融合で生まれ変わる①
この世界に突如ダンジョンが出現し、人々の生活は一変した。
ダンジョンがこの地球に出現したのは今から丁度7年前。
俺が冒険者登録をしたのが丁度2年前。
ダンジョン出現当時17歳だった俺はもの凄く興奮したことを今でも鮮明に覚えている。
ファンタジーが目の前にある。
それだけで健全な男子なら興奮すること間違いないだろう。
しかし、その胸の高鳴りとは裏腹にダンジョン調査に行ったものは死んでしまっていた。
俺は目先のことばかりに目がいき、そういうことが起きうると全く考えていなかったのだ。そういうこともあって冒険者登録をするかどうか最近まで悩んでいた。
後々分かって来たことはダンジョンには化け物がいるということ。
政府はこの歪な化け物を【魔物】と命名した。
それから程なくして政府からダンジョン調査に行く部隊が結成されることとなる。
政府の調査結果によると魔物には現代の技術が通用しないということがわかった。有効打を与えられるのはダンジョン産のものだけ。
正に理外の存在である。
それともう1つ、人類にはレベルと言う産物が与えられていた。
稀にスキルと言うものを持っている者もいる。
スキルはスキルを持たないものにくらべ、数倍から数十倍数百倍の力を持つと言われている。
専門家達は科学で解明不可能という観点からこれは人間よりも上位の存在が何かしているのではないかと疑った。そのため、ダンジョンを早急に制覇したいとも言っていた。
今テレビに映っている専門家達も同じようなことを言っている。
「とは言っても俺には関係のないことか……なんせ万年初心者枠にいるくらいだし」
そう一言言うと寝転がっていたベッドから降りた。
リビングへと向かいコーヒーを淹れる。
琥珀の毎朝のルーティーンだ。
「【レベルオープン】」
もう1つのルーティーンとして毎日確認することがある。
勿論レベルの確認。
南條琥珀 24歳
レベル3
スキル【融合】
「変わりなし……か」
琥珀が冒険者になってから2年がたった現在。
普通ならレベルは10に達していてもおかしくないのだが、琥珀は明らかに他者より成長が遅かった。それはもう異常な程に。
そのため琥珀は何回も何回も、冒険者を辞めようと考えた。
しかし、どうしても昔から夢見ていた夢を手放すことが出来なかった。夢が現実になった世界でそれを手放すなんて琥珀にはできなかった。
絶対にしたくなかったのだ。
「なんでこんな役立たずのスキルしか俺にはないんだ……使い方がわからない役立たずスキルなんて、ないも同然じゃないか……」
悲観せずにはいられなかった。
勿論琥珀だって最初から悲観していたわけではない。
スキルがあると判明した時点では盛大に喜んだ。
それからスキルの検証を幾度となく繰り返した。
気づけば日が沈むくらいには没頭した。
しかしどれも全敗。
生物と生物を合体させてキメラを作ろうとしたり、武器と融合して武装しようとしたがどれも出来なかった。定番である魔石を手に取りレベルアップなんかもできなかったのだ。
結局未だに分からないままだ。
年月で言えば冒険者登録をしてからだから、もう2年だ。
「きっと何とかなるよな……多分」
あとは願うだけだ。
少しでも変わればと。
その後、朝食を摂ってダンジョンに向かった。
ダンジョンは日本中に無数にある。
どれもレベル的には同じらしい。
しかし、難関と言われるダンジョンは魔物自体の強さは変わらなくても厄介な特性持ちだったり、ダンジョン内が迷路みたいだったりとかなり大変な作りになっているようだ。
ダンジョンの文献によると全ダンジョンは100階層からなると記されている。
それに加えて、6階層以降はダンジョンの入口からテレポートもできるらしい。
琥珀にはあまり関係ないが、ネットの情報によるとトップランカーのチームは36階層を突破したみたいだ。
『トップランカー』とは、
ダンジョン攻略階層TOP5に入る人達のことである。
「はぁ……トップランカーか、俺も1回くらいなってみたいもんだ……」
琥珀は叶わなさそうな夢物語を呟きながら今日もダンジョンに向かうのだった。