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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第2章 「箱庭の夢語」

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幕間 「彼方の山水を想ふなら」






ーバンビがマップを送信しましたー



バンビ

〔ごきげんようお嬢ちゃん方!!〕

〔今回のバイトのご参加どうもありがとう〕

〔周ちゃん、今回はあたしの同行人ね!足手纏いになるんじゃないわよ!〕

〔そしてかのあちゃん!大変だと思うけど、バイト張り切って頼んだわよ!〕



あまねん

〔こんにちは~!バンビさん、前回は本当にお世話になりました!〕

〔今回もよろしくお願いします!お手伝い頑張ります~〕


バンビ

〔まぁ おネギさんの山は緩やかだしきちんと整備されてるから、登山というよりハイキングとかトレッキングと思って参加するのが丁度いいかしらね〕

〔とはいえ、頼むから怪我だけはしないで頂戴!〕


あまねん

〔は~い!〕


バンビ

〔いいお返事じゃないの やる気ねアンタ〕


かのあるふぁ

〔こんにちはーーーー!!!かのあでーっす!〕

〔あの、自発的にお手伝いしたいってなったわけじゃなくて正直ホントすんませんっす!!〕

〔でもできるだけ迷惑かけないように頑張るんで、よろしくお願いしまっす!!!〕

〔とりあえずトレッキングウェア一式ぽちーしとけばいい感じですかね!〕



バンビ

〔正直で良いじゃないの 良いわねアンタ〕

〔ウェア一式は予め潮から身長と靴のサイズ聞いてるから、知り合いから2人分レンタルしとくわよん〕

〔かのあちゃんは体力がないってことだったし、究極背中に担いで行くくらいのつもりでいるの〕

〔だから、不注意で丘滑り落ちちゃうレベルのことさえ無ければ迷惑とは思わないわ。安心してね〕


かのあるふぁ

〔ほぁぁぁ!か、かのあを担ぐマ…!?〕

〔了解でっす!!でもそのレベルのことをやっちゃうフラグが、たった今立ったのでは…?!〕


バンビ

〔やだ!へし折っときなさい!!〕


あまねん

〔レンタルありがとうございます~!〕

〔えぇ!かのあを担いで山を…?!バンビさん、かっこよすぎます…!〕


バンビ

〔あたしがかっこいいですって?ヤダーーーー!何言ってんの!!当然よ〕

〔あとなだらかではあるけど一応山だし、もう一人助っ人呼んであってね〕

〔山の入口から同行してくれるってことだったから、心配せず楽しんで!〕


かのあるふぁ

〔ひょぇぇぇえぇ〕

〔バイトという名の筋肉強化イベントって聞いてるから正直ちょっとあれだったけどちょっと楽しみになってきたかも!〕

〔バンビさんよろしくお願いしまっしゅ!!〕


あまねん

〔よろしくお願いします!〕


バンビ

〔こちらこそよ!〕

〔今回、潮のお菓子食べちゃったってことだったけど やるじゃない、かのあちゃん〕

〔おネギさんもクッキー作るの相当面倒臭がってたから、これを機にあまねちゃんが作れるようになったら万々歳じゃないの!〕

〔良い機会を与えたわね!グッジョブよ!〕


かのあるふぁ

〔おぉ?!まさか、かのあは計らずしもおネギさんを救ったってコト?!〕


あまねん

〔潮がそのメッセみたら怒るよ、かのあ…〕


かのあるふぁ

〔い゛や待って!!違うの!!反省はしてるの!!!そこだけは確かなの!!!〕



ー潮がトークルームに参加しましたー



〔どうもどうも、遅れまして〕

〔えーと もう大体話はついてますかね?〕



かのあるふぁ

〔ばぶぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〕

〔ねぇ待って、トークルームって参加する前の会話見れないよね確か!?〕


〔は?お前また何かしたんか〕

〔あまねん、後でスクショして送っといてね〕


あまねん

〔は、はい…!〕


バンビ

〔あらー 自らバラしていくスタイルなのねぇ〕


かのあるふぁ

〔やってしまったーーーーーーー!!!!う゛おおおおおおおおおん!!!〕



〔まぁそれはさておいて〕


〔えーと どこまで話があったか分かりませんが、山登り用の服は勝手ながらサイズとか教えてバンビが手配してくれてますんで〕

〔で、当日着替えたら私がはなやぎから車で2人を山まで連れていきまっす〕

〔参加するつもりなかったけど、おネギさんにちょっと用があるんで〕

〔今回はわいも参加ということで〕


あまねん

〔あ!潮も来るんだ!嬉しい~〕


かのあるふぁ

〔マジか!!潮も来るの!?ほげぇ!休めないじゃん!!〕

〔あれ?てか何か、この3人でどっかお出かけするの結構珍しくない?!〕


〔そういえば、確かに3人で出かけることってあんま無いかもね〕

〔はなやぎ館の中では3人になること結構多いのに〕

〔つーかお前サボるつもりだったんか許さん〕


バンビ

〔あら!あんたも行くの?潮〕

