第18話
ー招待状を送信しましたー
対象者:セリー あまねん
プラン作成者:潮
〜慰安旅行へレッツゴー〜
おその
〔お なんやこれ〕
〔新機能?〕
潮
〔そうそう〕
〔なんかトークに新機能追加されてたんで使ってみた〕
〔招待状が支払い証明書みたいな感じになってるらしくて、招待者はこれ持ってるだけで全てのプランを楽しんでもらえるようになってるんだってさ〕
蛍
〔いいね〕
〔それはそれとしてプラン名えぐいけど、あなた本当に文字扱ってる人で合ってる?〕
潮
〔は?漢字とひらがなと英語使えてたら充分だろうが〕
〔求めすぎやめてねー〕
ープラン名が変更されましたー
〜女子旅!仲良し2人の癒し旅へレッツゴー〜
蛍
〔まずレッツゴーをやめろ〕
潮
〔おい!何だこいつ!プラン名でちくちく突っついてくるなよ!重要なのは中身だろ!〕
〔こちとらタイトル考えるのが一番苦手なんだよ!〕
ープラン名が変更されましたー
〜癒し旅を共に…じょしたびっ!〜
蛍
〔普通にタイトルからつまんなそうなので見るのやめときますね〕
〔お疲れさまでした〕
潮
〔タイトルで中身決める民ムカつくからやめてねー〕
ープラン名が変更されましたー
〜癒しの旅へお連れしませう。徒然じょしたび部〜
蛍
〔ほーん?ちょっとええやん〕
潮
〔ほなこれで〕
おその
〔えぇ…?一体どこのどの部分が刺さったんだ…?〕
〔てかこれ何の時間?〕
セリー
〔招待状とかいう謎システム追加されたんだ 色々できそうでいいね〕
〔タイトル評論家さんの匙加減難しくて草〕
あまねん
〔わ〜!なんか面白そうな招待状来てる!うれしい!〕
蛍
〔おお 主役が登場しましたな〕
潮
〔ようこそ主役たち〕
〔はい、というわけで早速説明させて頂きます〕
〔あまねん、芹。日頃から我々、君たちには非常にお世話になっていますね〕
セリー
〔いや、いますねって言われても〕
〔まぁ どうだろうね…お世話…まぁ…お世話、なのか…な?〕
〔楽しくやってるけどね〕
あまねん
〔私って、皆のお世話してたの…?!〕
〔だとしたらめちゃくちゃ楽しいお世話だし、ウィンウィンだから大丈夫だよ〜〕
潮
〔は?天使ですか?君たちは〕
〔そこでですね、急ではありますがバレンタインとホワイトデーの御礼も兼ねまして〕
〔あまねんと芹に日頃の疲れを癒やしてもらうべく、慰安旅行への招待状を送らせて頂きました!はい拍手〕
蛍
〔88888888888〕
おその
〔8888888888888888888〕
あまねん
〔ぱちぱちぱち〜!楽しみだな〕
セリー
〔えーと〕
〔喜んでるところ申し訳ないんですが〕
〔日帰りじゃないと厳しいんですが、そのあたりは大丈夫ですか?〕
潮
〔はい、芹さん。今あなた、萌のことを気にしていますね?〕
〔安心してください。なんと2つ目のプランをご用意しております〕
ー招待状が送信されましたー
招待者:蛍 おその かのあるふぁ
プラン作成者:潮
〜誰が一番萌を笑顔にできるか、遊園地で決戦と行こうじゃねぇか…旅行〜
潮
〔はい というわけで〕
〔芹とあまねんが旅行に行っている間、萌は我々と全力で安全に遊園地へ行きます〕
蛍
〔おぉー〕
〔タイトルださ〕
潮
〔このド直球タイトル評論家の横っ面を振りかぶった平手でパーーーーーンッ!!〕
おその
〔勢い良くて好き〕
蛍
〔すまんな、職業柄…〕
潮
〔ほぼ同種だろうが貴様〕
〔自分の作品のタイトル考えるのだけで毎回丸3日悶絶してる私の気持ち考えろ〕
〔旅のプラン名くらいささっと適当に書かせろや〕
蛍
〔そういえば前に新作出すって言ってた時、まじで丸3日部屋から出てこなかったけど〕
〔あれタイトル考えてたんだ…〕
潮
〔案出てこなさすぎてゲームしてたけどね〕
おその
〔タイトルはともかくとして非常に良いと思います〕
潮
〔はい そして何と今回は協力者がいます〕
〔芹の母ちゃんに一緒に泊まりで遊園地行きませんかって誘ったら、是非行きたいとのことだったので〕
〔最強の助っ人ゲットしております〕
〔というわけで、芹は心置きなく楽しんで来れるというわけですね〕
