第10話(2)
おその
〔ハロウィンの季節がやってきました〕
蛍
〔お〕
〔わいのコスプレ力が火を吹くぜ〕
潮
〔コスプレ力…?〕
おその
〔去年のハロウィン、蛍の用意した服とかでちっちゃいパーティしたけど、面白かったし出来良かったじゃん?〕
〔あれでさ、夏祭りの時に行った写真館で写真撮ろうよ〕
潮
〔いいねー 服まだ取ってある?〕
蛍
〔お前ら私を舐めてんの?〕
〔前回写真館でハロウィンの写真撮るって聞いてから、もう7人分用意してありますけど?〕
おその
〔引くわ、その行動力〕
〔蛍って、夏祭りの後めっちゃ忙しかったんじゃなかったっけ?〕
蛍
〔忙しすぎて寝る時間ないとさぁ、いざ寝られるって時に眠れないのよ〕
〔その時に勢いで服作って、気絶するように寝て仕事しての繰り返しで作り上げた、血涙に塗れたコスプレ服です〕
潮
〔着づらいなぁ…〕
おその
〔蛍が夜なべをしてコスプレ作ってくれた…〕
蛍
〔まぁ割と出来はいい 大変満足〕
おその
〔やったことないから分かんないんだけど〕
〔7人分の服ってたった1、2ヶ月くらいでできちゃうもんなの?〕
蛍
〔言い間違えた 今回作ったやつも割と出来がいい 大変満足〕
おその
〔??〕
潮
〔よく分からんが、これは好感度によって落差激しいんじゃないか多分〕
おその
〔えぇ…いつから乙女ゲーに?〕
〔絶対好感度低いやん 乙女ゲーって知ってたら好感度取りに行ったのにさービニール袋に目描いただけとかやめてよー?〕
〔まぁ、蛍の作ってくれたやつなら何でも着るけどね?〕
潮
〔今更無駄な足掻き始めてて草〕
蛍
〔ぶっちゃけて言うと、3着しか気合入ってなくておそのの衣装が一番雑〕
おその
〔日頃の行いかよ…ちくしょう…!〕
蛍
〔来年のハロウィンまで好感度上げ頑張って〕
潮
〔怖いなぁ 誰が何の仮装なのよ?〕
蛍
〔当日のお楽しみ〕
おその
〔で、衣装が一番雑だと聞いた上でわくわくしながら聞くけど、日にちはいつにするよ?〕
潮
〔いいメンタルだねー気持ちいいねー〕
おその
〔いや、蛍の言う雑なんてたかが知れてるでしょ 多分雑でごめんとか言ってゴスロリ服とか仕立てる女よ?あいつは〕
蛍
〔まぁ雑っていうか おそのの衣装は試作品だからね〕
おその
〔しさ…試作品…?〕
蛍
〔今回作った3着の気合に比べると気持ちがやや雑 出来はいいけどね〕
〔で、日にちだけど萌ちゃんがいる時がいいな 渾身のかわいいを詰め込んだんで〕
セリー
〔ハロウィンいいね 何着させられるのか衣装が若干不安ではあるけど〕
〔土日ならどっちでも大丈夫だよ〕
蛍
〔わいの着て欲しいを詰め込みました…へへ…〕
〔土曜は仕事なんで、今週の日曜日でどう?〕
セリー
〔こわ〕
〔おっけー〕
あまねん
〔いいね、ハロウィン!日曜日了解です〜何の仮装かな?楽しみ!〕
〔あ、せっかくだからハロウィンっぽいお菓子作ってもいいかな?食べる?〕
おその
〔は?食べるに決まってんだろ〕
蛍
〔栗拾いの時のモンブランが美味すぎて忘れられんのだよこっちは〕
潮
〔同じく〕
〔あの味を求めてケーキ屋を彷徨ってる自分がいる〕
セリー
〔萌がおやつにあれを欲しがるんだけど、周にしか作れないって断り続けてるんだよね〕
〔お菓子は専門外〕
あまねん
〔そんなに?!嬉しいな〜〕
セリー
〔ハロウィンにまたお菓子作ってくれるらしいって聞いたらめっちゃ喜ぶと思う〕
〔私も何か作ろうかな?ハロウィンっぽいもの〕
あまねん
〔やったー!セリーの料理大好き!〕
潮
〔是非!!是非よろしくお願いします!〕
セリー
〔肌寒いけど、中庭でやる?〕
潮
〔飾り付けは任せて〕
〔あと、外ストーブ出したりしとくよ〕
