第19話(2)
「ようこそ人間の皆さん!此処は世界樹の入口、根の国。あなた達はこの世界に迷い込んだ旅人…まずは世界に馴染んでもらう為に、ジョブ選択をして頂きます」
ーーーファンタジーな空間の中。
大きな樹の下に案内された潮達は、石造りの不思議な建物へと移動しながら、エルフの装いをしたスタッフから更なる説明を受けていた。
「クローゼットにそれぞれ入って頂いたら、予め体型に合わせてご用意しております衣装の中から、希望のジョブの服装にお着替えをお願いします。
勇者、巫女、戦士、魔導士、薬師、賢者、狩人、踊り子、武闘家、吟遊詩人、魔獣使い、
の、11のジョブの中からお選び頂けますよ」
石造りの建物からは、様々な装いに身を包んだ人々が皆一様に笑顔で出てくる。
1人で世界を楽しんでいる人や、複数人で一つのパーティとして行動しているグループもいる中で、未だ着替える為に順番待ちをしている人たちの方が落ち着かない気分でいるようだった。
「では、順番にご案内します。どうぞこちらへ」
どきどきしながら案内されるままに仕切られた試着室へと入ると、性別や体格に合わせて衣装が並べられていく。
その中からジョブを選択して、着替えの時間を取った後。
石造りの建物から出てすぐのパーティ待機所にて、潮は本日行動を共にする仲間たちと改めて合流した。
「う、うおーーー…!セリーママ美しい…さすがの三鼓家…」
「鈴菜さん美魔女すぎる…」
「ほんとに?ありがとう。あら、ちょっとやだ。蛍ちゃん、リボン崩れちゃってるみたい」
「わたくしめにお任せください」
踊り子の衣装を着た芹の母ーー鈴菜を始めとして、魔導士のかのあ、薬師のおその、狩人の虎哲。
それから吟遊詩人の潮と蛍が、それぞれの服を見やって各々正直な感想を溢した。
「おい待て、このパーティ勇者も賢者もいなくて終わってるんだが」
「吟遊詩人被りマ?」
「すみませーん、魔導士がゴミすぎてダンジョン攻略できないのでチェンジでお願いしまーす」
「はぁ?!こいつかのあのこと舐めすぎ!!かのあ、魔導士としては最高ランクでえげつない魔力の持ち主っていう設定なんだから!!生物として500年目だから今!!500歳の最強女神だから今!!」
「あぁ…こわ…既になりきってますやん…すんません…。もうそういう設定で生きてるのね。オッケー」
「女神様でしたか…」
魔導士のかのあが大仰に杖を振り、鼻息荒く胸を張る。
そんな様子を楽しそうに眺めていた虎哲を見て、潮たちが感嘆の声をあげた。
「てか虎哲さん狩人の衣装ハマりすぎでしょ」
「兄やんも狩猟免許あるんでしたっけ?」
「まぁ一応ね。だから大丈夫、何かあった時には俺と春一が君たちの衣食住を保証できるから。任せて」
「僕らのパーティの狩人が頼もしすぎる件について」
近くを通りかかったエルフに写真を撮ってもらい、すぐさま芹と周に送る。
すぐに「すごーい!」「遊園地って聞いてたはずなのにめちゃくちゃファンタジーで草」と返ってきたのを確認して、面々は楽しそうに続けた。
「いやー、セリーとあまねんは絶対巫女さんだよね。最強加護でしょ」
「てことは春さんが武闘家やろなぁ」
「じゃぁ那由多くんが賢者か」
「え!!待って!もしかして全員集まったらこのパーティめちゃくちゃ強い説有る?!」
「じゃぁやっぱり吟遊詩人2人もいらないでしょ」
「いやいや。俺の考えた最強パーティを歌だけじゃなく文字と絵で後世に語り継いでいく為には必要なんですよ我々が」
「そうですよ。小説と漫画で1000年後まで語り継いでいくから。任せて」
「ほーん…ほな必要かぁ…」
「丸め込まれてて草」
ーーそんな話をしていると、最後のパーティメンバーである萌が着替えを終えてやってきた。
猫耳の帽子を被り、可愛らしい衣装に身を包んだ萌がアイテムである杖を持って恥ずかしそうに笑うと、現実世界のはずなのにキラキラとしたエフェクトが見えるようだった。
「じゃーん。見て見て、うさぎちゃん召喚だよー」
小さなうさぎのぬいぐるみを肩に乗せて言ったその姿に、潮達以外の周囲の人々からも黄色い声が上がる。
「あハァーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「萌ちゃーーーーん!!言葉になりませんわありがとうありがとうありがとうありがとう」
「ん゛がわ゛い゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「公衆の面前で本域のカワイイやめてねー」
「やーん萌かわいいー!我が孫ながらほんとにかわいい」
「えへへー」
「萌めっちゃ似合ってるよ!春一と芹ちゃんにお写真送るから虎哲おじちゃんの方見てー」
大はしゃぎの蛍、おその、かのあを宥める潮。
孫にめろめろな鈴菜、ポーズを取る萌を激写する虎哲。そしてもう一度全員で並んで写真を撮ってもらったり。
大盛り上がりしていても周囲も同じような空気な為、特別浮くこともなく世界観に浸って楽しむことができた。
そこへ、案内人のエルフがにこにこと微笑みながらやってくる。
「皆さん、お着替えお疲れさまでした。とってもお似合いですね!それぞれのジョブに課金アイテムがございまして、あちらの茅葺屋根の建物でお買い求め頂けます。特典としてプロのカメラマンが撮影した写真をデータでお渡しすることができますので、ご参考までにお伝えしておきます!」
「うぐぅ…!魅力的すぎる…!」
「ちなみに課金アイテムネットでずらっと見てみたけど、ガチでよかったよ!!」
「魔導士の杖のクオリティえぐかったよなぁ」
「私も見たけど勇者の剣マジでえげつないよ。ソシャゲのSSR級の武器みたいなやつだった」
「ファンタジーがちもんの職人が手掛けてるやつですこれ」
「あ。ちなみに芹ママの衣装と萌の衣装だけ既に最高額の衣装で予約してますんで。既に課金済みです」
「え待って、だよね?!あれ…?鈴菜さんと萌ちゃんの衣装、他のパーティの踊り子さんと魔獣使いより豪華じゃね…?ってずっと思ってた!!」
「そうなの?潮ちゃん。色々気を遣わせちゃったと思ってたのに、お金までたくさん使わせちゃって。後でその分も払わせてね」
「潮ちゃんありがとー!」
「あ、いや…すんません…私がただ最高課金の服を2人に着せたかっただけなんですけど…踊り子と魔獣使いとかいうぴったりの衣装選んで着てくれてありがとうございました。というわけで最後に写真撮る時間があるんで。記念に持って帰ってください」
申し訳なさそうな鈴菜に、もっと申し訳なさそうな潮が頭を下げる。
一通り皆の会話が終わったのを見計らって、案内役のエルフが改めて口を開いた。
「皆様お衣装ばっちりですので、これより世界樹の旅に出て頂けます!
ーー世界樹には9つの世界があります。マップをお配りしますので、それぞれのワールドの特性を体感して頂きながら、今日という日の旅路をお楽しみください!
分からないことがあればお近くのエルフにお尋ねくださいね。あなた方を導いてくれることでしょう」
ファンタジー世界で見るような羊皮紙には、大きな世界樹の絵と共に9つの世界の名前と詳しい道のりが描かれていた。
マップを受け取ると、「良い旅路を!」と言ってエルフが離れていく。
その姿に御礼を告げた後、全員が改めて辺りを見回した。
海の中にいるような広い部屋の中。吹き抜けの真ん中に聳え立つ大きな樹から伸びた根は力強く、全員の目にどこまでも神秘的に映った。
「いやー…遊園地に招待してもらったから、子供の時の気分で来たんだけど。
想像と全く違う近未来的な遊園地でずっと度肝抜かれてますわ。てか最早遊園地なのか此処は?アクティビティとして新しすぎんか」
「はい。めっちゃリサーチして、今流行りの没入型遊園地に招待させて頂きました。此処なら全年齢楽しめるでしょと思って。萌がばっちり楽しめるキッズゾーンもあるし」
「リサーチ完璧すぎる。最高だよ。うきうきが止まらん」
「まぁ、こんなファンタジー世界に来たからには遊園地だなんてメタ発言はやめて。私たちは今旅人なんだから。とりあえず行き先決めようぜい」
「うんうん。大事だよね入り込むの」
「遊園地メタ発言マ?」
「ちなみにかのあめっっっっっちゃテンションあがってるから!!どこからでもかかってこい!!ダンジョンないの!?」
