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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

RISA

作者: なな

「RISA」                     


榊原 理紗(女 29)

川崎駅でトイレ掃除の仕事をしている。夢は自身が作ったテディベアを売って生計を立てること。友人なし、金なし、親なし。幼い頃の怪我のせいで左目が見えず、普段は眼帯をつけている。趣味は魔法少女系のアニメを見ること。


中村 幸生(女 17歳)

ある日、川崎駅のトイレで同級生の樋口大和に無理矢理迫られているところを理紗に助けられる。


ジャンヌ

理紗が作ったつぎはぎだらけのテディベア。

魔法少女の格好にロケットペンダントをつけている。名前の由来はジャンヌダルク。友達がいない理紗にとって大切な存在。


麻衣(女 15歳)

男子高校生たちの話題に出てきた少女


神谷 健介(男 46歳)

理紗の意地悪な上司。


樋口 大和(男 17歳)

幸生の同級生、幸生のことが好き。


速水(男 60歳)

川崎にあるトイハウス(玩具屋)の職員。


蒼(男 6歳)

迷子になっていた少年、理紗が助ける。


蒼の母(女 40歳)

ヒステリー気味の蒼の母親。


路上ライブの女性(20歳 女)

いつも川崎駅前で一人で路上ライブをしている女性。多くの人間が通るのにも関わらず誰も彼女の歌を聞こうとはしない。


























◯1清掃スタッフの更衣室(朝)

ロッカーを開ける理紗

服を脱いで掃除用の服に着替える理紗

周りには理紗同様着替えをしているスタッフがいる

着替えを終えてロッカーを閉める理紗


◯2男子トイレ(朝)

 掃除用のカートを男子トイレ前に止め、清掃中と書かれたスタンド看板を置く

 男子トイレは出勤前のサラリーマンが次々と入っていく

 理紗も掃除用品を持ち男子トイレに入る


サラリーマン1「おい!トイレットペーパーがねえぞ!!」

理紗「すみません」


 罵声を浴びながら慌ててトイレットペーパーを補充する理紗


サラリーマン2「石鹸もねえぞ!」

理紗「すみません、今追加します」


 今度は洗面台の石鹸がないことを指摘され、追加の石鹸を容器に入れる理紗

 理紗が石鹸を追加しているとふらふらとした足取りでサラリーマンがトイレにやってくる

 

 サラリーマン3「うっ・・・」


 口を抑えるサラリーマン3

 サラリーマン3は小便器に並んでる列に割り込み、小便器に吐く


サラリーマン4「きったねえな」

サラリーマン5「早く掃除しろ」

理紗「すみません、今掃除しますから・・・」


 石鹸を詰め替えた理紗は小便器の吐瀉物を片付け始める


◯3女子トイレ(朝)

 男子トイレの掃除を終えた理紗は女子トイレの掃除を始める

 通勤ラッシュも過ぎ、人が少ない女子トイレではOLが電話をしている


OL「大変申し訳ございません!」


 必死に謝罪をしているOLを横目に床の掃除をする理紗

 電話相手は怒鳴り声を上げ電話を切る


OL(深いため息を吐く)「はぁ・・・」


◯4事務室(昼)

 朝の仕事を終えたことを神谷に報告しに行く理紗

 理紗の手には大きな荷物


神谷(書類を見ながら)「また吐いた奴がいたのか」

理紗「はい」

神谷「アル中め・・・」

理紗「昼休憩を取っていいですか?」

神谷「ああ」


 事務室を出ようとする理紗を引き止める神谷


神谷(理紗の荷物を指差しながら)「また行くのか?」

理紗「新しい子が出来たんです」

神谷「やめておけ」

理紗「どうして?」

神谷「恥をかくだけだぞ、向こうにも迷惑がかかる。こっちに苦情でも来たらどうするんだよ」

理紗「苦情?ぬいぐるみを売るだけですよ?」

神谷「お前みたいのがいきなり来たら気持ち悪いだろ・・・まあいい、面倒ごとはご免だからな」


◯5トイハウス(昼)

 店内にはたくさんのおもちゃが並んでいる

 全てのおもちゃが閉店セールで安くなっている

 レジ台につぎはぎだらけのぬいぐるみを乗せる理紗


速水「これはなんだ?」

理紗「テディベアです、名前はジャンヌ。可愛いでしょう?」

速水「これのどこが?」


 理紗がジャンヌのパーツ一つ一つを見せながら詳しく説明をする


理紗「手足は本物の動物を意識して作ってるんです、見てください、ゴムの素材を入れてます。背中には羽を、服装は魔法少女のように可愛らしいデザインを、ロケットペンダントもつけてます。ジャンヌは今まで作ってきた子よりも全然上手く出来てる」

 

 速水が理紗からジャンヌを奪い取る

 ロケットペンダントを開ける速水

 ロケットペンダントの中には「助けを求めてる人を見捨てないで」と書かれている

 くだらないと言わんばかりにロケットペンダントを乱雑に閉じる速水


速水(ジャンヌの腕を見せながら)「ここを見ろ、縫い目が雑過ぎる。これのどこが魔法少女なんだ?気味が悪過ぎる、むしろ魔女だな。前にも言ったが、君には才能がない。センスがないんだよセンスが」