おその
〔手伝うわー〕
かのあるふぁ
〔いや参加しまーーーーーす!!!〕
〔何時から?!〕
蛍
〔何時にする?お昼食べた後に写真撮りに行って、帰ってあまねんのおやつ食べて、夜にセリーのご飯食べる感じでどうよ〕
おその
〔いいんじゃない〕
セリー
〔いいよー〕
あまねん
〔了解だよ!午前中にお菓子作って冷やしておくね〜〕
かのあるふぁ
〔楽しみなんだけど?!〕
〔大丈夫、今回は寝るからちゃんと!!衣装ガチャ当たれぇぇ!!〕
蛍
〔ま、楽しみにしといてよ〕
潮
〔ほんじゃ、当日ねー〕
「なんでなん?」
ーー日曜日のお昼。
昼食を食べ終えた面々が中央ホールに集まり、早速一人一人が蛍から衣装をもらって着替え始めると。
まずいの一番に不満げな声を出したのは、しまうまの着ぐるみを着たおそのだった。
「なんでしまうま?着ぐるみ?ゆるキャラ担当なの?」
「それはな。わいが昔、着ぐるみを作ってみたい欲に駆られた時に作り出した渾身のしまうまさんです」
「だから何でしまうま?着ぐるみ?ゆるキャラ担当なの?つーか何で顔出しなの?中の人丸出しスタイル?」
「まぁまぁ。スリムめに作ってるから動きやすいでしょ?そんな遠慮しないで」
「ねぇちょっと?!何でフラミンゴ?!」
次に不満げな声を上げたのは、フラミンゴの着ぐるみを着たかのあ。
「それはな。わいが昔、着ぐるみを作ってみたい欲に駆られた時に作り出した渾身の…」
「それさっき聞いたけど?!てかこれ着ぐるみってカテゴリで合ってる?!」
「その首のくねってるところと、くちばしをね。作ってみたかったのよ」
「いや知らんけど!!これあの、顔出てんのちょっとだけ恥ずかしいんだけど…!」
「いやぁそれを着こなすとは。さすがのかのあさんだわ」
「つまり、7着の内2着は既に作ってあったものだったってことね」
そう言ったのは、有名アニメのヒロインの服を模した衣装を着た潮。
蛍はうんうんと頷いてみせる。
「ちなみにその衣装は、前友達と写真撮ろうってなった時に作ったやつだけどね」
「動作と台詞が合ってないけど。つまり3着じゃんか。道理でサイズが合わないわけだよ」
「ちなみに私が今着てるこの服も、その時ついでに作ったやつだけどね」
「いや4着じゃん」
「当たり前だろ!!7着もすぐに作れるか!!」
「お、おぉ…今のは言い方悪かったねすまんかった…反省」
「7着作ったなんて誰も言ってませんー。過去作で出来のいい4着、新しく仕立てた出来のいい3着、合計7着“用意した”って言いましたー」
「確かに用意してたし出来も良い…」
「この出来のものを3着短期間で作ったこと自体相当すごいけどね」
「そもそも自分で用意したとてあの3人に見合うような出来のものなんて持って来れなかったと思うから、何も文句ないんですが」
視線を移した先には、ロングスカートのメイド服を着た周、セクシーな魔女の衣装を着た芹、かわいい黒猫の衣装を着た萌の姿。
「あまねんにはこの姿でお菓子持ってきてほしかったのでこれにしました。で、セリーと萌ちゃんはセットにしたかったんでこうなりました」
「気合の入り方が違うんよなぁ」
「モデルが良すぎるんよ」
「おい、誰に着ぐるみがお似合いだって?」
「言ってない言ってない」
「てかこのクオリティの服自分で作れるってマ?やべーな蛍さん…」
「まぁ、このくらいなら普通に」
「着ぐるみ作ってるのも相当だけどね」
「あー、萌ちゃんかわいいー」
「にゃぁ、だよー」
見られていることに気がついた萌が恥ずかしそうに言って、芹以外が全員倒れ込む。
「か、かわいすぎる…!!」
「なんて衣装を作ってしまったんだお前は…!!攻撃力高すぎるだろ…!!」
