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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
99/111

26話ー1

「ふぁ~」

「旦那様、いくら何でも気を緩めすぎですよ?」

「仕方ねぇだろ、暇なんだから。ふぁ~あ…………カルマもそう思うだろ?」

「ですが、エルス様からここの護りを仰せつかった以上、警戒はしていませんと」

「お堅いねぇ。まあ、そういうのはお前さんに任せるよ。それより織姫、茶と菓子をくれ」

「もう、旦那様ったら」


 そう言いつつもオレ様の嫁である織姫は準備を始めた。


 肘を立て頭を支えて横になっている、額から立派で鋭いツノ2本を生やし、長身の体格の本来の姿になり、品位ある着物を少し着崩したオレ様。


 その傍らで、収納機能がある指輪からお茶と菓子の準備をしている、長髪の黒髪に額から立派で鋭いツノを1本生やし、カイトの嫁達とも遜色ない程の美人で、それに伴った品位ある着物をビシッと着ている織姫。


 オレ様から少し離れて周辺の警戒をしながら身を丸めている、二重人格者の嬢ちゃんの使い魔の美しいタテガミと真っ白な身体をして、その背中に翼を生やした、体長3mの馬のカルマ──のオレ様達が居るのは、やしろの前。


 オレ様の召喚主であるカイトの嫁の中で、1番敵にしたくない相手、聖王国の裏の王と呼んで差し支えないエルスティーナ・グラン・ド・グラキアスこと、エルス嬢ちゃんのめいで、ここの護りをしている。


 だけど正直、人の枠を遥かに超えてるっつっても、正真正銘の神の力を持つカイト達(アイツら)が直々に戦うと、殆ど真面な戦いにもならない。瞬殺するレベルだからだ。


 強大すぎる力を持つが故に、手加減をして戦ってはいるみたいだが、それでも殆どが苦戦をする事なく楽勝。正直、アイツらが苦戦させられる相手何かいねんじゃねぇのか?


 オレ様の中でヤベぇのは、エルス嬢ちゃんとエルス嬢ちゃんに似通った性格のリーナ嬢ちゃんのこの二人だ。


 帝国で奴隷制度導入をする為、人身売買を行った者の裏を探る為に、必要ないんじゃないかと思われるリーナ嬢ちゃんの護衛で、あの拷問部屋に連れていかれ、リーナ嬢ちゃんが嬉々としてどこぞの人間を拷問していたのは、流石に引いた。


 だけどそんなリーナ嬢ちゃんを上回るほど、別の意味でエルス嬢ちゃんは更にヤベぇと感じた。


 この大陸とはかなり離れている所にオレ様の国はある。


 オレ様の国では武力が優れている者が優遇される。その中でも他を圧倒する程の技量の持ち主が王として君臨する。


 それが勿論オレ様だ。


 オレ様は並み居る強豪共を、オレ様の愛刀である大太刀【轟焔ごうえん】で薙ぎ倒し、鬼人族の頂点になり王になった。


 まあ、王になったからと言っても、今までと変わらずだった。ただ、力を持て余している荒くれ共の相手をする位だ。なんてったって、武が優遇される国であったからだ。


 その中でオレ様がついつい見惚れてしまう程に、華麗で流麗な戦い方をしていたのが、オレ様の嫁の織姫だ。


 オレ様が、強力な力でカイトに召喚されてこの大陸に来て暫くして、オレ様が素直に従っても良いと言える位、純粋な性格をしているカルト嬢ちゃんに召喚されて来たのが織姫だ。勿論、美味いメシを作れるノエル嬢ちゃんも素直に従っても良いという人間だ。