セリー
〔何それ聞いてないけど〕
潮
〔サプライズしたいんで内緒でお願いします!って言ったらオッケー!っていうかわいいスタンプ返ってきたよ〕
セリー
〔草〕
潮
〔ちなみに何故かその流れで、虎哲さんも来てくれることになりました〕
〔888888888〕
おその
〔今世紀最大のなんでやねん〕
〔8888888〕
蛍
〔もろこし兄やん!めっちゃ久々じゃない?〕
〔88888〕
潮
〔メッセ送った時に丁度芹のお母さんのところにお米届けに来てたらしくてね〕
〔その流れで今回の話をして、見事虎哲さんが萌の肩車役を引き受けてくれることになったらしい〕
〔遊園地の間だけ一緒に来てくれるそうな〕
〔助っ人の助っ人現るってわけですねい〕
おその
〔え?てかマジでめちゃくちゃ重要じゃん〕
〔これで我々が早々にへばった時に、萌ちゃんが「萌、すっごく楽しかった!もう帰ろうか!」なんて気遣わなくて済むな〕
蛍
〔帰ろうとしてくれるの解像度高すぎて草〕
〔屋台飯パーティの時も萌ちゃんとのやり取りも完璧だったし、めちゃくちゃ重要キャラキタコレ〕
〔参戦頼もしすぎますわ兄やん〕
あまねん
〔肩車役っていうのもすごく良いね!してあげたくてもなかなかできないし、男の人がいてくれるのありがたいね!本当にナイス虎哲さんだ〜〕
潮
〔ま 芹母と虎哲さんもそうだけど〕
〔私もここ数ヶ月、積極的に萌のお世話に参加させてもらったりして、大体の流れとかやり方は素人なりにも把握してるんで…〕
〔責任を持ってお世話させて頂きます〕
〔ということでどうでしょう。任せてもらえないでしょうか〕
セリー
〔いや…〕
〔萌が心配とか潮たちがうんぬんとかじゃなくて、単純に申し訳ないんだよね。自分の子なのにみんなに預けるなんて〕
〔関係性を利用してるみたいで自分が許せないから無理だって思ってて…〕
潮
〔え??わいらは芹に全力でご飯作ってもらってますし数えきれないくらいのお世話もしてもらってますけどね?〕
セリー
〔友達だからね〕
潮
〔じゃぁ友達の娘はわいらの娘も同義でしょう〕
〔芹。もうね、孤独に子育てする時代には終わりが来るのよ〕
〔自分が子供を産んだわけじゃないから次世代の命なんてどうだっていいと思ってしまう時代は、人間という生命体が迎える結末としては終末そのものじゃないかな〕
おその
〔なんやこいつふっか〕
セリー
〔急に深くて草〕
おその
〔おいこいつ…本当にあのクソださタイトル考えたのと同じ人間か?〕
潮
〔おい タイトルセンスのことは言うな 〕
〔ま 少なくとも芹の周りには5人の友達がいて、5人は確実に芹の娘を大事に思ってるんだから〕
〔みんなで育てようってことですよ〕
〔そして我々がそうしていくことで、世界をもっとより良く変えていこう〕
蛍
〔なんか壮大なこと言い出したけど、とりあえず全面的に同意ではある〕
〔うちも母親が長い間1人で頑張ってて、子供ながらに本当に限界そうに見えたし、事実そうだったよ〕
〔休む時間は大事だねぇ〕
おその
〔そういえば、母さん言ってたなー〕
〔私とお兄ちゃんが小さい時、ほんとに次から次にやらなくちゃいけないこと何もかもに追われて心が壊れそうになって〕
〔そんな時、友達と会って、名前で呼んでもらえた瞬間。私って自分でいてもいいんだ、って号泣しちゃったんだって〕
あまねん
〔自分でいてもいいんだ、って感覚…。何か分からないけど、想像しただけで泣いちゃいそう〕
セリー
〔大人になってお母さんの大変さに気が付くと、やるせない気持ちになるよね〕
あまねん
〔私最近お母さんとの思い出話ししたばっかりだったから、皆の話聞いてうるっと来ちゃった…〕
潮
〔そうそう〕
〔と、いうわけで 自分でいる時間は非常に大事だと思うので〕
〔今回企画させて頂きましたプランはこちら〕
ー招待状ー
〜癒しの旅へお連れしませう。徒然じょしたび部〜
プラン
*1日目
9:30〜 着物着付け体験&人力車で下町巡り
12:00〜 スイーツ&ランチビュッフェご招待
〜観光バス乗り放題チケット有り〜