「自分で仕立てた衣装がこんなにもマッチすることある…?!萌ちゃん生まれてきて私の目の前に現れて私の作った服を着てくれる関係として巡り合ってくれてありがとう…!」
「長い長い」
「あの、しまうまとフラミンゴ立てなくなってるけど大丈夫そ?」
「ちょっと誰かー!誰か手貸してー!意外と立てないわこれ!」
「このフラミンゴのケツ!ケツと首がー!!」
ひっくり返っているしまうまとフラミンゴを起こし、改めて顔を合わせる面々。
「いやぁそれにしても、すごいメンツだなぁ」
「それにしても着ぐるみかわいいな〜似合ってるよ、2人とも!」
「ん…?!煽られてるかな?!もしかしてかのあ、煽られてるのかなぁ!!」
「そんなばちばちに着飾った人たちに言われてもねぇ」
「えぇ…!!褒めてるのに…!」
「しまうまとフラミンゴっていうチョイスが今更じわじわ来てるわ」
そして、潮の視線が芹の方へと吸い込まれていく。
「で?何なのあのけしからん魔女は」
「ええやろ?所々ちょっと透けさせてみた」
「はぁ…嫌な予感したんだよね。絶対こんな感じでくるだろうなと思ったら案の定だった」
「もうね、めちゃくちゃ似合ってるよ」
「私さっきからセリーの方直視できなくて困ってる。鼻血出そうなんだけど〜!」
「そういうあまねんだって。こんなメイドさんほしいよ私」
「褒め合うなそこ。みじめになるから」
「いや…おそのも私好きだよ?そのしまうま…かなりフィット感あっていいよ」
「褒めるなセリー。みじめになるから」
「お、私の渾身のしまうまさんが不服か?」
「いや?自分で似合いすぎてて引いてる」
「うちらも引いてる」
満場一致でしまうまを愛でる蛍たちに、おそのは全力で首を振る。
「でもさぁ、あんなスケスケの魔女コスとかさぁ!メイドさんとかの方がさぁ!似合いたいじゃん!やっぱり!なんでこんなに着ぐるみが似合うわけ?!」
「色気がね」
「フェロモンがね」
「でもさぁ!この着ぐるみをセリーとかあまねんが着たところでさぁ、似合っちゃうんでしょ?!なんなのそれ?!おかしいでしょ!」
「いやいや、おそのには負けるよ。可愛すぎるもんちょっと。写真撮ってスマホのホーム画面に設定したい」
「待って、フラミンゴも一緒に入れて!!あとフラミンゴも褒めて!!」
「あーかわいいかわいい」
言いつつ、芹がぱしゃぱしゃとしまうまとフラミンゴの写真を撮って行く。
そこからしばらく全員で撮影大会が始まり、各々が満足するまで写真を撮り終えた後。
「んじゃ、そろそろ写真館行くか」
「よっしゃ」
潮の一声で、早速面々は商店街への写真館へと赴いた。
「ありゃー!本当に来てくれるとは!」
少し気恥ずかしい思いをしながら商店街を歩き、写真館の中へと入ると。
店主はぱっと花が咲いたような笑顔を浮かべ、心底嬉しそうに出迎えた。
「何だい何だい、立派な着ぐるみまで着て!撮りがいがあるねぇ!」
「ちっす、あの親子以外あんまり統一感ないけど、ハロウィンの写真撮りにきました!お願いしまっす!」
「よーし、お願いされたぞ。早速スタジオに入っておくれ。たくさん撮っていこう!」
しまうま、フラミンゴ、アニメのヒロイン、アニメの人気キャラ、メイド、魔女、黒猫がぞろぞろとスタジオへ入って行く。
うきうきとした店主はカメラを構え、気合を入れて腕まくりをした。
それから、ひとまず1人ずつ、次は様々ペアを組んで、3人で、全員で、など色々なパターンでかなりの枚数を収めていく。
「ちなみにおじさんはね、もしかしたらいつか来てくれるかもと思って、ハロウィンのグッズを色々用意してたんだよ」
店主が嬉しそうに持ってきたのは、ハロウィンの装飾の数々。