「お化け屋敷はかなりダンジョンっぽいって聞いてるけど。どこから行こうかね」
邪魔にならないところでそれぞれがマップを広げて、遊園地の世界観を頭に通していく。
「そういえば最初、ここが根の国だって言ったよね。世界樹って言ってたから、北欧神話のオマージュかと思ってたんだけど…根の国は日本神話じゃないっけ?」
「全ての神話は一つであるって説もあるし、ここの遊園地はそれ推しなのかもよ」
「ほーん」
「あ、潮ちゃん見て。あそこ!すっごく大きな、キレイな着物着てるひとが見えるよ!」
「おーマジだ。そういえば…あまねんが教えてくれた祝詞の中に、〔根の国、底の国に坐す、速佐須良比売といふ神〕っていう文章があるから…もしかしたらそうなのかもね」
「おひめさまなの?とってもステキ!」
「なんか、何が何やら全然分かんなくても世界観作り込まれてるんだなぁってのが伝わってくるわ」
「色んな話混ぜ込んでんのかな?独特な世界観の中だなー」
そんな話をしながら、楽しそうに移動をしている他のパーティの後に続こうと、早速行き先を決めていく。
「えーと。じゃぁまずどこ行く?ここが根の国っていうなら、とりあえず上目指して中津国行く?」
「あれ。北欧神話でいう中津国ってどんなとこだっけ」
「ミズガルズがイコールで中津国なんじゃなかった?いわゆる人間界」
「みんな博識なのねぇ。マップで見たら、中津国はお土産を買うゾーンみたいだけど」
「んー。お土産はさすがに最後かぁ。じゃぁいっそ下行く?」
「お嬢さんたち。一応根の国にもアトラクションあるみたいだよ」
「あ、ホントっすね。じゃぁもう下から攻めて行って、その後根の国のアトラクション行ってから上目指す感じにしますか」
「賛成ーーー!!めっちゃ楽しみ!待って、丁度一番下の黄泉の国がお化け屋敷ゾーンなんだけど!!」
「お、おばけ…?!潮ちゃん、萌ちょっとこわいかも…」
「じゃぁ、その間私と一緒にキッズゾーン行くか」
「うん!」
「お化け屋敷終わったら連絡してよ」
「ほーい」
「そしたら、俺も萌と潮ちゃんと一緒にキッズゾーン行くよ。おばちゃんホラー大好きだもんね確か」
「あら。2人がついていてくれるなら、甘えちゃおうかしら…本当にいいの?」
「もちろんっすよ。ホラー好きって聞いてたんで、お化け屋敷は絶対行ってもらおうと思ってて。ちなみに結構怖いらしいんで頑張ってください」
「最強魔導士の私がいれば、どんなダンジョンも楽勝なんで!!セリママ私に任せてくださいっす!!」
「ありがとう、頼もしいわねかのあちゃん!とっても楽しみ」
「踊り子と薬師と吟遊詩人引き連れた魔導士がダンジョン攻略するのほんま草」
「最強で草」
「いや待って、その踊り子装備も最強だから。最強2人だからいける」
「ほな安心か…」
行き先を決めて、「じゃぁまた後で!」と、かのあと蛍、おそのと鈴菜の4人は黄泉の国行の小型ジェットコースターの方へと歩き始めた。
その後ろ姿を見送った後、潮と萌、そして虎哲はキッズゾーン行の可愛らしいリフトへと乗り込んだ。
「見て、ここに乗せる虫さんが選べるんだって!萌はテントウムシさんにしようかな!」
「めっちゃかわいいじゃん。じゃぁ私はカラスアゲハにしようかな」
「俺はオニヤンマにしよう」
「キッズゾーンはお土産ゾーンの横にあるみたいなんで、一個上の階ですね」
「そうみたいだね。海の中にあるトンネルを虫が飛んで行くの…なんか不思議な光景だなぁ」
螺旋状に上に向かうリフト。
それぞれの乗り物に乗って飛ぶように進んで行きながら、3人はゆっくりと地上を目指した。
* * * * * epilogue
(ママたち、楽しんでるかな~)
(大丈夫。楽しそうな写真が送られてきてたよ、ほら)
(わ!ほんとだ!ママもあまねちゃんもかわいい!)
(だから萌もたくさん楽しんで、今日のことママに笑顔で教えてあげてね)
(うん!)
(お待たせ。ミニジェットコースターがもうすぐ出発するらしいから乗り込んじゃおうか)
(わーい!あのくじらさんのお顔のやつ?萌、乗りたかったの!)
(よっしゃ。俺と乗るか萌!潮ちゃんはどうする?)
