ゲームでは明かされない裏話と残る謎
アストロジア王国へ帰る道中、魔術師二人からジャータカ王国で起きていたことの裏話を聞いた。
私達が地下に居た間、アストロジアの魔術師達が北の魔術師と暗殺者を拘束して、あの場にいたアストロジア王族の指揮通りに“処理”をしたのだとか。これでしばらく王宮には北の魔術師や暗殺者は居なくなる。
でも、王宮以外も北の組織に侵食されているから、また別の組織がジャータカ王にすり寄ってくる可能性が高いそう。
ドゥードゥも暗殺組織は数が多くて潰してもキリがないって言ってたっけ。黒幕は手駒に困らないということか。
「ジャータカ王が来賓を危機に晒した件で、両国の王族達がどう決着をつけるのかは分かりませんが。おそらくジャータカ側はしらばっくれて責任を北の者に押し付けるでしょうね」
流石にそれは無理があると思うけど、あのジャータカ王に真っ当な対応は期待できない。うやむやにしようとするのは想像がついた。
アストロジアの王族には強気の対応をして欲しいけど、食糧事情が絡んでいると難しいのかもしれない。
「ナクシャ王子は今後どうなるんでしょうか?」
その疑問に、ナクシャ王子本人からは答えてもらえなかった。
私の問いに魔術師二人は口ごもる。
「……それは」
「貴方の心配しているとおりでしょうね……。本来であればナクシャ王子は次代の王として育てられるはずなのですが。彼にその手の教育が行われていない辺り、現王は代替わりについて考えていません。北の魔術師達を囲い行っていた実験は、不老不死を夢見たものでした。本人が永久に王であるつもりなら、後継ぎの立場は邪魔なのでしょう」
「不老不死が可能なら、とっくに北の国とアストロジアで実行された上で情報隠匿に走ってんですがね。あの王様はそこまで頭が回っていないようです」
人類の命題、不老不死。
ファンタジー世界ならそれは叶いそうなものだけど。始祖王アストロジアと北の妖精達に寿命があるなら、普通の人間には無理なのだろう。
「今のジャータカ王国は、アストロジアの始祖から呪いを受けているという事実を認めていません。俺とジイさんはあの王子に同情して、真っ当な情報と本来のあの国の歴史について説明しましたが、本人がそれをどこまで事実として受け入れたかは分かりませんね」
ナクシャ王子は、初めて私と会った時からずっと、どの情報が正しくてどれが嘘なのかと悩み続けたのかもしれない。それで、情報を求めて私に会おうとしていた?
「あの王子に関しては、王宮に残ると本人が決めた以上、我々ではどうにもできません。彼はアストロジアの王族が信用できないのでしょう。我々については信用に足る者と判断して聞く耳を持ってくれましたが」
「両国の王子同士に確執がなければ、彼は貴方の提案を飲んだかもしれませんが。彼にも自尊心はありますからな。捕虜という名目の保護、あるいはその逆を受け入れるのは難しいのでしょう」
ナクシャ王子とアーノルド王子の仲の悪さは、初めて二人が出会った幼少期からのことなので、根本的に相性が悪いのだろう。
そういうキャラ設定が組まれているから、と言ってしまえばそれまでだけど。
「今回の件で、北からの連中はかなり昔からジャータカ王国を根城にして都合よく利用してきたのが判明したんで、帰ったら過去の事件を洗い出す必要がありますね。原因がアイツらだったかもしれない件がいくつかあるんで」
「アストロジアの王族も、北の国との関係性がこのままではいかんと気付いたでしょうから、今まで頓挫していた交渉に再挑戦することになるでしょうな」
そんな話を聞いて、疑問に思っていたことを質問した。
「北の王国とアストロジア王国の交流が上手くいかないのは、ジャータカ王国にいる者が邪魔をしているからなんでしょうか?」
「それもあるのでしょうが。一度、交渉に失敗しているのです。過去に、イシャエヴァの国からの使者を我が国で死なせてしまったので。あれ以後、どうやり取りしようともうまくいきません」
「……だ、大事件じゃないですか……」
何故そんなことに。
「やー、ジイさん、思えばあれもおかしな事件でしたねえ? 使者が死んだ原因であろう容疑者の言い分も要領を得なかった」
カレッツァさんから話を振られ、おじいさんは顎を撫でながら頷く。
「あの王族が言うには、なすべきことを済ませた結果、とのことでしたが。調べても使者の死んだ理由が分からんのです。どうも他殺ではないかという疑惑が出て、使者と最後に会ったあの王族が怪しいということしか分からないまま」
「それ以上語らない挙げ句、本人の立場も元々王族内でそう強くないもんで、どっかに幽閉されてるんでしたっけ? 確か、ソリュ・ロロノミアといいましたか、あの容疑者」
カレッツァさんの言葉に、思わず息を呑んだ。
ソリュ・ロロノミアが、北の国から来た使者を死なせた?