〔大丈夫なの、おネギさんに叱られてる姿2人に見せちゃってー!〕


〔まぁまぁ〕

〔たまにはね〕


かのあるふぁ

〔う゛ぇぇぇーーーーー!!!潮って叱られることあんの!?!?〕

〔やばい当日楽しみすぎて寝れないかも…!〕


〔は?何楽しみにしてるか知らんけど、お前も絶対叱られるからね〕


かのあるふぁ

〔ほぇ~?初対面だよ??叱ってもらえるほどの関係値ないでそ~www〕

〔潮が叱られてる姿眺めるの楽しみだぬ~www〕


〔クッソムカつく〕

〔煽りスキル高すぎだろこいつ〕


バンビ

〔あたしもしっかり身だしなみ整えて行かなくっちゃ!〕

〔前にふりっふりのレースパンツ履いて行ったら、フリルがズボンからはみ出ちゃってたらしくてねぇ〕

〔はしたない!!ってお尻パーーーンって叩かれたのよ!!もうっ!お嫁にいけない!〕


〔その時用があって一緒に行ってたんだけどさぁ〕

〔ゴリバンビのズボンからはみ出てるフリルパンツも面白いし、「はしたない!!」って思いっきりケツパーーンッ!!いかれてるのもめっちゃ面白かったよ〕

〔お茶噴き出しておネギさんにめっちゃ怒られた〕


かのあるふぁ

〔ごめんそれはちょっと…!さすがにちょっと面白いかもしれない…ッ!〕


バンビ

〔やーん面白くないわよーー!あたしのかわいいおちりが手形くっきり真っ赤になってたんだから!〕

〔だからこの前はシルクのぴちぴちパンツをわざわざ履いて行ってやったわよ〕

〔今回は紫Tバックで絶対はみ出さないんだからっ〕


〔あのさぁ、報告やめてくんない?〕

〔当日「そういえば今日こいつTバック履いてんだっけ…」って思っちゃうの嫌なんだけど〕


バンビ

〔やだ!!むっつり〕


〔ガチでバンビのパンツなんか1ミリも興味ないわ〕

〔まぁでも事実むっつりではあるから否定はできんか…〕


あまねん

〔むっつりなんだ…〕


かのあるふぁ

〔むっつりなんだ…〕


〔むっつりだね…〕


バンビ

〔むっつりなのねぇ…〕


かのあるふぁ

〔むっつり…〕

〔ん…?むっつりって何だっけ…?〕


〔ゲシュタルト崩壊してて草なんよ〕



バンビ

〔ま!そんな感じで!〕

〔今回はよろしくね!くれぐれも気を付けていらっしゃい!〕


あまねん

〔はい!よろしくお願いします!〕


かのあるふぁ

〔よろしくお願いしますー!!〕


〔バンビありがとねー〕

〔んじゃ また当日〕











「お、いたいた」



ーーーあくる日の休日。

潮の運転で山の入口に辿り着くと、そこには既に2人の待ち人がいた。


トレッキングウェアに身を包んだバンビが、潮の車に大きく手を振る。

その横にいた青年もまた、同じように手を振って見せた。


レンタルした服をしっかり着込んだ周とかのあがうきうきで車を降りて、バンビたちに向かって手を振り返す。



「お゛わーーーー!!!生バンビ姉さんだーーーー!!!」


「わ~!バンビ姉さんお久しぶりです~!」



「えーナニコレちょっとやだーー!あたしったらアイドルみたーーーい!そうよ、あたしが…バンビちゃんよっ!」


「かのあちゃんでーっす!!今日はよろしくお願いしまっす!」


「改めまして周です!よろしくお願いします~」


「はいよろしく!!バイトに来たからにはこき遣わせてもらうわよ!覚悟しなさいお嬢ちゃん方!!」


「「はーい!」」



きゃっきゃと楽しそうな3人に暖かい視線を送る潮と青年。

タイミングを見計らって、潮が青年に向かって手のひらを向けた。



「で、さっき車の中で同行人がいるって話をしたけど。それがこちら、燦くんです」


「初めまして。 さんです」


「彼はおネギさんの孫で、通訳のお仕事しててね。私が海外の人から仕事のお話貰った時にお世話になってる人」


「はい、仕事仲間であり潮の良き友人です。今後ともどうぞよろしく」


「うぇーーー!!!よろしくお願いしまーす!!すごい、潮って友達いたんだね!!いないかと思ってた!」


「ははは、かのあには負けますよ」


「アハハハハ!!!」


「ははははは」


「フハハハハハハハハ!!!」


「ははははははは!!」


「仲良いねぇ」


「あ、周です。今日はよろしくお願いします~。お孫さんなんですね!」


「そうなんすよ。丁度ちょっと用事があったんで、同行させてもらいました。かなりクセ強めな祖母ですけど、大体良い人なんでご安心ください」



じゃ、早速登りますか。

と燦が言って、入口から先導を始める。

その後に続いたかのあと周が、物珍しい潮の知り合いにわくわくしながら声を掛けた。



「え、てか何かガチですごい人なんですよね?!界隈でめっちゃ有名な通訳さんって聞きましたけど!!」


「いやいや、全然すごくないっすよ。いつも親父に無理やり引きずり回されて歩いてるだけなんで」


「あの、海外の相手が普通に話してただけで、日本語で何て言ってるか分かるって本当ですか…?」


「そうそう。それだけだから、英語教えて!って言われても全然分からないんすよね。周さんはきちんと翻訳家を目指してるってことでしたけど、俺はパッションで通訳してるだけで」


