パーティーメンバー募集②
昨日言われていた通り、琥珀は10時にギルドを訪れた。
残念ながら昨日の戦闘ではレベルが5には達しなかった。
琥珀が3階層に挑むのはもう少し先になりそうだ。
「琥珀さん、いらっしゃいませ、早速ですが、琥珀さんのパーティーメンバーになりたいと言う方がいらっしゃっていますよ」
受付嬢は俺が来たことを確認すると、近くまでよってきて報告をしてくれた。
その手には、塵取りと箒。
恐らく、掃除をしていたのだろう。
魔物を運んでくるギルドがこんなにも綺麗なのはこの人のおかげだと言える。
それはさておき、本当に琥珀のパーティーメンバーになりたいと言う人物がいるようだ。
琥珀自身、万年初心者枠と言われ罵られてきたやつのパーティーメンバーになりたい人なんかいるのかと疑っていた。
だが、事実来てくれたらしいのだ。
琥珀は声には出さなかったが、内心喜んでいた。
そう喜んでいると、受付嬢が紹介してくれる。
「こちらが、琥珀さんのパーティーメンバーになりたいと仰ってくれた方です」
そう、言われたのは女の人だった。
――――本当に!?……
こんな初心者枠を延々と彷徨っていたようなやつの所に女の子がくるとは想定外だった。
しかし、パーティーメンバーになりたいと言ってきたのは女の子。
髪色がオレンジよりの赤色で、キューティクルな髪を肩くらいまで伸ばした女の子だ。
女の子は緊張しているのか石のような硬い表情になっている。
だが、緊張しながらも自己紹介をしてくれた。
その様子はモジモジとした感じで小動物のように可愛いく見えた。
「あ──あの────私、甘崎水美って言いますッッ!!!!18歳です。え〜とッ、───みんなからも水美って呼ばれているのでそう呼んでくれたら......それから、それから好きな食べ物はチョコケーキですッ、あ、ハート型のケーキが好きです。よろしくお願いします」
なんだか凄い子が来たなと言うのが水美に対しての第一印象だった。
流石にテンパリ過ぎなのではないかと。
名前はクールそうな感じがするが実際はこういう性格だったため、名前と比べギャップを感じた。
でも、まあ、面白そうな子が来てくれたし嬉しい限りだ。
そんな琥珀の顔は若干ニマニマしていた。
それもそのはず、女子と話したのは数年ぶりだったからだ。
別にコミュ障ではない。
ただ単に話す機会がなかっただけである。
※ 真希と受付嬢はアラサーに近い年齢のため女子とは言えません。
琥珀の体が一瞬凍てつく感じがしたがまあ、気のせいだろう。多分。
琥珀も水美に対して挨拶を返す。
「こちらこそ、よろしくな。俺のことは一応知ってるんだよな? パーティーメンバーになりたいって来てくれたわけだし」
「あ、はい、勿論です。─────万年初心者枠の役立たずって巷では有名ですから」
琥珀の心臓をグサリと抉る。
恐らくこの子は天然なのだろう。
自分でも、あまり役に立っていないという自覚はあった。それに加えて、万年初心者枠というキーワード付き、琥珀には大ダージだった。
「まあ、間違ってはないけど、もう初心者枠を抜け出したからな」
琥珀は先程の天然な口攻撃から立ち直り、胸を張った。
「そうですね。これからは一緒に頑張っていきましょうね」
「あぁ」
数分前とは違って、テンパリもせずに話せるようになっていた。
仲良くなれたようで何よりである。
そして、昨日貰った承諾書に、南條琥珀、甘崎水美、と記入した。
これで、晴れて琥珀と水美はパーティメンバーになった。
そして、ダンジョンに向けて、出発するのだが、その時、琥珀は初めて気づく。
俺には誰にもいっていない秘密のスキル【融合】がある。
パーティーメンバーが欲しすぎて、うっかり忘れてたが、もしバレて言いふらされでもしたら大変なことになるんじゃないかと。
琥珀は水美が信用できるまで、どうやって隠そうか悩んでいた。
それと同時に、自分の考えの浅はかさに反省したのであった。
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