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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第1章 「箱庭の日常」
2/39

第1話









〔ねぇ 芹の新作出たってマ?〕



セリー

〔1ヶ月前の話で草〕


〔いやSNSで知るの何でなん?おかしいだろ…〕


セリー

〔逆にSNSしてて1ヶ月後に知るの何でなん?〕


あまねん

〔そうそう!セリーの新作ね〕

〔ブレスレットめっちゃかわいかったよ〜!指輪も良かった!〕


〔じゃ、指輪持ってきてよろしく〕


セリー

〔あー高圧的だなー〕

〔うんこの装飾くっつけた針金にしますね〕


〔う…芹さんの作ったものなら…何でも嬉しいです…〕


おその

〔こいつファンの鑑やん〕



あまねん

〔ところで、今日みんないる感じかな?〕

〔ドーナツ買ってきたら食べる??中庭でおやつにしよ〜〕



〔ええやん チョコ系とチュロス希望です〕

〔尚帰宅は17時頃の予定〕


おその

〔なんか新作あったら二つか三つくらい頼む〕

〔こちらもう帰宅済みゴロゴロ民〕


セリー

〔私も新作食べたいな〕

〔ちなみに14時にそっち着く予定だから、なんか飲み物でも買って帰ろうかなと思うけど どう?〕


あまねん

〔いいね!お願いします!〕


セリー

〔適当に買っていくから味はランダムね〕


〔んじゃドーナツもランダムで頼む〕


あまねん

〔ええー?セリーすごいね、私何でもいいが1番困っちゃうよ〕

〔潮、せめてチョコ系なのかクリーム系なのかだけ教えてほしいよ〜〕


〔じゃぁ…ポンデもちもちのショコラと新作のハニトードーナツで〕


おその

〔いやバリバリ指定してくるやん〕


〔あ 肉まんって持ち帰れるんだっけ?〕


おその

〔肉まんは無理なはず〕


〔じゃぁいいや〕


あまねん

〔了解だよ〜!詳しくありがとう!〕

〔売り切れてたらそれに近いもの買ってくるね〜〕


かのあるふぁ

〔はいはーい!!かのあも食べるよー!〕

〔かのあチョコ系もクリーム系もほしい!〕

〔配信ちょうど14時に終わる予定だからお茶会参加する!〕


〔はいはい、かのあちゃんはおやつの前にちゃんとお昼ご飯食べてくだちゃいねー〕


かのあるふぁ

〔えええっ?!なんでお昼ごはん食べてないのバレてんの?!こわっ!〕


〔どうせ朝も食べてないんだろ〕


かのあるふぁ

〔ぶっぶー!!朝はプリン食べてますー〕


おその

〔朝プリンの昼ドーナツはメルヘンすぎんか〕


〔はぁ、仕方がない奴だなぁ…〕

〔芹、コンビニで肉まん買ってきてやってくれんか ついでにわての分も頼んだ〕


セリー

〔普通に潮が肉まん食べたいだけでしょそれ 買うけどさ〕


かのあるふぁ

〔ちょっと待ってよ!!ドーナツがお昼ご飯なのはだめで肉まんはいいの…?〕

〔謎!!意義あり!!〕


〔うるせぇ黙って肉食ってろ!〕


おその

〔セリーわてもわてもー ちなピザまん希望〕


セリー

〔はいはい〕



あまねん

〔今ドーナツ屋さん着いたから、14時くらいに帰るよ〜〕

〔皆んなお庭集合でよろしく!〕








ーーー昼下がり。

穏やかな湖畔の前にある洋館からは、楽しそうな話し声が響いている。


精巧な装飾の入った門を抜け、丁寧に花の植えられたアプローチから湖畔側に進んだ、その先。



「潮、はいこれ。さっき言ってた新作のやつ」



鳥の囀りと囁くような木々の葉擦れの音が心地良い庭園には、5人の女性がいた。


その中で潮と呼ばれた女性ーー日下部くさかべ うしおは、差し出された小さな紙袋を受け取って優しく微笑む。



「おっまじ?うんこの装飾ついてないよね?」


「それをわざわざ作る手間よ」


「それはそう。いやぁ、さすが芹…紙袋までお洒落ですなぁ」


「褒めるアイドリング早すぎない?」



潮に芹と呼ばれた女性ーー三鼓みつづみ せりは、笑いながら彼女の横へ腰掛ける。

丁寧に開けられた包装からは、サファイア色の石の装飾がつけられた指輪が出てきた。



「めっっっちゃかわいい…」


「あ!セリー、これ潮専用に作ったでしょ。こういう色使って作ってるの見たことないけど」


「え?何かそう言われると恥ずかしいな…。たまたまこの色の石が手に入ったから、潮っぽいなぁと思って、たまたま指輪にして、そしたらたまたま潮が指輪を欲しがった感じ…」