「はぁ…はぁ…それが合ってるんだから、すごいよねっていう…はぁ…」


「分かっちゃうんだよねー」



周の後ろで既に息を切らして進んでいる潮の言葉に、燦がにこにこと応える。

「まだ入り口よ?あんた」と最後尾のバンビに喝を入れられながら、潮たちは目的の場所へとどんどん進んで行った。



「あの、えっと…分からない言語を耳で聞いて、日本語で訳す…えっと、それってこう、どういう風に分かるんですか?」


「ぜぇ…はぁ…こっちの理解の範疇を超えてるから、質問するのも難しいよね…はぁ…」


「そうそう!どんな感覚なんだろうと思って…。それって、聞いた時にはもう日本語で聞こえてるんですか?」


「んー?何か…うーん。俺も説明難しいな。動画サイトで字幕付けた時みたいな感じで、頭ん中に浮かんだ字を読む作業って説明が一番近いかも」


「ほぇ~…!」


「聞こえてくる音を訳してるから、向こうの言語でカンペ見せられても全然分かんないっすね」


「じゃぁ、こっちの言語を訳す時はどうするんですか?」


「その場で勝手に口が動くっす」


「えぇぇえぇぇ…?!?!どういう…えぇぇぇ…?!」


「…はぁ…ふぅ…でも、燦はマジでその時のフィーリングでやってるから…はぁ…頭に入ってるわけじゃ…はぁ…ないんだよね…」


「え゛!じゃぁ勉強したら最強になれるってコト?!」


「どうなんすかね?でも、頭ん中空っぽだから出来てる所業なのかもって最近思いますよ」


「す、すごい人がいるんだなぁ…!」


「いやいや。俺が特殊なだけで、周さんみたいにきちんと勉強されてる人の方が立派だし重宝されますよ。勤勉ってこと自体が純粋にすごいですし」



話しながら進んで行くと、程なくして畑へと辿り着いた。

丁寧に管理されたそこにはたくさんの作物が実り、秋の山へ豊かな彩りを与えていた。



「はいはい、お嬢ちゃん方!こっちに整列ーーーーー!!!」


「「はーい!」」



バンビが首に下げていた笛をぴっと鳴らし、その前にかのあと周が正直に並んだ。

さながら教官のように背筋を正しながら、バンビはそんな2人へ指示を飛ばす。



「じゃぁ今から周ちゃんには、このぶりっぶりの椎茸を収穫してもらうわよ!!」


「でっっっか」


「でかすぎない!?」


「分かりました!すごい!美味しそうな椎茸…!」


「で、かのあちゃん!あんたはこっちであたしと山菜採りよ!いいわね!」


「あいあいキャプテンーーー!」


「お、おかしい…何でこいつ……私より…元気なんだ…はぁ…はぁ…」


「はっはっはーー!実は最近、深夜にはなやぎの敷地内ぐるぐる歩いてるんだよね!意味あんのかなーって思ってたけど、結構功を奏してるってことが今日で分かった!」


「何、だと…!」



燦が用意してくれた椅子に腰掛けながら項垂れる潮を横目に、バンビから手渡された腰籠をつけて椎茸採りに向かう周。

その隣で同じく腰籠をつけたかのあが、元気いっぱいに声を上げた。



「じゃ、行ってきまーす!」


「行ってらっしゃい…」


「潮、あんたも燦と一緒にかぼちゃと蕪収穫しときなさいよ!」


「はい…」


「はーい。潮、行こう」



楽しそうにもくもくと椎茸を収穫する周。

バテている潮をフォローしながらかぼちゃと蕪を収穫する燦。

バンビが収穫する様子を真似ながら、山菜を採っていくかのあ。


それぞれの籠が満たされていった頃、バンビが籠を集めて回り「よし!」と大きな声を出して次の指示を出した。



「さて!周ちゃん、この後はさつまいもも収穫して頂戴!疲れてないかしら?」


「は~い!大丈夫です、すごく楽しいです!栄さんとかセリーの畑たまにお手伝いさせてもらうけど、私やっぱりこういう作業好きなんだな~」


「うんうん、普段から畑に触れてる子の佇まいだもの。危なげないから言うこともなし!でも疲れた時は遠慮せず言いなさいよ!」


「了解です、ありがとうございます~!」


「良いお返事だわ!さ、かのあちゃんはこの後栗を一緒に拾うわよ!」


「は、はいぃぃ…!」


「あれ?もうバテてるやついない?深夜に歩いてるとかドヤ顔してたよねさっき?」


「さっきは…さっきだ!!!」


「でもすごく頑張ってると思うよ、かのあ…!私見直しちゃった…!」


「うーん…かのあちゃんは反省と筋トレも兼ねてるってことだったから、もうちょっと頑張ってもらう予定だけど…それでいいのよね?潮」


「うん。こいつ私のお菓子食べたからね。筋トレくらいしてもらわないと」


「はぃぃぃ!頑張らせていただきますぅぅぅぅ」


「とはいえ、無理はせずね。休憩しながらお手伝いして頂戴ね」


「うぅ…!おれのバンビさんが優しくて泣ける件について…!!!」