きのこの椅子やかぼちゃのランタンなど、様々な秋らしいグッズを並べると、写真撮影はより一層盛り上がった。
「なんか、ゲームの中みたいでテンション上がる」
「出来上がり楽しみだね」
「芹、芹。ツーショットもっかい、もっかい撮って」
「はいはい」
「萌、フラミンゴさんとしまうまさんとお茶会してる写真撮りたい!」
「萌りん…フラミンゴさんとしまうまさんね、手が…羽と蹄やねん…」
「じゃぁ、萌が飲ませてあげる!お菓子も食べさせてあげるよ?」
「天使なの…?」
「最後にみんなでもう一枚!はい、ポーズ!」
数えられないほどのシャッターを切った、楽しい撮影は終わり。
満足げな店主についていき、撮った写真を眺めていく。
「うわっいい!今のいい!」
「うんうん、何枚でもいいよ〜アルバムにしてあげるよ〜」
「おじさん、実はこの衣装ぜーんぶこの子が作ったんですよ」
「なにぃ?!本当かい?器用だねぇ…!個人でこんなものが作れるなんて。才能だねぇ」
「へへ…ちっちゃい頃からお姫様みたいなドレスが好きで…あと、ばあちゃんが縫い物得意だったんで…教えてもらったりして」
「特別だよ?そういうのは。センスだからね。持ってるものであったり、長年磨いてきたものであったり。
“できる”っていうのはね。自分が思っている以上にすごいことなんだよ。その感覚を大事にね」
「は、はい」
「経験と知識とセンス。いやぁ、培ってきたものを目に見える形にするって素敵だねぇ」
しみじみと衣装を眺めて、幸せそうに頷く店主。
褒められた蛍はしばらく顔を赤くして恥ずかしそうに俯いていた。
ーーそれから、写真を選び終えて、会計を済ませる。
「おじさん、私たちおじさんの儲けにならないことはやってほしくないんですよ。お願いした分だけでいいですからね本当に」
「うんうん」
「聞いてないなこれ」
「あのねぇ。おじさんは良い写真を撮りたくて、残したくて、喜んでもらいたくてこの仕事してるの。そこへね、お嬢さん方がたくさん来てね、また来るね!次もお願いね!なんて言われたら、そりゃぁ嬉しいでしょうに。色々おまけもしたくなっちゃうでしょうに」
「普通にまた来ますから。そんなに色々おまけされたら逆に来づらくなっちゃいますって」
「なんで?!良い子たちだねぇ君たちは本当に」
「行きたいけど、行ったら色々してもらって悪いよなーってなっちゃうんですって」
「分かった。じゃぁアルバムだけはつけさせてね。それ以外は何もしない。多分」
「じゃアルバム料金も払います」
「だめだよ!無料でつけさせてよー!頼むよー!」
「何かおじさんの方がお客さんみたいになってない?これ」
ノーと言い続けた潮に折れて、項垂れながら渋々返事する店主。
「じゃぁ、また撮りに来てね」
「はーい!次は新年、初詣の時に撮りに来まっす」
「あっ、そういえば。じいちゃんと和菓子屋の写真撮ってくれてありがとねおじさん。じいちゃんめっちゃ喜んでましたよ」
「おお!おじさんも良い写真が撮れて満足だったよ。こちらこそありがとうね」
またね、と優しく見送られて、写真館を後にする。
かわいいねーと商店街の人々に声をかけられながら、面々ははなやぎへと戻って行った。
「よっしゃー!おやつタイムだー!」
ーーはなやぎに着き、今度は中庭でのパーティが始まる。
潮とおそのによってハロウィン仕様に飾り付けられた中庭。
風避けのタープに入り、外ストーブが二つ点火されると、肌寒い風は吹くものの寒さに困ることはなかった。
「はーい、皆、掛け声よろしく〜!」
「わーい!」
「「「トリックオアトリートー!」」」
木のテーブルと椅子へ各々腰掛けた面々の前に、周が手作りのお菓子を並べ始める。
