対送ってね!!〕


セリー

〔まさかさっきまで「窓からちらっと初日の出見よう」とか言ってた人から出て来たプランとは思えないよ〕

〔楽しんできてね 写真楽しみに待っとく〕


蛍

〔ほんまそれな〕

〔結構年末に差し掛かってるけど、近々で予約できるもんなんやなぁ〕

〔何か楽しくなりそうで安心したわ 気を付けて行って来てくれな〕


潮

〔カフェは年末年始の帰省客狙いで逆に1日から5日までフルで空いてて、5日から一週間くらい休みらしい〕

〔ほんでキャンセル出てたみたいで丁度1日に予約取れたわ〕

〔旅館有明の方は、ちょいと知り合いなもんでね 特別な別館用意してもらいましたってことで〕


おその

〔はぇー 絵本イベントのカフェお子さん連れでも楽しめそうやし、帰省で行くとこなかったらめっちゃいいな〕

〔商店街もいつか、新年といえば商店街で!って感じで在りたいもんやでー〕

〔てか潮って海の家の時もそうだけど、意外と顔広いよな〕


潮

〔ま 大体じいちゃん経由の知り合いばっかりだけどね〕

〔カフェもタイミングよく予約取れて有難い限りっすわ〕

〔てなわけで、あまねん 当日よろしくお願いしまーす〕

〔今までのわいとは違うってことを見せつけてやろうと思うんで 全力で楽しんでもろて〕


あまねん

〔確かにそういう意見が合わない場面もあった、っていうだけで、全然何か思ってたわけじゃないし今のままの潮が好きだよ~〕

〔とりあえず、年末年始楽しく過ごせたら嬉しい!いつもありがとう、潮〕


潮

〔こちらこそですよ〕

〔てなわけで、皆さんも年末年始のんびりゆったりお過ごしくださいませね〕

〔良いお年をー〕


セリー

〔ありがとう 楽しく過ごしてね〕

〔良いお年を〕


蛍

〔気を付けて行ってきてねぇ〕

〔良いお年を!〕


おその

〔良いお年をー〕


かのあるふぁ

〔いえーい!!良いお年をーーー!!!〕










ーーー高級旅館『有明』にて。

タクシーで年末の渋滞を抜け、時間をかけて何とか目的地に辿り着いた潮と周は、出迎えた雰囲気の良い旅館を見上げて感嘆の溜息をついていた。


入口まで続く灯籠の暖かい光が寒さを忘れさせてくれるような、不思議な感覚。

真っ白な麻の暖簾が粉雪をそっと浴びながら、格子状の引き戸から零れ出る照明を淡く映していた。


丁寧に並べられた石畳の雪化粧に足跡をつけつつ、引き戸を開ける。



「はー。何回来ても美しすぎて溜息が出ちゃいますわぁ」


「本当に綺麗すぎるよ~…!足跡つけるのも申し訳ない気持ちになっちゃうし、なんか自然と小声になっちゃうね…」



緊張しつつ静かに入口を抜けて、潮が棚に置かれた電子端末で操作を始めた。

その後ろで人の気配のしないエントランスを見渡した周は、尚も小声で話を続ける。



「すごい、オートマティックな旅館なんだね」