「そんな細い体で良く頑張って歩いてるわよ。えらいえらい」



励ましてもらいつつ、今度は栗を拾うかのあ。

さつまいもを収穫しながら、周はその背中を見て感慨深げに言った。



「前回栗拾いに行った時はすぐバテてたのに…そう思ったらかのあが体力ついたの嬉しくてなんか泣けてきちゃう」


「ママかな?」


「だって、お山もバテずに上がって、山菜も取ったんだよ!あのかのあが!すごいよ~!」


「くそ、深夜徘徊そんなに体力つくのか…私もやろうかな…」


「うーん、深夜徘徊って言い方はどうなのかな?とは思うけど…運動はいいことだよね~」


「ま、私もウォーキングから始めてみますか…。よーっし、このへんの蕪は回収完了…燦、こっちの籠に入れていいの?」


「いいよ。どうせ大きい籠にまとめちゃうから」


「了解ー」



やがて収穫を終え、実りがたくさん詰まった小さな籠を2つの大きな籠にそれぞれ重ねていった。

それを燦とバンビが軽々背負って立ち上がる。



「収穫お疲れ様!大変だったわね。じゃぁこれからおネギさんのところに向かうけど…体力は大丈夫?」


「大丈夫です~!いけます!」


「かのあも、さっきバンビさんが休憩させてくれてたから快復した!あと貰ったチョコが美味しかった!だから大丈夫でっす!」


「私も。いうて殆ど燦がやってくれたし、ほぼ椅子に座ってたから大丈夫」


「オッケーよ!そしたらこの道を真っ直ぐ行ったらすぐだけど、疲れたら遠慮なく声掛けて頂戴!」


「「はーい!」」





ーーーバンビの言う通り、進んでいると家屋はすぐに現れた。

綺麗に建てられたログハウスの周りには丁寧に手入れされた花々が咲き誇り、木々の落とした枝葉が1か所にまとめられていた。



「着いたわよ」



大きな籠を降ろし、ログハウスの入口をこんこんとノックする。

すると、開いた扉から年齢を感じさせない美しさを保ったままの女性がでてきた。



「いらっしゃい。こんな山の中まで良く来たね」



「こんにちは~!周です、今日はよろしくお願いします!」


「かのあですー!!よろしくお願いしまーす!!」


「まぁ、元気の良いこと。我妻あがつま 梛木なぎよ。皆からはおネギと呼ばれてる。疲れただろう、ソファへ座りなさい」



まずは周とかのあが挨拶を終えて、梛木と名乗ったおネギが「土を落とそうかね」と手洗い場へ誘う。

土間に設けられた手洗い場へ行き、面々はおネギに倣って手を洗った。



「木の実と一緒に洗ってごらん」


「わ、すごい…!泡立った…!」


「本来そう綺麗にしなきゃいけないほど身体ってのは汚いもんじゃないだろう」



置かれた木の実を手に取って水の中でごしごし擦ると、瞬く間に泡が立った。

その泡で綺麗に手を洗い、水に流す。

燦やバンビ、潮も手慣れた様子で手を洗った後、感動している2人を引き連れてリビングへと足を踏み入れた。



刺繍の施された彩色豊かな織物が、至る所に飾られたリビング。

ほとんどのものが手作りで、こだわりが詰まった空間だった。


人数分のお茶を机に並べたおネギが座り、それぞれもソファへと腰かける。



「ーーーさて、まずはバンビ。収穫ご苦労様。私の分は今回少しで良いから、残りを全部持って行きなさい」


「あら。おネギさん、体調でも悪いの?」


「いいや。大河原の阿呆がわざわざ山に来て、色んなもんを置いて行ったんだよ。困るというのに。必要なら少しばかり持って行ってくれないかい」


「良いじゃない、何貰ったのよ」


「漁に出たってんで鮭と、鰹と、あとは茄子と…梨もあったねぇ。あぁ、あと葡萄も置いていったんだよ。山に植えてないもんを選んで持ってくるもんだから断れやしない」


「えー貰っていいの?!有難く貰っちゃうわよあたし。明日のおまかせランチは鮭のクリームパスタにしよっと♪」


「はい?美味そすぎる。明日ランチ食べに行こっと」


「いいなー!かのあも行く!」


「いいわよーん。席取っとくわね」


「そうかい。だったら野菜は籠に入れとくよ。生ものは鮭と鰹は帰りに包んであげよう。わるいねバンビ」


「こちらこそ、恵み分け感謝だわ」



話がひと段落すると、次におネギは潮の方へ顔を向けた。



「さて潮。あんた、元気してたかい。母親の具合はどうだい」


「まぁ、ぼちぼちっすね。あ、これじいちゃんから預かってきたっす」


「頼んでたやつだね。直せたのかい、玄さんは本当に器用で助かるよ。機械ものはてんで分からないからねぇ」


「んで、こっちはささやかですが、私から」


「何だいこりゃ」


「前に来た時にまな板が少し歪んでたんで、新しいものをと思って。銀杏の木のまな板です」


「そうかい。気を遣わせたね、こんな老婆にお金を使うんじゃないよ」