理紗「センスなんて私にはわからない、でも私は努力をしてる。努力は評価に値しないの?」

速水「努力で評価される時代はとっくに終わったんだ、不満社会、不安社会、不幸社会なんて言われてる時代なんだぞ。そもそも今の子供はぬいぐるみになんか興味を示すわけないだろ。スマホに毒されてるんだ。第一うちは余裕がないんだよ、こんな不気味なぬいぐるみを買う余裕なんてない」


 速水はジャンヌの左手をもぎ取る


速水「もう二度と来ないでくれ、叶わない夢をいつまでも見続けるのはやめろ」


 理紗はバラバラになったジャンヌを手に取りトイハウスを出る


◯6川崎駅前(昼)

 駅前で路上ライブをしている女性がいる

 スケッチブックに“長野県からきました!メジャーデビューを目指しています”と書かれている

 女性は「異邦人」を歌っている

 歌っている女性に目もくれずたくさんの人が通り過ぎて行く

 理紗はそんな状況を遠くから見つめ、左手がなくなったジャンヌを強く抱きしめる

 

◯7京浜東北線(夕方)

 仕事を終え帰宅途中の理紗

 扉付近で男子高校生たちがひそひそと話している


男子高校生1「麻衣って堀之内のソープで働いてるんだってさ」

男子高校生2「まじかよ・・・学校にはバレてないのか」

男子高校生1「どうなんだろ、ヴィーナスって店にいるらしい」

男子高校生2「優等生だったのに、堕ちたな」

男子高校生1「どういう経緯か知らんけどあいつ騙されたらしいぜ?それで強制的に働くことになったって」

男子高校生2「せっかく上京してきたのにどんだけ馬鹿なんだか・・・今頃泣く泣くしゃぶってるってわけか」

男子高校生1「そういうことだ」


 話題を変える男子高校生1


男子高校生1「てかなんか臭くね?」

男子高校生2「あいつのせいだわ、あいつが来てから異臭がする」


 男子高校生2が理紗を睨みつける


男子高校生1「ゲロみたいな匂いだな・・・鼻がもげる」

男子高校生2「気持ち悪くなってきた」


 理紗が周りをよく見ると、理紗の周りだけ人が全然いない


理紗(頭を下げながら)「ごめんなさい・・・トイレ掃除の仕事をしているんです」


 離れたところにいる人も迷惑そうな顔をしている


男子高校生1「向こうの車両に行こうぜ」

男子高校生2「そうだな、迷惑なやつ」


 二人は別の車両に移動する

 男子高校生を見て、同じように理紗から離れ移動するサラリーマン、OL、カップル、学生たち


◯8コンビニ(夜)

 眼帯と消臭剤を大量に購入する理紗


◯9理紗の自宅/リビング(夜)

 アパートに帰宅すると荷物を置きテレビをつける理紗


ニュースキャスター1「東京都足立区の路上で交際相手の女性の背中を包丁で刺して・・・」


 チャンネルを替える理紗


ニュースキャスター2「20代の風俗店従業員の女性にストーカー行為を繰り返し・・・」


 チャンネルを替える理紗


ニュースキャスター3「東京都立大田桜台高校2年の男子生徒がいじめを苦に自殺した・・・」


 テレビを消す理紗

 ソファに座る理紗

 眼帯を取る理紗

 カバンからジャンヌを取り出す理紗


理紗「ごめんね・・・後で治してあげる。そのあと一緒にアニメを見ようね」


 ジャンヌを撫でる理紗


理紗「不満社会・・・不安社会・・・不幸社会・・・世の中どうなってるのかな、ヒーローが必要だよね」


 立ち上がる理紗


理紗「お風呂に行ってくるね」


◯10リビング(夜)

 ジャンヌの左手を縫い付ける理紗

 左目が見えないため綺麗に裁縫が出来ない


◯11リビング(夜)

 ボロボロになった「魔法少女まどかマギカ」のDVDを取り出し鑑賞する理紗


理紗「誰かから必要にされるって素敵なことだよね。ジャンヌも必要にされるよ、今日はダメだったけど・・・いつかきっと子供と遊んでもらえる!その日まで一緒にいよう」


 理紗は一人で「魔法少女まどかマギカ」を鑑賞しながらぬいぐるみに喋り続ける


◯12男子トイレ(日替わり/昼過ぎ)

 一人で男子トイレの床をモップ掃除している理紗


 時間経過


 突然男の子の叫び声が聞こえる


蒼「ママ!ママ!」


 どうしたのかと思い掃除用品を置いて理紗は男子トイレを出る


◯13JR川崎駅男子トイレ付近

理紗「どうしたの?」

蒼「ママがいないんだ!さっきまで一緒にいたのに!!僕のママはどこ?!」


 男の子はパニックを起こしている

 理紗は男の子を落ち着かせようとする


理紗「落ち着いて、どこから来たの?名前は?」

蒼「落ち着いてなんかいられないよ!!ママがいないんだ!!」


 理紗は男のカバンに付いている名札を見る

 名札には水樹蒼と書かれている


理紗「水樹蒼君だね?」

蒼「そうだよそれが名前、それがどうしたの!?名前なんか今はどうでもいいよ!!」


 理紗がそっと蒼を抱きしめる

 

