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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第1章 「箱庭の日常」
18/40

第12話 (1)







ーあまねん、おその、蛍、セリーをトークルームに招待しましたー

ー動画を送信しましたー



『というわけで、悩んだ結果ノーマルタイプ縛りで行こうと思うんですが、詰み防止の為6匹中3匹は付属能力有りで行きます!』


『か…かわいい…!!このクロモン絶対ほしい…でも絶対草これ絶対草でしょこいつ…えっ!ノーマルと草ってマ?!』

『捕まれ!!捕まれよ頼むから!!頼…あ゛あ゛あ゛あ゛!!』


『えっ待って何このクロモンかわいい絶対ほしい、いやこれはノーマル絶対ノーマル絶対にノーマルであれノーマルであれよあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛格闘う゛う゛う゛』



〔えー、クリスマスなんですが〕

〔かのあのクロモン実況が好評高再生数爆進中ということで、お祝いも兼ねた豪勢なクリスマスパーティを企画しています〕

〔どうでしょう〕



〔はい 当然やりましょう〕


おその

〔企画内容の説明をお願いします〕



〔はい、まず正午に腹ぺこの主役を用意します〕

〔腹ぺこの主役は、屈強なトナカイに乗って登場します〕


〔はいストップ〕

〔屈強なトナカイについて詳細を教えてください〕


〔はい〕

〔トナカイの角を生やした、屈強なおそのに乗って登場します〕


おその

〔それトナカイじゃなくてただの屈強な私だろうが〕


〔良かったー…私じゃなくて〕


〔屈強なおそのはテーブルまで腹ぺこの主役を運びます〕

〔その後、ひげを生やした心優しいサンタがテーブルにお祝いの食事とケーキを並べます〕


〔はいストップ〕


〔白いひげを生やした、心優しい蛍がお祝いフルコースを並べます〕


〔んーーー…まぁいいでしょう〕


おその

〔おい、何二足歩行してやがる〕

〔異議あり!!蛍も四足歩行させろ!!トナカイでいいだろトナカイで〕

〔背中にお盆持って歩かせろ!〕


〔心優しい蛍はこんなこと言われても優しい言葉をかけられるのよね〕

〔床掃除ご苦労様〕


おその

〔ひげ毟るぞ!!〕


〔で、主役がお腹いっぱいになった頃〕

〔美しい天使2人がお祝いのケーキを持ってやってきます〕


〔はいストップ〕


おその

〔はいストップ〕


〔天使の羽をつけた美しい芹とあまねんがやってきます〕


〔当然の役割分担を当然のように言いやがって!〕

〔天使の羽つけさせろ!この!〕


おその

〔そうだそうだ!いっそ膝にモップつけて這いつくばってやろうか!!〕

〔まぁ百歩譲ってもいいけど潮、お前は絶対トナカイだからな!!〕


〔まぁいいでしょう 膝にモップくらいつけてやろう〕



あまねん

〔そうだよ…それだと不公平だよ潮!〕

〔皆で天使やろっか!〕


おその

〔いや…あまねん…気持ちだけもらっておくよ…〕

〔ゲームで順位付けなくなったらやっぱ、それはそれで物足りないのよ…お手て繋いで皆でゴールした世界線が果たして皆の納得する未来に繋がるのか?〕

〔否!!トナカイとして這いつくばり、膝のモップで床を掃除した世界は私だけが経験した世界!天使をやっていたら知らなかった世界なのだ!〕


〔そうだ!白いひげを生やした私は本当に天使になりたかったのか…?違和感を感じながら歩き続けた先に私の納得する未来はあるのか!〕

〔今は白いひげを生やす世界を享受しよう〕


あまねん

〔そ、そうなの?でもそれだと…うーん…〕


セリー

〔君たち、あまねんの優しい心を弄ぶんじゃないよ〕

