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煌(かぐ)の龍の眠る國  作者: 真夜中緒
龍の眷属の仔は眠る 下
19/20

番外編 龍と麒麟

 「なぜ、我が娘の目覚めを妨げたのです。」

 問いかけに少し驚いた。

 麒麟が選んだ宿主は強い。その身を借りて語ったことは色々と筒抜けになってしまう。そんな危険を冒してまで、直接話しかけてこようとは思わなかった。

 「蜜月みつきはまだ童だ。今目覚めれば人として損なわれる。下手をすると人からかけ離れたモノになってしまうぞ。」

 麒麟の目に力が籠もる。

 「その何がいけないのです。我らはあなたの眷属だ。私も、蜜月みつきも、かぐの者たちも。全てはあなたから生まれたあなたのお力の欠片だ。人である事など、その事実の前には瑣末なことに過ぎない。」

 そうだ。そなたはそういうものだ。私の目となるべく生まれ、私のために生きてきて、私のために生きてゆく。

 「だがな、私は人が好きなのだ。人であることを損ないたくないのだよ。」

 私は眠っている。

 これは夢だ。眠り続ける私の夢。

 眠る私の身には生き物があふれ、私の心臓からはかぐの子たちが生まれてくる。

 「なぜです。あなたは目覚めたっていいんだ。どうせ千歳ちとせためしがくる。他の龍の眷属だって黙ってはいない。実際に索冥が仕掛けてきたのを見たでしょう。かぐの子でも弱ければ、索冥には縛ることができるのですよ。」

 私達、始原の生き物は大きすぎて、もはや身動きもままならない。眠りを選んだ私達が生み出した眷属は、長い長い夢の中で私達を恋しがる。千年の約束を追い求めてしまうほどに。

 「私が目覚めてどうするのだ。私は自分の夢を愛している。目覚めれば夢は破れてしまうではないか。」

 どうか眠らせておいてほしい。

 このままずっと夢見ていたい。

 この愛おしい人の子の世の夢を破ってしまいたくはない。

 「あなただけ眠ってはいられません。龍の眷属たちは皆動くでしょう。世界の中心で眠るあなたを覚ますために。」

 私は仮の身体の翼を羽ばたかせ、麒麟の肩に降り立つ。

 「ではお前が私の眠りを守っておくれ。私の眷属たる麒麟よ。」

 麒麟は泣き出しそうな顔でうつむいた。



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