理紗「ううん、名前は大事だよ。とっても綺麗な色の名前だね・・・大丈夫、お姉さんがママを見つけてあげる」


 とりあえず理紗は蒼の手を取り事務室に連れて行く


◯14事務室(昼過ぎ)

 蒼のカバンに付いていた名札を見せる理紗

 名札には名前のほかに携帯電話と自宅の電話番号が書かれている

 受話器を置く神谷

 理紗と手を繋いでいる蒼


神谷「くそっ、どっちも出ねえじゃないか。この忙しい時に・・・」

理紗「どうしますか?」

神谷「しょうがねえ、駅一体にアナウンスを入れるしかない」

理紗「その間、この子は・・・?」

神谷「お前が面倒を見ろよ」

理紗「私にはまだ仕事が・・・」

神谷(舌打ちをする)「じゃあその分後で残って仕事しろ、お前が持ち込んだことだろ。自分で責任持てよ」

理紗「はい・・・」


 心配そうに理紗の顔を見る蒼


◯15ラゾーナのフードコート(昼過ぎ)

 ガヤガヤとたくさんの人が喋り食べている

 アイスクリームを食べている蒼


理紗「美味しい?」

蒼「うん!」

理紗「良かった、蒼くんは今いくつ?」

蒼「6歳」

理紗「じゃあ小学1年生か・・・」

蒼「ううん、学校は行ってない。ママが行っちゃダメって言うんだ」

理紗「どうして?」

蒼「行ってもいじめられるだけだって、怖くて危ないところなんだよ」

理紗「ダメだよ、ちゃんと行かなきゃ!そりゃ楽しいことなんて全然ないけど・・・勉強をしたら夢を叶えられるよ」

蒼「ふーん・・・じゃあ夢は叶ったの?」

理紗「それは・・・私はまだだけど・・・でも今努力してる、ぬいぐるみ屋さんを開くのが夢なんだ。これを見て」


 ガラケーの中に保存されているジャンヌの写真を見せる


理紗「私が作ったの、可愛いでしょ?」

蒼「可愛いのかな、よくわかんないや。その目はどうしたの?病気なの?」

理紗「小さい頃に左目は悪い大人に盗られちゃった」


 眼帯外す理紗


蒼「痛そうだね、でも片目が見えなくてもぬいぐるみが作れるなんてすごいよ。ぬいぐるみ屋さんが開けるといいね!」

理紗「うん!!」


 眼帯をつける理紗


 時間経過


 理紗のガラケーが鳴る


理紗「あっ!ママが来てくれたのかも!!」


 理紗が電話に出る

 電話相手は神谷


神谷「早く来い、事務室に来てる」


 理紗が喋る暇もなく電話が切れる

 

理紗「ママが来たよ!行こう!」

蒼「やった!!」


 理紗は蒼の手を握り事務室へ向かう


◯15事務室(夕方)

 事務室では蒼の母が怒鳴りひたすら神谷が謝っている


 蒼の母「よりによってうちの息子をトイレ掃除なんかしている人に預けるなんて!!」

神谷「申し訳ありません!!」


 事務室に理紗と蒼が入る


蒼(喜びながら)「ママ!」


 入るとすぐに蒼の母親は蒼の手を取り理紗から引き離した


蒼の母「信じられない!!この子に何かあったらどうしてくれるの?ここの会社を夫に訴えてくれって頼むことにするから」


 蒼の母は理紗に怒鳴りつける


理紗「どうしてあなたがそんなに言うんですか?私はただあなたが戻ってくるまで息子さんの側にいただけです」

蒼の母「迷子をこんな薄汚い仕事をしている人と一緒にやるなんて!!普通はもっと清潔な場所に連れて行くはずでしょ?!」


 理紗には何が気に食わなかったのか分からない

 怒鳴りちらす母親に理紗は反論をしようとするがその前に神谷が再び頭を下げる


神谷「大変申し訳ございません!こいつは礼儀がなくて・・・何というか・・・見た目でも分かる通り普通じゃない奴なんです、後で厳しく叱っておきます」

蒼の母「教育がなってない、マナーを叩き込みなさい!」


 神谷に対しても怒鳴り事務室を出ようとする蒼の母と蒼

 

蒼「でもママ・・・あの人は良い人だよ!アイスを買ってくれたんだ!!」

蒼の母「蒼、あの人たちは負け組なの。だから関わっちゃダメ、あなたまで不幸になってしまう。アイスなら後でもっと良いのを買ってあげるから!!」

蒼「ほんと?!やった!!」


 蒼は喜びながら母親と事務室を出て行く


 時間経過


 理紗に怒鳴る神谷


神谷「お前・・・なんてことをしてくれたんだ!」

理紗「どうして私が怒られなくてはならないんですか?理不尽です」

神谷「そんなことは関係ないんだよ!!今の女の旦那はJRのお偉いさんだぞ!下っ端の俺らなんかすぐクビに出来るんだ!どうしてくれるんだよ!仕事がなくなったらおしまいなんだぞ!!今の世の中じゃ再就職なんて絶対にできないんだ!責任とってくれるのか!おい!!聞いてるのか!!お前みたいなやつを部下にしちまったこっちのこともちょっとは考えてくれよ!!」


 理紗は一方的に怒鳴られる


◯16リビング(夜)