「うん。本館もかなり自動化になってるけど、この別館は特にね。決まった人しか泊まりに来ないし、来たよーっていう報告だけ済ませてるみたいなものだから」


「そうなんだ…!」



入館の手続きを終えた潮に倣って、靴を靴箱へしまい、麻とい草で作られた浅葱色のスリッパに履き替える。

どこからか玉露の香りがほのかに漂う中、静かに館内を移動すると。


趣のある階段を上がった先に、淡い彩色の桜が描かれた扉が現れた。

誰かが愛してこだわり抜いた造形だと一目で分かるほどのそれを、潮がそっと開ける。


檜と畳の香りが傍を駆け抜けていったかと思うと、眼前に映ったのは海だった。



「わぁ…!」



大窓から空と海の水平線を臨む、ただひたすら静寂を内包した空間。

一つの絵画のような景色は、臨めばすぐそこに在る日常でありながら、切り取られた非日常としてこの場所に存在していた。



「うんうん、たまにこの衝撃を喰らいたくなるんだよなぁ」



年季を感じさせない畳に、遠慮がちに上がる2人。

そこからずりずりと這って進んだ潮は、大窓の傍に置かれた文机を優しく撫ぜた。



「あー。最高のロケーションに置かれた文机。神」


「この景色を愛しく思う誰かが、此処で小説を書いてたんだね…」


「そうそう。私も何回か泊まりに来て、此処で書こうとしたこともあったんだけどねぇ」



そのままあぐらをかいて文机の前に座った潮が、言いながら海の景色を眺める。

周は隣に座って、にこにこと聞いた。



「潮先生。何か書けそうですか?」


「………うーん、やっぱり…人間とは何かって、哲学的な内容しか思い浮かばないや」



2人で笑い合っていると、部屋の子機が鳴り響いた。

対応した潮は何度か頷いて、周に連絡の内容を伝える。



「別館の温泉も入り放題だし、本館の方も全然入ってオッケーで、ラウンジのメニューも食べ放題飲み放題なんで。満喫したら連絡してって。年越しそば持って行くってさ」


「了解だよ!やばい、楽しみすぎる。最高の年越しだね」


「とりあえず本館の方の温泉から入って来る?で、ラウンジのメニュー部屋に幾つか持ってきといて。年越しそば食べたらちょっと寝て。起きたタイミングでちょこちょこ食べながら初日の出待ちましょうや」


「いいね~!」



嬉しそうな周を見て、満足げに微笑んだ潮。

それから早速温泉に入る準備をして、本館の方へと向かった。










「ふぁーーーー…良いお湯でしたーーーー…」


「見て!お肌つるつるだよ~」



ーーー本館にある全ての温泉に浸かってほかほかになった2人。

畳のあるラウンジでクッションにもたれて笑い合う2人の傍に、猫型のロボットがとことこと近付いてくる。



『ようこそ、旅館有明へ。ラウンジの食事はお部屋までお持ちすることが可能です。お部屋の保温器をご使用の上、お召し上がりください。ご希望のメニューはスマートフォン、または部屋の子機からご注文頂けます』


