就職先は異世界
眩しい日の光で目を覚ました。
「どこだよここ……」
見知らぬ天井や積み重なった木箱、竜はいつの間にか見知らぬ物置小屋にいた。
眠気が一気に吹き飛び、周りを見渡してると部屋の隅に人影が見えた。
「……っ」
近づくと金髪にスーツを着た見たことある人物が椅子に座っていた。
「ヴェルトさんですか?良かった、一体ここってどこか分かりますか?」
しかしいくら話しかけてもヴェルトは、話すどころか身動き一つしなかった。
「ヴェルトさん?」
仕方なく近づいて肩を揺すってみると、ヴェルトの首がポロっと落ち、床に転がりそのまま崩れ落ちた。
「……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「それゴーレムだから平気だよ、ボクの自信作なんだ!」
「け、警察呼ばなきゃ」
「だいじょぶだってば!」
耳元で声が聴こえるが、竜には気にする余裕がなかった。
「もしもーし?聞いてますか~!」
携帯がねぇ、やべぇよ、どうすんだよ。
「だから、だいじょぶだって言ってんだろが!」
「いでっ!」
パニックになってたら耳元で大声を出され、ガブッと強く耳を引噛まれた。
噛まれた耳の方を振り向くと、白い毛並みにエメラルドグリーンの瞳をした小さな猫が浮いていた。
「ね、こ?て言うか喋ったのってお前か?」
「ボク以外に誰か居るように見えるかい?それとボクはネコじゃなくて精霊だよ」
目の前の死体と浮かぶ猫に竜の脳の処理が追い付かないでいた。
「急に黙ってだいじょぶかい?」
「あのさ、ここって異世界ってやつか?そんでこの状況って異世界召喚ってやつ?」
「話が早くて助かるよ!キミはボクが呼んだんだ」
ネコの一言にテンションが著しく上がっていった。
しかし異世界召喚に嬉しくなってきたが、死体が目に入ると一瞬で、目の前の西洋が恐くなってしまった。
「その前にちょっと聞いていいか?あの死体ってお前が殺ったのか?」
もしこいつじゃないとして罪を被せてたまたま召喚された俺が捕まる。
こいつが犯人だとしたら俺も殺されるかもしれない。
「キミはどっちだと思う?」
ネコはニヤッと笑うと聞いてきた。
「まぁ、安心してよ。これはただのゴーレムだから」
「ごーれむ……」
「そっ、んでボクがヴェルトだよ。よろしくね月見里クン!」
ヴェルトはウインクしながら、舌をペロッと出した。
「何で俺の名前知ってんの?」
「そりゃボクが面接して、呼んだからね」
「どうして。世界を救うとかそういうやつ?」
「全然違うよ~」
「拐われたお姫様を救うとか?」
「至って平和だね」
「じゃあ何のためだよ」
ヴェルトの言動に竜はイラッとさせた。
「キミを呼んだのはたまたま繋がったから、呼んだ理由は従業員を募集してたんだよ。面接やっただろ!」
「あれってマジもんの面接だったの!?」
「そうだよ」
ネコが雇用主という事実に驚きと共にテンションが少し下がった。
「キミ、失礼なこと考えてるでしょ」
「いえ、べつに……」
考えを読まれ、顔が強張ってしまった。
「顔に出過ぎだよ……まぁそれよりもキミを雇ったわけだけどね。正直誰でも良かったの~!えへっ!」
「可愛い顔で笑ってもダメっ!」
「まぁ、救って欲しいってのは間違ってはないかな!」
困ったように笑いながら、前足で顔を撫でた。
「どういうこと?」
ヴェルトの的を得なさに混乱するしかなかった。
「まぁ詳しくは下で話すよ」
ヴェルトは部屋を出ると下に降りていった。