 机の上でジャンヌを使って人形遊びをしている理紗

 落ち込んだ表情の理紗


理紗(ジャンヌを動かしながら)「大丈夫!理紗は闇さえ砕く力を持ってる、落ち込まないで」

理紗「本当?目の前の哀しみに立ち向かう勇気がほしいよ」

理紗(ジャンヌを動かしながら)「理紗には私がいるよ、理紗はとても勇敢、優しくて、綺麗。大丈夫、あなたは強い」

理紗「ありがとう!」


 笑顔になる理紗

 

◯17女子トイレ(日替わり/朝)

 理紗が女子トイレのゴミを回収している


 時間経過


 喧嘩をしている高校生の男女がトイレに入ってくる


幸生「やめて!!」

大和「うるせえ!」


 大和は抵抗している幸生の手を強く掴み、トイレが引きずり出そうとしている


大和「来い!!」

幸生「いや!」

大和「お前は俺の女なんだよ!」

幸生「離してよ!」


 必死に嫌がっている幸生

 二人のことを見ている理紗

 幸生を抑えるのに夢中で理紗の存在に気付いてない大和

 理紗に助けを求める幸生


幸生「助けて!」


 今更理紗の存在に気づく大和

 

大和「何見てんだよ!糞ゴミ漁りが!」

理紗「彼女が嫌がってる、やめなさい」

大和「いいんだよ!これはただの喧嘩なの!」

幸生「お願い!助けて!」

理紗「その子を離しなさい!警察を呼ぶから」

大和「警察があんたみたいなゴミ漁りの話を聞くかよ!犯罪社会なんだぜ!こんな小さな出来事なんて無視するさ!」

理紗「じゃあ駅員を呼ぶ、ていうか監視カメラがついてるんだからあなたが女子トイレに入ってその子をレイプしようとしている映像を学校に送りつけてやる」


 不意に幸生を離して唖然とする大和


大和「女子トイレ・・・?」

理紗「ここは女子トイレ、そんなことも知らずに入ったの?」

大和「取り込み中なんだよ、そんなの知るわけないだろ」

理紗「そっか、じゃあ事務室に行ってくる。監視カメラに映ったあなたのことを上司に見せに行かなきゃ」

大和「待て、それはやめろ」

理紗「それが嫌なら彼女を離して」

大和「もう離してる」


 少しの沈黙


理紗「じゃあ出てって、ここは女子トイレだから。(指を差しながら)男子トイレはここを出て右手、出て行くのが嫌なら私が出る、監視カメラの記録を色んな人に見せなきゃいけないし。でも・・・」

大和「でもなんだよ?」

理紗「でもあなたが今すぐここを出て行ってくれるなら監視カメラの記録は出回さないことにする、揉め事は嫌だからね。何事も穏便に行きたいでしょ?あなただって下手すれば退学」

大和(イライラしながら)「わかったようるせえな!」

理紗「良かった、賢明な選択でご両親もきっと喜ぶ」


 大和は出て行こうとするが去り際にはボソッと呟いていく


大和(小声で)「死んだよ親は」


 大和は出て行く

 安堵した幸生はその場にしゃがみ込む


幸生「良かった・・・」

理紗「大丈夫?」

幸生「助かりました、ありがとうございます」


 理紗は幸生に手を差し伸べる

 幸生は理紗の手を受け取り立ち上がる


理紗(小声で)「華奢な体・・・」

幸生「えっ・・・?」

理紗「あっ、すごく痩せてて軽いなって思って」

幸生「あなたも、指が細くて綺麗」

理紗「そ、そうかな?ありがとう」


 照れている理紗


幸生「あいつ・・・すごく馬鹿なやつで、ほんと、世の中クソみたいな奴でいっぱい」

理紗「気をつけて、あなたみたいな美人には危ない世の中だから」

幸生「はい、またお礼を言いに来ます」

理紗「気にしないで、私は役に立てればそれで十分」

幸生「良い人なんですね」

理紗「ただ当たり前なことをしただけだよ」


 微笑む理紗


幸生「じゃあ・・・私行きますね、本当にありがとうございました」

理紗「うん、気をつけてね!」


 出て行こうとする幸生


理紗「待って!名前!教えて!」


 引き止める理紗


幸生「中村幸生、幸せに生きるって書いて幸生って言います。あなたは?」

理紗「私は榊原理紗!」

幸生「お仕事頑張ってくださいね理紗さん!」


 とても可愛らしい笑顔をして幸生はトイレを出て行く

 理紗は人の役に立った喜びで嬉しくなり一人で小躍りをしながらトイレ掃除をする


◯18川崎駅前(昼)

 ◯6と同じ女性が路上ライブしている

 「地球最後の告白を」を弾き語りしている

 駅前はたくさんの人がいるのにも関わらず皆通り過ぎて行く

 理紗は少し離れたところで女性の歌を聞く


◯19トイハウス前(昼)

 閉店のプレートが出ているトイハウス

 店の中は真っ暗で誰もいない

 おもちゃも綺麗になくなっている


理紗「閉店している・・・」


 諦めて理紗は引き返す


◯20リビング(夜)

 ソファに座ってジャンヌと一緒にカードキャプターさくらを見ている理紗

 