つかみどころのない人ではあったけど、国家間交流で不利な結果を出すほどの頭の悪さや破滅願望があるようには見えなかったのに。
事件の詳細が分からないまま、あの人の命は第一王子に渡されてしまうのか……。
私がそんな心配をしていると、魔術師二人は話題を変えた。
「そういえば、国に帰ったら、あの保護したお嬢様たちを連れて俺らの仕える王族へ状況を説明しないといかんのですが。気が重いですね」
「元妖精の国の貴族がおりますでなあ……」
イシャエヴァの国は、昔は人間じゃなく妖精による統治で、国名も違ったらしい。
できればその話は詳しく聞いてみたいけど、捕まっていた本人は酷く落ち込んでいるので聞ける状態ではない。
「それだけじゃないでしょう、ジイさん。アンタが言ってた北のおとぎ話。あの場には銀の姫役が居なかったが、あれはうちのお姫様が候補としてこれから狙われた可能性があるでしょうが。それ、ご主人に説明できます? 俺は無理なんで、ジイさんに任せますよ」
「おお、そうでしたな……その可能性があったか。退治できたから良いものの……」
銀の姫。
その言葉が相応しいのは、シャニア・シルヴァスタだろうか。
ゲームの進行ルート次第では、あの子の姿は一度も見ずに終わる。あれは主人公がアーノルド王子に近づかないから、出会う機会が無かったのだと思っていた。
もしかしたら、違ったんだろうか。
主人公が王族とは関わらずに行動した裏で、何か起きていたんだろうか。
フェンのルートでも、シャニアの姿はあった。王族三人は幼馴染みの関係にあるから。
でも。
ディーのルートでアーノルド王子と一騎打ちする羽目になったとき、アーノルド王子の側には誰も居なかった。シャニアだけでなく、フェンとイデオンでさえ。
あれは、アーノルド王子が暴走して、見境なく周りの人間に手にかけたからだと思っていた。
だけど、もし。シャニアが誘拐され居なくなっていたのだとしたら。フェンとイデオンがその事件の解決に追われるうちに、アーノルド王子の精神状態が狂ってしまった、かもしれない?
