ブームと名物
祭りが終わり一月、町にはある変化が起きていた。
それは至る所でアプル飴や色んな飴が売られる様になったことだ。
収穫祭でアプル飴を買えなかった人がたくさんやってきて、対応出来なくなってしまったのだ。それはルティーの店も同様で常に行列が出来ているらしい。
そこで商業ギルドからアプル飴の作り方を広めてもらい多くの店でも扱ってもらおうということになった。
町長いわく、商業ギルドに登録すれば仮に偽物が現れて、悪意ある行動をとっても守ってもらえたり、町のためなら広報活動にも協力してくれるらしい。
そのおかげで今ではこの町の名物になり、噂では領主様も気に入っているとかなんとか……
「アプル飴すごい事になってますね」
「色んなお店が出す様になりましたからね」
「るーさんのおかげで町の名物にもなりましたからね。それにこれも人気ですよ!」
ノワルさんはおろし金を指差す。
今アプル飴同様に主婦の間でおろし金がブームになっている。
きっかけはアプルを買う為にノワルさんとルティーの八百屋に行った時のこと。
「ウチの子ったら八百屋の娘なのに野菜を食べないんだよ……、どうにかなんないかねぇ」
「小さいお子さんだと好き嫌い多いですからね、るーさんは嫌いな物ってありますか?」
「あまりないですけど、お肉がちょっと硬くて食べづらいですね」
この世界の肉は日本と違い牛や豚ではなく、冒険者が狩ってくる魔物の肉なので筋張っていたり、硬かったりするのだ。
もちろん柔らかくて食べやすい肉もあるのだが、貴族や王族が食べるような高い物だったりする。
3人で世間話をしていると、俺の頭にあるアイデアが浮かんだ。
「そうだ、今度試したいことがあるのでウチに来ませんか?」
ノワルさんとブレドは互いに首を捻った。
数日後俺はルティー親子に食べて貰いたいものがあるとウチによんだ。
「すいませんノワルさん、急にこんな事してしまって」
「全然良いですよ、私も楽しみですから!」
ドアが開きルティーと親父さんがやって来た。
「こんにちは、ノワルおねえちゃん、るーにいちゃん!」
「こんにちは、ルティーちゃん」
「こんにちは、もうちょっとで出来るからヴェルトと遊んで待っててくれ!」
「うんっ!行こうヴェルトちゃん」
ルティーをヴェルトに任せると俺とノワルさんはブレドがいるキッチンに戻って行った。
ブレドには後で真似してもらいやすい様に先に来てもらっていたんだ。
暫くしてスープを持って戻っていく。
ブレドは一緒にキッチンにいたので何のスープかわかっている為、ルティーがちゃんと食べるか心配らしい。
ルティーと親父さんがスープを一口飲むと声を揃えた。
「「おいしい!」」
「よかった、おかわりもあるからね」
「やったー!あたしこのスープ大好き!とろってしてておいしい!」
ルティーはスープを飲み干すと、おかわりをしてまた飲み始める。
そんなルティーをブレドはびっくりしながら見ていると、親父さんが聞いてきた。
「なんでそんなに驚いてんだよ」
「このスープはね、野菜がたくさん入ってるんだよ」
「野菜っ、全くわかんねぇや!」
驚く二人をよそに、ルティーはスープをもりもり飲んでいく。
「次はステーキです、ブレドさんも食べてみてください、驚きますよ」
ノワルさんはステーキを並べていく。
「肉は硬くて食べづらいからなぁ」
「顎が疲れちゃうだよね」
ブレド達はいつもの硬い肉を想像して苦い顔をする。
だがステーキにナイフを入れると、スッと切れていく。
「何だこの柔らかい肉は」
「うわー!おにくもおいしい!」
「上のソースも絶品だねぇ」
イタズラが成功したかの様に俺とノワルさんはハイタッチをする。
何故野菜嫌いのルティーがスープをおかわりし、硬いステーキが柔らかくなったのか、それはおろし金の力だ。
ステーキは玉ねぎをすりおろし肉に塗っていく、シャリアピンステーキにした。
こうする事で肉が柔らかくなって食べやすくなり、すりおろした玉ねぎは、肉を焼いたフライパンに戻してブドウ酒で煮詰めて、塩やバターで味を調えたらソースとして使える。
スープは玉ねぎをみじん切りにして、ベーコンと一緒に炒める。ニンジンやレンコンをすりおろして軽く煮込み、とろみがでたら味を調え完成だ。
ブレドがステーキを頬張るルティーを見ながら、俺とノワルさんにお礼をいう。
「ありがとね、ノワルちゃんにるーくんも。またこういうのが出来たら教えておくれよ。ウチの客にも広めとくからね!」
後日子供に野菜を食べさせたい親がこぞっておろし金を買いにくる様になった。
そして町の定食屋やレストランではシャリアピンステーキが話題となり、アプル飴同様にこの町の名物料理となるのだった。