「はーい」


『どうぞ心ゆくまで、ごゆっくりお過ごしください』



それだけ伝えると、猫型ロボットは再びとことこ歩いて行った。

案内を始め、食事の提供や細かいサービスなど現時点で自動化できるところは限りなく移行している旅館有明。


感心しながらスマホでメニューを確認すると、美味しそうな写真がずらりと並んでいた。



「わ~!見て、フローズンメニューのところ!鍋焼きうどんがあるんだって!冷凍のセットがあって、カセットコンロとかも一緒に渡してもらえるんだ」


「ラウンジ閉まった後でも部屋でご飯食べられて神よなー。わいは鍋焼きラーメンにしよう」


「待って、おでんも美味しそう…保温器でずっとあったかいまま置いておけるんだ!え~両方頼んだら食べすぎかな~どうしよう…」


「まぁまぁ、お互い食べたいもの食べましょうや。私はこの美味しそうなハンバーグを頂きますよっと」


「せっかくならスイーツも頼んじゃう?見てこのフォンダンショコラ・シフォンケーキ…!」


「ええやん。早朝に鍋焼きとスイーツ食べるのはヘビーかもだから、年越しそばの後に食べちゃいますか。チーズケーキうまそう、ぽちー」



それぞれメニューを見て注文して、ラウンジを後にする。

別館に戻る道すがら、周は少し笑いつつ聞いた。



「今日の潮は、おでんの気分じゃない感じ?」


「ん?うーん。おでんは好きだけど、2個食べたら満足しちゃうんだよね。そういうあまねんは、深夜にハンバーグは食べないでしょ?」


「うん…ランチとかだったら食べたいかな~。おでんも大好きだからたくさん食べたい派!」


「となると多分、鍋焼きもラーメンよりうどんって感じだろうねぇ」


「ふふ。全然食べるけど、今日の気分はうどんの方かも!」


「んで、ケーキもチーズケーキよりチョコの気分だったと」


「たくさんメニューがあるところなら一緒に食べに行けるってことが、今回で改めて良く分かったね…」


「平和的解決方法が見つかったね」



話しながら部屋へ戻り、ひとまず一息つく。

檜の匂いに包まれながら軽く身支度を整えて、潮は早速子機を手に取り、年越しそばを注文した。



「はー…見て、あの月明りを浴びた海を。あの月と海を見ながら食べるそば。絶品でしょう」


「それはやばい!潮ほんとにこんな素敵な場所に連れてきてくれて感謝だよ~!」


「刺身と天ぷら付きのやつお願いしたんだけど、そばは言わずもがな海鮮も最高だから。そっちも楽しみにしてて」


「わ~い!」



程なくして、扉をノックする音が響き渡った。

潮の返事に呼応して開いた扉の先には、女性が一人。



「ーーーようこそ、旅館有明へ。女将の望月と申します。此度お二方の年の終わりと始めに寄り添えましたことを、誠に嬉しく思っております。どうぞごゆっくりお過ごしくださいますよう」


「あ、こんばんは…!こちらこそ、お忙しい中…!」


「とんでもありません。些細なことでも何なりとお申し付けくださいませ。それでは、夕餉を配膳させて頂きます」



てきぱきとした女性は、その後もてきぱきと2人の前へ夕餉を並べていく。


お出汁の良い香りが鼻を掠め、年越しそばがことりと目の前に置かれる。

その横を彩っていくように色鮮やかな刺身、黄金色の天ぷら、様々な小鉢が置かれると、周の目がきらきらと輝いた。



「美味しそう~!」


「こちらは当旅館の設立者、有明が年の瀬に味わった御膳で御座います。年越しにそばを食べ、その後こちらの部屋にて書き残した『凍星』、『七つ星』は電子書籍にて保管してございます。ご希望の場合はこちらのコードを読み取ってご覧くださいませ」