……こんなことは、全部想像でしかない。
事件が別の事件と繋がっている可能性なんて。
妄想でしかない。考え過ぎだ。
ただ、私がガーティやドゥードゥと一緒に行動したことで、不幸に遭う人は減っている。
その行動を手助けしてくれた人達に、どうお礼をしようか。
そのまま魔術師の二人と一緒に全員で王都まで向かう。
面倒な説明ごとは、あらかじめおじいさんが使い魔を飛ばして伝達してくれていたので、私達はお屋敷で丁重なおもてなしを受けるだけになってしまった。
保護した人達のこれからについては、王族同士で話し合って決めるそう。結果が出るのは二日後だとか。
私も事件の証言をしないといけないと思っていたのに。これではただ意味なく押しかけただけじゃない……。
お屋敷の人には悪いことをした。ここで休息をもらうだけなのは気がひける。
ガーティには休んでもらおうと思ったけど、彼女も大人しくしているのは落ち着かないという。
久々に形見の剣を背負って、ガーティとドゥードゥを連れ魔術師二人が待機する部屋へ向かう。
「おやイライザさん。どうかしましたか?」
「ただ待っているだけなのも何ですから、お二人とお話でも、と思いまして」
私の言葉に、おじいさんは申し訳なさそうに言う。
「すみません、実は我々は先程から他の魔術師達と会議中でして。お暇でしたら外へ行かれてはどうでしょう。近隣には公園もありますし。夕刻までにお戻りいただければ問題ありません」
そういうことなら仕方がない。よく見ると、カレッツァさんは卓上の魔法陣に頭を打ち付けるようにしてブツブツ何かをつぶやいていた。
「……保存溶液の解析なんぞ、シェルメントどもに丸投げしてくれよ……何で俺が……」
ぐったりして見えるけど大丈夫だろうか。
私達がここにいても出来ることがないというのは理解したので、お勧めされた通り公園にでも行こう。せっかく王都まで来たのだし。
整備が行き届いた歩道を行く。黄土色の歩道には見覚えのある八芒星の紋様が白い石で描かれている。この地域はシルヴァスタ家の管理下のようだ。
ということは、あの魔術師二人の主人はシャニアの父親かもしれない。もしそうなら、女の子をおとぎ話の姫に見立てて誘拐していた変態の話を知れば怒るだろう。自分の娘まで狙われていたかもしれないなんて。
そんな気分の悪くなる事件なんて嘘だったかのように、ここは落ち着きのある静かな所だ。
遠くに青い空と山岳を背にした王城が見えるので、城下町もここから近いはず。帰る前に市場調査にでも行こう。今まで好き勝手に出歩き過ぎたから、グレアム家に役立つ情報も持って帰らないと。
歩きながら、ドゥードゥが言う。
「ここは、どこの国の町よりも嫌なモンが少ないですね」
「嫌なもの?」
「兄貴が言いたいのは、この地域は加護の効果で邪気がないってことです、お嬢様」
「首都ともなれば人が多すぎてゴチャゴチャしがちなモンですが。ここは、わざとらしいまでに綺麗だ。俺みたいな人間には居心地が悪いです。いや、良いことだとは思ってますよ」
「他の国の人にとっては不自然なのね」
「魔術の素質が無ければ加護も邪気も区別がつきませんから、同じっちゃ同じですが」
確かに私には何も感じとれない。
ジャータカ王宮とここを比較してわかることは、あっちよりもここは空気が綺麗ということぐらい。掃除もこちらの方が念入りに行われて見える。
……ジャータカ王国も、始祖王の呪いが解けてしまえば、この地域みたいに綺麗になるんだろうか。異形に襲われる心配も野盗が出る心配もない、安全な場所に。
そう考えたところで、公園からの喧騒が届く。
まだ昼前だけど公園に集う人達は多いようで、そのうちの一部で誰かが口論を繰り広げていた。
「訂正を要求します」
声を荒らげてこそいないけどキッパリとした口調でそう告げた相手と、要求を突きつけられている側。
見習い騎士の少年と魔術師の老人のやりとりに、野次馬が集まっている。
私としても、その二人が一体何のやり取りをしているのかは気になった。
