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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第1章 「箱庭の日常」
12/39

第8話








〔時は満ちた〕

〔今こそ祝杯をあげる時〕



〔ついに来たか…〕


おその

〔待ってました…〕


〔はい〕

〔というわけで、蛍のじいちゃんから姫りんごも届いたことだし、今週のどっかで屋台飯パーティ開催しようと思うんだけどどう?〕



〔おー、ついに来たか!〕


おその

〔待ってました!!〕


かのあるふぁ

〔何かと思ったらついに来たー!!やろやろー!!〕


〔参加者はパーティ開催希望日を述べよ〕



あまねん

〔待ってました〜!〕

〔話してたふわふわかき氷の機械、金曜日から借りられそうだから土日どっちかの開催だと嬉しいなぁ〕


セリー

〔萌も連れて行って良さそうだったら、私も土日が嬉しいかな〕


〔正直萌に楽しんでほしいから開催するまであるから来ないと普通にしょんぼりする〕

〔土日どっちかの開催が濃厚ってことでいい?〕


〔土日どっちも特に予定入れてないからオッケーです〕


おその

〔白玉とか色々持ってくなら日曜日がいいんだけどどう?〕


かのあるふぁ

〔おっけーだよー!!開催時間までに一回配信してから参加する!〕



〔はい 日曜日に決定しました〕

〔正午の開催でいいかな?〕

〔屋台飯パーティとは別で、やっっっすい手持ち花火も大量に用意して夜中にやるんで、全力で楽しむ努力を持ち合わせてご参加ください〕



かのあるふぁ

〔花火とか超久々にするんだけど!楽しみすぎる!!〕


セリー

〔ちなみに焼きもろこし屋さんなんだけど〕

〔はなやぎで屋台飯パーティするからとうもろこし貰ってもいいかな?って相談したら、「それ俺も参加して焼きもろこし屋やってもいいかな?」って逆に聞かれたんだけど〕

〔お願いしても良さそう?〕


〔つ、ついにもろこし米作り兄やんと合間見える時が…!?〕


〔生産者直々に焼いてくれるとうもろこしなんか旨いに決まってるだろ!〕

〔是非よろしくお願いします〕


セリー

〔ありがと 伝えとく〕


〔まぁお店の案結構出てたから、その辺はちゃんと詳細決めてから開催しよう 材料の用意とかも色々あるし〕

〔各々参加させたい人がいたら全然参加してもろて〕


〔俄然楽しみになってきたわ〕

〔人手がいるなら全然借り出せるから言って(弟)〕


〔弟…〕


おその

〔弟の扱い雑で草〕



〔それでは皆さん、当日よろしくお願いしまーす〕










ーーこうして、来たる日曜日の午前。


中庭の大きなログテーブルに材料を広げ、簡易屋台まで用意した面々は早速自身の受け持つ店のメニューと睨めっこしていた。



「えーと、ではまず焼き鳥屋ですが…これは蛍の弟くんが焼いてくれるってことだったんで遠慮なく任せます」


「弟20歳、ソロキャンパー、名前はさとるです。あとで地鶏とネギ持って来まーす」


「はいよろしくお願いします。で、焼きそば屋は僭越ながら私、日下部潮が請け負います」


「日下部サーン、もちろん卵焼きを上に乗せたバージョンで提供されるんですよねー?」


「選べます」


「日下部サーン、それは卵は半熟か完熟か選べるんですよねー?」


「選べます」


「日下部スワァーン!マヨネーズのトッピングはできるんですよねー?!」


「黙れ」


「え…えー!何かかのあにだけ露骨に冷たくない!?」


「チッ 配信朝方までやりやがって。眠たいんだよ。考えて配信しろや」