ー温泉入り放題チケット有りー
17:00〜 リラクゼーションコースご招待
19:00〜 宿泊施設にて「地産地消の郷土料理御膳」(地酒満喫メニュー付き)
*2日目
8:00〜 宿泊施設にて「里の採れたて朝ごはん御膳」(季節の果物満喫メニュー付き)
9:30〜 波打ち際で乗馬体験
12:00〜 海の家にて「浜焼き食べ放題」ご招待
〜観光バス乗り放題チケット有り〜
⭐︎15:00以降のお受け取り
[期間限定ジェラート2種お持ち帰り券]
抹茶ジェラート、マンゴージェラート
あまねん
〔すごーい!盛りだくさん!〕
〔めちゃくちゃ楽しそう〜!〕
セリー
〔え?めちゃくちゃ楽しそう〕
〔えーと…改めて聞くけど本当に行っていいの?〕
〔正直プラン送ってもらって尚申し訳なさの方が勝ってはいるんだけど〕
蛍
〔あのさぁセリーさん 何回も言ってる通りね〕
〔萌ちゃんと一緒にお出かけしてもらえるなんてことはね。我々にとって光栄極まれりであり恐悦至極にございますなのよね〕
セリー
〔いや…まるでそれぞれが独立した単語であるかのような面構えしてて草〕
潮
〔光栄極まれりであり恐悦至極にございますなのよねー〕
〔最高に阿呆っぽくて好き〕
〔てか楽しんでもらいたくてプラン考えたのに申し訳ないから行かないなんて言われたら普通に辛いんですが?〕
セリー
〔……確かに…〕
〔ここまで綿密に楽しそうなプラン練ってもらってたら、行かないなんて選択する方が失礼かもね〕
〔じゃぁ………お言葉に甘えさせて頂きます〕
〔本当にありがとう〕
潮
〔あー良かった〕
〔もし申し訳ないから行けないなんてハッキリ言われてたら、危うく強制的に ドッキリ!着いたら実は女子旅で1泊楽しんできてねのコーナーでしたー! って宿泊先に置いてくるところだったわー〕
〔ちゃんと了承得られて良かった良かった〕
おその
〔そんな御礼の仕方はいやだ〕
セリー
〔⚪︎⚪︎のコーナーでしたー!とか訳の分からないこと言われてそのまま放置される身にもなってね〕
潮
〔いやいや 愛ゆえですよ芹さん〕
あまねん
〔セリー!旅行楽しもうね〜!てゆうか、せっかくの機会なのにセリーの1人旅じゃなくていいのかな…?〕
セリー
〔え、普通に周と旅行行けるんだって既にうきうきしてた…〕
〔そもそも、私単体への御礼じゃないんだよ周 私が断りそうだったから、こんな風に大仰に前準備してくれてたっていうだけで〕
〔せっかく皆がこうして協力してくれるんだから、行くと決めたなら全力で楽しみたい。1人で楽しむんじゃなくて、周と一緒が良いな〕
あまねん
〔ええぇぇ…?!?!きゅ、きゅん…!!〕
潮
〔その通りですよ、あまねん〕
〔これはあくまで2人への日頃の御礼で、2人に楽しんでもらわなくては意味がない企画なので〕
〔その間萌と何してようか?とか色々考えた結果、セリーに重きを置いてるみたいなメッセになっちゃったけど。その点はとても重要なので理解して頂けると〕
あまねん
〔そ、そっか…!なんか、なんか嬉しいな…〕
潮
〔あまねんはあれだよね。どうしてもこう、要所要所で自分が主役じゃないように振る舞う節があるけど〕
〔我々はそれを時間をかけてしっかり矯正してやろうと思ってるからね〕
〔覚悟しておいてもろて〕
あまねん
〔な…何それ…!すっごく怖いんだけど…!〕
蛍
〔言い方脅しでワロタ〕
〔でも確かにその節はあると思う〕
おその
〔その控えめさがそそって良いんだけどナ〕
蛍
〔うわっさむっ 夏前なのに極寒になるからやめてネ〕
潮
〔うおー あれだよね やっぱり〕
〔誰が言ってもそういう文面を見ると鳥肌が立つってことは〕
〔言い回しがキショいんだよね多分〕
おその
〔分かる〕
〔「そうは言いつつ、あまねんの控えめさは長所だと思ってる」みたいに言えばそうだねって感じで済む文面のはずなんだよね〕
潮
〔言葉の使い方をきちんと知ってる人は魔法使いってわけですよ〕
〔どのワードをチョイスするかによって相手の心象を変えるからね〕
〔とするならばその構文はまじで詠唱失敗だわー〕
蛍
〔詠唱失敗はほんま草〕