「何か長いこと説明してるけど結局潮専用ってことでおけ?」


「別にそういうのじゃなくってさ」


「いや待って、それよりその私専用の指輪は今回欲しがらなかったら私の手には届いてなかったってこと…?」


「まぁそうなるよね」


「何で?!私用なのに!?私のために作ったならそのままくれれば良いでしょうよ!」


「バチギレやん」


「うーん、いつも作った後に思うんだよね。欲しいかどうか分からないものをあげられないよなーって」


「私のために作ってくれたものを貰えないなんて芹さん…切なすぎて笑えませんが」



もう毎日つけてやる、と言って指輪をつけた潮を、芹が嬉しそうに見つめる。


その間にも、ログテーブルにドーナツや持ち寄ったものが次々と並べられ、それぞれの可愛らしいお皿に取り分けられていった。



「えーと?蛍はなんて言ってたんだっけ?」


「肉まん持ち帰れないならプリン食べるからピザまんでいいって言ってた」


「いや混ざりすぎ混ざりすぎ」


「むしろちゃんと話聞いてて偉いレベル」


「えーと、蛍に取っておく分は…チュロスとチョコ系って書いてあるね。あとは、はい潮、ハニトーともちもちショコラ」


「あ、肉まんも渡しとく。かのあも」


「どもども」


「ありがとー!!わーい!肉まんだー!」


「おそのもこれ。ピザまん売り切れてたからカレーまんにしたよ」


「有能」


「ねぇ、周。飲み物適当に買ってきすぎちゃったんだけど…蛍はどれが好きだと思う?」


「ん〜?蛍はねぇ…どれだろ…」



芹に周と呼ばれた女性ーー柏手かしわで あまねは、並べられたおしゃれな飲み物を見比べて唸る。

それから一つを手に取ると、周囲から「ぽいぽい」と賛同の声が上がった。



「私もそれだと思ったわ」


「んじゃ後はみんな適当に選んでー」


「この緑のやつ何?ピスタチオ?」


「何だろうね?」


「さすがに適当に買いすぎでワロタ」


「これ多分ラズベリーかな?貰うね〜」



各々好きな飲み物を自分の手元へ近付け、持ち寄ったものがそれぞれの目の前に置かれる。

それから いただきまーすと元気な声が響くと、お茶会がスタートした。



「ふぁー!肉まんほかほかウマー!めっちゃ染みる!」


「いやーまじで肉まんって何でこんな美味いん?」


「んー。肉まん!って日もあるんだけど…何かついつい肉まんとかより、ピザまんとかカレーまんとか…ちょっと変わったの選んじゃうんだよなぁ」


「私はどれがいい?って聞かれたら、あんまん選んじゃうかな〜。セリーは?」


「そもそも食べない。あんまり」


「確かにセリーはあんまこう言う系食べるイメージないね。なんか、カタカナの料理好きなイメージ」


「何そのイメージ」


「なんか、フォーとか。ビーフストロガノフとか」


「あー。間違ってないわ」


「かのあと真逆だもんね」


「かのあはフォー食べるならラーメン食べるし、ビーフなんちゃら食べるならカレー食べるよ!」


「分かりやすくてよろしい」



周に かのあ と呼ばれた女性ーー蘇芳 かのあ(すおう かのあ)は、潮に頭を撫でられてご機嫌に頷く。

そんな彼女を横目に、周は比較するように芹の方を向いて言った。



「かのあはかなり分かりやすいし、セリーはちょっと大人っぽいやつ買ってくれば大体合ってるんだけどさ。潮って難しくない?」


「分かる!えっそれが好きだったんだ!みたいな」


「てか潮の場合は気分もあるじゃん」


「え?ちょっと、厄介なやつみたいに言うのやめてもらえます?貰えるものは何でも嬉しいですけど?」



肉まんを食べ終え、ハニートースト味のドーナツへ手をつけた潮が不満げに溢す。