〔天使役やれって言ったら言ったで、そんなぬるい役やるわけないだろトナカイ役やらせろとか言い出すでしょ絶対〕


おその

〔うん…実はトナカイ役、割と乗り気でごめんな〕


あまねん

〔そ、そうなの?!〕


おその

〔どのタイミングでかのあを振り落としてやろうか考えてたくらいには乗り気だった…すまん〕


〔給仕の合間にレモンめちゃくちゃ搾った水とか出しちゃおうかなーとか考えてるくらいには楽しみだった…すまん…〕


あまねん

〔も〜!!心配して損したよ!〕


〔君には天使役が似合うよ〕


おその

〔あまねんマジ天使〕



〔はい〕

〔じゃそんな感じで、かのあがケーキ食べ終わった後はゲーム大会など挟みまして、夜になったら今度はプレゼント交換会とクリスマスディナーが始まります〕


〔はい クリスマスディナー内容の説明をお願いします〕


〔今年は知り合いの店から大皿をいくつか注文済みでございまして〕

〔チキン、ローストビーフ、生ハムのサラダ、サーモンのカルパッチョ、ピザ、何かのスープ、何とかパイなど〕

〔何かクリスマスっぽいものを頼んだのでそんな感じのが来ます〕


〔雑な説明を有難うございます〕


〔クリスマス当日は何かと予定がある人もいると思うので、23日の金曜日にしようかと〕

〔いかがでしょう〕


あまねん

〔はなやぎでイベントあるとしたらそのへんかな?と思ってたから、その日はフリーにしてたんだ〜!楽しみ!〕


おその

〔全く同じ予想で予定空けてたので行けます〕


〔皆考えることは同じですな〕


〔思考読まれてるなぁ 助かるなぁ〕

〔萌は幼稚園の後って来れそう?プレゼント用意してんだけど〕


セリー

〔毎年ありがとう 皆がゲーム大会とかしてる頃に迎え行って、そのまま泊まる予定だったよ〕


〔よっしゃー〕

〔でっかいクリスマスツリー用意したから、プレゼントは各自その下に置いて寝てね〕

〔誰宛か分かるように書いといて、起きたら皆で開けよう〕


おその

〔めっちゃ楽しいじゃんそれ〕

〔実は、もう萌ちゃんに豪華な貢ぎ物用意してるんだよね かわいい包装しなきゃ〕


〔は?負けんわ クリスマス前大特価だったからもうポチって押入れに置いてあんだぞこっちは でかいんだぞ めっちゃ目立つ包装にしよ〕


あまねん

〔萌ちゃんに似合いそうな可愛い服見つけたから買って用意してあるよ〜!〕


セリー

〔みんな…誕生日といいクリスマスといい、萌の為にいつも本当にありがとね 申し訳ないんだが〕

〔でも、高いものは受け取れないからね〕


おその

〔セリーさんさぁ、何か勘違いしてるみたいだけど、貢ぎたくて貢いでんのよ我々〕

〔むしろ貢がせてくれてありがとう〕


セリー

〔いや…ありがとうとかじゃなくてさ〕

〔高いものだったら買い取るからね普通に〕


〔いやー、何あげようかなーって考えてる時の〕

〔至福感よね〕


〔それな〕


セリー

〔聞こえてるかな?頼むよ本当に〕


あまねん

〔服とか買いに行ったらさ、うわこれ萌ちゃんに絶対似合う〜!って勝手に考えちゃうんだよね〕


〔常に萌が喜びそうなものにアンテナ張ってるから〕

〔セリーが嫌がるだろうと思って誕生日とクリスマスくらいで抑えてるけど、あげていいなら何でもない時でもあげるよ?〕


セリー

〔萌は本当 幸せ者ですよ君たちのおかげで〕

〔でも高いものはやめてね お願いだから お願いね お願いしたからね〕


〔お願いされてもなぁ もう買っちゃったからなぁ〕


〔んじゃまぁ、クリスマスパーティはそんな感じでよろしく〕


おその

〔ほーい よろしくー〕







「わーーーーーーー!!」



ーーはなやぎお祝いクリスマスパーティ当日。


かのあの悲鳴でスタートしたパーティは、早速盛り上がりを見せていた。