潮
〔言葉の使い方を知ってる魔法使いの人たちは、場面場面によって強弱を変えたり適切なワードチョイスができるんだって〕
〔ほとんど詠唱と一緒よ〕
〔言葉そのものに力があることを知ってる人はまじで強い〕
おその
〔言葉一つで人間も世界も変えちゃうんだもんなー〕
〔確かに魔法だわな〕
潮
〔そう〕
〔例えば言葉の使い方を知ってる人たちが、それを知らない大群衆の前で言葉の魔法を使った場合「号令」になるんだよね〕
〔大勢の人が魔法にかかった状態になる〕
〔その号令が大きな意思を持っていた場合、世界はまさに大きく変わっちゃうんで 言葉を扱う者の資質が問われるわけですな〕
蛍
〔ええ?ガチでファンタジー世界でいう魔法やん〕
〔皆知らずに魔法使っちゃってる可能性があるってコト?〕
潮
〔言葉を扱う人間は全員がその自覚を持つべき〕
〔だからこそ、今ネット然り各所でその練習がされてるんだと思う〕
〔口から発するものだけが言の葉じゃないからね〕
おその
〔俺たちはファンタジーに憧れてたけど、実は全員が魔法使いだったってわけです、か〕
潮
〔その通り〕
〔使い方を知るところから始めればね〕
〔言葉は愛情信頼関係絆全てを紡ぐし、逆に全てを断ち切ることもできる。ヒールもキルもできる〕
〔と、いうことを知らない人たちで溢れる世界は、無法地帯で混沌を良しとするよ〕
蛍
〔自分が何してるか分かんないまま常に魔法ぶっ放してるわけですね〕
潮
〔しかも中途半端な魔法だから知らない間に地味に効き続けるし、解除方法もかえって複雑っていう〕
おその
〔えーと〕
〔何の話してたんだっけ?〕
セリー
〔ものすごい脱線してたけど大丈夫?〕
潮
〔おお〕
〔ついつい盛り上がってしまいましたな〕
蛍
〔いやはや厨二心がくすぐられましたな〕
あまねん
〔うーん、でも完璧には分からなかったけど、何となく分かるな〜。言葉って本当にすごい力があるよね!〕
〔私、昔お姉ちゃんが泣いてた時に「大丈夫だよ。お姉ちゃんの心にあるイヤなもの、全部とんでいけ」って優しく声かけたらね〕
〔お姉ちゃん泣き止んで、笑顔になったの。すごいよね〕
潮
〔おー 本当にすごいね あまねんが〕
蛍
〔ただただあまねんがすごいだけのエピ草〕
あまねん
〔ええ?!〕
〔話の流れに沿ったエピソードだと思ったんだけど…!〕
おその
〔ごめんそのセリフだけでいいからボイス録って送ってくんない?毎日聞くわー〕
セリー
〔泣かないで。って言わないところがいいんだよね〕
〔泣かせてくれるんだよね。だから笑顔になっちゃうんだよね〕
蛍
〔何それ深い〕
あまねん
〔ちょっとちょっと、やめてよ皆して!〕
〔とりあえず!旅行の話に戻そう!〕
潮
〔はいはい 聖女様の仰せのままに〕
〔それじゃぁ、まぁ そんな感じでよろしいですかね〕
〔あんまり詰めたくなかったんだけど、なるべく払わせたくない気持ちがデカすぎて結構ぎゅうぎゅうにしちゃったわ〕
あまねん
〔え!すごく好きなプランだなって思ったよ〜〕
〔要所要所で好きなことする時間も設けてくれてるし、本当に真剣に考えてくれたんだなって 感動しちゃった〕
セリー
〔本当それ 楽しみにしてます〕
〔改めて本当にありがとう 潮、みんな〕
潮
〔いえいえ そう言ってもらえると考えた甲斐がありますよ〕
〔あとは当日ちゃんとリフレッシュしてもらえるかどうかっすね〕
蛍
〔あ わいらも地味に御礼のサプライズ用意してるんで〕
〔道中楽しみにしててくだせぇ〕
おその
〔かのあと3人で考えまちた〕
あまねん
〔えー!充分すぎるのにまだあるの!すっごく楽しみ!ありがと〜!〕
〔でも、あれ?そういえば、かのあって会話に参加してたかな?〕
蛍
〔おお まじだ いないわ〕
おその
〔おー いなかったんだ〕
〔脳内かのあが勝手にセリフ吐いてたから気が付かなかった…〕
潮
〔ちなみにかのあちゃんは今日、体調不良でぶっ倒れてます〕
あまねん
〔えええぇ!?大丈夫なの?!〕
〔確かに今日会わなかった!配信してるのかと思ってたけど、体調悪かったんだ…〕