(あ、そしたら私写真撮るっすよ。終わったら入口のとこで待ってますね)
(了解!いるかのコーヒーカップは2人で乗って。俺が写真撮るよ)
(ありがとうございます)
潮
ー動画を送信しましたー
〔俺のパーティのかわいい魔獣使いが遊園地を全力で楽しむ姿が最強すぎる動画がこちら〕
蛍
〔えぇ…?〕
〔これは無料で見てもいいんですか?動画投稿主ではなく本人への投げ銭制度はありますか?〕
おその
〔クッソかわいい〕
〔守りたいこの笑顔〕
〔お化け屋敷のダンジョンが進まなさ過ぎて休憩しながら進んでる我々には最高の癒しですありがとうございました〕
潮
〔ふぁ?そんなムズいの?〕
〔魔導士のかのあが最弱すぎるだけじゃなくて?〕
蛍
〔いや実はそうなんだよね〕
〔難易度が云々じゃなくて、かのあがビビりすぎて全然進まなくて草なんよ〕
〔鈴菜さんが溢れ出る母性でずっとかのあのこと宥めてくれてるんだけど、我々はかのあのこと「足手纏いだ、置いていこう」ってずっと助言してる〕
潮
〔そんなパーティは嫌だ〕
おその
〔でもダンジョン自体はマジで良くできてるしめっちゃくちゃ面白いぞ〕
〔さっきステージ1の蜘蛛の糸ようやくクリアしたんで、ここから深層ステージ2クリアできたらゴール ちなめっちゃ怖い)
潮
〔おつ あ、ボーナスステージ見つけて宝箱ゲットしたら、お土産コーナーでおもちゃの勇者の剣もらえるらしいからよろしく〕
蛍
〔行けたら行くわー〕
潮
〔行く気ない返事やめてねー〕
蛍
〔ガチの地獄絵図で作り込まれてて結構怖すぎるんよすまんな〕
セリー
〔萌、すごい楽しそうで私も嬉しい 動画ありがとう〕
〔がっつり大人向けのお化け屋敷から、子供たちが楽しめるコーナーまでかなり幅広いんだね〕
あまねん
〔えー!!萌ちゃんめちゃくちゃかわいい~!〕
〔なにこのお衣装!最高!すっごい似合ってる!〕
〔広いキッズゾーンあるの助かって良いね!〕
潮
〔いやまじでそれな てかキッズゾーンだけで1日楽しめるわこれ〕
蛍
〔次の底の国も、龍の背に乗ってワールド探索みたいな感じのアトラクションみたいだからさ〕
〔萌ちゃんには引き続きキッズゾーンで遊んでもろて。お化け屋敷終わったらわいがキッズゾーン行って交代しますぜい〕
おその
〔鈴菜さんも一旦休憩もかねて代わるって仰ってます〕
潮
〔了解 んじゃ終わったら連絡してくれい〕
〔では私はあの楽しそうないるかのコーヒーカップに萌様と乗ってきますね〕
蛍
〔ご褒美ええなぁ いてらー〕
セリー
〔みんな、本当にありがとうね〕
あまねん
〔こっちも楽しませてもらってます!お土産話待ってるね~!〕
おその
〔そりゃ何よりだ 帰ってからもいろんな話するの楽しみだなぁ〕
潮
〔お互い全力で今を楽しみましょう〕
〔じゃ!またのちほど!〕
第十九話(二) 了
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北欧神話について、
下記の動画を参考にさせて頂きました
上級騎士なるにぃ 様
☆https://www.youtube.com/watch?v=ZtHz7vM1jWk
しんりゅう / ファンタジー&神話研究所 様
☆https://www.youtube.com/watch?v=EaOYG5DMC0c
~遊園地世界観メモ~
黄泉の国 お化け屋敷ゾーン
底の国 灼熱と極寒の二極ゾーン 龍の背に乗って巡る
根の国 エントランス 渦巻くウォータースライダーゾーン
(名前なし)暗い岩穴を旅する迷路ゾーン、鍛冶屋
中津国 お土産コーナー、フードコート
(名前なし)海の上のジェットコースター 霧や丘の遠くに巨人の影
(名前なし)雲のトランポリン 中津国までの長距離滑り台 神使や天使の世界
天津国 空飛ぶブランコ お宿
高天の原 天空の観覧車 金色の館が立ち並ぶ食事処
思い付きで書いておいてなんですが、
一体どれだけの規模の遊園地なんだろう…ごくり…
2024.9.9 日三十 皐月