トナカイに扮した潮とおそのの2人が、背中にくくりつけた不安定な座椅子の上にかのあを乗せ、四つん這いで廊下を進む。


その後ろをサンタの格好をした蛍と天使の格好をした芹、周が励ましながらついて歩いた。



「かのあ、かのあそれ!2人の角!それが操縦桿だから!持たなきゃ!」


「これ操縦桿なの!?すぐ外れるけど!?」


「じゃぁ被って!もう被ってそれ!」


「いや、かのあが被っちゃったらこれ、2人ともただの茶色のタイツ着て這いつくばってる人になるけど!それはいいの!?」


「やめろ!我々のアイデンティティを奪うな!」


「やめろって言ってるけど!雑すぎでしょトナカイ!角奪われただけでトナカイじゃなくなるの雑すぎでしょ!」


「潮、ペース合わせろや!振り落としてやろうと思ってたのに振り落とす体力すらないんだが!」


「1、2、1、2のリズムだろちゃんと!」


「1…2、1…2じゃないとキツいんだよ!肺が!もう悲鳴をあげてるんだよ!運動不足なめんな!」


「ちょっと喧嘩やめて!?座椅子ぐにんぐにんしてるから!2人も大変だと思うけど乗ってるかのあもめっちゃ大変だからこれ!!てか何なのこれ!?突然の強制イベント何これ!?怖いんだけど!!」



紆余曲折ありながら何とか食堂へと到着し、ディナーテーブルにかのあを着席させる。

すると、壁にプロジェクターの光が当てられ、かのあのクロモン実況を編集した動画が流れ始めた。



『喰らったらしぬ喰らったらしぬあああああああああ!!!詰むぅぅぅぅぅ!!!』


『えー厳選した結果ですね とんでもない強者が誕生してしまったということで こいつをノーマル界のスターと名付けようと思います』


『待て外すなノーマル界のスター頼む頼む頼む外したら終わる外したらあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛』


『えー厳選した結果ですね とんでもない強者が2体誕生してしまったということで こいつらを期待の星、ライジングスターとそれぞれ名付けようと思います』


『も゛お゛お゛お゛こいつすぐ寝るぅぅぅ!!寝るな起きろ!!期待の星!!お前の輝きを見せてくれ!!』


『ライジングスター!!お前にかける…!!いけぇぇぇぇぇ!!!』



『三つ星が…三つ星が勝った…!!ついに勝ったーーー!!!!やったぞーーー!!!』



「えー、かのあさん。クロモンの実況配信が大好評だったかのあさん」


「ふぇ…」


「大変お疲れ様でした。今からお祝いのパーティを始めたいと思います」


「ふぇぇぇぇ!!!」



既に涙目になっていたかのあの目から、ぼろぼろと大粒の涙が溢れ始める。

その横へ、白い髭を生やした蛍サンタが食事を運んできた。



「お祝いでございまする」


「ぎょぇぇぇ!!!ステーキぃぃぃ!!え、これ春さんのやつ…?」


「そうそう。前回約束してたやつ、今日の為に贈ってくれた。さっき焼いた」


「びぇぇぇぇ!!!いただきますぅぅぅ」



ステーキ、フランスパン、マッシュポテト、海老のグラタン、ミニトマトのカプレーゼ、コーンスープなど、かのあの食べられるもので構成された、愛ある料理の数々。

かのあは一口一口大事にそれらを食べながら、差し出されたハンカチで涙を拭く。



「美味しい…美味しいよぅ…!」


「美味しいか、そうかそうか」


「ステーキ久しぶりに食べたぁ…春さんにも感謝ぁ…!」


「うんうん、伝えとくね」



ぱくぱく食べ進めるかのあを、椅子に腰掛けた面々は暖かい目で見守る。



「ちなみに、全配信ゲーム進めながらリアタイで見てたからね」


「うおおお…ありがとぉ…!!いやぁ、皆の言う通り自分のやりたいように配信して良かったよ…おかげさまで、かのあ自身も楽しかったし、皆にも楽しんでもらえました!改めてありがとね」


