魔王と二刀流
「坊主、金が無いんならツケにしといてやるよ」と。……え?
と戸惑っている間に、おやっさんは私の前にどんっと大量の食べ物を積み上げていたのである。
……まあ、そんな感じで。俺はあっという間に大食いチャンピオンになってしまったのだ。
ちなみにその時に食べたパンケーキが美味しくて、以来私の主食になっているのだが……それはまた別の話だ。
さて。話を戻そう。
とにかく、武器が欲しかった俺は手近にあった武器を手に取った。……そこで私は、とんでもない事実を知ることになる。
なんとその武器屋のおやじさんこそが――『あの』エディン・ディリエアスだったのだから!
(いやぁーびっくりしたよね〜)
だってあの美形だよ!?︎
魔族の世界に人間がいたなんて!しかもなんか偉そうな口調だし、公爵家ってなに!?︎ 貴族!?︎ 俺様系かと思ったら、ただの人見知り!?︎ あと顔怖いし目つき悪いけど!……あれ? もしかして俺様キャラじゃない方が素なのかな。
とにかく俺は冷静を装いつつ(装えてなかったかもしれないけど)エディンから剣を受け取った。そしてそれを振った瞬間、私は確信する。
これ絶対高い奴だ!!︎ ってね。
「おい、お前……」
「はい?」
「……なんでもない」
「…………」
うわ、お金ないことがばれた可能性がある。やばいぞこれ……。
だが幸いなことに、それ以上追及されることはなかった。
それからエディンは店の奥へと引っ込み、しばらくして一本の刀を持って戻ってきた。鞘から抜いてみると見事な刃文に惚れ惚れしてしまう。
これが日本刀というものらしい。
「この国の刀鍛冶の最高傑作と言われているものだ。
「ありがとう!でも欲しいのはもっと」「…………値段を見てみろ」
「へ?」
値段を見る? と首を傾げながら言われた通り値札を見ると……そこには目を疑うような数字が並んでいた。
目玉が飛び出るとはまさにこのことだろう。私はしばらく呆然としてしまった。
あぁ高いと聞いたら欲しくなってきた。しかし、細み過ぎるのが気になる。これは実戦向きではない気がする。
やっぱりもうちょっと太めの……そう、バスターソードとかあるかな? でもそれだと重いんだよなぁ。……どうしよう、本当に迷ってきた。
「……ふむ」
顎に手を当てて悩んでいると、これならどうだ。と古びた木箱を差し出された。中を開くとそこにあったのは二振りの木刀である。
「こっちは古いものだがそれなりに手入れされている物で、そっちは最近打ったものらしい。試してみるか?」
「え? 」
やったぜ!
少し試しただけでわかる。こっちの方が使いやすい。それに軽そうだ。
「じゃあこれにします!」
「まいどあり」
代金を支払い、ほくほく顔で店を後にする。まさかこんなところで掘り出し物が見つかるなんて思ってもいなかった。 しかも二本ともすごく軽い。
しかし、宿舎に戻った俺にまさかの悲報が届く。「申し訳ありません、ライナス様のご友人を名乗る方々が訪ねていらっしゃいましたが、お約束はございますでしょうか?」
「あ! 」……やられた! そういえば昨日そんなことを言っていた気がする。 完全に忘れていた。