竹製の可愛らしい時計と、銀杏の木のまな板を手渡して頭を下げる潮。

それらを丁重に受け取って、おネギは静かに礼を言った。

次に、かのあと周の方へと向き直る。



「さて、かのあちゃんは潮のクッキーを食べ切ったってんで、反省として山の収穫の手伝いに来たんだったね」


「はぃぃ…」


「それで、周ちゃん。あんたは私からひまわりクッキーの作り方を教わりに来たと」


「はい!お手数おかけしてすみません、よろしくお願いします」


「あんた達ね。良くやったよ。これで私がクッキーを作らなくて済むじゃないか」


「ほ、本当にご面倒に思われてたんですね…!」


「当たり前だよ。誰かの為に何かをするのなんて私が一番やりたくないことだ。私は誰かに何かをしてもらうのと、私自身が私の為に何かするのが趣味なんだからね」


「おほーーー!大変素敵なご趣味だと思いまっす!!!」


「何だいかのあちゃん、気が合うじゃないか」



握手をした2人を苦笑して見つめる面々。

それから、おネギは思い出しながら苦々しく言った。



「ひまわりクッキーはねぇ、その日の朝私が食べたくて作ってたんだよ。そしたらバンビが潮を連れて来たもんだから、玄さんの孫に何も出さないのもどうかと思って茶菓子に出してやったんだが…それから何度もねだってくるようになって困ってたんだよ。助かったよお嬢ちゃん。早速作り方を教えようかね」


「ありがとうございます!」


「じゃぁ周ちゃんはこっちへおいで。後の者は適当にゆっくり過ごしておくれ」


「「「「はーい」」」」


「あぁ、貰った葡萄でも食べるかい。洗って出してあげよう」


「「「「わーい」」」」



「何でおネギさんって呼ばれていらっしゃるんですか?」「燦が小さい時、私の名前を聞き間違えてネギって呼んだんだよ」

など長閑な会話を聞きながら、出してもらった葡萄を食べる4人。


クッキーの作り方を教わる周を遠目に見守りながら、かのあが口を開く。



「めっちゃ気が合うんだけど!!おネギさん!てかひまわりクッキー楽しみすぎるー!」


「くっそぉ…おネギさんに怒ってもらおうと思ってたのに、逆にこいつが感謝されてて歯痒いんだが…」


「おネギさんったら、よほど作りたくなかったのねぇ」


「うーん…あまねんが覚えてくれたら1か月に1回と言わず食べられるようになるわけだから、まぁいっか」



ーーやがて、眠たくなったかのあが潮の太ももに寝転び、寝息を立て始めた。

潮はその頭を撫でながらメモ帳に小説のプロットを書き上げ、燦は一度ログハウスを出て行って用事を済ませたり、バンビはスマホで漫画を読み始めたり。


そうこうしている内に、クッキーの焼き上がる良い香りが漂ってきた頃。

様子を見に声を掛けたおネギの声につられて、かのあが起き上がる。



「んー…?クッキーできた…?良い匂いするー…」


「お。20分くらいで丁度良い仮眠だったなかのあ」


「めっちゃ心地よく寝たー…」


「おはよう。ーーーおや、お嬢ちゃん。手足が冷えてないかい」



幼い孫を見つめるかのような視線を向けていたおネギが、かのあの顔色を見てキッチンへと戻る。

その手に暖かい飲み物を携えて椅子に腰掛けると、おネギはかのあにそれを優しく差し出した。



「いいかいお嬢ちゃん。身体の末端っていうのはね、お嬢ちゃんが思ってるよりずっと滞りやすいんだよ。

砂で道を作ったことがあるかい。水が動かないと端まで進まないだろう」


「は、はぃ…」


「飲みなさい。その後手のひらを揉んであげよう」



蜂蜜と柚子の香りが鼻を抜け、リラックスするかのあ。

その手を取り、おネギはマッサージを始めた。



「ふぅん…毎日頭と手を良く使ってるようだね。いいかい、身体の中心というのはねぇ、お嬢ちゃんが思ってるよりずぅっとフルで活動し続けてるんだよ。

この動力が身体の端から端まで稼働し続ける為のエネルギーを、あんたが毎日毎秒作り出すという選択肢を取ってあげなきゃならない」


「ほぇ…」


「痛い箇所があれば、手のひらはそこを摩るだろう。反対に自分の体をわざわざ痛めつけてしまう時は、それは心が辛いと叫んでる証拠だよ」


「…なるほど…」


「身体っていうのはね。動かそうと思えば常に従ってくれる。こんなにもあんたに従順なもんが他にあるかい。大事にしなさい」



有難いお叱りを受けているかのあを見下ろしていた潮。

それに気が付いたおネギの指導の矛先が、今度はそちらへ向く。



「潮!あんたも他人事じゃないんだからね」


「はい、すんません」


「あんたがクッキーを食べたいっていうんで、あんな可愛らしいお嬢さんまで巻き込んで。誰かに何かを作ってもらえるっていうのはねぇ、当然のことじゃないんだよ。良く考えて何事も行動しなさい」