「えぇ…配信がっつり見てて草…ありがとう潮…ちなみにかのあも激眠い」


「君たちは次の日の予定が確定してる時くらい睡眠時間を考慮して行動できないのかね…」


「だってゲームが面白すぎるんだぽぽ!!」


「その極限にゲーム楽しんでる配信をリアタイで見るのが楽しすぎるんだぽぽ!!ちなみに朝から屋台の設営してたので本日私は完徹です!!」


「馬鹿なの…?」


「えー、それでは続けますね。焼きもろこし屋はもろこし兄やんがやってくれるってことだったんですが、どうですか?芹さん」


「何事もなかったかのように進行してて草」


「あぁ、はい。今とうもろこし持って来てくれてるそうです。もろこし兄やん改め、虎哲こてつさんです」


「はい、ではもろこし屋はそんな感じで。で、そんな芹さんは肉巻きおにぎり屋の担当ですがいかがでしょう」


「お肉は昨日から漬け込んであって、ご飯もたくさん炊いてあります」


「はい最高です。あなたは。いつも。完璧で美しいです」


「何やこいつ…」


「責任者の人、露骨な贔屓は全員の士気に関わるので控えてくださーい」


「はい確認を続けますよー。で、りんご飴は蛍がやってくれるとのことでしたが準備の程はいかがですか?」


「準備万端どぇすー。他にもちょっと違う果物とか用意してるんで、それも飴かけちゃおうと思ってますんー」


「はい分かりました。えー最後に…」


「責任者の人、肉巻きおにぎり屋さんとの態度があまりに違いすぎると思いまーす、りんご飴屋も大事にしてくださーい」


「えー最後にかき氷屋ですが、周さんとおそのさん、いかがですか?」


「あ、準備万端だよ〜、氷もその他も不備なく揃ってて、種類はえーと…白玉宇治抹茶と、白玉黒蜜きなこと、スイカ、メロン、マンゴーの6種類で用意してます!」


「まーす。ちなみにじいちゃんもちょっとだけ遊びに来たいそうでーす」


「大歓迎でーす」



材料や準備品の取り分けとメニューの確認が終わり、ひとまず一息つく面々。

それから、5人の視線がたった1人へと同時に向けられた。



「で?かのあさんはどうする?」


「か…かのあさんは…お客さんです!!」


「全員それぞれの店のお客さんなんだよ分かるかね君」


「だ、だってー!!かのあがいたら結局邪魔扱いするくせにー!!」


「芹さん。芹さんの肉巻きおにぎり屋にバイトは必要かね?」


「え…?……あー……いや、平気かな。お肉巻いて焼くだけだから」


「ほう。では蛍さん、君のフルーツ飴屋にバイトは、」


「あ、大丈夫でーす。飴かけて台にブッ刺すだけなんで」


「はい。というわけで、かのあさん。強制的に私の焼きそば屋を手伝ってもらいます」


「え゛ぇー!?やだやだ!せめて潮以外のところにしてよ!!」


「戦力外通告受けたの聞いてたでしょうが。諦めろ!こき使ってやる」


「ふざけんなー!卵手渡すくらいしかしないから!」


「は?ならこっちは卵しか焼かないつもりだけど?」


「いや、目玉焼き屋になるよそれじゃ」



かのあと潮が掴み合いの言い争いをしている内に、中庭の門扉が開く音がした。

振り返ると、そこには大量の荷物を転がしてくる男性の姿が2つ。



「やぁ、どうも」


「初めまして、お邪魔します!」



「お。あれはもしや、もろこし兄やんか!」


「あと弟です」



男性二人が皆のいるログテーブルに駆け寄り、まずは挨拶をする。



「えー、初めまして!いつもお米送ってます、佐伯さえき 虎哲こてつです。正直はなやぎに来れるの楽しみにしてました、曲者揃いの皆さんのお噂は予々聞いておりますので下心は全くありません。安心してください、よろしく!」


