プロローグ ある玩具店の日常
初投稿です。
至らないところもありますが、気長に投稿して活きたいと思ってます。
宜しくお願いします。
棚に並ぶ可愛い人形、憧れのヒーローが身に付ける武器や防具。
地元の名産品を使った簡単なお菓子。
その他細やかな雑貨等を取り扱う玩具店、ノワル玩具店、それが男が現在働く店だ。
男の仕事の大体はレジか掃除、ごみ捨てだ。
はたきでホコリをとっていると、棚の裏からがちゃがちゃ音がしてきた。行くとやんちゃそうな男の子が２つの人形をぶつけながら遊んでいた。
「ボク、お人形さんがいたいよーっていうからやめてあげてくれる？」
「オモチャがしゃべるわけないじゃん、バカじゃないの！」
バカにした目をしながら子どもは遊びを続けた。 イラっときたが、下手に叱ってクレームがきたら面倒になるため、どうしようか困っていると後ろから声を掛けられた。
「うちの子に何か？」
振り向くと、子どもの親らしいお客さんが話しかけてきた。
「親御さんですか？すいませんが一様商品なので派手に扱われると壊れてしまうので、気を付けて頂きたいのですが」
言うと子どもの方をみて耳をピンと立て、子どもの頭にゲンコツを落とした。
「すいませんでした、ほら謝れ。バカやってないで帰るぞ」
「いたっ……うぅ～……ごめんなさい……」
ゴンっと音が鳴るほどの力で殴られ、頭を押さえ涙を浮かべながら、耳とシッポを小刻みに震えさせていた。
「だっ、大丈夫ですよ」
行くぞと子どもは体を丸くしながらお父さんに引っ張って行かれ、男は親子を見送りながら掃除を再開させた。
掃除を続けていると、大きな声で呼ぶ声が聞こえた。
「ルーさん、レジお願いします！」
「わかりました！」
レジに向かうと結構な列が出来ていて、背の高いキレイな店員が目を回しそうにしてた。
「袋詰めやります」
「お、お願いします……」
レジは１つしかないため男は紙袋に商品を入れる方に専念した。
「「ありがとうございました」」
買って貰ったオモチャが嬉しかったのか、背中の羽をバタバタさせながら手を繋いで帰る親子を見つめた。
「何とか落ち着きましたね」
「そうですね……ところで……その、あの、もっもう、こちらには慣れましたか？」
賑わう店内を見回すと、４つの腕で商品を見極めるお客さんや、魚のオモチャが欲しいのか駄々をこねて怒られる獣人の子ども。
他にもエルフやドワーフ、リザードマン等々、マンガやアニメでお馴染みの容姿のお客さんが店内を物色してる。
今日はハロウィンでもなければ、近くでイベントがやってる訳でもない。
「……ハハッ……まだ、見慣れませんね……」
「……ゆっ、ゆっくりでいいですからね！……それに騙すようなことになってしまったのですから…………」
瞳にうっすら涙を浮かべながら、エルフ特有の尖った耳がうっすら紅く染まる彼女に目を奪われた。
「あの？」
「……いっいえ、何でもないです。ノワルさんのためにも、自分のためにもがんばりますよ！」
「そう言って貰えると嬉しいです。ありがとうございます、がんばりましょうね！」
ニコッと微笑む彼女に、頬が熱くなり慌てて目をそらしもう一回店内を見回した。
(改めて思うけど、店の事情もすごいけど、すげー所に就職したなぁ、俺……)
男の職場はオモチャ屋さん、だけどお客さんや同僚はエルフやドワーフ、ピクシーなんかの、ファンタジーな人ばかり、おまけに店は火の車。
借金を返さなければ店が潰れるときたものだ。
店を盛り上げる為にも、レジを出て掃除を再開しながら、気合いを入れ直した。
