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家族で異世界転生~そして、少年は~  作者: 長谷川
第3章 動き出す者達、そして~
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15話

「ドコの誰かは知らぬガ、アリガたい」


 黒い霧状でユラユラと漂うサタンは、漆黒者に近寄り漂っている。


「………………」


 だが、漆黒者は返事をする訳でも無く、ただただ虚ろな瞳で俺を視てくるだけ。


「……………アンタ、何者だ?」


 殆どのステータスを視ることの出来るまでに成長した鑑定スキルでさえ、漆黒者の事が読めないのだ。


「………………」


 それでも返事が無かった。


「ザンネンであったナ、神カイトよ。私はシツレイさせてモラウヨ」

「まて! サタ──」


 逃げようとした瞬間、霧状のサタンは斬られ()()()()()


 それをやったのは、漆黒の鎌を携えた漆黒者。


 霧状のサタンを斬っただけで無く、その鎌に取り込んだ───と言うより吸収したのだ。


 それで納得がいった。


 【聖光化】で光の粒子となっていた身体で斬られた後に、脱力感を感じたから。


 あの鎌で俺の魔力を吸い取ったということを。


「なあ、アンタは誰なんだ? 黒い霧状になっていたサタンを斬ったって事は、アイツの味方とかでは無いのは確かだけど?」

「…………………」


 返事は無いが、また俺を虚ろな瞳で視てきて、鎌を構えてくる。


 俺は喋りながらも左腕を完治させ、異空間収納から抜刀状態の【晦冥かいめい】を取り出し構えた。


 俺との距離があった漆黒者は、恐るべき速さで距離を詰めてきて、鎌を振るってきた。


 その鎌を【晦冥】で受け止める。


──ズキッ!──


 いきなり頭に痛みが走った。


 な、なんだ!? さっきまで何ともなかったのに!?


 咄嗟に【晦冥】で鎌を押しのけ距離をとった。そうすると痛みが消えた。


 だが、漆黒者は続けて鎌を振り落とす素振りを見せながら、距離を詰めてきて、それをまた【晦冥】で受け止めた。


──ズキッ!──


 またしても頭に痛みが走った。


 一体何なんだ!? コイツとこうしていると頭痛がする。


「なあ、アンタ。本当に何者なんだ!」

「………………」


 それでも返事も無く、無表情。


 その代わり、鎌による連撃を繰り出してきて、それを捌いた。


 そのたびに頭に痛みが走る。躱すことには何ともなく、鎌を受け止める行為だけ痛みを感じた。


 【聖光化】の時に斬られた時の脱力感は感じないものの、奴の攻撃はどこかおかしかった。


「アンタが何者かは知らないが、行動不能にしてから正体を暴くよ」


 奴との対峙で痛みが走り、万全な状態で無いと危険が伴う【雷装化】や【雷光化】【聖光化】は使えない。それにその他の纏装も同様。なら一つしかない。


 俺の魔力の中にある神の力を解き放った。


 神の力を解き放った俺は再度、鑑定スキルで漆黒者を視てみた。


「っ!?」


名前 ミリテリア ??? 女 Lv ???

種族 神族

職業 不明

称号 魔神の傀儡


体力   ?????

魔力   ?????


筋力   ?????

守備力  ?????

魔法力  ?????

魔法耐性 ?????

知力   ?????

素早さ  ?????

運    ?????


スキル 不明


 まさか、こんな所に魔神に関わりがある奴が来るなんてな。


 それに神族か………………。


 どうにも神の眷族辺りまでだと能力値は人の範囲で数値化はなるが、まるっきり神だと能力値は数値化しないようだな。


 漆黒者のステータスを視ていたほんの数秒だけの間に奴は、今までと変わらぬ速度で鎌で攻撃を仕掛けてくる。


 【晦冥】に神魔力を膜の様に張り巡らせ、より一層強固にして、漆黒者の鎌を受け止めた。


───ズキッ!───


『────れか、─────けてよ!』


 またしても頭痛がしたが、今度は頭に声……………と言うより、思念が響いてくる。


 それと同時に、今まで無表情であった奴の顔が苦しそうに歪んでいた。


『─────して、──────するの』


 またしても頭に声(思念)が響く。


 くっ! 一体何なんだ、この現象!