理紗「幸せに生きるで幸生だって!素敵な名前・・・」


 ジャンヌに向かって喋る理紗


理紗「今日の私、悪者を倒すヒーローだった。まるで魔法少女みたい・・・」


 ソファから立ち上がる理紗

 キッチンに行きおたまを取り出す理紗

 ソファのそばに戻る理紗

 ソファにおたまを置く理紗


理紗(声を低くして)「おい!てめえ何者だ!」


 おたまを取ってステッキのように構える理紗


理紗「私は魔法少女理紗!悪を裁きに来た!観念しろ!!」


 おたまを強く振る理紗

 おたまを置く理紗

 倒れる理紗

 立ち上がる理紗


理紗(声を高くして)「ありがとう理紗さん!」


 おたまを取る理紗


理紗「幸生ちゃん!大丈夫?」


 おたまを置く理紗


理紗(声を高くして)「はい!理紗さんは命の恩人です」


 ほっぺにキスをするような動きをする理紗

 おたまを取る理紗


理紗「幸生ちゃん、私は行かないと。助けを求めてる人がまだまだいる」


 おたまを置く理紗


理紗(声を高くして)「そんな・・・また戻って来ますか・・・?」


 おたまを取る理紗


理紗「もちろん!私は必ず戻ってくる、戻ってきたら一緒に星を見に行こうね幸生ちゃん」


 おたまを置く理紗


理紗(声を高くして)「はい!私、理紗さんのことを待ってます!」


 一人で妄想寸劇を繰り返してどっかりとソファに座る理紗


 時間経過


 ソファに座りながらジャンヌの手入れをしている理紗


理紗「お店閉まっちゃったね」


◯21事務室(一週間後/昼)

 神谷から呼び出された理紗

 神谷は机の上で書類にサインをしている


理紗「話ってなんですか?」

神谷「あぁ、大したことじゃない」


 作業をやめる神谷


神谷「君はクビだ」

理紗「クビ?」

神谷「クビだ、案の定この間の女の旦那から電話がかかってきた」


 愕然とする理紗


理紗「そんな・・・どうして・・・」

神谷「昨日の夜に電話がかかってきたんだが、お前をクビにしなければここを訴えると言われたんだ」

理紗「訴えるって・・・一体どんな理由で?」

神谷「お前さ・・・あの男の子に何か余計なことを吹き込んだだろ。息子に悪影響を与えたってカンカンだぞ」


 理紗は蒼との会話を思い出す


蒼 声「ううん、学校は行ってない。ママが行っちゃダメって言うんだ」

理紗 声「どうして?」

蒼 声「行ってもいじめられるだけだって、怖くて危ないところなんだよ」

理紗 声「ダメだよ、ちゃんと行かなきゃ!そりゃ楽しいことなんて全然ないけど・・・勉強をしたら夢を叶えられるよ」


 愕然としている理紗を無視して何枚かの紙を置く神谷


神谷「俺の方で色々と退職関係の資料を集めておいたから、後はそっちでやってくれ」

理紗「理不尽です!私は今日までこの仕事をきちんと全うしてきました!それなのにいきなりクビだなんて・・・」

神谷「はぁ?お前が迷惑かけたんだから理不尽もクソもねえだろ、むしろわざわざ電話に出たり書類を集めたりこっちの苦労を考えてくれ」

理紗(懇願しながら)「お願いです!クビにしないでください!私にはお金が必要なんです、夢を叶えるためにも!」

神谷「夢なんざ諦めろ、このご時世いつまでも夢夢連呼出来てるのはお前くらいだぞ。いい加減現実を見たらどうだ?誰もが好きなことを出来るわけじゃねえんだ。というかお前には障害者保険があるじゃないか。俺だってな、クビにしたいわけじゃない。他の職員や自分自身、家族のことを考えたらこうする他ないんだよ!わかったな?わかったら書類と荷物をまとめて出て行け」

理紗「分かりました・・・」


 書類を受け取る理紗


神谷「そういやお前に礼を言いたいって女子高生くらいの子が来てたぞ。邪魔だから時計台の方にやったけど。何度も来られたら迷惑だからクビになったことをちゃんと伝えておけよ」


 とぼとぼと事務室を出る理紗

 

◯22JR川崎駅時計台付近(昼過ぎ)

 時計台付近ではたくさんの人がいる

 時計台の前で幸生が理紗を待っている

 幸生の方へ近づく理紗


理紗「幸生ちゃん・・・」

幸生「あの時のお礼をと思って、今日は学校が休みなのでよかったら一緒にご飯でもどうですか?奢りますよ!あっ・・・今都合が悪いようであれば仕事が終わってからでも大丈夫です、待ってますから」

理紗「ううん・・・今大丈夫だよ」


 二人はラゾーナのフードコートへ向かう


◯23フードコート(昼過ぎ)

