え?招集ですか?? 2
船に乗り、つかの間の旅行を送る事ができました。
最近、私は仕事が忙しくて休む日がなかったので、この旅行は楽しいのですよ。
船での移動で1日でこんなにリラックスできたのも久しぶりです。
そして、今日ですが。
ド派手な外観と巨大なお城…アルデンス城。
生粋の魔族である私には派手過ぎて引くぐらいのお城です。
私は門番に手紙を手渡すと、門番は城内の来賓客専用の部屋に案内していただきました。
「ふひぃ~…何回も来てるけど慣れない部屋ね…」
「デスフェンス王女様!国王陛下がお呼びです、すぐにいらして下さいませ」
他国では、200年前から私の呼び名が"イザベラ女王"として定着してます。
"魔王"と呼ぶと印象が悪くなるからという理由だそうです。
「えぇ!?いきなりなの!?」
「えぇ、早急にと言われております」
「…分かりました」
侍女の人達に促されて謁見の間に連れていかれました。
何か急いでるみたいですね…。
目の前には、バートラム国王が王座に座っていました。
「あぁ…イザベラ女王、今日も美しいな」
「戯言はいいので、本題を」
バートラム国王は私に会う度に口説いてきます。
私は特に気にならないのですが、バートラム国王は本気で私に恋心を寄せているみたいです。
「実は…空白の地の事なのだが…」
「空白の地でございますか?」
空白の地…つまり、多くの人種が踏み入れたことがない未開の地です。
そんな所、天界ぐらいしかないと思うのですが。
「空白の地に冒険者を派遣したのだが…厄介な者が統治しているみたいなんだ」
「厄介な者?」
「空白の地を支配している"魔王"がいるそうだ…そのせいで冒険者は恐怖のあまり、逃げるように帰国したのだ」
は?今なんて言いました?
私がその空白の地を支配してる??いやいや…それは無理でしょ…。
国務だけでヒィヒィ言ってるのに、そのうえ空白の地を支配??無理でしょ!!
私はどんなスーパーマンなのよ…。
「私が?空白の地を支配する暇なんてないですよ?」
「ん?イザベラ女王は魔王ではないであろう」
話が食い違ってますね。
この国王、何を言ってるんでしょう?
私は魔王ですよ?女王ではないですよ!力を見せる機会がないだけで立派な魔王ですよ?
「あの…失礼ですが、デスフェンス魔州国の出自はご存知ですよね?」
「それは勿論知っているぞ、明晰な魔族が人間と和平を好み、建国された大国であろう?」
あれれ?私が魔王って事忘れてませんか!?
それに、過去の魔族と人間の激しい戦争の歴史が消えてますよ!?
…どうなってるんでしょうか??
「えぇっとぉ…」
「しかし…イザベラ女王は本当に美しい…是非ともアンデルス王国の王妃になって頂きたい物だ」
バートラム国王の頭はお花畑ですか?
魔王を口説いてるんですよあなた。
私は一体どうすればいいんだろう…。
素直に自分が魔王だと言い張る?
ううん、もし言ってもまた同じ事言われそうですし…どうしよう。
「あはは…バートラム国王はお世辞がお上手ですね、それで、その魔王をどうされるんですか?」
「あぁ、そうであったな…4ヵ国の勇者を召集し、あの地を支配している魔王を討伐する!我がアンデルス、デスフェンス、ニュートリヴィス、カーラウの勇者が力を合わせれば…魔王を倒すことは可能であろう」
えぇ!?私を倒す為にパーティー組むの!?
…国王から命令されて派遣した勇者パーティーに隣国の魔王を倒せ!って滅茶苦茶ですよ!?
訳が分からないわよ…どうしてこうなったの!?
「デスフェンスにも勇者がいるだろう?魔族界のアイドルと言われたあのヒーラーが!」
それ私や!!なんで知ってんねん恥ずかしい!
というかあれですか!?自分で自分を殺す為に空白の地まで行けって事ですか!?
勇者パーティーに私が参加して、そのパーティーに魔王がいたら大混乱ですよ!?
「えぇ…この件はデスフェンス内で話し合わせていただきたく存じます」
「なるべく急いでいただきたい」
謁見の間からお暇させていただき、来賓客室でゲートを使って、デスフェンス議事堂に転移しました。
すぐに事の経緯を話すと、メーティアさんは物凄く大きなため息をついた。
「えぇーっと…つまり、イザベラ様が魔王だということを、人間達は忘れ去られて今ではデスフェンス魔州国の女王陛下として扱われている…その上、その魔王を討伐するためにイザベラ様がパーティーに加われ…という事ですよね?」
きっとそういう事なのか…な?
とにかく、国王が指す魔王が私の場合ならそれはそれで大変なのだ。
「ど…どうしよう!?メーティアさん!!」
「落ち着いてください!」
メーティアさんに宥められ、大人しく口を閉じたけど…本当にどうしよう。
私が分裂すればいいじゃない!ってできるか!分裂できるんだったら既にやってるわ!
「とりあえず、国務は私とユニディアや四天王の力を借りてイザベラ様の穴は埋めますから」
「埋めますから…?」
その先の言葉を私は期待して聞く。
もしかしたら何かしらいい案がメーティアさんにあるのかもしれないと思って。
「イザベラ様はもう自分で撒いた種だと思って勇者御一行と隠居の地に行ってきてください」
隠居の地…?ナニソレ?
「あれ?もしかして…隠居の地をお忘れで?」
「…何だっけ?」
「全くあなたという人は!…とりあえず、このお土産を隠居の地に住む"魔王様"にお渡しください!」
隠居の地ってなに?と何度もメーティアさんに説明を求めても、行けば分かります。の一点張りで議事堂から荷物丸々持たされて外に放り出された。
扱い酷くない?私、この国のトップなのに…
っていうか、魔王様にお渡しくださいって…私が魔王でしょ!?矛盾してないかしら!?