魔王とおでかけ
昨日の激闘から早くも新しい朝が来たようだ。俺は自身な身に起こったことを理解できてはいなかったが、もはや流れに乗るしかない!と覚悟だけは決めた。
それにしても昨日のカオの柔らかいあのピンクのものと言ったら素晴らしかった。征服感といえばいいのだろうか、産な反応はもよかった。
つい出来心とはいえ、命を救った相手を拒否するのは難しいことだ。今日の昼にも来るように伝えておいた。
ただ、朝はやることがある。そう目的はただ一つ。昨日のうちに買いそびれてしまった武器や防具などの装備を買い揃えるためだ。
早速街にあるデパートを訪れたが、様々な種類の武具が置かれていた。が、どれも一級品と呼べるほどの代物ばかりであり、俺のような小学生の体格でも手が届くような代物ではなかったのだ。
そこで俺は一端諦めて他の店を見て回ることに決めた。しかし、いざ外へ出てみたはいいものの、どこへ行けばよいのか分からないため途方に暮れている状況である。
「……まいったな、デパートはでかいからすぐわかったが、安い店は中々この路地ではわからない。こんなことなら誰かについてきて貰えば良かった」
いくら後悔したところで今更遅いため仕方がないのだが、それでもつい口から愚痴が出てしまう。そんなことを考えながら歩いていると、ふとある店が目に留まった。その店の外観は少し古びた感じではあったが、ガラス越しに見える店内の様子からしてどうも良さそうな店に見えた。
しかも運の良いことに客足は少ないようで、これならばすぐに買い物が済みそうだ。そう考えた俺はすぐさまその店に入ることにした。
中へ入るとそこはまるで物語に出てくる酒場を彷彿させる造りになっており、カウンターの奥では筋骨隆々の魔族達がジョッキ片手に談笑している姿が目に映る。そして、その光景を見た瞬間、一瞬にしてここが何なのか理解した。
(なるほど……ここは魔族のギルドってところか)
俺自身、図書館の本でそういった類の存在は知っていたし、実際にこの世界に来てからも何度か見かけたことはある。だが、まさか自分が当事者になるとは夢にも思っていなかった。
とはいえ、だからといって特に何かが変わるわけでもない。むしろ今の自分にとっては好都合と言えよう。何故なら、ここに来るまでにあった店ではほとんど相手にされなかったからだ。
早速カウンターへと向かい声をかける。
すると、
「おいおい、小学生がこんなとこにきちゃダメじゃないか」と、いきなり出鼻を挫かれてしまった。
よく見るとそこにはスキンヘッドの大男が立っており、明らかに一般人ではない雰囲気を出している。おそらく彼がこの店のマスターなのだろう。
しかし、ここで引き下がるわけにはいかないため再度話し掛ける。すると、今度は思いの外あっさりと話しを聞くことができた。なんでもこの店は初心者冒険者を支援するために作られたギルドらしく、そのため駆け出しの魔族達が持ち込む素材を使った装備品などを売買しているらしい。
それを聞いた俺は思わずガッツポーズを取りそうになる。これでカオを守ることが出来る…!俺はすでに彼女の虜になっていたようだ。
早速欲しいものを伝えようとするが、当然のことながら自分の力で買えるものは限られている。なので、出来るだけ安いもので済ませようとしたのだが、ここでもまた問題が発生した。なんと、俺の予算ではまともなものを買うことが出来ないというのだ。
これは困ったことになったぞ……。そう考え込んでいると、 突然背後から肩に手を乗せられた。何事かと思い振り返ると、そこにいたのは先程の大男だった。
あまりの形相に身構えるが、次の言葉で警戒を解くことになる。
なぜなら彼はこう言ったのだ。
「坊主、金が無いんならツケにしといてやるよ」と。……え?