 ご飯を食べている幸生

 何も食べてない理紗

 人で賑わってるフードコート


幸生「本当にいいんですか?何でも奢りますよ!」

理紗「大丈夫、お腹空いてないんだ」

幸生(心配そうに)「大丈夫ですか?なんか今日テンション低いような・・・体調が優れませんか?」


 俯いてる理紗


理紗(小声で)「クビになったんだ・・・」

幸生「え?」


 周りがうるさくて聞こえなかった幸生


理紗「クビになったの」


 思わず食べる動きを止める幸生


幸生「それは・・・ごめんなさい・・・私・・・全然気付かなくて・・・」


 突然幸生の手を握る理紗

 少しびっくりした様子をする幸生


理紗「世の中おかしくなってる・・・歯車が上手く回転してないのかな。みんなみんな自分より立場が弱い者をいじめるのに必死、私はそんなことしないのに・・・辛いよ・・・幸生ちゃん・・・」


 幸生は理紗のことを励ます


幸生「大丈夫ですよ!今は辛くてもそのうち幸せが訪れます、理紗さんは良い人だし、これ以上悪いことは起きません!」

理紗「毎日毎日、辛いことばかり・・・どんどん悪いことが増えていくの。どんなに頑張っても夢は叶わないし・・・仕事をしていても人から文句を言われる・・・家に帰ってもいつも一人・・・家族はいないし友達もいない・・・仕事はクビになったし・・・お金もない・・・どれだけ掃除をしても綺麗にならないトイレと一緒で、人に優しく接してもみんな私に辛く当たる・・・助けて、助けてよ幸生ちゃん」


 幸生の手を強く握る理紗

 幸生は申し訳なさそうな顔をしている


幸生「お金なら少しあげられますけど・・・私には理紗さんを助けられません・・・ごめんなさい・・・私、明日引っ越すんです。お父さんが都会は治安が悪過ぎるって。だから最後にお礼を言いに来たんです」


 少しの間が流れる


理紗「行かないで!私を置いて行かないで!」


 理紗は幸生の手をより強く握りしめる

 痛みで悲鳴を上げる幸生


幸生「痛い!痛い!離してください!!」

理紗「みんな私のことをいじめる!幸生ちゃんまで!私にはあなたが必要なの!!だから行かないで!そばにいるだけでいいから!!お願いだから私に優しくして!!私が今まで色んな人に優しく接したように・・・」


 幸生は立ち上がり理紗の手を振り解こうとするが理紗は離さない


幸生「離して!やめてください!!」


 大和が幸生に迫ったように、理紗は幸生に迫る

 騒がしかったフードコートも静まり二人の争いを凝視する人が増えていく


幸生「助けて!」


 幸生が周りに助けを求め二人の周りに人が集まってくる

 人が集まってきたことに気づいた理紗は幸生の手を離す

 幸生の手を赤くなっている


理紗「ごめん、私はただ・・・あなたのことが好きで・・・」

幸生「あなたは良い人だと思ってたのに・・・こんな異常者だったなんて・・・」

理紗「異常者だなんて言わないで!私は少し変わってるだけで・・・」

幸生「普通じゃない!!」


 幸生の大きな声はフードコート中に響く

 野次馬たちもその言葉に共感していく


男1「気狂いだ!」

女1「警察を呼ぶべき!」

男2「逮捕されろ!」

女2「彼女の腕を見て!!折れてるかもしれない!!」


 次々と理紗を追い詰める言葉が飛び交う

 焦った理紗は荷物を持ってその場から走って逃げる


男1「追いかけろ!」

女1「犯罪者が逃げた!」

男2「奴は異常者だ!」

男2「絶対に逃さないで!」


 野次馬たちは狂ったように理紗を追いかける

 幸生の左手は異様に腫れ上がっている


◯24ラゾーナ外(昼過ぎ)

 救急車で運ばれる幸生


◯25ネットカフェ(夜)

 逃げ回った理紗は家には戻れずネットカフェの個室で隠れている


理紗(小声で)「私、どうすればいいの・・・?」


 理紗は荷物の中に入っているジャンヌを取り出す


理紗(小声で)「教えてジャンヌ・・・」


 理紗はジャンヌの首に付いているロケットペンダントを見る

 ロケットペンダントを開ける理紗

 「助けを求めてる人を見捨てないで」というメッセージを見つめる理紗

 何か思いついたかのように突然パソコンを起動させる理紗

 インターネットを立ち上げる理紗

 検索欄に「堀之内 ヴィーナス」と打ち込む

 お店のホームページにはJK専門の風俗店と書かれている

 女の子の一覧を見る理紗

 “麻衣”という名前の子を見つける理紗

 麻衣の顔写真を見てじっと考え込む理紗

 そして男子高校生の会話を思い出す理紗


男子高校生1 声「どういう経緯か知らんけどあいつ騙されたらしいぜ?それで強制的に働くことになったって」

男子高校生2 声「せっかく上京してきたのにどんだけ馬鹿なんだか・・・今頃泣く泣くしゃぶってるってわけか」


 ホームページに麻衣は明日の夜から出勤予定だと載っている

 理紗はその日一日家には帰らずネットカフェで麻衣の写真を見ながら過ごす

 

◯26リビング(日替わり/早朝)

 外はパラパラと雨が降っている

 朝一に理紗は家に帰る

 荷物を置きハサミを手に取る理紗

 鏡の前に行く理紗

 肩ぐらいまで無造作に伸びた髪をハサミで切っていく


 時間経過


 長かった髪は顎より短くなっている


◯27ホームセンター(朝)

 理紗は金槌やバールなど金属製の硬くて小さい物をたくさん買っていく

 

◯28服屋(朝)