可愛らしいおばけや黒猫、こうもりなどの形をしたラングドシャクッキー。
かぼちゃを模したハロウィンカラーのマカロン。かぼちゃの種やナッツの入ったチョコレートブラウニー。
おおー!と感嘆の声が上がる中、周は最後に7つのモンブランの乗ったトレイを中央に置いた。
「はい!これが今回のメイン、かぼちゃのモンブランです!美味しかったって言ってもらえて嬉しかったから、今回はかぼちゃで作ってみました〜」
「いや全部メインだろこれ」
「めっちゃおいしそー!!うれしー!!」
「萌、またモンブラン食べたかったから嬉しい!ありがとう周ちゃん」
「良いんだよ〜!喜んでくれてありがとう、萌ちゃん」
「全部凝ってるなぁ。かわいいなぁ」
食べるのが勿体無いほど可愛らしいそれらを、それぞれが写真に収めていく。
「焼き菓子は日持ちするから、明日も全然食べられるからね。じゃぁ、皆!ハッピーハロウィン!」
「ハッピーハロウィーン!」
「頂きまーす」
「ありがとうあまねーん」
掛け声の後、早速お菓子を口に運ぶ。
「ラングドシャうまー!」というかのあの声を皮切りに、方々から言葉にならない声が漏れ出た。
「んー!」
「んー…まっ」
「んふー」
「んみゃぁ…」
「え?今猫いなかった?」
「ちょっと、どれもうーんますぎるよあまねん…ごいりょくうしなうわ…」
「あまりの旨さに喋り方がふにゃふにゃし始めたな皆」
「嬉しいな。皆本当に喜んでくれるから作り甲斐があるよ〜」
「周ちゃん!ぜーんぶ美味しいよ。ありがとう!」
「こちらこそ褒めてくれてありがとう!萌ちゃんのその笑顔大好き〜!かわいい〜このために作ってるんだ〜!」
足に抱きついた萌を抱きしめ返して頬擦りする周。
どさくさに紛れてそのお尻に抱きついたかのあが、頬擦りしながら言った。
「あまねちゃんぜーーーんぶ美味しいよぉぉ!あとこのラングドシャクッキー大量発注させてぇぇぇ!材料費と時間と手間にたんまりお金払うからぁぁ!」
「ちょっとセクハラなんだけど!きゃー!」
「美味すぎるよぉぉぉ!!」
「分かった、いつでも、いつでも作ってあげるから!」
かのあの奇行にやや引いている萌を、芹が回収して膝の上に乗せる。
「まぁ落ち着けよ」と、潮がかのあを引き剥がし、モンブランに舌鼓を打った。
「いやぁ、本当。執筆してたら甘いもの食べたくなるからさぁ…大量発注したい気持ちめっちゃ分かるわぁ。常備したい。てかモンブランも美味すぎるもん。毎日食えるわ」
「嬉しいな〜。そしたら、ケーキとかはイベントごとの時に作って、月に何回かは焼き菓子とか日持ちするもの作って置いておこうかな?」
「待て!置くのはダメだ!どっかの誰かが全部持ってくから!配分しようそれは。作る時言って」
「お、かのあの方見ながら言ってる!?心外だよ!そんなこと………いや、するかも!!かのあならするかも!」
「そんな自信満々に…」
「例えばこのラングドシャクッキーを20個作って置いてくれてたとしたら………多分20個持ってくかも!!皿ごといくかも!!」
「どんな自信?自制して?せめて10個とかにして?」
「お金は置いていくから…!許せ…!」
「金には換えられねぇんだよ…」
「うーん、多めに作ろうと思って作ったとしたら、クッキーだったら一回で50個くらいかな?50個だったらどれくらい持っていきたい?」
「よんじゅぅ…っこ」
「やめて?40個で我慢したみたいな顔するの」
「今こいつ45個って言おうとしたぞ」
「かのあは気に入ったもの大量にずっと食べ続けられるからなぁ」
「かのあちゃんがお願いするんだったら、萌もお願いしたいな。モンブラン、また食べたいな」
「かわいいーーーー!!!」
「誰かさんのおねだりより数億倍かわいーーーー!!」