「ほ、ほわ~…!」


「ちなみに凍星は未だに何回読んでも泣いちゃうからオススメだし、七つ星は大作すぎて私でもほぼ理解できてないから挑戦してみる価値アリ」


「潮でも理解できない作品があるの…?!両方ちゃんと保存して後で見なきゃ」



コードをしっかり読み取って保存した周。

その様子を見届けた後、望月と名乗った女性は潮へと頭を垂れてみせる。



「潮様、年の瀬にお会いできて光栄で御座います。こちら、お納めくださいますよう」


「いやーこんなの用意されたら困りますって…何も用意してないんで。祖父に渡しときますね」


「玄一郎様には既にお送りしております。こちらは、潮様とご友人様に」


「あーーーじゃぁ、また新年に何かしら贈ります。あざます」


「当家は日下部家の皆様に何も望みません。今後ともどうかご贔屓に」



望月は静かにもう一度頭を下げ、続いて急須と湯呑の置かれた盆を置いて続けた。



「こちら、玉露で御座います。淹れ方は潮様がご存知かと思いますが、お作法の書いた紙も一緒に置かせて頂いております。どうぞ良いお年をお過ごしください」



蕎麦が伸びない内にと、それだけ伝えてさっと部屋を後にした望月。

美味しそうな夕餉を前にぽかんと口を開けた周が、平然としている潮に思わず聞いた。



「あの、潮ってほんとに何者なの…?」


「いや、私じゃなくて爺ちゃんが凄いんだって。うお、玉露と蕎麦だ。玉露は芹に淹れてもらおう。蕎麦も帰ったら皆に食べてもらおうぜい」


「すご~…!こんな立派な木箱なかなか見ないよ…!」


「ま、それじゃ。蕎麦食べますか」



手を合わせて、「頂きます」と声を揃えた2人。

心地良い波音が聞こえる部屋の中に、蕎麦をすする音が合わさった。



「えっ美味しい!お蕎麦もお出汁も美味しい…」


「いやー、久々に食べたけどやっぱ美味いわぁ、この年越し蕎麦。何回でも年越せそう」


「ん!?天ぷらさっくさく。小鉢の茄子の煮びたしも酢の物も味付け好きすぎる~…お刺身もぷりっぷりだ!」


「有明さんは茄子料理が好きだったみたいだね。どのご飯にも茄子がついてたから聞いてみたら、そんな話された」


「そうなんだ!道理で、茄子の天ぷらが海老より大きいわけだね」



立派な茄子の天ぷらを一口かじって、「おいしい!」と笑った周。

微笑み返して、潮も夕餉に舌鼓を打つ。



「来る前に少しだけ車の中で教えてくれたけど、有明さんって人も、潮と同じように小説家さんだったんだね~」


「そうそう。望月さんはその有明さんの血筋の方で、彼女の愛した場所を守るために旅館を継いだ人」


「そっか…それって素敵。遠い昔に愛した場所が、今もこうして変わらず守られてるんだ」


「すごいよねぇ」



話している内、あっという間に空になった器。

丁寧に並べて机の端に避け、美味しさの余韻に浸っていると、こんこんと扉がノックされた。


潮の返事の後に入ってきたのは、無表情な青年だった。



「……失礼します。番頭の青洲(せいしゅう)と申します。ご注文頂いたお品をお届けに参りました」


「ありがとうございます」


「…こちらでお入れしても宜しいでしょうか」


「すみません、お願いします」



ぺこりと頭を下げた青洲と名乗った青年が、スマホで注文していた品を冷蔵庫や冷凍庫に移していく。

その様子を見つめていると、作業を終えた青洲は少し恥ずかしそうに続けた。



「……フォンダンショコラ・シフォンケーキとチーズケーキは、いつ頃お召し上がりになられますか」


「丁度食べ終わったところだったんで、今から頂こうかと」


「…承知しました。配膳させて頂きます。チーズケーキはどなたがお召し上がりでしょうか」


「あ、私です」



女将の望月と同じく、てきぱきこなしていく青洲。

食べ終わった後の皿を盆に片付けると、続いて2人の前にケーキを配膳する。


ストロベリーソースのかけられたチーズケーキの周りを瑞々しい果物が囲い、傍には小さなジェラートが控えていた。

フォンダンショコラ・シフォンケーキもまた同じように果物とジェラートが添えられ、絵に描いたように美しいスイーツが目の前に並べられる。



「わ~!すてき!美味しそう~!」


「ふぉわー。何回見てもお皿の上美しすぎる」


「…ありがとうございます。どうぞごゆっくり。良いお年をお過ごしくださいますよう」



深々と頭を下げ、部屋を後にした青洲。

ぱたん、と扉が閉められた後、周はケーキの写真を撮りながら口を開いた。



「こういう盛り付け勉強になる~。かわいいしとっても綺麗!愛情が詰まってる感じ」


「今来た彼の、お父さんが料理長なんだよ。めっちゃ強面なんだけど、料理も美味しいしスイーツは可愛いしでギャップえぐいからマジで」


「そうなんだ!あ、だからありがとうございますって…従業員としてじゃなかったんだね。お父さんの料理褒められたら嬉しいよね」


「息子から『お客さん喜んでたよ』って伝えられて、本館でにっこにこかもね。てか、あまねんみたいなふわふわ女子から『スイーツ勉強になります!』とか言われたら、小躍りまでしちゃうんじゃないの。私からも伝えとこ」


