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繁華街でふらふら

 五年前に世界は一時、存続の危機にあった。

 妖精界が人間界とエンカウントの上、混ざり合ってしまったからだ。

 しかし、混ざってしまったのならば仕方がない。

 人と妖精は共生することに決め、人間界は妖精が人権を手に入れて闊歩する世界となってしまった。


 コンビニエンスストアでは、耳の大きな水色の妖精店員が商品のバーコードを読み取り、テレビドラマの俳優や女優が美しき妖精達に成り代わり、人間のバラエティショーでは妖精と人間がごちゃ混ぜで出演している、など、私達は非常に仲の良い隣人としてこの五年間過ごしていっていると思う。


「ちくしょうめ。世界が破滅しなかったばっかりに!」


 私、豆名まめな都希つきは十七歳の高校生だ。

 世界が破滅しなかったばっかりに、私は普通に中学受験をさせられ、今は塾通いしながら大学進学のための勉強を親にさせられている。


「まあ、アメドラみたいにゾンビや悪鬼がはびこる終末世界をふらふらしなきゃいけないよりも良いか?」


 言葉尻が疑問形なのは、私の境遇が不幸に落ちていると言えるからだ。

 後になれば一時の不幸でしかないだろうが、現在進行形で不幸体験中の身には長い長い責め苦にしか感じない。


「はあ。大富豪で負けが重なるとは!」


 試験明けの友人達とのお泊り会は、恋バナから始まって、悪ノリに次ぐ悪ノリで、罰ゲーム付賭け事に進むことは毎回で、だが、今回の罰ゲームは悪ノリのしすぎな最悪なものだった。


「ねえ、罰ゲームはさ、神隠し事件が相次ぐ宝来通りを練り歩いてさ、援交親父狩りにしねえ?」


 ああ、ユッキーの提案に、私こそ一番に乗りましたよ!

 そして一番負けた私は、派手な恰好をして繁華街な宝来通りをとぼとぼ歩いて、助平な親父が声をかけてくるのを待っている、という有様になりました!


 金髪のカツラを被り、つけまつげでびっしりな目元なんて、クレヨンで書いたみたいな水色のシャドーで瞼をかぴかぴにしている。

 着ている服は、腰のあたりで何度も折って超ミニにしたスカートと、制服ジャケット代わりにぶかぶかのフード付きトレーナーを上に着ている、という姿だ。


 わかっている。

 真面目に学業に励んで冒険などしてこなかった女子校育ちの私達が、遊んでいる今どきの派手な女子高生の格好どころか男好きの格好など知ら無いのは分かりすぎる程にわかっている。

 私のしている格好が、前時代的なギャルな格好でしかないのはわかっている。


 分かっているからさ、冷やかしでもいいから声をかけてくれ!

 そして、この罰ゲームから私を解放してくれないかな?


「……そしたらこのゲームは終わりなんだからさ。」


「ねえ、お嬢ちゃん?ちょっといいかな?」


 きた!

 私は振り向き、目を瞠った。

 すらっとした背の高い男は、親父と呼ぶには若過ぎるが、私達女子高生と比べれば年上すぎる風に見える年頃だった。


 三十代?

 まだ、二十代?


 声をかけられたここで私は逃げてゲームはお終いのはずなのに、私は逃げるどころか自分に声をかけた男を見つめることしかできなくなった。


 短い黒髪は額を出して後ろに流し、涼やかな目元に鼻筋の通った顔立ちは、そこいらで見かけることなど無い極上でもあるが、彼はそこらじゅうで見かける見覚えのありすぎる服装をしていたのである。


 紺色の制服には、無線機だってついている、という、あれ、だ。


 つまり、私は職質のために呼び止められただけだ。


「やば!」


 頭の中で退学停学の文字が点滅し、親の泣き顔までリアルに再現された!

 逃げなきゃって、私は後退り、そこで全てがぐにゃんと歪んだ。


「君!」


 しっかりとした硬い手は私の右腕を掴んだ。

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