「本当、お疲れでした。同じく配信見ながら進めてたけど、めちゃくちゃ面白かったわ。完全相乗効果、一緒にゲームしてるみたいな感覚で良かった」


「配信見て面白すぎたから後乗りで買った民だけど、まじで見てたおかげで2倍楽しかった感謝。やっぱゲームって面白いよな」


「私も買って、配信見ながらやったよ〜!分からないところとか、かのあの見ながらだったから解けたし有り難かった!久しぶりにゲームしたけど、楽しかったな〜」


「萌に買って、同じく配信見ながら一緒に進めたよ。かのあがめっちゃ楽しそうにゲームしてるから、こっちまでテンションあがっちゃった。かのあ、お疲れ様でした」


「はぅぅ…!緊張してたけど頑張って良かったー!自分も楽しかったし見てた人にも楽しんでもらえたとか最高かよ!!」


「あーあ、レモンばちばちに絞った水とかしれっと出そうと思ってたのに、こんな良い空気じゃ出せないなぁ」


「絶っっ対やめて!?」



しばらくして、一欠片も残さず綺麗に食べ切ったかのあが手を合わせて「ご馳走様でした!」と大きな声で感謝を述べると。


遮光カーテンが閉じ、暗くなった食堂。

そこへかのあの配信に使われるBGMが流れ始め、キッチンの方から2人の天使が蝋燭の火の灯ったケーキを持って現れた。



「はーい、かのあちゃんプレッシャーに負けず良く頑張りましたケーキでーす」


「ちょっと待って涙枯れ果てそう」



ご機嫌なBGMに合わせて各々が踊り、蝋燭の火を吹き消すよう促す。

かのあがふっと息を吹きかけると、電気がついてケーキの全貌が露わになった。


かのあの配信チャンネルの画像、モチーフキャラクターなどがあしらわれたデコレーションケーキ。そして、いいねの形をしたチョコレート。



「まだ枯れ果ててなかった…!!うぇぇぇぇん…!!」


「かのあが楽しそうにゲームする姿を見て、明日も頑張ろうって思ってる人がいる。そんなかのあが、いつも元気でいられますように」


「君らのおかげで元気だよぉーーーー!!!感謝ぁーーー!!!」


「召し上がれー」



よしよしと頭を撫でられながら、ケーキを食べていくかのあ。



「これ、かのあ一人分なのはあれだよね?この後クリスマスパーティもする感じなんだよね多分?」


「おっ、察しが良いですなぁ」


「てことはこれ、かのあ全部食べちゃってもいいんだよね…?」


「いいに決まってんでしょ、君のケーキなんだから。夜は夜で美味しいもの用意してるから楽しみにしてな」


「ぎゃおおおおん!!嬉しいぃーーー!!美味しいいぃぃ!!」



ケーキも、お皿についたクリームをスポンジ生地で掬い取るまでに綺麗に食べ終える。

名残惜しそうに手を合わせてご馳走様をすると、今度は蛍サンタが大きな袋を担いでやってきた。



「何何今度は何!?」


「ほっほっほ。頑張った君にご褒美をあげにきたんじゃよ」



お皿など片付けられたテーブルの上に、プレゼントが置かれる。

congratulations!と可愛らしいフォントで書かれた包装紙を剥いだ瞬間、かのあの目が大きく見開かられた。



「待って!!最新のマイクじゃん!!!」


「はい。マウスとかキーボードとかヘッドフォン系は気に入ったものがあると思ったので、話し合って…めちゃくちゃ良いマイクにしました。マイクはね、音質が良いに超したことはないと思うので」


「めっちゃ嬉しい!!やばい!!」


「これからもより一層楽しんで頑張ってください」


「応援してるよ〜!」


「ありがとーーーー!!頑張って良かったし楽しく頑張り続けます!!」



マイクの入った箱を抱きしめて喜ぶかのあを、周が抱き締め、芹が頭を撫で、残りの3人は微笑みながら見つめる。



「さ、それじゃ。萌が帰ってくるまでゲーム大会でもしますかね」


「わーい!!何する?!」


「パーティゲームか勝ち上がりゲームか悩むけど」


「ここは久々にパーティゲームにしよう。一位は何か良い感じのところのエステ券」


「何その女子力高い景品。おそのの口からエステとかいう単語が出てくる日が来るとは…」


「母さんが何かで二等当てたらしいんだけど、お母さんこういうの緊張して行けないから…とか言ってくれた。そして私も行かないから景品として捧げる」


「良いだろう。誰が美しくなれるか勝負じゃ」


「ちなみに結構前にもらったやつで期限は年内までだからよろしく」


「いや、いらないなら早く譲って?めちゃくちゃぎりぎりじゃん」


「いやぁ、あまねんとかにあげようかと思ったんだけど忘れててさ。今日ゲーム大会あるってことだったから、それで思い出した。丁度いいやってなった。ちなみにこのお店、年末のお休みは27日かららしいよ」