「え~!何か恥ずかしい…!でも本当に今度からこの盛り付け参考にさせてもらっちゃおっと」



そんな話をしつつ手を合わせて、ケーキを一口。

頬がとろけてしまうのではないかと思うほどの満足感を与えられて、周は思わず唸った。



「ん~~~!」


「あー。やっぱ此処のチーズケーキ最高に美味いわ…ジェラートもうんまー」


「おいしい!弟子入りしたい…!」


「お。このケーキをあまねんがいつでも作れるようになるのデカすぎるな。話通しとこう。直接教えるのは大変だと思うから、レシピ送ってくれるんじゃない?」


「やった~!潮ほんとにありがとう!」


「やったー。既に最高ランクだったあまねんのお菓子作りスキルがこれで天元突破だぜ」



たたた、とメッセージを送って、再度ケーキと向き合う。

美味しいチーズケーキが口の中でほどけていくのを味わった後、ジェラートや果物も順番に口に運んでいく。



「何なんだろうね?この盛りつける能力って。お皿に絵描いてる感覚なのかな?」


「私は割と直感的にやっちゃってるから、料理のプロからしたらこう、何をどう乗せたら美しく見えるか!みたいなのが分かるんだろうな~」


「こういうのって食べ合わせの知識も色彩感覚も空間把握能力も必要じゃん?できないわ」


「本館にお泊りしたらまたいつでも食べられるんだよね?今度家族連れて泊まりに来よっと」


「あ、その時は連絡して。こっちで勝手に色々やっとくわ」


「え~!ありがとう!ありがたいけど、無理のない感じでお願いします…!」


「大丈夫大丈夫。任せて任せて」



ーーー食後のデザートを食べ終わって、再びほっと一息ついた周。

そんな周に、潮はお茶を淹れ始めた。



「潮、お茶淹れてくれるの…!?どうしちゃったの…?!」


「いやいや、お茶くらい淹れますよて」


「いやいや!淹れてくれたことないよね?!ていうかさっきさらっと流したけど、望月さん言ってたよね…潮は玉露の淹れ方知ってるって…!」


「いやいや、淹れ方くらい知ってますて」


「いやいやいや!びっくりだよホントに。今度からお茶の葉買ってくるからね?!飲むから淹れてね!?」


「全然やるけど、此処で習って知ってるだけだから。急須のお手入れとか全然知らない民だよ私」


「潮が淹れてくれるならお手入れくらいするよ~嬉し~!」



手際良くお茶を淹れていく潮の姿を、にこにこと動画に収める。


玉露の良い香りが部屋に漂う、和やかな雰囲気の中。

やがて潮の手によってことりと置かれた湯呑を、周は何度も写真に撮った。



「潮の淹れてくれたお茶…!永久保存版だ~!ねぇ、潮湯呑持って!写真撮るから!」


「いいって、恥ずかしいって」


「何言ってんのも~!恥ずかしがってないで!ほら!」


「いやホントいいって、母ちゃん。皆見てるって。恥ずかしいって」


「誰も見てないってば!ほら、ママに向かってピースしてピース!」



謎の思春期ムーブをしながら言われた通りにピースした潮が、写真に収められる。

何枚も撮って満足した周は、早速「いただきます」と小さく唱えて湯呑に口をつけた。



「ふぁーーー…」


「うーん。美味い。甘いものの後のお茶は良いですな」


「ほんとに美味しい。お茶淹れるの上手、ありがとう潮。幸せー…次何淹れてもらおうかな…」


「あ、玉露しか淹れたことないですよ」


「そんな最高級品をピンポイントで…!」


「まぁでも、余っちゃうから此処でだけでいいやと思ってたけど、あまねんが飲むなら玉露貰って帰っちゃおうかな」


「え!ありがとう!メッセ送ったらきっと皆も飲みたがるよ~」


「じゃ、望月さんにお願いしとくか…急須もお勧め教えてもらっとこ」



褒められてご機嫌な潮の顔を、微笑んで見つめる。






ーーーそれから、食器を下げに来た望月に諸々を伝えた後。

潮と周は寝支度を整えて、布団についた。



「じゃ、初日の出を待って…寝ますか」


「こんなに充実した年の瀬中々ないよ~…何時に起きる?」


「初日の出はさっき調べたら7時くらいだったから…朝ごはん9時前くらいに運んでもらって、3時過ぎにでも背徳の深夜飯行っちゃいますか」


「いいね!じゃぁ3時にアラームかけときま~す」



しっかりアラームをセットして、部屋を暗くする。

さざ波の音が心地よく響く中、周は想いを言葉にした。



「潮。素敵な1日を本当にありがとう。今年もたくさんお世話になりました。来年もよろしくね」


「こちらこそ。はなやぎに来てくれてありがとう。あまねん、来年もよろしく」



今年最後の1日が、静かに幕を下ろしていく。

そして新たに始まっていくその日を待って、2人は眠気に任せて目を閉じた。


目覚めた先でも変わらず、皆で笑い合っていられる日々でありますようにと。








*   *   *   *   *   epilogue








(わ、もう起きてたの?おはよう潮、はっぴーにゅーいやー!明けましておめでと~!)


(明けましておめでとーハッピーニューイヤー。お布団ふっかふかで良く眠れましたわ)


(ほんとにそう!良い匂いもするし、すっごく深く寝られた!)


(良かった良かった。今年もよろしくね)


(今年もよろしく~!)



(さて、早速鍋焼きうどんとラーメン食べちゃいますか)


(コンロ2つ用意してくださってる!お箸とお皿出しとくね)


(ありがと。おでんとハンバーグは保温器にかけとくんで、食べ終わったら適当にちまちまつまみまっしょい)


(わーい!お酒サービスで色々置いてあったけど、何にしようかな~)


(全部呑みながら話そう。じゃ、火にかけまーす)



(おーーー良い匂い)


(鍋焼き久々に食べるから嬉しい。いただきます!)