「もう仰る通りです」


「あ、おネギさん、違うんです!あの、私が作りたくて…!」


「お嬢さんね。潮をかばうなんて勿体ない言の葉の遣い方をするんじゃありませんよ。お嬢さんは与えるエネルギーと与えられるエネルギーが良く循環してる。潮は言の葉を与えるエネルギーは強いが、与えられてこなかったからね。そのことに敏感に気が付いて、お嬢さんは日頃から良くこの子に与えてあげようと思うのだろうが…」



甘やかしちゃだめだよ。

ぴしゃりと言い放たれ、周は思わず背筋を正した。



「潮自身が与えられたものを巡らせる意識を持たなきゃならん。この子は溜め方を知らないから、飲み干せば空になってしまうんだよ。そのやり方が分かるようになるまでお嬢さんが与え続けていたら、途方もなく疲れてしまうだろう」


「あいたたた…耳が…耳が痛いですおネギさん…」


「いくらご飯でお腹を満たしたって、満たされないもんはある。それをあんた自身が満たしてあげようと思わないと、このお嬢さんみたいな優しい子が苦労するんだよ」


「はい…分かってます…」


「手のかかる子だよ本当に」



悪態つくように言ったおネギだったが、その表情はとても優しい。

周はマッサージをするおネギの横に立ち、微笑んで言った。



「……おネギさん…潮のことが大事で仕方がないんですね」


「何を言うんだい。見捨ててもいいんだがね、この子が懐いた猫みたいに忘れた頃にエサくれってすり寄ってくるんだよ」


「ふふ」


「あげたってまた空腹になって何回も来るくせに、まったく」


「いたたたたた」



頬を軽くつねられて痛がる潮を見て、かのあが噴き出す。

それを見た潮がかのあの頬をつねる。

子供のようなやり取りをする2人を、燦とバンビは興味深そうに見つめて言った。



「何か、潮ってこんな子供っぽいところもあるのねぇ。案外かわいいじゃない」


「仲良しなんだね、2人とも」


「いったーーー!!!ちょっと待って真っ赤になってないコレ?!許せない!このーーーー!」


「いだだだだだだだやめんかこのクソガキぃ!」


「誰だい汚い言葉を使うのは!」


「やば…ごめんなさいごめんなさい!!胃のツボは押さないでごめんなさいあ゛ーーーーーーーーー!!」



光の速さで潮の靴を脱がせ、足裏のツボを押し始めたおネギ。

悶絶する潮を見て大満足のかのあ。

楽しそうな様子を見て、嬉しそうな周、バンビ、燦。


そうしている間にクッキーが焼き上がり、皆でティータイムを過ごした。



「うわー…!美味しい!美味しいですおネギさん!」


「そうだろう。私が私の為に作った美味しいクッキーだからね。分量は完璧さ」


「うめーーー…やっぱこれだわ」


「うまーーい!!ほんとこれ何個でも食べちゃう!あっ…この前は全部食べちゃってごめんね、潮…」


「そんな思い出したように……まぁ、いいよ。これでいつでも作ってもらえるようになったし。でも次何か勝手に食べたらバンビとジム行って腹筋作るまではなやぎには入れないから」


「ぎょぇぇぇーーー!!!絶対食べません!!」


「ならよし。というわけでバンビもおネギさんも燦も、こっちの都合で色々協力してもらってすんませんした。ありがとう」


「来ると聞いた時は何事かと思ったがね。こんな可愛らしいお嬢さんに色々教えられて、嬉しかったよ。かのあちゃんも見ていて面白くて、新鮮で良かった。帰りも気を付けて帰りなさい」