 理紗は男物のパーカーやデニムを買っていく

 

◯29リビング(昼)

 買い物を終えて家に戻ってくる理紗


 時間経過


 「撲殺天使ドクロちゃん」を流している理紗

 購入した男物のパーカーとデニムを着てみる理紗


理紗「よし・・・」


 ややぶかぶかなもののそれほど違和感がない服装

 金槌を持ってみる理紗

 軽く素振りをする理紗

 金槌をデニムに入れて隠す理紗

 眼帯を外す理紗

 フードをかぶる理紗

 咳払いをする理紗

 キッチンの向こう側に風俗店員がいると見立てて一人で喋る理紗


理紗(低い声で)「麻衣って子を頼む」

理紗(低い声で)「いや違う、麻衣だって言ってんだろ」

理紗(低い声で)「この子だよ」


 カウンターに指を立てて説明する理紗


理紗(低い声で)「呼べない?呼べないだと?ふざけてんのか?」


 金槌を取り出す理紗


理紗(低い声で)「殺すぞ!」


 金槌を振り回す理紗


理紗(低い声で)「え?俺が誰かって?」


 フードを外す理紗


理紗「私は魔法少女、お前らみたいなやつをぶっ殺しにきたの」


 一連の流れを何度も繰り返す理紗


◯30川崎駅前(夜)

 どしゃぶりの雨

 理紗はリュックの中にバール、全財産を入れた財布、ジャンヌを入れている

 金槌はデニムに隠している

 駅前ではいつも路上ライブをしている女性がXJAPANの「紅」を歌っている

 いつものように誰も女性のライブを立ち止まって聴くことはない

 理紗は女性に近づきリュックから財布を取り出す

 理紗は女性のギターケースの中に全財産を入れる

 女性はびっくりして思わず歌うのをやめる


路上ライブの女性「こんなにもらえません!!」

理紗「いいの、受け取って。いつもあなたの歌声を聞いてたからそのお礼に」

路上ライブの女性「でも、こんなにたくさん・・・」

理紗「夢を叶えて、あなたの声はとっても素晴らしいから自信を持ってね!」

路上ライブの女性「ありがとうございます!」


 女性は深く頭を下げる


理紗「頑張ってね!!」

路上ライブの女性「はい!」


 理紗は堀之内のヴィーナスに向かって歩き始める

 女性は大きな声で「紅」を再び歌い始める


◯31ヴィーナス(アパート)の前(夜)

 フードをかぶってずぶ濡れの理紗

 店の前には傘をさして男が立っている

 男に近づく理紗

 

男「お客さんどう?今日はこんな雨だし空いてるよ!」

理紗(低い声で)「あぁ」


◯32ヴィーナス店内(夜)

 アパート内は地味で薄汚い

 男は店の中に理紗を案内し写真付きの女の子一覧表を渡す


男「お客さんここは初めてだろ?店のシステムを読んだと思うが、前金がいる。ちゃんと用意してくれよな」


 理紗の動きが止まる

 理紗の所持金は路上ライブの女性に渡してしまったため一銭もない


男「まあ、後で少し余分に渡してくれるなら今じゃなくてもいいが」

理紗(低い声で)「そうする」

男「よし、じゃあそれで決まりだ」


 一覧表をくまなく見て麻衣を探す理紗

 麻衣を見つける理紗

 麻衣の写真を指差して見せる理紗


理紗(低い声で)「この子で頼む」

男「麻衣だな、その子はレベルが違うぜ!店一番の子だ」


 男は鍵を取り出し理紗に渡そうとするが止める

 男はカウンターに鍵を置く


男「お客さん、フードを外して顔を一度見せてくれ」

理紗(低い声で)「断る」

男「この間、前金を払わなかった奴も顔を見せなかったんだ。雨に紛れてロクでもない奴が来られたら困るんだよ、もしかしたらあんたはカオナシかもしれねえ」


 少しの間が流れる

 迷った挙句フードを外す理紗


男(驚きながら)「おいおい!お前女だな!?」


 理紗は肯定もせず否定もしない

 ただ突っ立っている理紗

 理紗の右手は後ろの金槌に触れている


男「女は店にいれねえ、働きたいなら話は別だけどよ」


 男はカウンターに置いている鍵を片付けようとする

 その瞬間理紗は金槌を取り出し男の手をぶっ叩く

 男は痛みで絶叫する

 男が痛みで悶えている

 理紗はもう一度男の手をぶっ叩く


理紗「麻衣を呼んで!早く」


 金槌を構えながら男を脅す理紗


男「くそ・・・ぶっ殺してやる!」


 理紗はボロボロになった男の手にギリギリ当たらないところを思いっきり叩く


理紗「早く呼んでって言ってるでしょ!!早く呼ばなきゃあんたの体を粉々にするよ!」


 男はカウンターの内側にあるボタンを押して部屋にいる麻衣を呼び出す

 しばらくすると階段で麻衣が降りてくる

 麻衣は血塗れになった男と金槌を持ってる理紗を見て立ち止まる


男「麻衣・・・助けてくれ・・・」

理紗「うるさい!次に何か喋ったらもう一回手を叩くから!!わかった!?」


 金槌を構えながら男を脅す理紗


男「わかった・・・」

理紗「あなたが麻衣?」


 頷く麻衣


理紗「騙されたってほんと?」


 頷く麻衣


理紗「こいつに騙されたの?」


 頷く麻衣


理紗「こっちにおいで、私はあなたを助けにきたの」


 手招きする理紗

 ゆっくりと理紗のもとにやってくる麻衣

 理紗が一瞬目を離した瞬間警報を鳴らす男

 大きなサイレンがアパート中から鳴り響く

 