「いつもお米めっちゃ美味しいでーす。もろこし屋さん買って出てくれてマジで感謝してますー」


「もろこし兄やんヨロでーす」


「はーい別に何と呼んでもらってもいいけどね?そんな風に呼ばれてたのはさすがにちょっと驚いたなぁ」


「じゃぁ虎哲の兄さんにしよう、ここは。統一しよ」



わいわいと盛り上がる横で、そわそわと頬を掻いたり居住まいを正したりと忙しない青年。


会話がひと段落して自然とそちらへ視線が向くと、青年は小さな咳払いを一つして口を開いた。



「は、初めまして!宇留島うるしま さとるです!大学生やってます、よろしくお願いします!」


「はい、弟です。よろしく」


「おー、これは顔似てるわ」


「すごい。弟っていう生物を初めて見たから緊張する」


「嘘乙。人の弟を生物って呼び方するのやめて?」


「かのあの弟と全然タイプ違う!!可愛い!大学生男子!いいねー!」


「あー…かのあの弟はマジで、全力でかのあの弟って感じだもんね」


「最初見た時まじで文豪かと思ったもん」


「逆に見てみたいんですけど」


「やー!慧くんめっちゃ弟属性でかわいいんだけど!かのあの弟にもちょっとだけでいいからその属性値振り分けてよー!!」


「かのあ、多分弟も思ってるよ。俺の姉貴って全力で俺の姉貴って感じだわ…って」


「はー?!至って普通にお姉ちゃんしてますけど!?」


「ちょっと、君たち慧くんの顔見ながら会話してみなよ。ちゃんと引いてるから」


「あ、いや…!全然…思ってたより会話についていけなくて…ちょっとビビってるだけです、すみません!」


「慧そっちのけで会話してんのマジで草なんやが。まぁそんな感じで、弟が焼き鳥焼いてくれますんで」


「あ…えっと、キャンプで!ソロキャンプ行って良く焼き鳥焼いてるので、焼いた経験だけはあります!美味しくできるように頑張ります!」


「いやこれはマジで推せる!慧くん推せるよ君!可愛いー!」


「人の弟を勝手に推すのやめよ?」



「うん、あれだね。はなやぎ館の女性たちは話しやすくていいね。好きだよ俺。芹ちゃんが素敵なお友達に恵まれてて良かった。何かおじさん安心したわ」


「はい。本当に、楽しく過ごさせてもらってます」



ーーそれから、挨拶と簡単な会話を終えると、各々自分のメニュー看板をぶら下げた簡易屋台へと入っていった。






パーティの開始時間間近、それぞれの店が看板商品を作り始めた。

中庭がすっかり屋台飯パーティの会場と化したのを、蛍とかのあがご機嫌で見渡す。



「あー…いい匂いするー…!」


「鉄板焼きのジュージュー音最高!炭火焼きの匂い最高!薪のパチパチ音最高!屋台飯パーティ最高!!大成功だったね!」


「いや、まだ何も始まってもないし終わってもないけど」


「かき氷は最後のデザートってことで後で開店する感じにしよっか?」


「そうだね!すぐ出せるように準備だけしとくよ〜」



色とりどりのフルーツ飴を台座に挿し終えた蛍の店の準備が真っ先に完了。

後の店もそれぞれ鉄板や炭火、薪などで焼き上げた食べ物を容器に盛ってウォーマーの什器に入れ、足りなければ追加で作れるようにと下拵えだけ済ませて準備が完了した。



「できたねー!!いつでもウェルカムだ!」


「いやぁ…かのあが意外と役に立ってて感動した」


「あ!舐めてるな!意外と作業系のゲーム得意なんだぞ!」


「知ってるけど、それがリアルにも対応してるとは正直思わんかった」



「萌を迎えに行こうと思ってたんだけど、兄さんが連れてきてくれるらしい。もうすぐ着くって連絡来てたの今気が付いた」


「おお、入れ違いにならなくて良かったね」


「うちも爺ちゃんが昼前に来るって言ってたから、そろそろだと思う」


「何かいよいよって感じでワクワクしちゃうね〜」



そんなことを言っている内に、中庭へぞくぞくと人が集合してきた。



「ママー!みんなー!来たよー!」


「萌ちゃーん!ようこそ屋台飯パーティへ!!」



まず中庭へ足を踏み入れたのは、萌と、その手を握って歩く男性の姿。

萌へ手を振った後、蛍は困惑したように眉を寄せて男性の方へ目を凝らした。



「あぇ…?ちょっと待って、あの萌ちゃんの隣にいるのがアクティブ兄貴…!?」


「そうね」


「待ってクッソイケメンで草。変な声出たわ。勝手に筋肉隆々のマッチョ想像してた」


「いやぁ、三鼓家の血…恐るべし」


「セリーの美形に慣れるのでさえ2年くらいかかったのに…また人見知り発動しそう」


「えぇ?蛍って私に人見知りしてたの?知らなかった」


「してたさ!てか未だにセリーと一緒に出掛けたりご飯食べたり隣にいるだけで何かちょっと得した気分になるけど?セリーにどきどきしてんのは潮だけじゃないって自覚してもろて」