潮
〔えー 生理、風邪、天気痛のトリプルパンチです〕
〔お疲れ様でした〕
おその
〔ウワーカワイソウ〕
〔毎年梅雨時期は辛いですなー〕
蛍
〔いや外出てないのにどうやって風邪引くねん〕
〔って思ったけど、そういえば3日前に「暑くなってきたから水着着て水風呂やってくるー!!」って張り切ってたの見たわ〕
〔ちなみに2時間くらい1人ではしゃいでたよあの子〕
潮
〔どうやったら水風呂で1人で2時間耐久できんの?才能?〕
〔可哀想に、と思って朝から一生懸命看病してやってたけど何か腹立ってきたからやめるわ〕
セリー
〔あっ ごめん〕
〔それ私のせいかも…〕
〔はなやぎに顔出した時に「今日ねー!水風呂するんだー!」って楽しそうだったの思い出した〕
〔その日それ聞いて、一回家に戻って萌の水遊び道具取って来て来ちゃったんだよね〕
〔結構最新の面白い水遊び道具渡したから、盛り上がっちゃったのかも〕
蛍
〔マジか…成人女性を2時間1人で水遊びに夢中にさせるってどんなおもちゃよ?有能すぎる〕
セリー
〔何か テーブル型のおもちゃなんだけど、かわいい猫ちゃんが遊園地で遊ぶっていうコンセプトで〕
〔ウォータースライダーがあったり、水をかけたらくるくる回る観覧車があったり…ポンプで吸水してしばらく自分で動くジェットコースターがあったり〕
〔ボタン押したら渦ができて、コーヒーカップが回ったりとかする結構面白いアクティビティテーブルですね〕
あまねん
〔すっごく楽しそう!それはかのあじゃなくても、しばらく遊んじゃうかも…〕
セリー
〔電池すぐ無くなるけどね〕
〔でもかなりいろんなことができるから、お友達とも喧嘩せず遊べてすごく重宝したやつ〕
〔まさかかのあが2時間も遊んだとは思わなかったけど〕
蛍
〔草〕
潮
〔そこから風邪引いて生理来て天気悪くて天気痛で苦しんでてほんま森〕
おその
〔オーバーキルで草〕
蛍
〔全身の諸症状に苛まれててカワイソウ〕
潮
〔あ〕
〔しんどくなったら鳴らすんやでって渡しといたトランシーバーから蚊の鳴くような声が聞こえます〕
〔仕方ない…行ってやるか…〕
おその
〔いや 楽しそうなことしてますやん〕
蛍
〔やり取り楽しんでますか?オーバー〕
潮
〔トランシーバーってテンション上がるよね オーバー〕
セリー
〔君たち本当仲良いよね〕
潮
〔やめてくださいよ芹さん〕
〔まぁ大体そんな感じで〕
〔旅行の日程近くなったら改めて連絡するんで プランの合間とかに何しようかなーって考えといてもらえると助かります〕
あまねん
〔はーい!みんな本当にありがとうね!〕
セリー
〔本当にありがとう 旅行楽しみにしてます〕
おその
〔ほーいこちらこそいつもありがとねー〕
〔我々も遊園地楽しみだー プラン作成サンキューね〕
蛍
〔潮さんお疲れさま セリーもあまねんもいつもありがとう〕
〔萌ちゃんとご褒美遊園地楽しみすぎて禿げそう〕
潮
〔はいよー〕
〔じゃ その話も兼ねてかのあんとこ行ってくるっすわ〕
蛍
〔よろしくーおつー〕
おその
〔いてらー〕
「おーい、水遊び少女ー」
ーーーはなやぎ館、かのあの部屋前にて。
潮が扉をノックすると、腰に下げたトランシーバーから「どぞ」と小さく声が聞こえた。
開けて中を覗いた潮の目に、アイマスクをつけて直立不動でベッドに寝転ぶかのあの姿が映る。
「あのね。聞きましたよかのあちゃん。2時間水遊びしてたんだって?」
『………ふぁい…』
「インドアの虚弱体質だってことを忘れてもらっちゃ困りますよ、君」
『だって…貸してもらったおもちゃが面白かったんだもん…』
「まぁちなみにさっきどんなもんか確認して来たけどめっちゃ面白そうではあった」
枕元に置いたトランシーバーに向かって小声で話す声が、潮のトランシーバーから大音量で聞こえる。
潮がふーとため息をつきながら近くの椅子に腰掛けると、かのあは再びトランシーバーに向かって語りかけて確認する。
『…あの…持って来てくれた…?』
「持ってきたよ。ほれ」
そう言ってテーブルに置かれたのは、食事や生理用品とバスタオル、シーツの換えなど。