男「ざまあみろ!この手の店には防犯ブザーくらい仕掛けてあるんだよ!!麻衣!お前は逃さねえ!借りは返してもらうぞ!!!たとえ腕が吹き飛ばされようが足が燃えようが俺の運命はお前と共にある!」


 男がボロボロになった両手を麻衣に伸ばす


理紗「麻衣、目を瞑ってて!」


 目を瞑る麻衣

 理紗は金槌を振り男を撲殺していく

 返り血を浴びる理紗

 男の絶叫とサイレンの音と金槌で人を叩く鈍い音が響いている

 男は絶命する

 金槌を捨てる理紗

 カウンターの裏にあった監視カメラの映像を確認する理紗

 映像には撲殺された男も映っている

 映像にはサイレンを聴いて不審に思った大人の男や少女たちの姿が映っている

 麻衣の手を掴む理紗


理紗「麻衣!逃げなきゃ!」


 目を開けた麻衣は死んだ男の姿を見る

 麻衣の手を引っ張り外に出る理紗

 外は変わらず大雨が降っている

 二人は走って逃げる


◯33川崎駅ガスト(深夜)

 ずぶ濡れの状態でガストにかけ込んだ二人

 理紗の顔にかかった返り血は雨で落ちている

 理紗の服は真っ赤に染まっている

 とりあえず席に案内されたものの理紗のことを怪しく見ている店員

 奥で電話をする店員

 

理紗「私は理紗、よろしく!」


 頷く麻衣


理紗「大丈夫?何か食べる?(小声で)そういえばお金持ってないんだった・・・」

麻衣「これからどうするの?」

理紗「わからない・・・」


 リュックの中に入ってるジャンヌを取り出す理紗

 テーブルの上にジャンヌを置く理紗


理紗「この子はジャンヌ、私の分身なの。あなたもぬいぐるみを作ってみる?」


 ジャンヌを手に取る麻衣

 ジャンヌに付いているロケットペンダントを開けて見る麻衣


麻衣「助けを求めてる人を見捨てないで・・・良い言葉」

理紗「ほんと?大事なことだと思ってさ。良かったらそのペンダントあげる、ぬいぐるみ用のだから首には付けられないと思うけど・・・」

麻衣「ありがとう」


 ジャンヌからロケットペンダントを取り外す麻衣

 ペンダントを手首につける麻衣


麻衣「理紗」

理紗「ん?」

麻衣「警察がきた」


 振り返る理紗

 たくさんの警官が理紗に銃を向けている

 立ち上がって両手をあげる理紗


警官1「名前を名乗れ!!」

理紗「榊原理紗です」

警官2「お前を殺人容疑で逮捕する!」

警官3「そのリュックをゆっくりこちらへ渡せ!」


 リュックを滑らせて警官側に渡す理紗

 警官は理紗を抑え込み手錠をかける

 

警官4「0時42分、容疑者の榊原理紗を逮捕」


 警官は無線機で取り出し報告している

 別の警官は麻衣を保護している


理紗「麻衣!私があなたを助けたのはあなたが助けを必要にしていると感じたから!!」


 理紗は麻衣に向かって叫ぶが警官によって無理矢理連行されそうになる


警官1「おい!静かにしろ!」


理紗「みんな分かってない!!善悪の違いが!人に優しくしなくてはならないということを!この街は光を失ってる。太陽も、月も、星も消えてしまった・・・私はこの“普通じゃない世界“を救うために現れた魔法少女!!人は弱い・・・不満、不安、不幸を他人にぶつけるな!互いを助け合え!互いを尊敬をしろ!麻衣!!あなたは善良な人間になって!間違えた道を歩まないで、例え辛くても善行は出来るから!!いいね?私は食い殺されてしまうけど、あなたには幸せに生きる権利があるんだから!!」


 理紗は抵抗し暴れている


警官2「黙れ気狂いめ!」

警官3「大人しくしろ!!」


 理紗は連れて行かれそうになるが麻衣がそれを引き止める


麻衣「待って!」


 麻衣の出す大きな声に思わず動きが止まる警官


麻衣「この雨が止めば・・・私には星がいっぱい見えるようになるよ!」


 微笑む麻衣

 その言葉を聞いて涙を流す理紗


理紗(涙を流しながら)「ありがとう・・・」


 理紗は警官に連行される

 理紗にはジャンヌが左手を振ってるように見える

 

◯34ガスト外(深夜)

 雨は弱くなっていて雲の合間から星が見えるようになっている

 連行されながら空を見る理紗


理紗「ほんとだ・・・星が綺麗・・・」


 理紗はパトカーに詰め込められる


この物語は、かなり精神的に辛かった時に書きました。

日頃のストレスがこのシナリオにぶつけられています。

結末で少しでもスカッとしてくれると嬉しいです、生き辛いよね、世界って。

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