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現在と過去

作者: 皐妃

 キーボード音が響く室内。あたりは誰もおらず自分一人。外は暗く、電気も自分の真上と出入り口近くについているのみ。何時間ここにいるんだと嫌気がさすほどにいる。仕事をするうえで来なければいけないので来ているというくらいだ。時計はカチコチと時を刻んでいるが実際何時かはわからない。自分の仕事は終わっていたが、頼まれごとのほうに時間をとられてこうなってしまった。断り切れない性格のせいだと割り切ってさっさと片付けて会社を出た。腕時計をちらりと見ると10時を指していた。定時は5時なので5時間残業したことになる。世の中はいかに残業を減らすかで議論されているが現場にいる身としてはなかなか難しい話である。あれ、今日は何曜日だったか。仕事をしているうちは何曜日に会議だの誰それさんがいらっしゃると曜日に敏感だが、仕事から離れるとよくわからなくなる。休めということか?まぁ、幸い明日は土曜日だしゆっくり休むか、と考えながら家路についた。

 家に着いて一通りのことをし終えて寝床に着く時に、布団を引っ張り出してきた。最近ぐっと冷えてきて特に朝晩なんかは寒いしな、と独り言を添えてみた。そんなこんなで寝床についてすぐに眠りにころっと落ちていった。

 寝始めからどれくらいたっただろうか、ぼんやりと懐かしい景色が浮かんできた。自然豊かな周りにぽつりぽつりと建つ一軒家の一つで誰かが必死に机に向かっている光景だった。だんだんとそこに近づいていくと中学生くらいの子がノートに何かを一生懸命書いては消し、書いては消しを繰り返していた。後ろからそっとのぞき込むとそれは自作の小説だった。そこで自分は今、過去の自分の世界にいるのだと気づいた。幽体離脱のように魂だけ過去に来ているのかもしれない。その頃の自分は確かに小説をノートに書いていた。挿絵も書いていたような気がするが、夢の中ではそこまで見られなかった。その光景がしばらく続いた後、時間は進み高校生になっていた。高校に入れば何か変わっただろうと思い見ていたら変わらず小説を書いていた。しかしそれはノートではなくパソコンに向かってキーボードを叩くことに変わっていた。誰に見せるわけでもない自己満足はいつしか現実逃避の手段として自分の支えになっていたらしい。小説なんてしばらく読んでもないしな・・・と物思いにふけるうちにふと目が覚めて夢は終わってしまった。時計は朝9時を指していた。休日といえども人間午前中には起きるもんだな、と思いしばらく布団にこもっていた。面白い夢を見たな・・・、と思い出すうちに終わる寸前、「いつか小説家になりたいな。」と過去の自分が呟いたのを思い出した。ただの夢で流せばそこまでだが、今の自分はどうにもそれが引っ掛かった。

 今からでも書けるのかな。パソコンを立ち上げて検索をかける。するとまさに待ってましたといった感じで一番最初にそのサイトは出てきた。興味が惹かれるままに登録をし、いくつか作品を読んで歩いた。読み終わった頃、創作意欲に火がつき思うままに小説を書いて投稿した。1日2日空いてから見に来るといくつか反応がありどれも良い反応がいただけた。「小説を書くのって楽しい。」過去の自分が夢を通じて気づかせてくれた。

 ありがとう、過去の自分。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 光景が浮かんでくるようでした。 [一言] 中学生の頃は塾の帰りに書店に寄ってはライトノベルを買って電車の中で読み、夏も冬もそれが楽しみでした。なろうではceezさんの「リアデイルの大地にて…
[良い点] 明晰な文章で、 過去の思い出の一コマが 語られていて、 爽やかな印象を受けました。 [一言] また僕の小説も感想くださいね。
2019/10/17 00:18 退会済み
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