魔王と学校
突然学校の廊下へワープさせられた俺の前には一人の男が立っていた。年齢は50代くらいだろうか。落ち着いた表情の威厳ある顔つきだ。
「やや、おいでなさいましてありがたく。 ワタクシは校長のコチョーと言います。 貴方様の話は昔からよく聞き及んでおり、ぜひ会いとうございました。 今回は記憶を失い魔力制御に難ありと伺っております。 そこで我々は最高の指導者、クラスメイトのいる一年F組を用意しました。 転校生と言う扱いになりますが、何、皆良い子です。 すぐに慣れることでしょう。」
ちょいちょい、あんまり深く考えてなかったけど、小学生一年生からやり直すの?もしかして18年ってそういうこと?え?やなんだけど。
「我に一年から学べと?」
「はい、魔力制御の基礎は一年からになっています。 また、ここでは貴方様は魔王ではなく、小学生です。 我なんて一人称は控えるように。 それにしても君の本性を知っているのは私だけだ。 言葉遣いには気をつけよう。」
「はい」
俺は突然注意させらてしまいびっくりしてしまった。え?だってさっきまで貴方様って…。いやいや、調子乗るな俺。俺は暗黒騎士さぴーずであって魔王ではない。魔王ともてはやされてた事なんて忘れるんだ!
「では、教室へ。」
そう言うと校長は扉を開けて俺に、いけっ、という仕草をしてみせた。まじか、心の準備が。
俺は意を決して教室の中へ入った。そこには一人の成人男性と、20名程の生徒が座っていた。皆こちらを期待の目で見つめながら静なに俺の一挙手一投足を観察しているようだ。そして男性が近づいてきた。
「さあ、みなさんお待ちかねの転校生です! 名前をどうぞ!」
「あ、えっと、その、サササポージュです」
おーっと、盛大に噛んでしまった。サササ・ポージュみたいな名前になってしまった。
「では、サササ君へみんなから拍手を!」
パチパチ〜と皆から拍手されるのはなんともいい気分だ。失敗なんて忘れてしまうようだ。ってか名前サササになってない?大丈夫?
「じゃ、席はまだないから先生が座っていた場所にしばらく座ってももらいますね。」
そう言うと教室の一番前の左側にある先生用の机を案内されてしまった。何これ恥ずかしい。
ワープしたのが昼前だったので自己紹介するや否や給食の時間になった。俺は教師の席に小さくなって座っていたところ、一際大きな子供がやってきた。
「俺はジャミラ。 このグラスのボスは俺だ。 サササも俺の部下になりたいよな?」
子供ながらさすがは魔族。すでに支配根性があるのか。だがしかし、こんな事に屈する俺ではない。
「なめるなよ。 俺の子分にしてやってもいいんだぞ?」
「なめてんじゃねーぞ!」
そう言っていきなり拳に込めた魔力パンチを喰らってしまった。なんだこの威力は…と吹っ飛んで意識を数秒失った後にみんなに囲まれながら俺は思った。
「ちょっと、ジャミラ! あんたやり過ぎよ!」
そうよ、そうよ、と援軍で他の女の子達が後押しする。
「だって、だって、こんなに弱いと思わなくて、俺…う、うぅ」
ジャミラはその巨体に似合わず泣き虫のようだった。ひと目も憚らずに泣きわめき始めたのた。