(いただきます。ファッあっづううううまままま)


(ん~!おいしい!おねぎこれ、九条ねぎだ!ねぎの王様だよね~…椎茸もおいしい)


(わいのも九条ねぎうまうまですわ。あーー背徳の深夜ラーメンうまーーー)


(この絶景の中食べる鍋焼き…最高…)


(月明りの海見ながら飯食って、初日の出待つ新年。最高!)



(あー。美味しかった)


(鍋焼きいいね!家まで送ってくださるってことだったけど、ストックしとかない?)


(いいね、そうしよう)


(だめだ、食べ終わってすぐなのに、おでんのビジュが良すぎてお腹空く!潮お酒のも~!)



(てなわけで、去年はお疲れ様でした。今年も楽しく行きましょう、かんぱーい)


(かんぱーい!)


(うーん…ウマい!もう一杯!といいつつハンバーグも…うーん!ウマい!)


(日本酒おいしい~!おでんもさいこ~!)



(ところで、ずっと聞いてなかったけど…あまねんは進路どうするの?)


(ふふ。はなやぎ出て行くのかな~?って思ってる?)


(まぁ、ちょっとね。忙しそうにしてるし、翻訳のお仕事だったら基本的に海外の人が相手になると思うし。ばあちゃんはカナダの人だし。日本どころか、海外でってこともあったりするのかなーとかは、ちらほら)


(ーーー潮。私って、潮が思ってる以上にはなやぎのことが大好きなんだよね。とっても大切な場所なの)


(………)


(ね、初めて会った時覚えてる?セリーの紹介で、調理室でお菓子一緒に食べたよね)


(…覚えてる覚えてる。お菓子作りが上手な女の子がいるんだって紹介されて行ったら、かわいい女の子!って感じのかわいい女の子がお菓子作ってたわ)


(ちょっとバカにしてない?!…でも私も思った。潮のこと、ちょっと見た目クールだけど優しい子だよって紹介されて、まさにその通りだな~って)


(かわいい女の子が作ったかわいいロールケーキを芹と並んで食べて、あの日は満足な1日だったなぁ)


(それから結構一緒に遊んでもらう日が増えたでしょ?しかも、蛍と潮が知り合いだったって分かって、4人で遊ぶようにもなって)


(しかも蛍とおそのが高校一緒で、おそのは私の小学校の時の同級でね)


(しかもしかも、その後文化祭に遊びに来てたかのあは謎に全員と関わりがあって!濃密な高校1年生だったな~)


(あの繋がり方はマジで謎だったわ。かのあのやつ、はなやぎに来るためにタイプリープしてわざわざ全員と関わりに行ってたんじゃないかって今でも疑ってるもん)


(あはは!本当にそう。…そこからさ、6人で遊ぶようになって。はなやぎ館でシェアハウスしないかって言われて……私、心の底から嬉しかったの。そんなことあるの?こんなに素敵なことが起こっていいの?って)


(……そりゃ、お誘いして良かったですわい)


(だって、ずっと願ってたの。離れ離れになった蛍を、どうやったら近くで支えられるかな?近くにいられたらいいなって。辛い思いをしたセリーの力に、少しでもなれたらいいなって。

自分のことは何も言わないけど、きっとどこかで寂しい思いを抱えてる潮が、甘えられるような居場所になれたらいいなって…)


(あまねんマジ天使じゃん)


(めちゃくちゃ気が合うおそのとも、何かとほっとけないかのあとも、皆で楽しく過ごせる。そんなはなやぎ館って、私にとって、これ以上ない宝物なの)


(……、)


(だからね。進路色々考えてたけど…この宝物をどこにも置いていけなくて、1つ方法を考えてみたんだ)


(おう)


(というわけで、じゃーーーん!これ、名刺です)


(……ん?はい?)


(フリーの翻訳家さんになります!)


(ファーーーーなんてこったい)


(実は、燦くんに私だけ進路決まってないって話をしたら、フリーはどうかって提案してくださってね。ほら、燦くんって通訳さんでしょ?しかも特殊で、本当に口頭での通訳のみ。文章でのやり取りは別の人がやってるらしいんだけど、手が足りないらしくて。

ということで、しばらくはフリーの翻訳家さんとして、燦くんの会社の業務をお手伝いすることになりました!)