 織姫は元々メシは美味かったのだが、ノエル嬢ちゃんに師事して更に美味くなった。その為か、織姫はノエル嬢ちゃんの事をお師匠様と呼んでいる。


 と、脱線しちまったな。


 まぁ、オレ様の国が武が優遇される為、結構荒れていた。


 オレ様は王にはなったが、統治するのは面倒だったから。


 その事を織姫が世間話の感覚でノエル嬢ちゃんに話して、それがエルス嬢ちゃんの耳に入ってしまった。


 それがいけなかった。


 エルス嬢ちゃんは何故かやる気満々になってしまい、オレ様達の国に逆召喚で呼ぶ羽目になってしまった。


 そこでエルス嬢ちゃんは、オレ様に鍛えられた弟子と言う事にして、オレ様のメンツを守りつつ、武力が優遇される事を逆手に取り、オレ様と織姫以外の、武に自信がある者達を叩きのめして、力を示した。


 瞬く間に力を示したエルス嬢ちゃんは、国の者達に役割を与え、オレ様の国は途轍もなく住み易いモノになった。


 何故、こんな事をしたのかを聞いたらオレ様の国が、エルス嬢ちゃん達の元いた世界の国の、一昔前に雰囲気が似ているから、懐かしさを求めてやったそうだ。


 国の立て直しの時になって初めて異変に気付いた。その時には国のヤツらはエルス嬢ちゃんの事を姐御あねご呼びとなっていた事だ。


 国のほぼすべてのヤツらは、農業などの分からない所と、武に関する事もエルス嬢ちゃんに助言を求めていたのだ。


 エルス嬢ちゃんも元いた世界の国の雰囲気を早く求めていた事もあり、嬉々として先導していった。


 国がエルス嬢ちゃんの求めていた雰囲気のモノになった頃には、オレ様は威厳と名ばかりの存在で、国のヤツらが認めている実質の支配者はエルス嬢ちゃんになっていた。


 それでもエルス嬢ちゃんはオレ様を取り立ててくれた。


 国の立て直しもそうだが、武に秀でていたヤツらはエルス嬢ちゃんの助言を得て、実力を格段に高める事にもなっていた。


 オレ様もこっちの大陸でカイトやカイトの弟子のジアン、ジアンの使い魔のバロン達と鍛練をして実力を高めてはいるがな。


「はい、旦那様、お茶です」


 茶の支度を終えた織姫が湯呑みを差し出してきて、横になっていたオレ様は躰を起こし、胡座あぐらを組み座り直した。


「あんがとよ」


 オレ様は湯呑みを受け取り、茶をすすった。やはり、茶は美味い。茶の中でも緑茶がオレ様のお気に入りだ。織姫のヤツ、ますます美味しく煎れられる様になったな。そして菓子も美味い。


「カルマ様、どうなされました?」


 織姫が、不意にカルマが身を起こして立ち上がったのを見ていた。


「悪しき魔力を感じます」


 カルマがその力を感じる方角を見ていた。


 さほど距離がないと見て、織姫も立ち上がり、指輪から愛刀である薙刀【咲花さくら】を取り出す。その刀身は淡いサクラ色をしている。


「どれ」


 オレ様も続いて立ち上がる。オレ様も織姫とペアとなる同じデザインの指輪から、全長3mもある、柄から鞘まで紅白く、シンプルな装飾を施している大太刀【轟焔】を取り出す。


