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噂の魔王

 ここはコーンクリート城。そう、魔王の住処だ。しかし俺がなぜこんなところいるのかは見当もつかなかった。非常に遺憾だけど、頭の整理が出来ていないので仕方がなくいろいろな話を聞いてみた。


 話をしてくれたのは前魔王から仕えているシツジージだった。彼は魔王へ対する忠誠心の塊のような男だった。見た目は腰の曲がった老人であったが、魔族の歴史、状況などしっかりと把握している。


 しかしそれは俺が知っている話とはまるで違う物語だった。


 「なるほど、魔王様は復活の際に前世と言えばよいのか、以前の記憶が思い出せないと?」


 「そういうことになるな。 何も覚えていないようだ。」


 「では現在の魔族界の情勢について伝えておきましょうか。」


 近年魔族界では3つの勢力に別れているという。穏健派と魔王復権派、そして俺のいる過激派だ。そもそも魔族にとって人間というのは悪そのものと捉えられているようで、絶対的な悪に対してどうやって世界を変えていくか?これが彼らの行動原理だという。


 「つまり、人間側が悪いというのが根幹にあるんだな。 一体過去になにがあったんだ?」


 「その質問はいささかおかしいですね。 魔族達はそれぞれに理由があるのです。 魔族界まとめてどうのこうの言うのはまるで人間のような考え方ですな。」


 「ま、まあ、まあそうだな。 ところで俺は本当に魔王なのか?」


 「どう見ても魔王様ですな。 そしてあの時感じた魔力は100%確信がありますのじゃ。」


 うーん、俺はやっぱり魔王らしい。長い間封印されていて記憶が混乱しているだけだろうと彼は言っていたが、間違いなく俺はサポタだ。魔王と云われる筋合いはない。でも強いなら少し嬉しいかも。


 それにしても信じられない。魔族に転生したことすら今思えば意味不明だし、なにより魔王ってなんだよ。ってか魔王って実は結構いんじゃね?そうだ、それに違いない。


 「魔王って何人くらいいるの? やっぱり結構いるものだったりするの?」


 「何を仰っているんですか? ひとりに決まってますよ。 魔族は階級制です。 十人の魔族王の頂点があなた、魔王なのです。 世界を支配することも可能な、その魔力や天と地を同時に引き裂くお力を持つものがそういてたまりますか。」


 「え? 魔族王なんて聞いたことないんだが。」


 「はっ? あなたホントに魔王ですか?」


 これはまずい、疑いの目で見られてしまっているようだ。ここでバレたらどんな拷問を受けるかわからない。適当にごまかさないと。


 「ところで、勇者達はどういう状況なんだ? 勇者パーティはこの城を目指していたりするものなのか?」


 「いえ、まだ動きはなさそうですな。 それよりも、さすがに力の制御が出来てないようですが?」


 まずい、疑われてる気がするぞ。なんとしても切り抜けないと…


 「何を言っている。 先程の力をお主もみたであろう。」


 「確かにあれは魔王様の力でした。 ただし、ただ力任せに放ったようにしか見えませんが。 目覚めたばかりとはいえ、少し体たらくが過ぎるのではないですかな」


 「何を言っているのだ。 ほら見てみよ。」


 そう言って俺はよく魔族が使う魔族オーラを全身に纏ってみた。暗黒魔術でも同様に身体能力を高める事が出来るあれだ。全身に薄い魔力を帯びることで手足はもちろん、すべての血液に魔力を巡らす事で実現可能な基礎中の基礎だ。


 「あれ?」


 俺は全身に均等に魔力を巡られせたはずだったが、明らかにまばらになっている。力の入れやすい拳は大きな魔力を帯び、心臓やクビなど弱いところは何も魔力を帯びていない。


 「んんんん? はて、これはどういうことですかな。 」


 シツジージが執拗な言い方をしてほれみろ、と言った顔でこちらをみてきている。


 「確かに言うとおりだな。」


 俺は流石に隠しきれないと思って認めることにした。だって流石に基礎が出来てないのはやばい。


 「困りましたな。 さてどうしたものかと。」


 シツジージはんー、と小さな声で唸りながら考えを巡らせているようだ。俺は誤爆しないように何も喋らないようにした。


 「そうですな。 アカデミーに通ってもらいましょう」


 「え? アカデミーって? 学校?」


 「そうですよ。 善は急げですじゃ」


 そういうとシツジージは魔法陣を宙に描き始めた。キレイに描かれてた魔法陣から突如半身の魔族が出現した。少し透けて見えていた。


 「もしもし、魔族協会会長のコチョーです」


 「突然すまんのじゃ、楽にしてくれていいぞよ」


 「ありがとうございます、本日はどのような用事でしょうか? シツジージ様がお電話されるなんて余程の緊急事態でしょうか?」


 シツジージからしたら若い男は立派なツノを撫でながら真面目そうな顔でこちらを見つめている。


 「実はじゃ。 魔王様が復活したのじゃ」


 「なななんですと! それてはめでたい!」


 「ただ、残念な事に記憶障害を起こし、魔力制御はもちろん特性すら発動しない状態になってしまっているのじゃ。」


 「た、たしかに、魔王様が復活していれば、皆に祝福が来るはずですよね」 


 「え? 祝福ってなんだ?」


 俺はとっさに話に割り込んで質問をした。が、シッシッという仕草でシツジージに追い払われてしまった。


 「そういうことじゃ。 1から学ばせて上げてほしい。 もちろん姿変装の術式は掛けておくので他の生徒と同じように扱ってもらって構わんのじゃ」


 「そういうことでしたら、お手伝いさせていただきます!」


 本人確認がないまま身売りが成立してしまったようだ。俺は一体どこに行かされるんだ。環境変化によるストレスを一身に受けながら俺は絶望の淵にいた。

 

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