「誰?!誰が萌ちゃんの数億倍劣ってるって?!誰だろ、気になるな!」
「萌ちゃん、私萌ちゃんのためならいくらでもモンブラン作れるよ…!次はチョコレートのモンブラン作るからね…!」
「わーい!」
話している間に、テーブルの上のお菓子はどんどん7人の口へと吸い込まれるように無くなっていく。
残りは明日食べよう、と言って周がタッパーに綺麗に詰めて、おやつタイムは終了。
芹の淹れた紅茶を飲みながら、今回のハロウィンを振り返る。
「紅茶もうんめー…最高だわ今年のハロウィン」
「去年小規模だったからね。毎月のように色々してるけど、やっぱりイベントごとを皆で豪勢にわいわいするの楽しいな」
「写真館で思い出残そうってなったのが結構でかいよね。まじでカレンダー作ろう。色々楽しんで行こう」
「うわー前回の浴衣の写真もそうだけど、今回のハロウィンとかももう一枚に絞れないくらい良い写真多かったからなぁ」
「来年のカレンダー作り楽しみだね」
あっという間に日も落ちてきて、暗くなる前に諸々を片付けていく。
それから、各々部屋に戻り仮装を取り、普段着に戻ってゆっくりした後。
ハロウィン最後のイベント、芹によるハロウィンディナーが食堂で待っていた。
「ハッピーハロウィーン」
* * * * * epilogue
(挽肉とかぼちゃのペンネグラタン、サーモンとアスパラガスのバターソテー、きのこと根菜のスープ、蒸し野菜はチーズソースディップでどうぞ)
(すげー!!ハロウィンディナーだぁ!!)
(かのあグラタンなら食べられるでしょ?玉ねぎとか人参入ってるけどまぁ、小さく切ってあるから。あと、確かアスパラは好きなんだよね?)
(食べられまっす!いつもあざまーーす!!)
(うまそー…!)
(チーズフォンデュにしようかぎりぎりまで迷ったけど。フォンデュはフォンデュでまたやろっかなって)
(やろう。それはやろう絶対)
(ママすごーい!)
(作ってる間萌の相手してくれてありがとね、皆)
(いや、むしろご褒美でしたけど)
(みんなね、おままごとしたり、お絵描きしたりして遊んでくれたんだよー!楽しかった!)
(おままごとでも萌ちゃんの夫になれてわいは幸せです…)
(ちょっとまってねーごはんできてるからねっ、おしごとおつかれさまねっ。の破壊力やばかったよなぁ)
(まさか、おままごとで萌ちゃんの赤ちゃん役を割り当てられるとは思ってなかったよ!バブってみたけど楽しいね赤ちゃん役って!!)
(お陰で鳥肌立ったよかのあちゃん)
(お絵描きもね。やっぱセリーの娘って感じで、センスいいわー)
(描いてもらった似顔絵一生部屋に飾る)
(本当ありがとね、可愛がってくれて。私も嬉しいよ)
(さ!早速頂こう!!いい匂いすぎるー!!)
(まぁ待て待て。蛍の衣装作り、あまねんのお菓子作り、芹のハロウィンディナーでもっと楽しいハロウィンになりましたんで先に感謝させて)
(そうだね!!皆ありがとう!)
(いいえいいえ)
(作るの好きだし、何より食べて喜んでもらえるのが嬉しいからね〜こちらこそありがとうだよ!)
(同じく。楽しく作らせてもらいました。2人も飾り付けありがとうね)
(萌もね、来年はたくさんお手伝いする!)
(じゃ来年は飾り付け一緒にするか)
(うん!)
(かのあは…来年も食べるよ!めっちゃ!)
(そういうかのあは一番片付け頑張ってたしなぁ)
(意外とそういう手際良いんよなあの子)
(というわけで、皆さんお疲れ様でしたってことで)
(はーい!!何度目か分かんないけど、ハッピーハロウィーン!)
(ハッピーハロウィーン!)
(いただきまーす!)
(うまぁっ!!)
第十話(二) 了