「後4日で誰が美しくなれるか勝負じゃ」


「切羽詰まりすぎだろ。予定を立てる猶予をくれよ」


「途中で萌迎えに行くし、私抜きでどうぞ。ゲームは見るのが楽しいから」


「分かった。じゃぁ芹、私が買ったら1人分自腹で払うから一緒に行こう。君の為に勝つよ」


「いや大丈夫です」








「見てみてー!サンタさんだよー!」



ーーそうして始まった、ゲーム大会の真っ只中。


一位争いで盛り上がりを見せる中央ホールに現れたのは、可愛い小さなサンタさんだった。

潮、かのあの一騎討ちだったのだが、かのあが萌のサンタ姿に気を取られている内に潮が一位になる。



「かわいいサンタがやってきた!パーティの面子が揃いましたな」


「何だこのサンタさん!!たまらん!!」


「えへへ。かわいい?」


「かわいい以上の語彙を教えてくれ…!!かわいいじゃ足りん!」


「萌ちゃんかわいすぎるよーーー!!!……あ゛?!負けてる?!」


「はい1位ー」


「おぎゃーーーー!!エステ券は別にいらないけど負けたのはムカつくーーー!!」


「ゲーム大会は私の勝利ということで。芹、エステ行くぞ」


「…まぁ、せっかくだから行ってみようかな」


「おめー」


「じゃ、萌も帰ってきたことだし、クリスマスパーティ開始だね。早速プレゼント交換会しよう」



ゲーム大会が潮の勝利で幕を閉じると、クリスマスパーティが始まった。


大きなクリスマスツリーと可愛らしいサンタを中心にふわふわのカーペットの上に座り、各々持ち寄ったプレゼントを自分の前に差し出す。



「曲が止まるまでくるくる回してね」


「何の曲?」


「おそののオリジナルハミングソング」


「何それ本人が知らないやつやめて?」


「この前漫画読みながら鼻唄歌ってたから録音したった」


「こわっ!!やめろや!!」


「よーい、スタート」



流されたハミングソングがぴたりと終わったところで動きを止め、自分の手元にあったものがプレゼントとして決定した。



「歌はともかくとして、プレゼントわくわくするな」


「何が入ってるんだろ〜!何か嬉しい感じするよね!」


「萌の好きなもの入ってるかな?」


「おっ!!!」



まず一際大きな声をあげたのは、おそのだった。

手に持ったクリスマスカラーの袋の中には、お洒落な手編みのハンドウォーマーとイヤリングが入っていた。



「お、おしゃれすぎだろ…」


「それ、私からだね。かわいい毛糸が手に入ったから編んでみた。洗えるし、服の下にもつけられるよ。ちょい見せでかわいいようにしてあります。薄いけどかなりあったかいので」


「これプレゼントってマ?ちょっと見て…私を見て…一気に陽キャ感出た…すごい…センスってやっぱりすごい…」


「色と装飾は萌がそれぞれ選んでるよ」


「いや親子でセンス良すぎだろ…。気分は陽キャ。よっしゃこれでクリスマス一色な街中を、え?今からデートですけど?待ち合わせ場所に行くだけですけど?って顔して堂々と漫画の最新刊とコンビニの肉まん買って帰れるわ」