「来ます」


 カルマのその声で、その方角から黒いコートを着て、フードで顔を隠している人物が3人現れた。


「貴方達、ここに何の様があるのですか?」


 織姫が問うも、黒ずくめ共は誰も答えない。


「オレ様の嫁の質問を無視するんじゃねぇよ」


 オレ様が少し威圧すると、黒ずくめ共は少しばかり後退する。


 それでも黒ずくめ共は何も答えない。


「まあ、答えないって言うなら、痛めつけてから問い出させればいいか。ちょうど、3人も居るし、間違って2人位やり過ぎても大丈夫だろ」


 更にオレ様が威圧しても、後退する事はしなかった。


 代わりに黒ずくめ共は黒い魔力を吹き出しながら、何かし始める準備をする。


 その様子を見てカルマは口から聖属性のブレスを吐き出す。


 カルマのブレスを、黒ずくめの1人が闇の障壁で防ぐ。


 ほぉ~。アイツのブレスは結構強力なんだがな。それを防げるとは中々やるな。


 続いて攻撃したのは黒ずくめ共の方で、闇の障壁が解けた瞬間、他の2人から炎の槍の【フレイムランス】と岩の槍の【ロックランス】を合わせて百近く放って来る。


 カルマはその様子を見て直ぐに、やしろがある後ろに後退して、やしろを護る様に風の結界を展開する。


 オレ様は【轟焔】を抜刀し、燃えるほど鮮やかな紅い刀身をしている【轟焔】で、アイツらの攻撃を叩っ切り、織姫は薙刀を旋回させて防御した。


 叩っ切って分かったが、アイツらの魔法攻撃は結構魔力を込めて放って来ていた。


 そんじょそこらの魔法使いの障壁なら易々と貫通はしている程、アイツらの攻撃力は高かった。


 それでもオレ様の【轟焔】で軽々と叩っ切れるけどな。


 アイツらの攻撃は勿論、やしろにも及んだ。だが、カルマが張った風の結界は破られる事はなく、アイツらの攻撃を防いでいた。


 叩っ切ったり、織姫の薙刀での旋回防御で【フレイムランス】と【ロックランス】は周囲に飛び散り、周囲に被害をもたらす。その被害は森が燃え出す程に拡がる。


 だが次の瞬間、途轍もない聖なる魔力がオレ様の躰を駆け巡る。それはオレ様だけじゃなく、周辺にも影響を与えていたのだ。


 つい先程まで森が燃え出していたのに、その炎は消え去っていたのだ。こんな現象を起こすのはカイト達(アイツら)しか居ねぇ。途轍もなく聖なる魔力を感じたからおそらくは、神力を使っての大規模結界を張ったに違いない。


 それにオレ様達の眼前に居る、3人の黒ずくめ共は先程の威勢が嘘のように、苦しみ出しているからだ。


 正直、手応えのありそうな獲物を横取りされて、気分は滅入ってしまった。


 オレ様と織姫はアイツらの魔法攻撃を防ぎ終わり、オレ様が早々に決着を決めようとアイツらに近づく。

 未だに神力での結界の影響を受けて苦しいはずなのに、オレ様が近寄っているのを理解すると、抵抗するつもりの様で躰を起こす。


「おいおい、もう大人しくした方が良いんじゃねぇのか?」


 一応声を掛けてみた。オレ様としてはまだまだ抵抗してくれた方が有り難いからだ。


「紅鬼様、その状態の者達が何をするか分かりません! 早々に動きを封じて下さい!」


 カルマがゆっくりと近寄っているオレ様を急かす様に声を掛けてくる。


 ちっ。しゃあねぇか。遊びが過ぎると痛い目をみるってのは、オレ様の国でしょっちゅうあった事だしな。


 オレ様は【轟焔】の射程内まで近寄り、アイツらを纏めて斬るつもりで、横薙ぎ一閃する。


 だが、アイツらの2人が1人を守る様に、2人が自身を盾にして、1人を後方に突き飛ばし、盾になった2人は【轟焔】の餌食になった。


 【轟焔】の餌食になり、躰が上下に切断された2人の遺体が地面に落ちるが、寸前で後方に突き飛ばされた1人が2人の遺体を闇で吸収し、続けて地面に手を付ける。


 そして魔法陣が展開する。


「ッ!? マズイ!」


 オレ様の気付きとカルマが叫ぶが同時に重なる。


 オレ様は気付きはしたが一瞬反応が遅れて、最後の1人を【轟焔】で斬りつける。だが、手応えはなかった。


 【轟焔】で斬りつけた瞬間、最後の1人の躰が闇になり、闇は二つに別れたのだが、そのまま魔法陣に吸収させてしまう。


 オレ様はその場から後退して、織姫の隣に立つ。


「旦那様、遊びが過ぎましたね?」


 織姫は的確に的を射てくる。


「すまねぇ。せっかくこの躰で戦えると思ったら、横やりを入れられたから、ついな」

「済んでしまった事は仕方ありません。後は何を呼んだのか、ですね」

「ああ」


 織姫の言葉通りだ。アイツらは自分達を生け贄にしてまで召喚魔法を行った。ただ魔力を糧にした召喚魔法なら、あのまま地面に【轟焔】を突き刺して、地面を抉れる衝撃波を加えて魔法陣を消せるのだが、生け贄を媒体にした召喚魔法はそうはいかない。