「早口だなぁ」



何やらぶつぶつと捲し立てる蛍に、笑いながら小首を傾げる芹。

蛍はそれを見て、「いやいやいや」と大袈裟に首を振ってみせた。



「ちょっとこれを機に反省して?我々陰の者があなたの普段のさりげない仕草とか行動で実はどんだけドキドキさせられてるかって。我々のアクティブ兄貴への反応見て学んでほしい」


「いや…本当に全然何言ってるか分からないんだけど」


「無駄だって蛍。この兄妹は昔から道行く人の心臓を鷲掴みにして生きてきた天才なんだから。もう持って生まれたもんだからね、この美形と立ち居振る舞いと色気は。しかも本人達に自覚ないし」



潮がさも当然のようにそう言うと、近くに歩み寄ってきていた男性が困ったように笑いながら口を開いた。



「潮ちゃん。久々に会ったのに悪口か?」


「いや、むしろ褒めてましたが」



肩を軽く小突かれた潮が、溜息をついてそう答える。


男性は被っていた帽子を取ると、蛍たちの方へと向き直り、端正な顔立ちににっこりと笑顔を作った。



「初めまして、皆さん。いつも芹がお世話になってます。兄の春一はるいちです。潮ちゃんが洋館で友達と暮らすって話を聞いてから、面白いことしてるなーって思ってました。度々楽しそうなこともやってると聞いてたんで、今日参加できて嬉しく思ってます。どうぞ今後ともよろしく」


「おながいしゃまーっす!!春一さんだから、春さんだね!」


「イケメンで常識人は草生えんなぁ」


「めちゃくちゃちゃんとした人じゃん…」


「何か一個破滅的にやべぇとこないとやってられませんけどこんなの」


「いや、山で一人冬籠りは充分やばいと思うけど」


「いやぁ、イケメンで常識人なのはそれをチャラにするよねぇ」


「ごめん、ちょっと良く分からんわ」


「はぁ…潮は見慣れてるしセリーにしか興味ないからそう思うのかもしれないけどさぁ、見てみ?あの顔面。俺山で冬籠りとか普通にしますよ?超絶サバイバーです。って言われてもどうでも良くなるんだって。むしろ生命力っぉぃ…きゅん…ってなるんだって」


「まぁ冬籠りできること自体はすごいけどね」


「実は数万匹の虫を部屋で育ててますくらいのやばさがあったら引くかもしれんが。その辺はどうですか?」


「んー。何かあった時に自分の行動が生態系に影響を及ぼす結果に至るのは嫌だから、そういうことはしないかなぁ」


「ほら。ちゃんとしてる」


「でも小学生の時から今に至るまでずっと長期連休の間は遊ぶこともなく道場か山で鍛錬するし、パルクール極めたいとか言い出して突然渡米したりするよ?この人」


「ちゃんとしてるようで、ちゃんと頭のネジ飛んでんだなってこと突然したりするからねこの人」


「んぇ…?パルクールまでできるんでつかぁ…?っぉぃ…」


「しゅごぃ…」


「だめだこいつら」



とぼけた顔をする蛍とおそのに呆れ顔の潮。

すると、もう話してもいいかな?と全員の顔色を伺った萌がおずおずと口を開く。



「潮ちゃん、パーティすごいね!いい匂いがしてすごく美味しそう!萌楽しみにしてたの」


「本当?萌に喜んでもらいたくてパーティ開いたから、そう言ってもらえて嬉しいよ」


「どれでも食べていいの?」


「食べれるだけいっぱい食べて」


「やったぁ」



二人のやり取りをにこにこと見つめていた芹が、春一と代わって萌の手を握る。



「ありがと兄さん」


「いや、正直俺もかなり楽しみに来れて嬉しいよ」


「虎哲さんまで来てくれて本当にありがたいよね」


「虎哲はこういうのそもそも好きだからね。昨日急にメッセ来たもん。楽しみすぎて禿げるかもしれんって」


「ねぇママ、萌ね、こてっちゃんの作ったとうもろこし最初に食べたい!」


「はいはい。虎哲さん、萌が焼きもろこし食べたいって」


「おっ!いいぞぉ、俺の作ったとうもろこしは甘くて美味いからな!いっぱい食えよ!こっちだ萌!」


「わーい!」



芹と手を繋いで、先導する虎哲について駆ける萌。

すると、中庭に二人また新たに足を踏み入れた。



「お。おそのの爺ちゃんとママさん来た?」


「みたいね。じいちゃーん、母さーーん」


「おぅ、そのー。来たぞぉーー」



二人はそのの側に寄り、まずはと言ったように潮たちに挨拶を始める。



「潮ちゃん、みなさん。いつもそのがお世話になってます。これね、今朝早くにそのとお義父さんが水饅頭とか和菓子とか拵えたんだけどね。日持ちするから、またゆっくり食べてね」


