魔王とアカデミー
早速その日のうちにアカデミーへの転校準備は着々と進められていた。ただ、着替え以外のものは現物支給とのことでほぼ手ぶら状態だ。イヤン
「アカデミーでは基礎中の基礎を親切丁寧に安く教えてくれますのじゃ。 だが、どのくらいの時間がかかるかわかりませぬからのぅ、最長で18年くらいは出てくることが出来ないことを肝に銘じておいてくだされ」
「18年?! え? 長くない?」
「我々魔族の寿命からすれば取るに足りませんぞ。 まるで人間のような反応をされますな。 うーん?」
そういうとシツジージは目を閉じ、何やら呪文を唱え始めたようだ。辺りの空気が張り付くような、そんなヤバそうな力が来る…!
シャッ ドン!
俺は高速で見を投げ出し、シツジージの攻撃を避けた。しかし、ベットがあることを失念していたせいで、高速でベットの上へ飛び乗った人みたいになってしまった。
「気が散りますのでご静粛に願いたい」
「す、すまない」
しばらくするとシツシージがこちらに来なさい、というポーズをしたので俺は食べていたおやつを切り上げて近づいた。
その瞬間、シツジージ溜めていた力が一気に俺の体を駆け巡った…!
「かはっ、なんだと言うのだ… シツジージ貴様まさか!」
「お気づきの通りなのですじゃ」
まさか俺を油断させて攻撃を仕掛けてくるなんて…俺は自分の甘さとびっくりしたドキドキでフルフルと震え始めてしまった。
と、そうこうしているうちになんだか煙に包まれたみたいになってしまったのだ。モヤモヤしたこの白い煙はなんなのだ…まさか、爆発…!
俺は瞬時に見を投げ出し、颯爽と転がった。そしてまたベッドの上に上手く着地をした。
「さっきから何をしていますのじゃ。 これで魔王様は誰から見ても違う魔族にしか見えませんのじゃ。 ホレ」
シツジージに渡された手鏡を覗いてびっくり仰天だ。
「え、小さく…なった?!」
いや、その割には自分で見える身体の大きさに変化はなさそうだ。しかし、鏡の中の俺はどう見ても小学生だ。
「そして追加じゃ」
そう言うとシツジージは首からぶら下げた謎の首輪を外し、何やらボソボソと呪文を唱え始めたのだ。
「おいおい、今度はなんだよ! やめろ、やめろーーーー!」
そう叫んだ俺を無視してシツジージは何やら怪しげな呪文を唱えた首輪を俺に無理やり掛けてきたのだ。そしてかけ終わると同時に首輪は光り始めて辺りを閃光で包んだ。
「目が、目がー!!」
俺は必死に手を伸ばしながら見えなくなった目を抑えながら必死で周りを警戒した。そして直ぐにシツジージ何してますのじゃ、、と言って小突かれてしまった。
おなかを抱えながら周りの景色を見てみると普通に何でも見える景色が広がってきた。俺はさも何もなかったかのように振る舞い、そして気がついた。
「俺の魔力がないっ?!」
そう、俺は魔力を封印されてしまったようだ。
「なぜ、なぜこんなことを!」
俺は泣きそうな声でシツジージを問い詰める。
「小学生に混じって勉強するのに魔王様の魔力は危険じゃろうと。 封印はしましたが漏れ出した魔力は使えるはずなのじゃ。」
確かに少しだけ魔力を出すことが出来た、が、かなり些細なものだ。暗黒騎士時代からの1/10にも満たないこの魔力…不安でしかない。
「確かにそうだが、少しだけ封印させすぎではないか?」
たぶん今のままだと炎は出せず、火花程度しか出ない気がする。
「魔力制御ができてない証拠ですぞ。 それに小学生相手なら十分だと思いますのじゃ」
「まあ、そうか、そんなものか。」
「では、早速ですがワープさせますのじゃ。 お元気に。」
そういうと辺りは青色の渦が体の周りを回転し、俺はその中央で何もできずにいた。そして気がつくと学校の廊下のような場所にいた。