しかし、聞こえていないかのように会話は進んで行った。



「黒糖好きなの知った時は本当びびったわ。あとアボガドね」


「でもその時の気分で全然反応違うから難しいんだよね〜。あれ?前黒糖好きっぽかったのに…あれ?みたいな」


「意外そうなやつ選べばいいでしょと思って買ったらハズレだったりするし」


「ちょっとやめてやめて。そんなこと思ってたの?何?お説教タイムか何かですか?」


「今日あまねんにハニトー頼んだ時もビビり散らかしたんよなぁ。えっハニートーストとか好きやったん…?って思った」


「意外だよね。普段なら潮に買って行こ〜って選ばないやつだから」


「あれ?聞こえてないのかな私の声…もしかしてミュートになってます?」


「なんかさ、5個ぐらい提示するといい感じするよね」


「んー選ぶ5個を悩むんよなぁ」


「うん…じゃぁ…メニュー表送って…」


「お、最適解出たわ」


「ムカつく…いや違うってやっぱり。私が面倒なんじゃなくて、おそのとかが簡単すぎるんでしょ。定番か変わり種どっちか買って帰れば大体喜ぶしさ」


「はぁー?定番が安定して美味いから定番なんでしょうが。だからこそ変わり種は気分転換に最高なんでしょうが」



潮に おその と呼ばれた女性ーー相良 その(さがら その)が、ドヤ顔でドーナツを頬張る。

湖畔の前で賑々しく進んでいくお茶会はとてものどかだった。


やがてドーナツも食べ終えようかという頃、潮が思い出したように言った。



「そういえば芹、萌は今度いつ来んの?ぱちぱちくまさんシリーズのやつ手に入ったから会って渡したいわ」


「萌?今日は幼稚園終わってそのまま実家にお泊まりだから、明日幼稚園帰りに連れて来ようか」


「助かる」


「えー!萌ちゃん来るの!?私も何か用意して気引かなきゃ!!幼稚園 女の子 好きなもの 検索」


「あぁ、そういえば…かのあの犬育てるゲームの実況楽しそうに見てるよ」


「えっまじ!?萌ちゃん見てるなら大型犬にすれば良かったー失敗したー!」


「こんなとこでうんこすんなや!!ってキレてるシーン見て、かのあちゃん怒ってる…って落ち込んでたよ」


「かのあの配信はメルヘンな振りしてばちばちに言葉悪いからなぁ」


「セリー、かのあの配信見ないもんね普段」


「かのあちゃん有名な人なんでしょー?って聞かれて、わんこのゲーム実況なら見せてもいいかと思ったんだけど。まぁ私はめちゃくちゃ面白かったよ」


「ごめんセリー…萌ちゃんに嫌われたら世界の終わりだから、あのゲームだけはクリーンな配信者を目指すことにするよ…」


「いっそめちゃくちゃメルヘンにしてみたら?んーわんわん可愛いぽぽー!お腹空かせてるからご飯をあげるぽぽー!みたいな」


「お前のメルヘンのイメージどうなってんの?」


「急にそんな配信始めたら1時間くらい腹抱えて笑うけど」


「えー?潮が笑ってくれるんならちょっとやってみよっかなー」


「やめとけやめとけ」



言いながら、潮はブラックコーヒーを啜る芹の横顔をじっと見つめる。



「…萌が実家ってことは、明日が月命日か」


「ん?うん。遠出だし、水曜日だと次の日の幼稚園がしんどいから。今回萌はお留守番の日」


「移動暇でしょ。一緒行こうか?」


「珍しい提案するね。始発で行くけど、潮起きられるの?」


「あー…一人旅っていいよねー」


「潮。私明日5時起きだから部屋まで行って叩き起こしてやろっか?」


「や、やめてください、おそのさん…あなた冗談が冗談で済まない怪力で殴ってくるから…喧嘩になっちゃう…私…あなたと争いたくない…」


「は?誰が怪力だよ、この細い腕見てみ?我ながら華奢だわぁ」


