2階層に赴く
成長速度倍加を得た翌日、ダンジョン攻略を進めるため2階層を訪れた。
琥珀の現在のレベルは3。
ギリギリ2階層を相手にできるレベルだ。
因みにだが、30層以降を攻略するようなトップランカーのレベルが噂では50を超えているらしい。
やはり、トップと底辺では雲泥の差があるようだ。
詳しく説明すると、1階層は初心者枠と呼ばれていて、2〜10は新米枠、11〜20は中級者枠、それ以降は上級者枠で、あとはトップランカーが攻略するトップ枠で区別されている。
このように、冒険者という職業ができてからは、攻略がどの階層まで進んでいるかで冒険者の強さが表される仕組みが確立されてきた。
トップランカーを目指す琥珀にとっての次なる目標は新米枠に入り、そして中級者になることにほかならない。以前は夢物語だったが、自身のスキルの使い方が発覚して以降は、この夢も現実味を帯びてきたという物だ。
今日はそのための第1歩みたいなものである。
2階層の構造は1階層と同じ岩場が沢山ある地形だ。
琥珀は気分よく軽やかな足取りで二階層を探索する。
敵がいないか一度当たりを見渡して見る。
「確か、ここの魔物は・・・・・・」
琥珀がそう呟きながら考えていると二階層の魔物はひょっこりと姿を現した。
「ブギャー、ブギャギャー!!」
「コボルトだったな。」
コボルトは人間に姿を見られたことに敵意をむき出しにして威嚇の声をあげる
対する琥珀は2階層にくること自体初めてのはずだがその口調は冷静沈着なものであった。
やはり、その自身の裏付けとしては自身のスキルの影響が大きいのだろう。
つい、この間、手に入れた力。
いや、使い方を知った力は他のスキルに比べても圧倒的な力を誇っていると琥珀自身確信していた。
最強になれる可能性があると自分を信じ、コボルトに対してナイフを抜く。
敵であるコボルトの手には長槍が装備されている。
一瞬殺気を放ったかと思えば、コボルトは両手で槍を力強く握り突進するように、琥珀に対して刃先を向けてくる。
槍のおかげでリーチが長い分、ゴブリンよりも厄介な魔物として有名だ。
対して、琥珀の持つ武器は相変わらずリーチが短い事で有名なダガーナイフ。
その状況を見るに、明らかに琥珀の方が不利としか言いようがなかった。
小回りが利くため、使い慣れればかなり強者になれるだろうが、そこにたどり着くまではかなりの時間を費やすことになることは明白だ。
「あと、1歩踏み込めば、勝てるんだけどな、どうするべきか・・・・・・」
もう1歩で勝てそうだが、やはり槍が厄介そうだった。
踏み込もうとすれば、槍が目に向けてとんでくる。
琥珀が全力で避けようとすれば、避けようとした先に槍が飛んでくる。
「もしかして、コイツは……」
何かを閃いた琥珀は、一度岩陰に身を隠す。
そして、座り込みコボルトの様子を確認する。
コボルトはじぃーとこちらを見ている。
琥珀にとって居場所がバレているのは想定済みだ。
コボルトに動きがないか常時確認をしながら、琥珀は手を開き、地面の砂をひと握りする。
数秒、確認するがコボルトは変わらずこちらを見ている。
一瞬、目が乾燥したのかコボルトは瞬きをしてしまった。
よし!!今だ。
琥珀は、その好機を見逃さず、素早く岩陰を離れると、コボルトの目に目掛けて砂を投げかけた。
「ビンゴ!!」
琥珀は大きな声でガッツポーズをとる。
琥珀の予想通り、コボルトは目がいいだけだったようだ。
軽くコボルトの周りを回ってみるが全然こちらに気づく様子がない。
コボルトのボスは犬系の魔物のボスだけあって鼻も利くようだがコイツらは違うようだ。
琥珀は内心、自身の作戦が成功したことに喜んでいた。
そして、全生物の弱点である頭を刺す。
刺されたコボルトは一瞬にして絶命した。
「ブサイクな戦い方だが、正攻法で行くなんてバカすぎるからな」
琥珀は今の戦い方をブサイクと表現した。
確かに、トップランカーの人達は技も派手で戦い方も綺麗の一言。
傍からみたら、そりゃダサく映る。
だが、勝ったと言う結果はどちらの勝ち方でも同じだ。
使える物はどんどんと使っていく。
これが、南條琥珀の戦い方だ。
ここはゲームの世界じゃない。
現実だ。
命は大切にしていくというのが琥珀のモットーであった。
そんな考えを持った琥珀は戦闘を終え、コボルトの死体の近くまでいき心臓部分の魔石を回収するのだった。
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