3人組に絡まれる
先日、真希の武具屋で新調したクイックラビットのタガーナイフとメンテナンスをした防具(見た目は普通の服)を身に纏い、今日もダンジョンに赴いた。
琥珀は近日中に初心者枠を抜け出す予定だ。
初心者枠を抜け出すには階層ごとに配置されているボスを倒さなければならない。
そんなボスだが配置されているのは2階層以降だ。
初心者枠である1階層にはボスはいないようになっている。
だからこそ、2階層のボスを倒すべく、琥珀は緊張気味に2階層の奥へと進んだ。
レベルが4に上昇していたこともあり、道中のコボルト達は相手にならなかった。因みに魔石は忘れずに回収しておいた。
進むにつれて疲れてきたため、1回、道端で休憩をとることにする。
その時に、集めておいた魔石を胸に当て【融合】させておいた。
どうやら、コボルトのスキルポイントもゴブリンと同様、一体5ポイントのようだ。
融合をし終えるとスキルポイントは120に達した。
それからズボンに付いた土を掃い奥へと進んで行った。
ダンジョンに埋め込まれている大門は威圧的な模様で、挑戦者を待ち構えているようにも見える。
琥珀が門に向けて歩いているとの大門から例の3人組が扉を開け現れた。
恐らくは、この階層のボスである、コボルトキングに挑んだのだろう。
しかし、3人組の表情と傷を見れば負けたのだと分かる。
三人組は暗い表情とは一転。
琥珀と目があった途端に目に精気を宿した。
すると、
「おい、万年初心者枠のおっさん、お前じゃあ、絶対に勝てないからやめときな」
「そーだ、そーだ」
「ギャハハハハ」
早速、罵声を浴びせてきた。
負けたくせに、偉そうにしている3人組を見て、滑稽だなと琥珀は内心思っていた。
無視をするが、3人組は執拗以上に絡んでくる。
そんな時、3人組のリーダーらしき大男が声を大にして言った。
「そう言えばよぉ、ダンジョンで人が死んでも、魔物と同じように一定時間たてば吸収されるってお前らしってるかぁー!!」
右手を中二病の奴みたいに顔に当て、リーダーはゲラゲラと笑っている。
それは、もう琥珀に向けての言葉なのだろう。
琥珀はそれをきくなり、溜息をつく。
リーダーの言葉に呆れた証拠だろう。
「流石、リーダー博識でありやすな」
「オイラのリーダーは世界一だべ」
リーダーが、リーダーなら取り巻きも取り巻きだ。
構っているのが馬鹿らしくなり、琥珀はボス部屋に入ろうと足を2・3歩進める。
ボス部屋には1チームしか入れないからだ。
因みに、最大人数は5人までである。
「おいおい、おっさんよぉ、何処に行こうとしてるんだ? 今から死ぬってのによぉ」
そう言って、ボス部屋に行こうとする、琥珀の肩を掴んだ。
琥珀は多少の苛立ちを覚えていた。
「おいおい、この手はなんだ?」
琥珀はレベル4の殺気を飛ばした。
恐らく、彼らはレベル3のはずだ。
レベルと言うのは1違うだけでも、かなり違ってくる。
そのため、レベルが4に達していた琥珀の殺気はかなり威力があったはずだ。
それに、プラスして、持っていたダガーナイフでリーダーの頬を掠めてやった。
それを見ていた、取り巻きどもは手のひら返しをしてきた。
「リーダー流石に殺しはやばいでやんすよ」
「だべだべ」
取り巻きどもに言われるリーダーは頬をかいていた。
顔からはかなりの焦りが見え隠れしている。
目はおろおろとしていて琥珀と目を合わせようとすらしない。
その時!! リーダーは完全にちびっていた。
アンモニア臭がダンジョン内に漂う。
だが、取り巻きどもは優しいのか気づいていないふりをしていた。
リーダーも自分で気づいているのだろうが、バレていないと思っているのかそんな素振りを一切見せていない。けれども、ズボンを伝い、ピチャピチャと地面に落ちる音は聞こえていた。
「お、おぉ、そうだな。流石に殺しはヤバイよな。覚えてろよ、おっさん」
漏らしながら言う事じゃねえだろ、と琥珀は思ったが、こちらも優しいので、まあ、気づいていないフリをしてやったのだ。
「はいはい、元気で生きろよ、お前ら、あー、あと、茶番劇は俺以外に絶対すんなよ」
「おぉ、茶番だって、知られてたか。こりゃ1本取られたなー、ハハハハハ」
最後の最後までちびったことを感じさせない、名演技だったが臭いは確かに充満していた。
3人組もこれにこりたら、もうこんなことはしないだろうと琥珀は思った。
帰っていくのをみたら門へと向き直す。
「じゃあ、さくっとボスを倒しに行きますかね、つーかやっぱ臭うな」
そう言いながら、琥珀は大門の取っ手に手を掛けた。