「りんご素手で半分に割れるやつのどこが華奢?」


「大丈夫大丈夫、軽いビンタで起こしてあげるからさ」


「やめてやめてまじで、トラウマになっちゃう」




ーーそんな話をしていると、門の開く音が響いてきた。

周が反応して視線を送ると、お茶会の方へ近付いてくる影が一つ。



「あ、蛍帰ってきたんじゃない?」


「17時帰宅予定とか言ってなかったっけ?まだ15時半だけど」



トコトコと歩いてくる姿を全員で捉え、手を振る。

周に蛍と呼ばれた女性ーー宇留島うるしま ほたるは、同じように手を振って応えながら、ログテーブルの前の一つ空いた椅子に腰掛けた。



「はー…ただいま帰りやした」



「おかー」


「おっきゃりー」


「何か思ったよりずっと早く終わった。わいのドーナツは無事か」


「ラップかけて置いといたよ〜」


「さんくすー」



疲れを取るように大きく息を吐き、目の前に置かれた飲み物を勢いよく飲んでいく。

それから取り置いてもらっていたドーナツを口に頬張ると、なんとも幸せそうな顔をして顔を綻ばせた。



「んまー…チュロスうんまー…」


「そりゃ良かったね」


「蛍も結構分かりやすくて助かるよね。新作かクッキー生地系選べば大体合ってるって感じで」


「合ってる合ってる。新作はやっぱ一回食べときたい」


「そういうあまねんはザ・女の子ってやつ買えばいいもんね」


「え〜、何それ。女子っぽいものって何?」


「今あなたが手に持っているピンク色の飲み物とか、あなたが食べかけている苺クリームとフランボワーズのかかったおしゃれなドーナツとかがそれにあたりますね」


「ま、まぁ…今日選んだのは確かに、ピンク系が多いかも…でもいつも絶対ピンクのやつ選ぶわけじゃないよ私!」


「基本お姫様みたいなやつ選ぶといいよね」


「わかりみ」


「やっぱムズいのは潮だけかぁ」



再び自分のところへ飛び火してきた好物の話題に、潮が露骨に眉根を寄せる。



「おかしいな、そんな面倒な好き嫌いはしてないはずなんだけど…なんでそんな扱いになってるんだ…」


「いや分かってる分かってる。嫌いなものはあんまりないんだろうなってのは理解してるしてる」


「潮ってすっごい分かりやすいんだよね〜。嬉しい時とそうでもない時の反応が」


「90点狙いたいんだけど60点くらいの反応だった時とかがやるせない感じになっちゃうんだよなぁ」


「100点だった時のこっちのアドレナリンやばいもんね」


「待って、だとしたら私あんまり悪くなくない?めちゃくちゃ風評被害でしょ」


「いや悪くないよ別に。こっちが100点狙いたいだけだから」


「60点だった時にムカつくから八つ当たりしてるだけ」


「次から気遣うでしょうが!分かった…全部100点の反応で対応するわ」


「あーだめだめ、潮は取り繕ってもすぐ顔に出るから」


「大丈夫、こっちで勝手に楽しんでるから。ゲーム内容変更なしでお願いします」


「アプデやめてねー」


「勝手にゲームにされた上にアプデやめてね言われるの何なん?」



仲睦まじく会話をする女性は6人となり、洋館の庭はより一層はなやぎを増す。





ーーそろそろ日暮れを迎えるかという頃、片付けを始めた6人は今日の夕飯の話をしていた。



「あー。肉まんもドーナツも食べちゃったからあんまりお腹空かないかもー!お夕飯どうしよっかなー」


「じゃぁ、カレーとサラダ作っておいてあげるから。お腹空いたらご飯よそって食べなよ」


「えぇ!!セリーママまじ!?セリーはかのあのママだった…!?てことは、萌ちゃんとあたしは姉妹ってこと…?ママ…」


「何言ってんのこいつ。ママって呼ぶな」


「セリママわいのカレーもある?」