「お母さんすみませんいつも。じっちゃんもありがとうございます本当」


「いやぁ、そのが今伸び伸び生きてられてんのは皆のおかげだと思ってんだ。俺ぁ和菓子作るくらいしか出来ねぇが、今後ともよろしく頼むよ」


「いやいや、いつも旨いっすマジで」


「ありがとうございます、いつも」



周が和菓子を受け取って、一度洋館へ戻っていく。

そのは照れ臭そうに頬を掻きながら、屋台の方へと二人を誘導した。



「何やかんやでまだ此処来たの2回目くらいじゃない?なんか参観日みたいで何故か気恥ずかしいわ。もしくは文化祭」


「パーティなんざ面白そうなことをやりおって。朝抜いてきたから腹がぺこぺこで仕方ねぇや」


「お義父さんったら朝からそわそわしちゃってもう。でもお母さんこんな風にみんなで好きなもの作ってわいわいするの初めてだから楽しみでね、メニュー聞いてからお腹が空いちゃって空いちゃって。お母さん肉巻きおにぎりって大好きなの。りんご飴も大好き」


「その。ねぎまとビールがあるって話だったが。かき氷は食後か?」


「そうそう。皆が食べ終わったかなーくらいに作り始めるよ」


「しっかし、本当に楽しそうなことをやっとるなぁ」



訪れた面々が早速パーティに参加していくのを見届けてから、はなやぎの面々も顔を見合わせてにっこりと笑い合う。



「さっ、我々も屋台飯提供しながら食って飲んで騒ぎますか!」


「いえーい!!!」



それから全員で屋台の方へと向かい、皆に混ざってパーティを楽しむ。

各々氷水の入った大きなクーラーボックスから好きな飲み物を取り、屋台に入って提供したり貰ったりしながら、パーティはどんどん賑々しさを増していった。



「私も焼きもろこしから食べよーっと。虎哲の兄さーん!焼きもろこしひとつ頂戴なー!」


「潮さん半熟目玉焼きマヨ青のりトッピングの焼きそばちょーだーい」


「美人な店員さん後で肉巻きおにぎりください」


「置いてあるんだから勝手に取りなよ」


「あ、スマイルも一緒にくださいお願いします」


「なんやこいつ」


「厄介な客で草も生えませんなぁ」


「え待って、りんご飴これ何?目とか口とか描いてあんじゃんめっちゃ可愛いんだけど?」


「あぁ、萌ちゃんが喜ぶかなと思ってチョコペンで描いてみた。どう?」


「これ蛍ちゃんが描いたの?かわいー!うさぎさんもあるよママ!」


「蛍は本当にセンスいいよねぇ」


「かのあもりんご飴もらっちゃうよー!あと苺飴も!萌ちゃん一緒に食べよー!」


「うん!」


「もろこし甘ー!なにこれうまー!!」


「愛情かけて育ててっからね俺が!」


「お陰さまでわてはもう2本目に入っとりやす」



「ねぎまと…おっ、牛串もあるじゃねぇか!たまらんなこりゃ!」


「はい!柔らかくていい牛肉が手に入ったので串にしてみました!ぜひ!」


「潮ちゃん、俺完熟の目玉焼き乗っけてほしいんだけど大丈夫?」


「いいっすよ、虎哲さんマヨと青のりは?」


「お!お願いしよっかなー」


「おーい芹ー。肉巻きおにぎりこれ追いソースしてくんない?」


「そこに壺あるよ勝手に塗れば」


「あ、私もいいかしら!」


「はい、勿論です。良ければやらせてください」


「あら、ごめんなさいね。ありがとう」


「芹お前…こちとら唯一の兄なんだけど?」


「ご婦人にセルフサービスさせる気?ありえないでしょ」


「いや、俺にも良ければやらせてくださいだろ」



賑々しさを増していく屋台飯パーティ。

やがてデザートのかき氷屋がオープンすると、美味しくてふわふわなかき氷を皆夢中で口に運んでいく。



「うまー!!」


「美味しいーー!!」


「いろんな味食べれるように少しずつのカップにしたの結構いいね」


「うん!かき氷の話出たときにでっかい器に入ってるやつ想像してたから、この中から一個選ぶのむっず!って思ってたけど、これなら全味制覇できるー!!」


「全味はさすがに行けるかこれ?」