イデオン・ミュングは、公共の場で人に詰め寄ったり無理な要求を突きつける人間ではない。
なら、あのおじいさんは、何を糾弾されているのか。
「始祖返りの王子に、始祖王の役割を望むことの何がいけない?」
老魔術師のその言葉は、ゲーム中でも聞いたものだ。
アーノルド王子が嫌う台詞。疎む役割。
ああいった言葉を無遠慮に吐く人間のせいで、アーノルド王子はこの国を見限ってしまうのに。
イデオンが怒るのは当然だった。彼は王族の護衛として幼い頃からアーノルド王子やフェンの側に居るから、あの二人の悩みを察している。
「次代の王は、第一王子です。その決まりは覆りません。魔術師が導きの王を否定するのですか」
「導きの王に始祖王ほどの力はない。魔術による統治を是とするならば、より力ある者を王とすべきだ」
この国はこの国で、王族事情が複雑だ。
野次馬のみなさんには慣れたやり取りなのか、誰も止めに入らないし野次もない。
どちらかの意見に賛同しているわけでもなさそうだ。季節の風物詩かのように眺めてる。
無責任に第一王子と第二王子の対立を煽る人間は、珍しくないのだろう。
私としてはイデオンに加担してあげたいけど、おじいさんの言葉を否定してもおじいさんがヒートアップするだけだろうし。
場を収めるうまい言葉はないだろうか。ああ、そうだ。
「真面目な騎士様をからかうなんて、良い趣味とは言えませんわ、魔術師様」
敢えて空気を読まずにそう言って、笑顔で二人の間に割って入る。
「な、何だお前は?」
たじろいだ魔術師に構わず話を続ける。
「王都の魔術師の皆さまは今、会議で忙しいと伺ったのですけど、貴方も参加しなくてよろしいのですか?」
もしかしたら、イデオンと一緒に公園の警備を任されている人かもしれないけど。
私の言葉と野次馬の視線に耐えかねたのか、おじいさんはプルプルと震えた。
「会議……! そうだ、こんなところにいる場合ではない! 儂の意見は重要なのだ!」
それだけ言うと、おじいさんは黒いローブをはためかせて去っていく。
一連の流れを見届けた野次馬が、どっと笑う。
見世物じゃないぞ! と言いたいのを我慢して、イデオンを振り返る。
「差し出がましいことをしてごめんなさい。でも、あのままではずっと会話は平行線でしたから」
帰ってしまったということは、あのおじいさんは警備のために公園にいたわけではない。
魔術師会議について知らなかったようだから、王族仕えの魔術師ではないみたいだけど、退く口実にしてくれて助かった。
イデオンは私の登場に驚いたようで、しばらく無言だった。
野次馬が散って行くのを確認して、ようやく口を開く。
「……こちらこそ、情けないところをお見せしました……」
彼がしゅんとしたところで、誰かの声が届く。
「互いに譲り合えないなら、やり取りを続けるのは不毛だ。話を遮ったイライザ嬢の行動は無難だろう」
ガーティが私を引いて下がらせ、ドゥードゥが目の前に立つ。
何事かと思ったところで、声の主が姿を現す。
「おや、護衛は心配性だね。私は丸腰だというのに」
白地に金の紋様が入ったローブを纏う、栗色の髪をした細身の王族。
で、出た……ソリュ・ロロノミア……!
幽閉されているんじゃなかったのか。
相変わらず男なのか女なのか分からない。きっと本人にそこは重要じゃないんだろう。他人から何者と思われようと、決めつけられようと。この人には影響しない。
「ソリュ様! 勝手な行動は慎んでくださいとあれほど!」
「そう思うのなら君が魔術でうまく拘束したまえ。あの程度、私には通用しないとも。加減などしないことだよ。情を捨てた方が君の仕事は減って楽になるさ」
イデオンの叫びとソリュの淡々とした反論で、何となく察した。
ソリュが脱走してしまい、イデオンが捕まえに来たのだろう。
そしてこの公園で、イデオンは捨て置けない意見を耳にしてしまった。
「君のその真面目さと慈悲の心は、うちの次期当主殿と第二王子には必要なのだろうが。いささか心配になるよ」
振り回した側の言い草ではないだろうに。
「ソリュ様……」
流石にイデオンも恨みがましく名を呼んだ。