ゆっくりとアイマスクを外したかのあの真っ白な顔を見て、潮が呆れ顔になる。
「真っっっ白じゃん。ちゃんとご飯食べてんの?」
「…ぁぃ……」
「朝来た時に朝ご飯は食べたって言ってたけど、実は何も食べてないんでしょ」
「だって…お腹空いてるけど…具合悪すぎて食べられないんだもん…」
「まぁ分かるけど…とりあえず鉄分取れるもの食べなよ。納豆はどう?」
「納豆…なら…ちょっと食べられるかも…」
「ほい。とりあえず先にナプキン換えてきな。そんでもってシーツやっといてあげるからどいて」
「ぇー…それは普通に申し訳ない…友達に経血漏れ掃除させるのはさすがに…」
「あ、大丈夫。かのちゃんのことは友達っていうか近所の5歳児くらいにしか思ってないよ。安心して」
「むかつく…むかつくのにしんどくて言い返せない…」
「ほら、さっさとゴーゴー」
ふらふらのかのあをベッドから追い出し、経血のついたシーツを手際よく片していく潮。
かのあはその背中にお礼を言いながら、新しいナプキンとバスタオルを持って浴室へと向かった。
「さてさて」
シーツの下にあった防水シートを丁寧に拭き、上から新しいシーツを被せる。
そして軽くベッドメイキングを済ませた後、潮はささっとテーブルを片して持って来ていた食事のトレイを改めて置き直した。
芹が用意してくれていた冷凍ご飯をチンしたもの、納豆、豆腐の入ったレトルトのお味噌汁、スイカとバナナが置かれたトレイ。
市販の風邪薬と水も用意していると、ナプキンを換え終えたかのあが戻ってきた。
「潮…ありがと…」
「はいはい。とりあえず食べられなくてもスイカとバナナだけは食べときなよ。鉄分多いから」
「ぁぃ…」
腰をストールでぐるぐる巻きにして温めたかのあが椅子に腰掛けるのをサポートして、潮も隣に座った。
それから、予め自分の分として切り分けていたスイカとバナナを頬張りつつ、ゆっくりと食べ進めていくかのあを見守る。
「天気痛はどうなの?」
「さっき鎮痛剤飲んだから…とりあえず落ち着いてる…」
「生理痛も今はそこまでな訳ね」
「出血が多いのと腰のだるさがすごいから、今それが一番きついかも…」
「風邪は?」
「鼻水がえぐい…」
「ティッシュまだあんの?後で補充しとこうか」
「ありがと…納豆美味しい…」
やがてスイカとバナナまで食べ終え、風邪薬を飲んで落ち着くと、かのあは背もたれに体を預けて大きく息を吐いてみせた。
「ふああーーーーーーーー…はなやぎ館作ってくれてありがとぉーーーーーーー助かるぅーーーー…」
「かのあが早く元気になってくんないと、配信待ってんのにいつまで経っても見れないでしょ」
「マジでありがたい…ちょっと回復したよ…持つべきものは潮だね…」
「どうも。あー…蛍じいちゃんが贈ってくれたスイカうまかったなー…場所を用意しただけなのに、此処を進んで豊かな場所にしてくれる人たちに恵まれて幸せ者ですわ私は」
「その恩恵を受けてる私が一番幸せ者な件について…」
「皆が毎月くれるお気持ち代で館を綺麗にできてるんで、ウィンウィンだよ」
「はなやぎ館って本当…最高…」
「せやねぇ」
そうして少々微睡んだところで、潮は早速今日の話題を口にした。
「ところで、前に話してた芹とあまねんへの御礼。トーク見てもらえたら早いんだけど、旅行に行ってもらうことにしたから」
「お、ちょっと待って確認する」
「我々もまた別で、萌連れて遊園地行くからそのつもりでよろしく」
「やったー…!ご褒美じゃんか」
「そんで君たちが考えた御礼も、旅行の最中に喜んでもらえるようにしてあります」
「え、すご。旅館の方から渡してもらえるの?」
「旅館の女将さんが知り合いなんだよね」
「日下部家の人脈恐るべし…」
「絆は大事よ」
「でもさ。今更だけどあの美人2人を野放しにして大丈夫なのかな?変な男が擦り寄ってきたりしないかな」
「あぁ。とっくに想定して対処済みです」
「やば…有能じゃん。対処済みマ?」
椅子のリクライニングを倒し、ゆったり背中を預けてトークを確認するかのあの瞼が、今にも閉じそうに何度か瞬きを繰り返す。