「あたしも皆で収穫できて楽しかったわ!反省と言わず、また気が向いたらいつでも連絡して頂戴ね!」


「俺も用があって来ただけだし、何より楽しかったし。全然大丈夫だよ」



軽く笑って言った燦に、潮がはたと気が付いて小首を傾げる。



「そういえばきちんと聞いてなかったけど。燦の用事って何だったんだっけ」


「まぁ…大した用事じゃないよ。さっきかのあちゃんが寝てる間に終わらせてきた」


「裏に祠があってね。そこの空間がこの子を深く気に入ってるんで、定期的に声を届けてもらってるんだよ」


「うぇっ!!何その話!?超絶ファンタジーじゃない?!すご!てかどういうこと?!」


「すごい…!空間が…?!そういう不思議なお話大好きです!また詳しく聞かせてください!」


「おや。聞かずとも、お嬢さんだってよく祈りを捧げてるんだろう。あんたの傍にいると心地良い音を感じるよ」


「えっ!?どうして分かるんですか…!確かに、神社でよくおばあちゃんと一緒に祝詞をあげてて…」


「分かるさ。ただ長く生きてるわけじゃぁない」



不思議な話をするおネギに、周の瞳が輝く。


そんな話をしている内にあっという間にクッキーは空になった。

「そろそろお暇しましょうかね」と立ち上がったバンビに続いた潮へ、おネギがさっと布袋を差し出す。



「ほら。朝作っておいたクッキー。これであんたに何かあげるのは最後だよ」


「うおー。わざわざ作ってくれてたんすか?おネギさん…ツンデレ属性じゃん…」


「何をわけの分からないことを。本来はこれが欲しい、と感じたものは自ら習って得ていくもんなんだよ。充分に愛情を貰ったなら、お嬢ちゃんに必ずお返ししなさい」


「はい…全くもってその通りです…」


「与え合うのは良い関係性だ。だがあんたの満たされないもんはそれだけじゃ学びがない。良く考えて、大切なお友達に日々感謝するんだよ」



ぽんぽんと優しく背中を叩かれ、潮が深く頷いてみせた。

受け取った布袋を大事に鞄にしまった後、おネギさんへ熱い抱擁を送る。



「何だい何だい!やめないかい!!」


「え?愛情お返し中…」


「わー!かのあもかのあもーー!!!」


「じゃぁ私も~!」



潮、かのあ、周に抱きしめられたおネギ。

解放された後よろよろとソファに寄りかかり、大袈裟に溜息をついた。



「まったく…若いエネルギーは、老体には激しすぎるねぇ…」


「まだまだ長生きしてくださいよ」


「ふん。あんたらが心配で行くに行けないってもんだ。早く成長してゆっくり休ませておくれ」


「じゃぁもうちょっとゆっくり成長しよっかなー」


「ばかなことを。此処がより良い場所になれば、皆がそう苦しんで生きることもないというのに。あんた達が早く成長すれば、自ずと皆がゆっくりできるんだよ」



早く成長しなさい、と叱咤され、肩を竦めた潮。

それから、鮭や鰹などを受け取って、一行は山を下りる準備を始めた。



「あー。相変わらず居心地良いからずっと居たくなるわー」


「あんたらとは時間の流れが違うんでね。気付いたらもう昼前じゃないかい。此処にいたって私は一人前しか作らないよ。さっさと下りてバンビに何か作ってもらいなさい」


「生地寝かせてるからいつでも焼けるわよん」


「「「やったー!」」」


「燦も食べてくでしょ?」


「いいの?やったー」



大量の恵みの入った籠を燦とバンビが背負い、3人がその後ろにつく。

おネギは5人それぞれの肩にぽんぽんと優しく触れると、両手をしっかり合わせた。



「気を付けて帰るんだよ」


「はーーい、ありがとうございました」


「ありがとうございました~!」


「おネギさんありがとうございましたーー!!!また来まーっす!!」


「ふん。来たって何もありゃしないよ」


「ばあちゃんまたね」


「おネギさんいつもありがとーん♪」



見送られながら扉の外へ出て、姿が見えなくなるまで大きく手を振りながら帰路を行く。

最後まで外に出て見てくれていたおネギ。

やがて見えなくなると、かのあと周の心に何となく寂しさが募ってきた。



「すっごいあったかい場所だったな~…もう戻りたい…」


「マッサージめっちゃ気持ち良かった!!もう一回やってもらいたいー!!」


「人の為にやりたくないって言う割に、結局色々やっちゃう人なんだよねー」


「おネギさん、アタシだけで来た時はあんなに口数多くないのよ?よっぽどかのあちゃんと周ちゃんが可愛かったのねぇ」


「おいバンビ、一人忘れてるよ。此処に可愛い潮ちゃんがいるよ?ねぇねぇ」


「あんたはいっつも説教されて終わりじゃないの」


「いや、ほら。多分あれだよ、できない子ほどかわいいって言うし。実は案外可愛いって思ってくれてるんだよおネギさんも。そうだよね、燦」


「うん。あの人実は潮と俺2人で並んで撮った写真、自分の部屋に飾ってるよ」


「えぇぇえぇぇぇ」


「本当にうざがってたら俺の写真だけ飾るはずでしょ」


「びょええええ…おネギさん、凄まじいツンデレ属性…!恐るべし…!」


「何そのエピソードかわいい~!」


「やばい、何か意識しちゃってもうおネギさんとまともに喋れないカモ…」


「えーなんかちょっとジェラっちゃうじゃなーい!!ちょっと燦!アタシの写真も黙って飾っときなさいよ!」


「分かった分かった。やってみる」



ーーーそうして、わいわい楽しく山を下りて行く一行の間を、穏やかな風が吹き抜けていく。

帰路を優しく照らす太陽の光が、いつまでも5人に寄り添っていた。



「山を下りたら丁度ランチの時間ね。アタシのお店で食べてく?好きな物作るわよ!」


「「「わーーーい!!」」」


「やったー。俺マルゲリータ」


「いいわよ」


「うおおおおおおおおおかのあも食べたいっすーーー!!」


「私も食べたい!焼きたてのマルゲリータ…想像しただけでお腹なっちゃうな~」


「ふん、本気のマルゲリータを喰らわせてやるわよ。覚悟しなさい」


「「「やったー!」」」








*   *   *   *   *   epilogue








(実は、前にバンビと一緒に女装してはなやぎ館にお邪魔しようって話が出てたんすよ)


(そうそう、バンビの店のテイクアウト持って行く時にどうかって話だったんだけど。結局予定が合わなくてテイクアウトだけだったんだよね)


(そうねぇ。またタイミング見ていつかやりたいわね!)