 漆黒者は顔を苦しそうに歪ませながらも、攻撃の手を休める事は無く攻撃をしてくる。


 それを躱したり、受け流しながら、頭痛や声と共にもう一つ異変を感じた。


 【晦冥】に纏わせていた神魔力を、鎌を受け止める際に吸収されていることに。


 奴の鎌は色々と不味く、外側がダメなら内側に神魔力を巡らせて対応した。


 そこそこだが神魔力を吸収されていた。


 奴との攻防を繰り広げていると、漆黒者の攻撃速度が衰え始めていた。


 正直、俺も訳の分からない頭痛と声の所為で、戦いに集中出来てはいなかった。


「──────わ、わたしを………………」


 突然、返事も無かった漆黒者から声が漏れた。


「おい、アンタ! アンタは一体──」


 再度呼び掛けたその時、漆黒者は禍々しい漆黒の闇を身体から噴き出し、自身に纏わり付かせ、消え去った。


 本当に一体、奴は何者だったんだ?


 訳の分からないまま、帝国に起こった悲劇は突如幕を閉じた。

 


 その後は神格化の状態で、俺が壊した皇城を魔法で直し、皇帝と皇后、そして俺が相手をした騎士二人の容態を回復させた。


 兵士達は既に亡くなってだいぶ時間が経ってしまっている所為か、生き返らせる事が出来なかった。


 アンナが兵士達をちゃんと弔いたいと言っていたから、生ける屍となっていた兵士達の容姿を、本来の容姿に戻した。


 帝都全体に張っていた結界も解除もして、だいたいの事に片を付けた後、ノエルとカルトちゃん、紅鬼と織姫、そしてレイが駆けつけた。


 ノエルからリーナからの伝言と手紙を受け取り、この帝国を建て直すのにエルスの力が必要と言って【ゲート】で迎えに行った。


 皇帝達はまだ目覚めないから、今後のことを決めるのは後回しで、俺はみんなには悪いと思いながら、神格化の影響で極度の空腹状態を異空間収納から、ノエルの料理、1人前分の肉料理を取り出して食べながら、リーナからの手紙を読んだ。


 内容は、楽しくお喋り(拷問)した司会進行役の男、盗賊団ナイトメアの頭目トアゴのメンバー達数十名が、サタンが入っていたランス・チャールズから、真実の護りというアイテムを授かり、エルフの国で幻惑の森と呼ばれる、エルフ以外の者を拒む森に入れる様になり、エルフの人達を奴隷にするために向かっているから、その対処に一足早く向かったと言う事が書かれていた。


 帝国の事が一段落したら直ぐに来るか、こちらから戻るかは状況次第と言う旨も書かれていた。


 まあ、リーナ達の対処の方が早いだろう。リーナ達も空を飛んで向かっているだろうからな。


 俺は俺で飯も食い終わり、カルトちゃんがメイドの本領発揮と言わんばかりに、アンナやレイ、俺に異空間収納からティーセットを出し、紅茶やお菓子を出して世話をしていた。


 紅鬼【小型】は織姫【小型】からア~ンと、お菓子を食べさせ、紅鬼は恥ずかしがりながらもバクバクと食べていた。

 