(全く聞いてなくて草。しかし…そっかそっか、おめでとう)


(えへへ。自分で言いたいからまだ内緒にしててください!ってお願いしてたんだよね~)


(道理で最近燦がにやにやしてたわけだわ…)


(将来的に海外の面白い書籍とかを日本語に訳してこっちで出版して、翻訳も買い付けもどちらもできたらいいなと思ってるってお話もしたら、出版社さんのお知り合いも紹介してくださってね。卒業したらすぐ色々忙しくなりそうなんだけど、はなやぎで過ごしながら全部こなしていけたらって)


(………)


(なので、卒業してもはなやぎにいます!引き続きよろしくね、潮)


(………)


(えっ潮…? えええええーーー!!!う、潮泣いてる?!えーーー!泣き顔初めて見ちゃった…!何の涙…?!)


(わっかんない…でも、はなやぎの話始めた時からずっと涙我慢してた……てぃっしゅ…)


(やめてよ~~潮泣かないで~~…!私まで泣いちゃうじゃん…!はいティッシュ!)


(ありがと。いや、どうしてもさ、こう…結婚してはなやぎ出てったり、そんなこともこの先あるわけじゃん。で、何か…そういえば卒業したらあまねんはどうするんだろうって思ってて…そっか、結婚の前に就職して出てくこともあるのかなぁとか、覚悟して聞いてみたわけじゃん…)


(う゛ん…!)


(そしたら、大切な場所って言ってくれて、残る為にどうしたら良いか考えてくれて、自分の夢も大事にしたまま、はなやぎにいるって決めてくれたわけじゃんか………………ごめんむせび泣きそう)


(潮~…!)


(はなやぎに一緒に住もうって誘った以上、皆の未来に何かしら影響を与えてしまうってことは分かってて…だから、遠慮して無理に残ったりとか、誰かが何かを諦めたりとかがないようにしたいっていうのが、ずっと私の願いとして有るのね。

だからさ、こう……おそのの時もそうだけど、自分のやりたいことを見つけたその未来の中に、はなやぎ館にいたいって思いが夢の傍に寄り添って在ってくれたのが、こう……………………)


(分かる、分かるよ潮…!充分伝わってる…!)


(あのさ、あまねん…これ以上上手く言えないからこれだけ言うわ。ありがとう……)


(うん…!こちらこそ、はなやぎ館っていう素敵な場所を作ってくれて、私を受け入れてくれて、ありがとう…)



(ーーー潮、見て。夜が明けて来たよ)


(…新しい年が始まりますなぁ)


(改めて、明けましておめでとう。素敵な年越しでした、今年もよろしくね)


(こちらこそ、明けましておめでとう。今年もよろしく)








第二十四話(二) 了





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前回の注釈を読んでくださった方はお察しやもしれませんが、

当方、玉露も飲んだことがありません…

何と初日の出も見たことがありません…

憧れを文章に昇華して書いているいつものやつ


美味しいお茶屋さんなど行ってみたいものですね


小説内の情景や食事について、

以下の動画様を参考にさせて頂きました



☆旅館風景

*https://youtube.com/shorts/H8YcJ2PrSvU?si=M_eC5tRfWX7u3TVi

*https://youtube.com/shorts/wYJULc33C0U?si=KanpT7r_N7lVnpMf

ーカイセイの九州旅 様


☆ラウンジメニュー

*https://youtube.com/shorts/0pYd0gT8mGM?si=sOLnKkjcnEjFDzb6

*https://youtube.com/shorts/nif1rFA3q0w?si=z4UeV8a7xZgQXezJ

ーKabu tabi 様


*https://youtube.com/shorts/x-iSnyMMga0?si=Ix5y4DL2oxfEa771

*https://youtube.com/shorts/2QL9l7CVbk8?si=1bYAUN4ETYbFf8ER

ー山口県のまーちゃん 様


*https://youtu.be/lFm3kBeDVAg?si=4EZJ4fkw6Am-KJW_

ーChocolate Cacao チョコレートカカオ 様



遅ればせながら、明けましておめでとうございます

今年も宜しくお願い申し上げます




2026.1.14 日三十(ひさと) 皐月(さつき)







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