(え゛ぇぇぇーーー!!!そんな神イベントが保留にッ?!めっちゃお願いしたい!いつ?!いつきます?!)


(楽しみ~!皆もめちゃくちゃ喜びますよ!)


(あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない。かわいいお洋服新調しなくっちゃ♪)


(俺も何か、美味しい手土産持ってくっすよ。かわいい服も探しとこ)


(そうと決まったら、何食べるか決めて頂戴ね!)


(この前持って行ったテイクアウト超好評だったよ)


(そうそう!サーモンとチーズのリゾットと、あとタリアータ!それに茄子とトマトが入ったボロネーゼ!サラダも美味しくって大満足でした!)


(もうやだーーー!!!当たり前じゃなーーーい!!!このアタシが作ってるのよ?美味しいに決まってるじゃないのー!)


(でも正直さー。全然イタリアン関係ないんだけどさー…たまに会ったら作ってくれる、メニューにないハンバーガーが好きなんよなー…)


(ちょっと待って!!ぼそっと言ったけど!何それ食べたい!)


(バンビさんの作るハンバーガー…美味しそう…!)


(いいわよ?あんた本当にあれが好きねぇ。厨房貸してくれるなら材料だけ持って行くけど。皆ハンバーガーで良いの?)


(食べまーーーっす!!)


(食べます~!すごーい!出来立てハンバーガーがはなやぎで食べられるなんて!最高だ~!)


(はなやぎ様様バンビ様様なんだけど!!)


(やだーーん!!持ち上げ上手ねあんた達。じゃぁ当日は他にも適当に作っちゃうわねーん)


(((わーい!)))



(燦、あんたも何か持ってくんでしょ??)


(俺、今本業と別で職人と一緒にリネン生地で服作ってるんすよね。今回それ持ってお邪魔しようと思ってて)


(服を…?!燦くん、色んなことやっていらっしゃるんですね)


(ばあちゃんがあんな感じだから、どうしても興味持っちゃって)


(この前リネンシャツプレゼントしてもらったけど、マジで着心地良すぎて一生着てるんよなぁ)


(そうそう。潮にあげたみたいな大き目のリネンのシャツか、お料理とかする人にはエプロンにしようかな?と思ってて。かのあさんとあまねんさんはどっちがいいすか?)


(良いんですか?じゃぁ、エプロンで!わ~!ほんとに嬉しい!楽しみだ)


(かのあはシャツでお願いしまーす!潮とお揃いのやつで!!)


(やめろや)


(了解っすー)




(あの、ところで…お山の祠の話もう少しだけ聞いてもいいですか…!)


(まぁ不思議すぎてスルーできんわな)


(んー。いや、ほんとにアニメとか漫画みたいな感じでは全然なくて。でもとりあえず、俺が特定の言霊を放つと、地下に溜まってるものが浄くなるらしいっす。俺も良く分かってないけど、他にできる奴がいないんだって)


(ほわぁ…自然を大事にするおネギさんがお山に住んでて、その下に溜まってる何かを浄められる燦くんがそのお孫さんっていうのも何か…運命的なものを感じますね~…!)


(分かんないけど、そういう何らかの見えない采配があるんでしょうね。水が綺麗で美しい場所なんで、俺も来ると癒されるからウィンウィンっす)


(てか、山の祠って聞くだけでもうすごいよな)


(部屋に籠って喋りまくってるかのあが一生かけてもエンカウントしないイベントなんだが?!!)


(それぞれ適材適所のお役目ってのがあるらしいっすよ。かのあさんにはかのあさんしかできない仕事があるってことです。俺も此処に来て祈ってるだけだし)


(そか…じゃぁ引き続きがんばろーーー!!!)


(お前見てたら元気なるわホント)


(話が早くて助かるね)


(聞き分けの良さ100、理解力は0)


(何だと潮この!!)


(事実だろやんのかこの!)


(仲良しねぇ2人とも)








幕間 「彼方の山水を想ふなら」 了









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物語内において、

以下の動画を参考にさせて頂きました


リネンの服

→https://youtube.com/shorts/L6yNKyPBs1I?si=b8YEhm_2NTIms0iX

* 安穏薬草 暮らしのVlog 様


リネンの服ほしい…!手仕事神…!→リネンの服にしよう

単純明快に思いついたまま日々書き連ねております


あぁ…リネンの服ほしい…すごい…

縫製って本当に、特別な技術ですよね 素敵



2025.10.10 日三十ひさと 皐月さつき








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