潮はそれを見てそっと立ち上がった。
「ま、大体そんな感じなんで。とりあえずゆっくり過ごして早く元気になってね。食べたくなくても夕飯はしっかり食べなよ。何かあったらまたトランシーバーで呼んで」
「マジでありがと…潮…」
「かのあちゃんの元気がないと、はなやぎ館が静かで退屈だわ」
じゃ、と振り向いて手を振り、いそいそとベッドに潜り込むかのあからの敬礼を受け取って扉を閉める。
すると、階段を上がってくる足音が2つ。
「お。潮、かのあちゃんどうだった?」
「とりあえずご飯食べさせて、風邪薬飲ませたとこ。めっちゃしんどそうだった」
「そっか〜…心配だな…」
階段を上がって出会したのは、蛍と周だった。
空になった食事のトレイを見せて様子を報告した潮に、2人は質問を重ねる。
「もう寝ちゃってる?」
「入らない方がいいかな?」
「ううん。寝そうではあったけど、2人が来たら喜ぶと思うよ」
「寝る時に落ち着けるアロマと、腰を温めるウォーマー持ってきたんだよね。ささっと渡してくる!」
「ホットココア買ってきたから飲んでもらおうと思って。潮のアイスココアは中央ホールの机に置いてるよ」
「あざーす。やったー」
2人がかのあの部屋に入っていく背中を見送って、潮は中央ホールへ向かって階段を降りた。
その途中で、和菓子屋帰りのおそのが玄関ホールに入ってくるのが見えた。
「あ、潮ー。かのあ元気だったー?」
「まぁ、一旦めっちゃしんどそう」
「だよねー。私も生理ひどいから分かるわ。風邪も引いてるなら尚更。おはぎ持ってきたから食べさせにきた」
「イソフラボーン。いいなぁわいのは?」
「もちろんありますとも」
「やったー。あ、今蛍とあまねんが部屋にいるよ」
「了解。行ってくるわ」
軽快に階段を駆け上がっていくおそのとすれ違って、中央ホールの椅子に腰掛ける。
そこへ、また玄関ホールが開く音が響いた。
「あ、潮。かのあどうだった?」
「しんどそうだったけど、皆が気にかけて部屋に来てくれるから今頃めっちゃ元気なんじゃないかな?」
「そっかそっか。あんまり食欲ないだろうから、出汁多めの親子丼とほうれん草の胡麻和え作ってきたんだよね。お夕飯の時に出してあげてくれる?」
「うわめっちゃ良い匂いするわ…うまそう…」
「皆の分も作ってきたから、お腹が空いたら食べてね」
「天女様現る」
親子丼の入った大きな鍋と小さな鍋を2つ、ほうれん草の胡麻和えの入ったタッパーを1つを冷蔵庫に入れ終えた芹に、階段から声が掛かった。
「あ!セリー!ココア買ってきたから持っていってね〜」
「え、ほんと?嬉しい。ありがとう」
「萌の習い事があんだっけ?」
「そうそう。幼稚園でやってる習い事なんだけど、もう終わる時間だからお迎え行かないと」
「確かピアノとか音楽系の習い事なんだよね?幼稚園終わってそのまま習い事できるのいいね!」
「そうそう。歌ったり楽器使ったりするのが好きそうだったから良いなと思って、通わせてみた。習い事に送らなくていいし、お迎えの時間がゆっくりになるからすごく助かってるよ。何より萌がすごく楽しそうで嬉しい」
「萌さまとピアノ…親和性高すぎて…尊い…」
「あ、親子丼とほうれん草の胡麻和え作ってきたから、夜に皆で食べてね」
「マジすか!女神じゃん」
「あぶなー。それがなかったら今日はセリーが用意してくれてた冷凍ご飯と卵で卵かけご飯食べて今日の夕飯終わるとこだったーマジ神ー」
「セリーのほうれん草の胡麻和え本当に美味しいからすっごく嬉しい!鉄分もたっぷりだからかのあの体にも良いね。さすがセリー」
「これくらいしかしてあげられること無いからね。早く元気になってほしくて」
「さっき会ったけど、生理2日目って感じだったわ。本当早く元気になってほしいね」
「生理2日目辛いよね。水浴びさえしなければもう少し元気だったんだろうけど…まぁ、こういうこともあるよね」
「天気痛は薬飲んで一旦おさまってたっぽいから、まぁ後は生理が終わるまで様子見かな」
生理って終わりがけが一番しんどくない?
いやー私生理前が一番しんどいわ
分かる!
