21話
『捜せ! この辺りに居るはずだ!』
『『『『『おう!!』』』』』
これは…………? 鍬や鉈を持った大人達………?
『…………お母さん…………』
『しっ! 決して物音を出してはダメよ』
………そして…………何処かに身を潜めている親子…………?
『居たぞ! こんな所に隠れていやがって!』
鍬を持った大人の呼び声で残りの人達が集まっていた。
先程見た母親が子供を背に隠していた。
『何で、私達を殺そうとするのです!』
『そんなの決まっているだろう! お前らが人族じゃないからだ!』
『違います! 私達は人間です!』
そう叫ぶ母親は震えていた。それもそうだろう。鍬や鉈を構えた相手と対峙しているのだから。
『いいや違うね! お前達は人間じゃないのさ!』
『私達は人間です!』
『まだ人間と言い張るか! 頭にツノや尻尾を生やした者が人間な訳ないだろ!』
そう言うけれど、母親にその様な形は見受けられない。
『人間です! 私達も貴方達同様に生きているんです!』
『……………それならそれで構わないさ! けどな、お前達はオレ達とは違うのは事実なんだよ!』
1人の大人が鍬を振り上げ始め、母親は瞬時に子供に振り返り強く抱き締めていた。
次の瞬間に母親の背に鍬が振り落とされる。
『ぐぅっ!』
母親は大きな悲鳴を挙げることなく声を殺す。
他の大人達はそれに続けと、鍬や鉈を母親の背に振りかざす。
『ごめんね…………ごめんね…………ごめん…………ね………………』
母親は悲鳴を挙げず、子供だけに聞こえる声で必死に謝っていた。
『……………お母…………さん…………?』
子供は母親の言葉に応えようとしたが、母親はただひたすらに謝っている。
そして母親から謝罪の言葉もなくなった。どうやら息絶えたようだ。
『どうやら死んだようだな』
大人の1人がそう言いつつ、母親を退かせる。
『さて、今度はお前だよ、悪魔』
『………………だれ……………が……………?』
子供は、泣いて涙を流していた虚ろな瞳を、大人に向けていた。
『お前の事だよ。その証拠にそのツノや尻尾が生えてるだろ』
『……………だからって………………何で………………殺されなきゃ……………いけないの…………? ボク達は……………静かに暮らしてたのに………………』
『お前みたいな外見が違う奴は、大きくなったら何するか分かったものじゃないからな。だから、今の内に殺しておくんだよ。だから、お前の母親は死んだんだよ。お前の所為でな。バカだよな。お前を差し出せば、死なずにすんだのに。まあ、お前を差し出しても、お前みたいな奴を産んだんだ、その後の人生はオレ達に犯される日々だったけどな』
大人達はゲラゲラと高笑いをしていた。
『……………そんな理由で……………お母さんを………?』
『そんな理由だろうと、理由は理由だ。それに母親だけじゃなくお前も死ぬんだ。まったく感謝して欲しいぜ。直ぐに親の後を追わせてやるんだからな。まあ、あの世でなら家族3人仲良く暮らせるだろうぜ』
そして大人の1人が鉈を振りかざす。
『────達こそ』
『あ?』
『お前達こそ、悪魔じゃないかーーーー!』
子供の叫び声と共に、子供を中心にかなりの大爆発が巻き起こった。
※※※
「───カイくん………?」
ノエルの呼びかけに目を覚ます。
「どうしたの? 何か悲しい夢でも観たの?」
「……………なんで?」
「だって涙を流しているから…………」
そう指摘を受け、自身の目元に指を充てて、そこで始めて涙を流している事を確認する。
「……………分かんない。悲しい夢を観たんだろうけど、思い出せない…………」
「そっか。仕方ないよ、夢って覚えている事の方が少ないから」
確かにそうだけど、とても大事なモノを観たはずなんだ…………。
「それはそうと此処は?」
「お父さんお母さんが住んでいる家だって」
「そうか…………」
ノエルが言ったお父さんお母さんは勿論、俺の父さん母さんの事。
父さん母さんはノエル(雫)の事を実の娘の様にしていたし、将来的にもずっと居る事になるのだからと、父さん母さんがそう呼ばせていた。
で、俺はその住まいのベッドで横たわって、傍らにはノエルが椅子に座っている。
部屋の内装はシンプルで自然のままと言った、樹が主体の内装。壁の一部は樹の幹があてがわれている。と言うより、そのまんま樹から家を造った感じだ。
「俺はなんでベッドに?」
「カイくんが倒れたから。何が起こったか覚えてない?」
「…………………確か、フォルティスから禍々しい魔力を取り出し、浄化をしていたはず……………?」
「そうだよ。それでカイくんは浄化をし終わった途端、倒れたんだよ」
「そうか……………それで、どの位眠っていたんだ?」
「三日だよ。今はお昼頃だね」
そんなにか。思った以上に負担となっていたのか。
「それで、何か進展は?」
「……………特に何もないかな。重要な話はカイくんと交えてって事になっているから。私達はその間、この国の案内をしてもらった位かな」
「それで、他のメンバーは今何をしているんだ?」
「あ~。今はルティスちゃんにアレコレ教えてる、かな?」
「…………なんだ、そのアレコレって?」
ノエルは目線を泳がせていた。ノエルが隠し事をしている時の仕草だ。
「後々分かるから、今は内緒って事で」
「…………まあ、いいさ。それより腹が減ったよ」