「ママって呼ぶな。みんないるんなら沢山作って置いておくけど。いる?」


「いる」


「食べる」


「欲しいな〜」


「じゃぁ大鍋で作るよ。誰か買い出し着いてきて」


「ね゛ーー!!もうセリー萌ちゃん連れて毎日洋館泊まってよー!セリーのご飯美味しいから毎日食べたいよー!」


「月に2回は泊まってるでしょうが。それ以外に来る時も軽食作って置いて帰ってるでしょ」


「やだやだ足りない!セリーの炊いてくれた米が一番美味い!住め!」


「はいはい。萌がもう少し大きくなったらね」


「駄々っ子おるなぁ」


「でも実際セリーが来た日はご飯楽しみにしちゃってる自分がいる」


「てかさぁ…エプロンつけて野菜切ってる時の芹ってえろくない?」


「せんせー、潮ちゃんがエロい目でセリーちゃんのこと見てまーす」


「おいチクんなよ。横顔が特にたまらんとか言うなよ絶対」


「思春期おるなぁ」


「確かにたまに熱い視線感じる時あるわ」


「あー…それ良からぬこと考えてる時っすね」



片付けを終え、足並みを揃えて洋館へと戻っていく。


玄関を抜け、それからホールへと足を踏み入れると。

6人はそれぞれ別の入口を目指して歩き始めた。



「ーーじゃ、買い出し着いてくる人は十分後に駐車場ね」


「はーい、着いていきます〜」


「私も行こっかな、今日暇だし」


「カレー楽しみにしてまーす!!」


「右に同じー」


「気をつけて行ってきてねー」



ぱたん、ぱたん、と次々と扉が閉まっていく。

ーーそんな中、最後に残った潮と芹が、どちらともなく視線を合わせた。



「…指輪。似合ってて安心した」


「そりゃぁ似合うでしょ。芹の見立てなんだから」


「執筆の時に邪魔だろうから、指輪はいらないかと思ってたんだよね」


「はー…芹さんの作ったものなら何でも嬉しいって何度言わすのよ」


「ちなみに一応聞くけど、次は何が欲しい?」


「あー、ピアスの新しいやつ欲しいかな。左右違うのつけちゃうお洒落なやつやりたい」


「分かった」


「…あのさぁ。明日、起きれたら一緒に行くわ」


「は?嘘でしょ?5時だよ?」


「先に玄関で待っとくつもりだけど、いなかったら一応扉叩いてくんない?」


「いいけど…夕方には萌のお迎えがあるから、本当に行って帰るだけだよ?いいの?」


「二人を無理やり此処に遊びに来させてるのに、まだ一回も手合わせたことなかったからさ。一応。礼だけ言いたくて」


「……それは別に…潮がお礼を言うことじゃ…」


「ま、そう言うわけだから」



それだけ言い残し、扉を閉めようとする潮。

芹はその背中に向かって「ありがとう」と一言溢すと、少しだけ嬉しそうに笑みを浮かべた。








* * *  epilogue






(ちょっと待って、具材多めで10皿分作ったはずなのに何でこれしか残ってないわけ)


(かのあの分…これ…めっちゃギリギリだけど大丈夫そ?)


(誰だよ最後におかわりしたやつ)


(あー美味かったわーお腹はち切れそう)


(おそのちゃん、配分考えておかわりしましょうねー)


(ご飯もこれ、炊飯器2個で8号炊いたはずなのに…)


(だってセリーの漬けてきた漬物めっちゃ美味いんだもん)


(やばすぎるマジで、食べ盛り二人いるんだけど)



(やーめっちゃいい匂いするー!!お腹空いてきたから食べにきたよー!カレー♪カレー♪)



(かのあ。はいこれ、注いでおいたよ)


(わー!蛍ありが…っえ?)










第1話 了





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