 しばらくして傍で寝ていた皇帝達が目覚め、そのタイミングでノエルが帰ってきて、その後ろにエルスとエルス直属の使用人二十名が付いていた。


 エルス直属の使用人。エルスが冒険者とお城の使用人達から選びに選んだ精鋭。またの名をエルス信者。1人1人が限りなくSランクに近い、Aランクの実力を有した者達。


 その直属部隊を連れて来たからには、アッという間にこの帝国は建て直してしまう。


「こ、ここは…………?」


 目覚めたばかりの皇帝が辺りを見渡していた。


「……………お父様、ここは謁見の間です」

「ア、アンナ? それにレイも。 お前達は確かどこかに連れて行かれたはず…………?」


「お初にお目に掛かります、エドワード皇帝陛下」

「…………お主は?」

「私の名前はカイト・クサナギと申します。どうしてこうなったか、事の顛末を私から説明します」


 皇帝達はただ黙って聞いてくれていた。


「…………………そうか、ランスが………………」


「陛下! どうぞ我らを処罰して下さい!」

「ランス団長に如何様いかような考えがあったかは分かりませんが、我らは陛下に歯向かってまで、団長に付いていたのです! ですから、我らに罰を!」


 俺と対峙していた騎士二人は片膝を付き頭を下げ、腰に帯剣していた長剣を自分達の前に置いて嘆願していた。


「……………うむ……………」


 皇帝は目を閉じ、返答に迷っている様だった。


「失礼しますわ」

「ん、お主は?」

わたくしは、グラキアス聖王国、カイゼル・グラン・ド・グラキアスが娘、エルスティーナ・グラン・ド・グラキアスと申します。こちらに居りますカイトと婚約しており、この国を建て直す助力をして欲しいと頼まれまして参った次第です」


 エルスは優雅で気品漂う挨拶をしていた。


 さすが聖王(義父さん)より権力が上と言われる程だ。


「そしてエドワード皇帝陛下。失礼ながら皇城を調べさせてもらい、ランス・チャールズからの手紙を発見しました」


 俺が説明している間に、使用人達に調べさせていたのか。さすがだよ。


 エルスから手紙を受け取った皇帝は手紙を読み始めた。


 少しして涙を流し、目元を右手で覆い、手紙を読み終えた。


 涙を流したまま、ただひたすらに皇帝は泣いていた。


「アナタ?」


 皇后が声を掛け、皇帝は手紙を皇后に渡し、皇后も読み始め、少ししてから皇后も皇帝と同じく涙を流して泣いていた。


「……………お母様…………?」


 アンナの呼び掛けに皇后は手紙を差し出して来て、手紙を受け取ったアンナと共に手紙を読んだ。



 内容は、初めてサタンを見掛けた時、死を覚悟をしていた事。そしてこんな者を世に解き放ったらこの帝国が滅ぶ事を危惧して、自身の身の内に宿した事。


 サタンを身の内に宿している間に、サタンを滅する力を持つであろう人物、隣国で英雄と呼ばれる人物と接触して、対処をして欲しいと頼むこと。それが叶わぬなら、少しでもサタンに精神を乗っ取られない様に抗ってみせるとの事。


 この手紙の事を知られないように、自身に忘却の魔法を掛けて忘れる事。


 そして最後に部下達と皇帝陛下達の身を案じていた事。


 最後の文章に『我が心は敬愛するエドワード皇帝陛下と皇族様方に命亡くしても変わらぬ忠誠を』と、記されていた。


 …………………この人は、サタンと対峙した瞬間にそこまで先の事を考えていたのか………………………惜しい人を亡くしたな……………………


 手紙を一緒に見ていたアンナとレイも涙を流して泣いていた。


 そうだな。今はただ、自分の事より他人の心配をした誇り高い騎士団長に感謝の念を捧げよう。



※※※

※とある場所にて────


『フン。傀儡如き相手に手こずる程度か』


 魔神は漆黒の闇を操って、黒髪の者を磔にしていた。


『ソレに微々たるモノだが、神の力とアクマの力を手にしたワケだが…………』


 魔神は異形の手を握っては開くことをしていた。


『まだまだ足りぬ。この腐れ果てた世界を完全消滅させるにわ』


 魔神は、磔にした黒髪の者を更なる闇で覆い、染め上げ始めた。

お読みいただきありがとう御座います。

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