 生け贄を媒体にした召喚魔法陣は、消すことは叶わず確実に召喚したモノを喚ぶ。消そうと下手に衝撃を与えると、喚ばなくてもいい存在を喚んでしまう特性もあり、結構面倒な魔法だ。


「紅鬼様。私はやしろの護りに専念します。ですので、あまりサポートは出来ません」


 カルマがオレ様達の傍に近寄って来た。


「ああ、構わねえよ。自分のケツは自分で拭くからよ。カルマは護りに専念していてくれ」

「分かりました。ですがその前に、魔法耐性強化の魔法は掛けていきます」

「あんがとよ」


 オレ様達鬼人族は魔法を基本使わない為、魔法耐性がそれ程高くない。その事を知っている為、カルマはオレ様と織姫に魔法耐性強化の魔法を掛けて、やしろの前に下がって行った。


 そうこうしている内に、魔法陣はより一層輝きを増す。そろそろ出てくる合図。さぁて、一体なにが出て来るのやら。



 そして魔法陣から出て来たのは───体長6mは優にある二足歩行をするドス黒いドラゴンであった。しかも、1頭だけじゃなく、3頭。


「おいおい……………こりゃ食い応えありすぎるだろ!」

「───旦那様!」


 織姫が声を掛けてくる頃には、オレ様は先制攻撃と言わんばかりに、ドラゴンに目掛けて斬りつけに迫っていた。


 だが、先頭で出て来たドラゴンはオレ様に気付き、口から炎のブレスを吐き出す。


 オレ様はドラゴンブレスを叩っ切る事もせず、そのままドラゴンブレスを浴びる。


「旦那様!!」


 織姫の声がより一層大きくなる。


 だけどそんな心配は無用である。カルマが掛けてくれた魔法耐性強化のお陰で、ドラゴンブレスによる攻撃は殆ど防ぐ事が出来ていたからだ。


 オレ様は、ドラゴンブレスを吐き出し続けている先頭のドラゴンの傍まで近付き、【轟焔】でブレスを吐き続けるドラゴンを縦一閃に斬った。


 先頭のドラゴンの躰は真っ二つに左右に別れ、二つの躰は音を立てて横たわる。


 オレ様は続けて2頭目、3頭目も続けて殺そうと追撃をする。


 だが、2頭目も3頭目も状況を察して、腕を犠牲にして致命傷を避けたり、一歩大きく退いてオレ様の【轟焔】の攻撃を防ぐ。


 織姫は【咲花さくら】に魔力を乗せて、斬撃や鞭の様にして遠距離攻撃をしてサポートをしてくれていた。


 織姫の的確なサポートはドラゴンの反撃を許さなかった。


 オレ様はドラゴンを確実に仕留めるまで、攻撃の手を休めなかった。


 そして瞬く間に3頭目も仕留めた。 


「旦那様、ドラゴンが!」


 と思ったら織姫が驚愕の声を上げる。


「…………おいおい、マジかよ…………!」


 オレ様の目に入ったのは、1頭目が起き上がる瞬間であった。しかも、1頭目は縦一閃に斬っていて、左右に別れた状態だったのが、その左右がそれぞれが無数の泡状を吹き出し新たな躰を形成していたのだ。


 つまり、1頭目のドラゴンが2頭に増えた事になる。


 そうすると、2頭目と3頭目も同じ現象を起こし始まると思い、そちらを見たら案の定、それぞれ切断した躰の断面に無数の小さな泡状が発生していた。


 これがカイト達が言っていた、魔神信仰教団に操られた魔物の驚愕の再生能力か。


 ──────これは食い応えありすぎるだろ!

お読みいただきありがとう御座います。

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