「いいね。で、私のこの、良く分からないやつは誰が選んだの?」


「あ、かのあのやつだー!!潮当たりだよそれ!!」


「どこが?」



潮の手に収められていたのは、かなり奇抜なバスローブだった。

かのあが満足そうに頷いて、「お洒落だよね!」と言った瞬間、それは潮のお尻の下に敷かれた。



「あ゛ーー!!」


「お風呂上がりにこんなド派手なバスローブ着れるか。シルクのバスローブ寄越しなさいよせっかくなら。てか萌に当たってたらどうしてたわけ」


「それは…考えてなかった…!!」



「潮ちゃんみてー!萌のプレゼントかわいいー!」


「おっ本当だ、かわいい」


「あ、私のやつだね〜!良かった!」


「周ちゃんがくれたの?ありがとー!」


「オーガニックの入浴剤と石鹸だよ。ママと一緒に使ってね」


「ミルク系の入浴剤じゃん。普通に私が嬉しいんだけど」



萌の手に握られたお洒落なボトルを見て、芹が嬉しそうに顔を綻ばせる。

そんな芹の手には、かわいいモバイルバッテリー。

眼前に掲げると、隣に座っていた蛍が「それ私が選んだやつだ」と蛍が恥ずかしそうに言った。



「セリーそういうの好き?大丈夫?」


「好きだよ、かわいい。丁度欲しいと思ってたんだよね」


「そっか。それなら良かった」



「ちょっと待って!!かのあのプレゼントこれ見て!!!」


「あっ、萌が選んだやつだー!」


「破滅的にかわいいんだけど!!!クロモンのぬいぐるみ!!」


「おー、今日にふさわしいプレゼント来たな」


「さすが萌ちゃん」


「かのあちゃんの動画、萌たくさん見たよ!楽しかったからそれにしたんだー」


「幸せすぎてはげそう!!!ありがとう萌ちゃん!!」


「どういたしまして!」



ぬいぐるみを抱きしめて悶絶するかのあの横で、静かに微笑んでプレゼントを見つめているのは周。

それに気がついた潮が「あ、それ私のだ」と声をかけると、周はカーペットにごろんと横になった。



「もー…!潮ってセンスいいよね…最高だよ…!」


「小型アロマディフューザーな。誰に当たってもいいし、くそお洒落じゃんと思ってそれにした」


「車にちょっとシュッてするやつ欲しかったの!!ありがとう!!ちょっとカーペットにシュッてするね…匂いもいい!最高!」


「お、おお。喜んでもらえて良かったわ」


「あまねんの喜び方かわいいなぁ。さて、私もこの良く分からないプレゼントを全力で喜ぼうか…」



そう言った蛍が全員に見えるように掲げたのは、「一張羅いっちょうら」と独特なフォントで書かれたTシャツ。



「良い一張羅でしょ」


「うーん、一張羅持ってなかったから嬉しいわ」


「お前の全力はそんなもんか」


「この素敵な一張羅はぼろっぼろになった部屋着と交換するね。どうもありがとう、おその」


「よしよし。まぁこれで、各々満足のいくプレゼントが回ったようですな」


「いや…誰かバスローブ交換してぇ」


「一張羅とどっちがいい?」


「一張羅以外でぇ」


「私意外とそのTシャツ好きだよ。モバイルバッテリー気に入ってるから交換はしないけど」


「プレゼント交換って楽しいね!最高!!」



ーーそれから、一度プレゼントを片付けて、少し談笑した後。

潮が予約していたディナーを取りに行って戻ってくると、時刻はあっという間に18時を過ぎ。


飾り付けをした食堂に移動して食事を並べると、より一層クリスマスな空間となった。



「よし。とりあえず改めまして、メリークリスマス」


「「「「メリークリスマス!」」」」


「「めりくりー」」


「いただきまーす」



手を合わせた後、クリスマスディナーに舌鼓を打ちながら今日の振り返りを始める。



「はー…楽しいことってあっという間だよねー」


「楽しかったね!かのあはもう、大大大満足だよ!!!」


「そりゃ良かった」


「でも何か、これが終わると一気に新年に向かうんだなーって感じするよね」


「年の瀬ですねぇ」


「君たち、年の瀬が始まる前にエステ行かなきゃだよ」


「そうだった…予約しよ。芹いつがいい?」


「平日の昼間ならいいよ」


「じゃそれで」


「てか料理うま」


「美味いよねぇ。ランチお得にしてくれるらしいから今度行こ」


「いいね」



ディナーを食べ、テーブルの上を片付け終えると。

今度は可愛らしい小皿とフォーク、そして周の作ったブッシュドノエルが並べられた。



「潮がケーキどこの用意しようか迷ってたから、作らせてもらいました!午前中に作っておいたんだ〜!」


「かわいいー!美味しそー!」


「あまねんケーキだー!」


「やったー!」


「召し上がれ〜」



丁寧に仕上げられた、チョコレートのブッシュドノエル。

荒く砕いたココアクッキーや薄く伸ばして冷やしたチョコなどを使ってより切り株に見えるよう作られたそれを、各々じっくりと堪能していく。



「美味ーーーーい!!」


「非常に美味しゅうございます」


「おいしい!萌、本当に周ちゃんの作るお菓子だいすき!」


「本当?すっごく嬉しい!作った甲斐があるな〜!」


「ぎょえー生クリームの甘さ丁度良い…」


「チョコが甘いから、ちょっと控えめにしてみたんだ」


「何で素敵なクリスマス」





ーークリスマスケーキを食べ終わった頃には、夜は随分深まっていた。


萌が眠たくなったところで、楽しかったクリスマスパーティは終わりを迎える。



「さ、萌。明日の朝サンタさん来てるかな?楽しみだね」


「うん!萌良い子にしてたから、きっとサンタさん来てくれるよね?」


「めちゃくちゃ来てくれると思うよ。6人は確実に来るよ」


「そんなに?!すごい!」


「歯を磨いて、きちんと寝て、また明日ね」


「うん!パーティすっごく楽しかった!みんなありがとう!また明日、おやすみなさーい」


「「「「「おやすみー!」」」」」



しんしんと降り積もる雪。


クリスマスパーティを楽しんだはなやぎ館に、穏やかな聖夜が訪れた。






*   *   *   *   *   epilogue





(おはよーメリクリー)