「できるなら目指したいとこ」


「はいじゃんじゃん削ってじゃんじゃん味付けていくからどんどん食べてねー」


「メロン美味しかった!萌、次はきなこのやつ食べたいな」


「萌ちゃんは次きなこね、ちょっと待ってなー」


「おじいさんの塩梅したやつはどこからどこまでなん?」


「和菓子系のかき氷に使ったものは全部頂戴したものだよ〜。きなこもお抹茶も白玉も寒天も黒蜜も全部」


「んじゃもう全部うまいっすわおじいさま」


「そりゃ職人冥利に尽きるってもんだ。褒め上手は得するぞ」


「うんめー」


「しかし氷ふわっふわやー」


「かき氷うんめーわ」




ーーそうして、全員が満足したところで屋台飯パーティは終了。


ふーっと一息ついてしばらくの間和やかに談笑した後、訪れた面々は笑顔ではなやぎを後にしていった。



「今日はありがとう。萌、すっごく楽しかった!」


「また何か楽しそうなことあったら俺たちも呼んで。山で何かしたい時もいつでも声かけてね、力になるよ」


「必要な野菜あればいつでも呼んでくれよな!すぐ持ってくから!」


「じいさんに楽しい思いさせてくれてありがとよ。若返ったような気分になったわ」


「本当に、美味しいものたくさんご馳走様でした。これからもどうか、そのをよろしくお願いします」


「今日は参加できて嬉しかったです!またお手伝いできそうなことがあれば呼んでください!」



「みなさん今日は本当にありがとうございました!また遊びに来てください、待ってます」


「気をつけて帰ってくださいねー!!」


「ありがとうございましたー!!」



別れを終え、片付けに入るはなやぎの面々。



「いやぁ、めっちゃ盛り上がったなぁ」


「ね!どれもめちゃくちゃ美味しかったー!!」


「やっぱり美味しいものって最高。皆で笑顔で食べるのも最高」


「夏を感じたわ…いいパーティだった」


「おっ、まだ夏の風物詩が残ってるけど?」


「おー!そういえば花火があったんだった!!」



話している間に中庭はすっかり元通り。

使用した道具類は、再び使う時のために倉庫へとしまわれた。


楽しい余韻に浸りながら、大満足の屋台飯パーティとなった。



「暗くなった20時頃に好きなお酒持って集合なー」


「はーい!!」


「お夕飯はどうする?」


「残った食材使ってなんか適当に作って、つまもう」


「いいね!」






*   *   *   epilogue





(びゃーーー!!花火だーーー!!!)


(うるさっ 幼稚園児おるんだが)


(見て見て!高速ハート!!ちゃんとハートに見えてる?!ねぇねぇ!!)


(はいはいすごいすごい)


(ちょっとー!!適当にあしらわれてんだけどー!!)


(かのあちゃん、煙全部こっちに来てんだわ)


(ちゃんと周り見て遊びまちょうねー)


(はいせんせー!!)


(素直でよろしい)


(懐かしー。手持ち花火なんて何年振りだろ)


(あっ 線香花火…儚い…)


(芹見てこれ、3本同時線香花火 あっ)


(ごめん、振り返ったらもう1本になってた)


(線香花火落ちた時って思わず声出ちゃうわ)


(見て〜、ダブル〜!)


(おお、あまねんがハシャいどる)


(いいねいいね)


(あまねんその火種を私に!!)


(はいっ!!つきそう?)


(よっしゃついたー!!おりゃー!!)


(こらこら振り回すな振り回すな)


(良い子は一本ずつ節度を持って周りを見ながら楽しみましょう)



(満月も花火も綺麗で最高の締めだね!!ねぇねぇ、次は何する?)


(何しよっかねぇ、色々思いつくわぁ)


(たくさん、たくさん色んなことしよう!)


(とにかく今日は大成功!屋台飯パーティお疲れ様でした!はなやぎ最高ー!)


(最高ー!!かんぱーい!!)








第八話 了





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