「……分かった、大人しく戻るとも。しかし、あの議論に関して言わせてもらうとね。
一つの時代に導きの王と始祖返りの王子が揃うのは稀なこと。これはどちらかを立てるのではなく、両方を頂くのがより良い選択ではないかな?」
「ソリュ様は常に破天荒なことを仰いますね」
「私には権限が何もないのだから、好き放題に言わせてもらうとも。町の者達と同じさ」
「……またそのようなことを」
「だからね。無責任な者と真面目に向き合うことは、君にとって毒にしかならないよ」
ソリュがイデオンの行く末を心配してわざと試すような行動に出ているのか、それともこれが素の振る舞いなのかは分からない。ただ、イデオンは真面目な顔でソリュ・ロロノミアに言われた言葉を考えている。
イデオンは、ゲーム中では妙に達観した聖人じみていた。自分のことは語らず主人公の話を聞き、相手の悩みを解決する側だった。そんな騎士になる過程の彼は、まだ不安定のようだ。
悩むイデオンを置いて、ソリュは私たちに向かって言う。
「それではグレアム家のみなさん、私達はこれにて失礼させてもらうよ。余計なものを見せてしまって申し訳なかった」
「……あの」
この人が、本当に他国の使者を死なせるような迂闊なことをするのだろうか。
「どうかしたのかな?」
「貴方から伝え聞いたこと、無事にあの国の者へと届けることができました。ありがとうございます」
私の言葉に、ソリュは無邪気な子供のように微笑んだ。
「そうなのかい? それは良かった。君の行為が、どこかでうまく実を結ぶと願おうか」
「……はい」
笑顔で祝福じみたことを言われては、貴方は本当に人を死なせたのですかと問うことはできなかった。
二人が去っていくのを見届け、私達もお屋敷へ戻ることにした。
お屋敷に戻った後も。期日が来て、保護された人たちのこれからの生活が無事に決まった後も。私が王立学院に通うまでの間に行うべきことは何か、ずっと考えていた。
一つ、ナクシャ王子があの国で真っ当な生活を送れているのかの調査。
二つ、アーノルド王子を悩ませる無責任な噂を減らすこと。
三つ、国境沿いの情報を入手して、北の国から不審なモノがやって来ないかの監視。
……私では対処しきれるかどうか怪しい。
でも、味方は増えた。
おとぎ話の姫に見立てられていた人達は、王族の使用人として生活するか、魔術師の施設で暮らすことが決まり、いつか再会できたときには私や双子にも恩を返すと言ってくれた。
魔術師の二人も、それ相応の対価と引き換えに依頼を受けてくれると言う。
「王族仕えの魔術師でも、手順を踏めば主人以外からの依頼は受けております。魔術結社・ねじれ壺の裏。あるいは、魔術研究機関・秘めの庭。この国の魔術師はその二つのどちらかに属しておりますから。そこを通せば、貴方の協力者は見つかるでしょう。魔術結社であれば、どの町にも支部があります」
「クラインメビウスやシェルメントを名乗らない魔術師は詐欺師だと思っていいですよ。この国で大人しく生活することを決めた北の魔術師はどうだか分かりませんが、身元の保証がないことに変わりないです」
二人は魔術結社に所属しているらしい。
この国の魔術師事情を知ったドゥードゥは、
「国家規模で魔術師たちの統制が取れてんのはいいですねえ」
なんてぼやいた。
ドゥードゥとガーティは少しなら魔術が扱えるのに、この国で魔術師の肩書きを名乗ると胡散臭く思われてしまうようだ。
「何なら兄貴もこの国の魔術師に弟子入りしてみる?」
「この国の魔術師は俺みたいな不真面目なのは追い出すんじゃないか?」
二人のそんな会話を聞きながら、お土産を探しに行く。
挨拶周りも済んで、情報も得られるだけ得て、後は無事に帰るだけ。
仇討ちも終わったし、しばらくグレアム家は平和になる。
私も学院に通うまでは、お嬢様らしく振る舞って生活をしよう。
こっそり鍛えるのはやめないけど。
次にナクシャ王子に会ったとき、彼がまだ不遇な生活を強いられているのであれば。今度は本当に私が連れて帰るのだ。