(おはー メリークリスマスー)


(メリークリスマス!わーい!やったー!ママ見て、本当にサンタさんいっぱいきてるー!)


〔すごいね、有難いね)



(わー、うさぎのぽるんお世話セットだー!萌ね、これほしかったの)


(うんうん、知ってる知ってる)


(萌ちゃん萌ちゃん、こっちのおっきい箱すごくない?開けてみて?)


(え?わー!すごーい!ガーデンファミリアーナだー!)


(ぎょええええ!!!こいつガーデンファミリアーナ買って来ただとぉ!?王道だから逆に誰も買わんだろうと思って油断した!!)


(新作。しかも一番でかいやつ)


(すごーい!お友達の家にあった大きいやつより、もっと大きい!)


(こいつやべー…)


(はい蛍さん買取確定でーす)


(やめてください、セリーさん!どうか、どうか貢がせてください!萌ちゃんに癒されてるんです私!いつも!感謝の気持ちなんです!)


(いや、ダメです。全額払います)


(お…お願いです!!お願いします!ね、萌ちゃん、ほしいよね、ね)


(サンタさん、お金たくさんかかっちゃったの?持って帰らなくちゃいけないの?)


(ううん?きっと君の笑顔の為ならプライスレス)


(蛍、諦めなって。芹の財布出てきてるからもう)


(母親としても友達としてもこれを許容すべきではないと思います。サンタさんの部屋にお金を置いて帰ります)


(ヒィィィン!)


(馬おるなぁ)



(あっ見てー!ママー!メイクするやつー!)


(へっへっへ、いいでしょ?かわいいでしょ?)


(かのあちゃんも持ってるの?お揃いー?)


(あっいや、あの、べっ別にぃ?!見たことあっただけだよ!?いやーでも想像よりしっかりしてて良かったー!めっちゃいいよねこれ!食べても大丈夫なやつなんだよこれ!)


(そうなんだー!)


(それ買ってあげようか迷ってたんだよね、ありがとうサンタさん)


(どういたしましてーー!!へへん、高すぎたらセリーが気にするのは織り込み済みよ!!丁度いい値段のやつにしたのだよ!!)


(萌の誕生日に数万のくそでかぬいぐるみプレゼントしてセリーにお金返されて学習したもんな)


(学んだ。もらって欲しかったら高すぎるものはあげない!蛍、分かったかね!)


(学んだ…)


(ちなみにそのぬいぐるみ、萌と私が抱きしめて寝てるよ)


(いや結果オーライじゃん!!!やっぱあげたいものあげるのが一番いいわ!!!写真撮って送ってよそれーー!!)


(もふもふで気持ちいいんだよね)



(ママ見て!こっちの箱はかわいいカバンが入ってたよー!!猫さんのカバンー!)


(うわっ何それかわいい!)


(おそのセンスいいなぁ)


(リュック型の方が手が空くからいいかな?と思って。あととてつもなく可愛かったから背負ってほしくて)


(みてみてー!かわいい?)


(かわいすぎる…!!)



(こっちは服がいっぱい入ってたよー!すっごくかわいい!)


(ひゃー、かわいい服)


(かわいいでしょ!一式買っちゃっ…あっ!いや、サンタさん、萌ちゃんに来てほしくて一式買っちゃったって言ってたよ〜)


(かわいい!萌、これ着てたくさんお出かけする!)


(サンタさん達、萌が喜んでくれてすっごく嬉しいと思うよ。いっぱいお礼しようね)


(うん!サンタさん達、ありがとー!)



(んじゃ、改めてメリクリー)


(予定がある人たちはどうぞ楽しんできてくださいませね)


(はーい)


(よーし、クリスマスガチャ回すぞー)


(配信するぞー!)


(聞くぞー)







第十二話(一) 了






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