などなど話しつつ、玄関で靴を履き直すセリーの元へ急ぐ面々。
「じゃぁね。色々くれてありがとう。次は旅行の日程が近くなたくらいにまた顔出すね」
「ほーい待ってます」
「またね〜、お迎え気をつけて」
「ありがと。またね、かのあによろしく」
ココアとおはぎを持ったセリーが、にこやかに微笑んだ後扉をゆっくり閉める。
それを見送って、面々は静かにかのあの部屋の方角を見上げた。
「さて、早く元気になってもらわないとな」
「梅雨時期は本当静かになるよねー」
「ま。とりあえず我々はおはぎ食べようぜい」
「賛成」
「あ、そうだ。明日、お姉ちゃんの誕生日だから米粉ロール作ろうと思ってるんだよね。みんなも食べる?」
「食べるに決まってるよね?」
「そ、そっか…良かった…」
「お姉さんハピバっす」
「司さんしばらく会ってないけど相変わらず美人なの?」
「相変わらず何してるか分からなくて、めちゃくちゃ謎めいてるよ〜」
「マジで司さんクールビューティよなー」
「てか定期的に司さんからはなやぎ宛にクッッッソ良い匂いするハンドクリーム贈ってもらうやん?あれ有り難すぎるんやが」
「お陰で身体から良い匂いするし、冬でも手が潤いまくってるわ」
「お姉ちゃんのお友達?が手掛けてるらしいの。良い匂いだよね〜!消耗品だから肌に合うならどれだけあっても良いだろうから、勝手に送っちゃうねっていつも送ってるんだって。みんな喜んでるよ!って言ったらお姉ちゃんも喜んでたよ〜」
「めちゃめちゃ喜んでます」
「お礼は潮の方からしてくれてるんだったよね?」
「うん。皆が私に毎月くれるお気持ち家賃でお礼の品贈ってる。虎哲さんにも同じようにしてるよ」
「ありがとねー助かるわマジで」
「ほんまにええんか?別で出すぞマジで」
「潮へのお礼がお礼になってるよね」
「いや…そもそもうちとしては住んで貰ってるのが嬉しいから家賃いらないって言ってんのにくれるからさ。まぁだとしたらある意味有効な使い方かなと思って」
「ええんかそれで」
「あとははなやぎで何かする時とかの必要経費として使わせて貰ってたりすることもあるけど、それ以外は基本的に皆に何かあった時の為に貯金してる」
「ママかよお前」
「貯金マ?お礼なんだから自分の為に使いなさいよ」
「いやー。お礼したいのはこっちなんだよねー」
「じゃぁ、今度潮にも別で何かお礼しないとだな。お金じゃないことで何か」
「そだね!楽しみにしててね潮!」
「いやいや本当にいいですから。さ、おはぎとココア頂こうよ」
話しつつ、中央ホールのテーブルでおはぎとココアを囲む。
「いただきまーす」と声を合わせて、面々はその美味しさに舌鼓を打った。
「うま」
「おいしー!おそののおはぎ本当に美味しい!幸せ〜」
「ココアも美味しい」
「かのあも一緒だったらもっと楽しいのにね…」
「早く元気になれよーかのあー」
ぽつぽつ雨の降る午後。
穏やかな寝息を立てるかのあと、静かにおやつを楽しむ面々。
はなやぎ館の日常は、今日も平和に過ぎていく。
* * * * * epilogue
(みんなー…今日はたくさんありがとねー…)
(お、降りてきたか。体調はどう?)
(蛍のくれたホットココアとあまねんがくれたアロマのお陰で爆睡で、さっき痛み止めは飲んできて、風邪も治りつつあるんだけど…貧血がやばい…)
(セリーが親子丼とほうれん草の胡麻和え作ってくれてるよ。皆で食べよ〜)
(マジ!?やったー…!かのあ、セリーのほうれん草の胡麻和えだけは食べられるんだよね…うれちい…)
(美味いよねー)
(温めるから待ってて!ご飯も炊いてるよ)
(女神…)
(かのあ、おはぎは食べられた?)
(食べた…!めちゃくちゃ美味しかった…ありがと…)
(ウォーマーもつけてる?)
(つけてる…アッタカイ…)
(顔真っ白だねぇ。とりあえず座りなよ)
(アリガト…)
(こいつ弱ってる時カタコトになるの何なん?)
(笑い取ろうとしてない?)
(チョット…)
(してて草)
(あーいい匂い!お腹すいたー)
(親子丼!親子丼!)
(はーい、よそうから丼持ってきて並んでくださーい。かのあは私が用意するから座っててね〜)
(シュ、シュキィ…)
(ほっかほかのご飯、ふわふわの親子丼…最高)
(誰かほうれん草の胡麻和えテーブルに出しておいて〜)
(ほーい)
(さ、じゃぁ手を合わせてー)
(((((いただきまーす!)))))
(うんまー…!)
(やっぱセリーさんっすわ…)
(美味しすぎる〜!胡麻和えも相変わらず美味しい!)
(なんか、身体が喜んでる気がする…血が巡ってる気がする…食欲なかったはずなのにおかわり欲しい気がする…)
(これが愛情の味ですよ)
(きっとすぐ良くなるね)
(愛って、すごいね…かのあ、みんながくれる愛だけで500年生きられそうだよ…)
(かのあちゃんには500年でも1000年でも、いつまでも元気いっぱいでいてもらわなくちゃな)
(でもまずはトリプルパンチを乗り越えてくれ)
(それな…)
第十八話 了