「あっ、そうだったね。カイくんの神格化は副作用が出るんだもんね! それじゃあ私、何か作ってくるね!」
「えっ、あっ、おい、ノエル!?」
止める声も聞かずにノエルは走り出していった。
別に料理のストックがあるから、作らなくても良かったんだけどな。でもどうやらノエルが慌てる位だから、また良からぬ事をしているのだろうな。
俺は異空間収納から適当に料理を取り出し、食事をし始めた。
そしてあらかた食べ終わる頃、バタバタとした音が部屋の外から聞こえ始まり
「カイトォ! 無事けぇ!」
フォルティスが勢い良く部屋に入って来た。ただ、おかしな格好をしていた。黒紫色のセクシー過ぎる下着姿だけの格好で部屋に入って来たのだ。
「ちょっとルティス様!」「ルティスお姉ちゃん!」
続けてティアとカルトちゃんが入って来たのだが、そんな2人も下着姿で来ていたのだ。ティアは可愛らしいデザインの白色で、カルトちゃんはフリルをあしらったピンク色。
「カイトォ、体調はどうだぁ! 大丈夫なのけ!」
「あぁ、大丈夫だから落ち着いてくれ、フォルティス」
「よかっただぁ! ダンナさんに何かあったらいけねぇから、心配しただよぉ!」
早速ダンナ呼びか…………。
「心配してくれてありがとうよ。それで、フォルティスは体調はどうなんだ?」
「この通りバッチリだぁ!」
フォルティスはその場で跳ねたり、廻ったりして元気をアピールしていた。その行動で、立派な双房も跳ね回っているけど…………。
「それに、気分も晴れやかになっただぁ!」
あの魔力は憎悪の塊だから、取り込んだ者の憎悪を増幅させる事も出来るんだろうな。
「そうか。それでフォルティス達はどうして下着姿なんだ?」
「リーナァが着けろって」
どう言う事と思い、頬を赤く染めているティアに説明を求めた。
「ルティス様が下着を満足に着けていないって分かって、それで下着の付け方を教えていたんです」
「リーナァがどうしても付けろって言うから仕方なぐ着けてるだぁ。でもこれ、窮屈過ぎで苦しいだぁ」
「ルティスお姉ちゃんのお胸、大きいからね」
確かにな。こうしてみるとノエルと同じ位かな?
「なら、尚更着けないといけないんじゃないか?」
「? どうしてだぁ?」
えっ? それを俺が言うのかよ?
ここは流石に男の俺が言うのは引けるから、ティアに任せるために視線を送った。すると、ティアは頷いて返事をしてくる。
ただひとつ、口元が怪しげな笑みになっていた。
「あっ! ちょっ、待てティ──」
「それはね、この形が整った立派な胸を旦那様が蹂躙する前に、形を維持しておくためよ」
「ちょっ、わははっ! 何するだぁ! くすぐったいべぇ、ティアァ! ははははは!」
エルス同様のエロさをしてくるティナが、フォルティスの胸を後ろから回り込んで揉んでいた。どうやらティナは目覚めていたようだ。
「ルティスお姉ちゃん、違うの。今、ルティスお姉ちゃんの胸を揉んでいるのは、ティナお姉ちゃんって言うの」
「ははははは! な、何がどうなってるだぁ! ちょっ、ホントにくすぐってぇべぇ! やめてけろぉ!」
ティナはフォルティスの胸を揉む手を休めることなく、かなり楽しんでいる。
「もう。ティナお姉ちゃん、やめてあげて」
「はーい」
カルトちゃんが言うとティナは素直に、フォルティスの胸を揉む手を離した。
「はぁはぁ…………はぁはぁ…………ひ、酷い目に遭っただぁ」
「ふむ。旦那様。かなり揉み応えのある弾力をしているわよ」
ティナは手をわしゃわしゃと、揉む仕草だけをして報告をしてくる。
「はいはいそうですか」
「あら、つれないわね旦那様。───あっ! そう言うことか」
ティナは、警戒態勢のフォルティスに「大丈夫大丈夫、もうしないから」と言いつつ、フォルティスは恐る恐るティナの言葉に耳を傾け、耳打ちをされていた。
「───なるほどぉ、わかっただぁ。ワダス、そう言うことならぁ、大丈夫だぁ」
何が分かったのやら?
そう思っていると、フォルティスはベッドの上に居る俺の傍にやって来て腰掛ける。そして、上半身を俺に向けて、両腕を使い胸を強調して見せてくる。
「ダンナさん。どうかワダスのおっぱい、触ってけろぉ」
ストレートにそんな事を言ってきた。
それとなく視線をティナに向けると、声を殺して笑っている。
ティナには後でお仕置きでもする事に。
「ほれほれ、遠慮しねぇで良いだぁ」
「……………そうだな。だが、その前に聞いておきたい事があるんだが?」
「なんだべ?」
フォルティスは胸の強調を止める事をしないで、聞き返してくる。
「どうしてそんな事をして来るんだ? それを聞いてからじゃないと、触らないぞ?」
「そんなの簡単だぁ。ダンナさんが愛称でぇ呼んでくれねぇのはぁ、ヨメになるワダスのおっぱいを揉まないからと、言われたからだぁ」
ティナの方を見ると、明後日の方を向いて誤魔化していた。困った奴だな。
「分かったよルティス」
「おっ。おっぱいを揉んでねぇのに呼んでくれただぁ」
たったそれだけの事でルティスは喜んでいた。単純過ぎる。
しかも喜びのあまりその場で跳ねたりするものだから、豊満な胸が揺れる揺れる。
「で、揉まねぇのけ?」
「……………その時が来たらな」
その後は、下着姿のまま居座るルティス達と談笑して、その日は終わった。
そして──
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